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日本を代表するエンジェル投資家、孫泰蔵氏が投資したくなるスタートアップとは?
前回の【対談】孫 泰蔵氏 x Brandon Hill -スタートアップがグローバルに展開するための5つの秘訣-に引き続き、Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKAの最終報告会イベントより、今回は孫氏が語る解決するべき世の中の問題と、世界のスタートアップに期待する事、そして投資する際のポイントなどについてご紹介する。
フィンテックやVR, ARなどの”バズワード”には全く興味がない
孫氏にどんな分野のスタートアップに関心があるか聞いたところ、日本でもシリコンバレーでも最近の話題になるような業界、例えばフィンテックやVR, ARなどの成長分野とされるキーワード”自体”には全く興味がないという。
流行りの業界を中心に投資するVCなどもいるが、孫氏にとって重要なのは解決するべき問題に対してどのようなアプローチで何を価値にしているかである。結果的に上記のようなカテゴリーに入るスタートアップに投資することもあるが、技術トレンド主導で投資することはしないそうだ。
重要なのは社会に対してのポジティブなインパクト
それよりも孫氏が重視しているのはどれだけ社会に対して良いインパクトを与えられるサービスであるかという事。孫氏自身も20年間事業をやってきて、インパクトを与え、上場も経験し、一通りビジネスを経験してきたこともあり、現在はお金儲け云々よりも純粋に最も興味のある事柄を解決してくれるスタートアップの支援を行いたいそうだ。
目指すのは複合的な影響力
「一つのスタートアップが生みだすことのできるインパクトはどうしても限定的ですが、世の中には数多くの問題が存在しています」と語る孫氏がCollective Impact (複合的影響力) について教えてくれた。
この言葉は、世の中の問題を解決するためには複数のイノベーションを複合的に組み合わせ、化学反応を生みだす必要があることを指すのだという。そうすることで大きな社会的課題を解決することに繋がる。Mistletoeでは解決すべき課題を常にいくつか設定しており、それに対して複数のスタートアップのサービスを組み合わせることで解決したいと考えているようだ。
世界規模でスタートアップを探している
Mistletoeでは、現在上記の問題を解決できるスタートアップを世界中から探しているとのこと。スタートアップが技術の開発を行い、孫氏がそれを外部の仕組みと組み合わせることで社会問題の解決に繋げる役割を果たすのがゴールである。
例えばインドの技術、日本の技術、そしてシリコンバレーの技術を組み合わせることで一つのプロジェクトを作り出すプロジェクトもあるよう。
エンジェル投資家のゴールは問題解決をしてくれる人に投資をすること
シリコンバレーに多く存在するエンジェル投資家は、金銭的なリターンよりも起業家のビジョンに共鳴して投資することが多い。以前弊社が行った対談でヤマハモーターベンチャーズ のCEO、西城洋志さんも語っていた通り、これがシリコンバレーから面白いスタートアップが生まれる一つの起爆剤にもなっている。彼らは損得勘定の前に面白いことをやる、社会の問題を解決することを優先する傾向にあるとのこと。
日本でもエンジェル投資家を増やす取り組みが進んでいる
面白いアイディアや起業家の夢に文字どおり賭けるというエンジェル投資家を増やすための動きが日本でも始まっている。そんな中東京ではエンジェル投資家を集めたカンファレンスが開催され、多くの人たちが参加している。孫氏に聞いたところ、日本でも少しずつエンジェル投資家が増えてきているとのこと。その多くは自身が起業して成功したり、大成功した企業に初期から参画している場合が多い。しかし、絶対数ではまだまだ少ないようだ。
スケッチ一枚を見て投資を検討
孫氏に起業家たちはどのようにエンジェル投資家にピッチするべきかを聞いたところ、「詳しいビジネスプランや緻密な収支計画表よりも、簡単なものでもいいのでプロダクトのアイディアをスケッチした紙とプレゼン、そして情熱が伝わるプレゼンが必要ですね」と教えてくれた。
実際にシリコンバレーではそれだけでも数千万円の資金調達を達成しているケースが多く存在するのだという。そのシードマネーを元にスタートアップはプロトタイプを作成し、ユーザー集めを行い、ベンチャーキャピタルからの追加出資を狙う。その意味でも0から1を生みだす事業の初期の段階においてはエンジェルの存在は非常に大きいようだ。
初対面で投資を決断する投資家もいる
投資家達の間でよく耳にすることを孫氏が語ってくれた。彼らが初対面でアイディアを聞いた瞬間に投資を決断することも少なくないようで、「いくら必要?1,500万?今ここでサインしても良いよ」という具合に話が進むなんてことも。
