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ディープイシューとは?その基本と5つの見つけ方
近年「ディープテック」という言葉を目にすることが多くなってきた。
「ディープテック」は、「科学的な発見や革新的あるいは既存しているが眠っている技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み」である。
その領域は、人工知能、宇宙工学、クリーンエネルギー、ニューラルネットワーク、量子コンピューティング、合成生物学など、すべてを書ききれないほど多岐にわたる。
ちなみに、FinTechやMedTech、BioTechなど、「分野x技術」を意味するX-Techとされ、厳密にはディープテックとは異なる。
もう一つのディープである「ディープイシュー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。ディープイシューとは「地球環境を守りつつ、命の危険を避け、水や栄養を確保し、病気にならず、快適に生活し子孫を残す。これらを満たす上での人類の重大課題」と定義されている内容。
SDGsとディープイシュー
似た概念として、「SDGs」という言葉を耳にすることが多いかと思う。「SDGs」は「誰ひとり取り残さないことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき17の目標」と定義されている。朝日新聞社が2020年12月に実施した調査では、東京都と神奈川県では52.7%が「聞いたことがある」という結果になった。
SDGsは、2020年2月の調査結果の32.9%から大幅に認知度がアップした。世界中の人が苦しんでいるコロナ禍によって、SDGsの大きな目標である「誰ひとり取り残さない」というコンセプトが、より他人事ではないと感じさせている。
この「ディープシュー」と「SDGs」の課題解決は、今後の地球と地球上に住む我々にとって重要な言葉であり、世界中の人々が協力して解決していかなければならない課題という意味で、非常に似通っている。
これからの地球のため人類のために、どんなサービスや商品が必要になるかを考えたとき、この2つの言葉がキーポイントになる。
実際に、ここ数年でシリコンバレーを中心としたテクノロジー企業や、スタートアップのその多くも、ディープイシューに正面から取り組み、社会課題の解決につながるサービスを提供している会社が増えてきている。
でもどのようにしたらそのような地球全体の社会課題に出会うことができるのだろうか? 今回はそのポイントを探っていくきっかけ紹介してみようと思う。
ディープシューってどこにあるの?
ディープイシューは目の前に転がっているわけではない。
普段から、「どのような人々がどのようなことに困っているのか」や「世界中の人々が快適に生活するために必要なものは何だろう」、「こんなサービスを作ればこんな人々が幸せになるんじゃないか」といった考え方を常に持つことが必要だ。
まずは「ディープイシュー」の定義に戻ってみよう。解決するべき社会課題を踏まえると、おのずと以下のようなサービスに分解される。
- 「地球環境を守るためのサービス」
- 「命の危険を避けるためのサービス」
- 「不足して困っている人々に水や栄養を与えるサービス」
- 「病気にならないためのサービス
- 「人々が快適に生活できるサービス」
こういったフレーズを頭の片隅に置いておくだけで、それぞれに関連した新しいサービスやビジネスのアイデアが生まれてくるのではないだろうか。
上述した5つのサービスは、簡単に誕生するものではない。実現するための計画も作成しなければならないし、実現するためのテクノロジーも必要だ。そして何より、ビジネスは決して一人で実現できるものではない。
目標に賛同してくれる仲間を作ることや、目標実現のためのテクノロジーの専門家も必要だ。要は「このビジネスやサービスを必ず実現してやる!」というパッションが必要だ。
ここで、皆さんもよくご存知であろう、テスラの創業者/CEOのイーロン・マスク氏の例を挙げておく。彼はテスラを創業する以前から、このままガソリンで排気ガスを垂れ流している自動車が増えていったら、地球は大丈夫なのだろうかと課題感を抱いていた。これこそが「ディープイシュー」だ。
おそらく彼は、世界中の自動車を電気駆動にすれば、少しは地球を守れるかもしれないと思ったのだろう。
また、人類全体の問題である人口増加も「ディープイシュー」と言ってもよい。マスク氏が宇宙へ人間を運ぶロケット技術開発に注力しているのも、地球外天体に人が住めるようになれば、人口問題が解決するかもしれないというパッションがあるから。
マスク氏の例はやや極端かも知れないが、「ディープイシュー」は常に、何か世界に貢献できる問題解決はないだろうか、あるいは社会に貢献できる問題解決はないだろうかと自問自答することが大切だ。
ディープイシューに出会う5つの方法
筆者は、2021年7月21日に、リバネス株式会社のCEOである丸幸弘氏とディープイシューについて対談させていただく機会を得た。リバネスは、日本の代表的なディープイシューの解決に取り組まれている企業だ。
また、丸幸弘氏は、ミドリムシが59種類の栄養素を持つことを生かした食品を世の中に出し、最近ではミドリムシ由来のバイオ燃料の開発も進めている株式会社ユーグレナの創業者でもある。
