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プリマハムとbtraxが挑んだ「利用される食育プログラム」のつくり方 – 事例紹介 –
企業による社会貢献活動は数多く存在します。しかし、どれほど意義のある活動であっても、実際に利用されなければ社会に価値を届けることはできません。食品メーカーとして長年食育活動に取り組んできたプリマハムも、その課題に向き合っていた企業のひとつです。
2014年から小学校向けの出前授業を実施し、ソーセージ作り体験や工場見学などを通じて、子どもたちへ食の楽しさを伝えてきました。同社はコロナ禍を機に教材提供型の食育プログラムへと移行しましたが、運用を続ける中で新たな課題も見えてきました。
そこで同社は、サンフランシスコを拠点にデザインやイノベーション支援を行うbtraxとともに、食育プログラムの刷新に着手しました。

プリマハム様向け案件「世界の朝ごはん」
参考: プリマハム | サステナビリティ | 食育への取り組み
今回の対談では、プリマハム株式会社 サステナビリティ推進部の細川翔氏、山足郁人氏と、btrax CEOであるBrandonに、プロジェクトの背景や学び、そして企業が社会課題に取り組む際に重要な視点について語っていただきました。

対談はプリマハム本社で行われました
プリマハムだからこそ伝えられる食の価値とは?
まずは今回のプロジェクトの背景について教えてください。
プリマハム 細川氏・山足氏
プリマハムでは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」という考えのもと、長年食育活動に取り組んできました。
小学校向けの出前授業は2014年から実施しており、その他にもソーセージ作り体験や工場見学なども行ってきました。実際に子どもたちの反応も良く、非常に意義のある活動だったと思います。
コロナ禍をきっかけに教材提供型の食育プログラムを開始することになったのですが、数年運用する中で「内容を見直したい」という声が社内から上がるようになりました。

小学校の先生が使いやすいtスライド形式
どのような課題があったのでしょうか。
プリマハム 細川氏・山足氏
従来の教材は情報としては整理されていましたが、もっと子どもたちが楽しみながら学べるものにできないか、もっと「やってみたい」と思える内容にできないか、そういった議論が社内で出てきました。
また、プリマハムだからこそ伝えられる食の価値とは何かも改めて考えたいと思っていました。
その中で着目したのが「朝ごはん」です。
朝食欠食は社会的な課題としても注目されていますし、ハムやソーセージは朝食との親和性も高い。子どもたちの健康にも直結するテーマだと考えました。

プリマハムだからこそ伝えられる食の価値を改めて考えたかった、と語る細川氏
「教材」ではなく「授業体験」をデザインする
Brandon
ご依頼いただいた時点では「教材をリニューアルするプロジェクト」だというお話を伺いました。しかし私たちは、本当に解決すべき課題は教材そのものだけではなく、「どうすれば先生に使ってもらえるのか」「どうすれば子どもたちに届くのか」を本質的に追求するべきではと考えました。
シリコンバレーで新しいサービスやプロダクトを開発するときもそうですが、私たちはまずユーザーの理解から始めます。企業はどうしても「何を作るか」を考えがちですが、本当に重要なのは「なぜ使われないのか」を理解することです。

シリコンバレー式アプローチを語るbtrax CEO Brandon
そこで先生方へのヒアリングを実施されたんですね。
Brandon
プロジェクトアプローチとしてまずは現行の体験をヒアリングするステップを組み込みました。ただ、プロジェクト予算に限りがあったため、先生へのヒアリングはプリマハムのメンバーに行っていただくことにしました。
先生へのヒアリングではどのような発見がありましたか。
プリマハム 細川氏・山足氏
先生方の時間不足です。授業準備に時間をかけられない。
学校指導要領で決まったカリキュラムをこなさなければならない中で先生が一番助かるのは、カリキュラムをカバーし、かつ、準備にたくさんの時間をかけずとも生徒たちを魅きつける内容の授業を提供できることだということがわかりました。

その発見はどのようにプログラムへ反映されたのでしょうか。
プリマハム 細川氏・山足氏
従来の提供教材はPDFをダウンロードいただく形式だったのですが、刷新版では、btraxと相談し、PowerPointをそのまま投影して授業ができる形にしました。また、ティーチャーズガイドや進行スクリプトも用意して、先生の準備時間が最低限で済むようにしました。