その理由は、その会社に投資をする前から、投資をしたい種類のサービスが決まっていて、それに沿う内容であれば即決してもいいと思う投資家もいるようだ。
お金よりも大きな価値は投資した後のメンタリング
アーリーステージのスタートアップにとって、投資以上にアドバイスやノウハウ、ネットワークを提供してもらえるメンタリングの方が価値が高いと感じる傾向にあるとのこと。メンタリングはコーチングとは異なり、決して答えを与えることではない。孫氏を含めた投資家達は、起業家本人が本当に何がやりたいのかをとことん考えられる状況を提供し、本人に答えを出させるのである。
起業家に問う「明日死んでもそれをやりたいのか?」
メンタリングにおいて重要なのは、起業家がやりたい、やろうとしていることが本当にそれであるかを気づかせること。孫氏曰く今までにも「君、それ本当にやりたい事なの?」と質問した事で本人が本当にやりたいことに気づき、それがうまくいったたというケースをなんども目の当たりにしているようだ。このように、メンタリングとは気づくためのきっかけを与えることを指すのだろう。
「もっと現実的なプランにした方が良いよ」はメンタリングではない
起業家にとって、とても重要な存在であるメンターであるが、よくありがちな「もっと現実的なプランにした方が良いよ」というアドバイスは全くを持ってメンタリングではないと孫氏は語る。むしろそういう人の話は聞く必要はない。そういう場合は「なるほどですね」といって穏便にやり過ごすことが重要だという。
日本にシリコンバレーを作りたけければ小さくても良いので生態系を作ること
「よく、XX市を日本のシリコンバレーにというプロジェクトがありますが、それを実現するにはスタートアップのエコシステム (生態系) を作り出すことから始めるべきです」と孫氏。なぜかというと、そこには起業家、投資家、エンジェル、メディア、支援機関、ミートアップなどなどスタートアップが生まれて育まれていく環境が存在しているから。水があり太陽があり養分が生まれ循環する自然界と同じだという。
例えばシリコンバレーはすでに豊かな森であるのに対して、日本の都市はまだまだ砂漠にサボテンがある程度。しかし、小さくても良いからその生態系を少しずつでも作り出すことから始める必要があるというのが孫氏が考えるセオリーだ。
助成金を与えればスタートアップが育つという考えは間違い
スタートアップのエコシステムについて孫氏に聞いたところ、このように回答してくれた。「お金が水の役割を果たすのですが、それだけでは木々は育ちません。
同じように例えば自治体が不特定多数のベンチャー企業に助成金を配布したとしても、それは砂漠に水をまくのと同じで、それだけで種から芽が出ることはないですからね」つまり、小さくても良いのでオアシスのような環境を作り出すことが大切ということだろう。
そこには様々な生物が生息しており、気が育ち、花が咲き、実がなる。それを鳥が食べ、排泄し、その中の種からまた芽が出る。孫氏の話からそのような循環する環境、エコシステムを構築することが何よりも重要というのが分かる。
その要素一つ一つが重要であり、一つだけでは何もできないが、それぞれが集まり、それぞれの役割を果たすことで生態系を生みだすことができるのだろう。
大きなことを考えている人と仕事がしたい
孫氏が好きな起業家のタイプは、大きな社会問題に対しての解決意識があり、それに対してのユニークなテクノロジーやソリューションアイディアを持っている人。それがあるのであれば、お金も経験も人脈も問わないという。
世界の問題を解決する使命
日本の恵まれた環境に住んでいると、世の中の不便が少なく、解決するべき社会的問題が見えにくい。そのような時はどうすれば良いのか質問したところ、孫氏はこのように答えてくれた。「実はそういうところに生活しているからこそ世界の問題を解決する使命があるのです。自分が住んでいる場所がとても住み良いのであればこそ、その環境をモデルにして世界の他の地域の問題を解決するべきなのです」
日本には世界に貢献できる要素がたくさんある
孫氏は、世界的に見ると日本は技術的にも文化的にもかなり進んでいて、経済も教育のレベルも非常に高いと考える。しかし、世界にはそうではない地域の方が圧倒的に多い。だからこそ、この日本の良さを世界に広げるぐらいの意気込みでグローバル展開をしてほしいと熱く語ってくれた。
解決するべき問題が見えていてそれに対してのアイディアがあれば、チャレンジするのみ
「もしすでに自分が解決するべき社会的な問題がはっきりわかっていて、それに対してのビジネスアイディアがあるのであれば、ぜひチャレンジをしてください」と孫氏。どこに住んでいようが、志と行動があれば、今の時代、有利/不利はあまりないので、失敗を恐れずにどんどんやってみてほしいというのが孫氏からのメッセージだ。
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