対談では、「ディープシューに出会うための5つの方法」についても語られた。これらは、ディープイシューを解決に向けて世界中の人々に貢献できるサービスやビジネスを始めてみたいと思っている皆さんにはとても参考になる5つの方法だと思う。
自分たちの持っている常識を捨てる
企業や組織で新規事業に関わる人や起業したいと思う人は、「この技術をどうにか使いたい」という概念からスタートしてしまいがちで、結果的に非常に狭い範囲しか見えなくなることが多い。
技術はあくまでも手段であることを忘れてはならない。そして、自分たちの持っている「常識」を一旦捨てることからスタートしていくのだ。
目の前の売上や利益の概念を捨てる
目先の利益を追いかける人には「ディープイシュー」はマネタイズが難しく、なおかつビジネスの実現に時間がかかるものと考えてしまう。
しかし、その時点でその人は「ディープイシュー」から目を背けていることなのだ。世界中の人々のためになるという純粋な気持ちを持って、利益のことはとりあえず後回しにして課題は何かに注力する。
長期的な視点と短期 (1年先) の具体的なイメージを持つ
定義からも察せるように、ディープイシューは、非常にスケールの大きな課題感から始まっていることも多い。したがって、ディープイシューの解決には時間がかかるため、長期的な視点が必要だ。
しかし、長期的な視点は1年1年のコツコツとした積み上げがあってこその達成だ。長期的に考えつつ、3か月後のことを決めるなどして、まずは行動することが大切だ。
「初めて」を連続してやる
実は、ディープイシューは一般的に「初めて」であることが、ビジネスとして価値を持つために重要な要素の一つになると言われている。例えば、リバネス株式会社は創業以来約20年間、「初めて」をやり続けてきた。
例えば、タイの新しい技術に投資したり、東南アジアのベンチャーを大田区の町工場へ連れていき実際にプロダクトを創るなど、「初めて」を続けている。
この「初めて」を繋げていくと、「初めて」の人が集まってきて、「これ誰も解決していないんです」と「初めて」の課題を提示してくれる連鎖が起こる。
現場の若いベンチャーやスタートアップと話す
常識を捨て、目先の利益を考えず、長期的視点と短期的視点を同時に持ち、「初めて」を連続してやってみた上で、現場の人たちと話す。
そうすると、「このディープイシューは、あの技術とこの技術が結びつくことで解決できる」という確信が出てくる。有用な技術を学ぶことはもちろんのこと、ビジョンを現場と共有することもまた重要なことである。
企業の中で新しいビジネスやサービスの創出に携わっている方々や世界を変えようと起業を考えている方々にはとても参考になるだろう。
進むESG投資
冒頭で「ディープイシューは目の前に転がっているわけではない」と述べたが、世の中にディープイシューのリストが存在するわけではない。自身で気がついて考えて、そして探しにいく課題である。
コロナ禍で世界中の人々が依然として苦しんでいる中、自身の考えているビジネスやサービスは果たしてディープイシューを解決できるものかを一度見つめ直すチャンスかも知れない。
ここ数年、ESG投資 (環境 – Environment、社会 – Social、ガバナンス – Governance関連企業への投資) も増加しており、機関投資家やベンチャーキャピタルも、ディープシューを解決するビジネスに注目している。
これらの動きは、ディープイシューがビジネスとして成立するための基盤がより整い始めている兆しと考えて良い。
おわりに
弊社btraxでは、本年11月から石川県加賀市で開始される「STARTUP 加賀〜加賀発、世界行き〜」、また12月から福岡市で開始される「GLOBAL CHALLENGE! STARTUP TEAM FUKUOKA 2021」の2つの地方自治体主催のスタートアップ支援事業の企画・運営をさせていただいている。
地元のスタートアップ起業ムーブメントに興味を持つ方々うや新しいビジネスやサービスの創出の助けになると運営者としてとても楽しみにしている。
昨年からのコロナ禍による様々なオンライン化で、日本中、世界中が簡単に繋がるというポジティブな影響も多くあったのではないだろうか。
実際、多くの技術分野や学術分野の世界会議がほとんどオンラインになったことで、開発途上国を含めた世界中の新しい技術や学術がこれまでより知られることになったと聞いている。
起業を考える方々には、コロナ禍が我々にもたらしてくれた「世界と繋がる」ことを有効に続けていくということが大切だろう。
この記事が、起業を考えている方々に「ディープシューの解決」を頭の片隅にでも思い浮かべていただく一助になったとしたら、これほど嬉しいことはない。
<参考>
書籍:丸幸弘氏・尾原和敬氏共著 ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」
【SDGs認知土調査 第7回報告】SDGs「聞いたことがある」約5割
https://miraimedia.asahi.com/sdgs_survey07/
いま、ディープテックが注目される理由は?社会問題の解決に役立ちうるか?
https://frontier-eyes.online/deep-tech/
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