刷新された食育プログラムについて語る細川氏・山足氏
先生によってニーズがかなり違ったことも印象的だったようですね。
プリマハム 細川氏・山足氏
はい。ある先生は朝の学活で5分だけ使える教材が欲しい、別の先生は45分の授業として実施したい、など、学校やクラスによって状況が全く異なるんです。
btraxのコンテンツ案は、子供の興味をひくため、様々な角度から朝ごはんをとらえた複数の章で構成されていました。このコンテンツ案を先生に見せたところ、授業時間に合わせて必要な部分だけを使えると良い、という意見が出てきました。
これを踏まえ、こちらが「これをやってください」と決めるのではなく、普段子どもたちを見ている先生が選べる方式をとることにしました。

普段子どもたちを見ている先生に適切なコンテンツを選んでいただきたいと語る山足氏
Brandon
新教材には、スポーツ選手やアイドルグループへの憧れがある子が興味を持ちそうなページがあったり、国際色豊かなクラスで議論が活発になりそうなページがあったりしますからね。
プリマハム 細川氏・山足氏
はい。先生がそれぞれのクラスの特徴や目の前のこども達を見ながら一番適した内容に自由にアレンジできる設計になったことは非常に良かったです。

小学生が食育を自分事とできるようなコンテンツ
「朝ごはんは大事」では行動は変わらない
今回取り組んだ教材は小学生向けのものですが、授業を受ける側、つまり、子供に対してはどのような工夫をされたんですか。
Brandon
私たちが重視したのは知識を身につけることではなく行動を変えることです。「朝ごはんは大事です」という知識は、多くの子どもたちがすでに知っています。しかし知っていることと、実際に行動することは別です。そこで、どうすれば子どもたちが自分事として考えられるかを議論しました。
共働き家庭の増加など、家庭環境も多様化しています。昔のように「理想的な朝食を作りましょう」と伝えるだけでは現実的ではありません。
だからこそ、世界の朝ごはんを紹介したり、自分で献立を考えるワークを取り入れたりしました。重要なのは、「知識を覚えること」ではなく、「明日から何か一つ行動してみよう」と思えることです。


世界の食文化を伝えることで子どもたちの興味をひく
プリマハム 細川氏・山足氏
先生達の要望として、長時間の授業の間、子供達を飽きさせない内容にしてほしい、というものもありました。btraxが作ったコンテンツは単なる座学ではなく、子どもたちが主体的に参加できる内容になったと思います。
Brandon
私もソップリンの魅力にはまった1人です。
プリマハム 細川氏・山足氏
そう言っていただけて嬉しいです。ソップリンはこれまで外部向けコンテンツとしては殆ど登場しておらず、伸び代があるキャラクターです。最近、ソップリングッズも販売し始めたところなんですよ。


子どもたちが授業で飽きることが無いようにゲーム形式で学ぶ章も設けた
日本の食育は世界に誇れる文化
少し話題は変わりますが、Brandonさんは海外から日本の食育をどう見ていますか。
Brandon
実は、食育という分野に関しては日本は世界トップレベルだと思っています。私は日本の学校にも通っていましたが、給食文化や食育の仕組みは本当に素晴らしい。
アメリカでは学校給食でも栄養バランスが十分に考慮されていないケースが少なくありません。学校のカフェテリアのメニューがピザやフライドチキン、あとは、りんご、という程度のこともよくあります。一方で日本では、給食を通じて自然に野菜を食べる文化や食への理解が育まれています。
海外の研究者が日本の学校を訪れて驚くことも少なくありません。私は日本の食育は世界へ発信していく価値があるものだと常々思ってきました。
プリマハム 細川氏・山足氏
プリマハムは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」を目指す姿に掲げています。食品メーカーとして私たちはそうした日本の食文化を次世代へ伝えていく役割を果たしていきたいと思っています。

日本の食育は世界トップレベルだと語るBrandon
CSRからブランドへ。社会課題への取り組みは企業価値になる
企業による社会貢献活動に対する考え方について、日本と海外とで異なる部分はありますか?
Brandon
ここは大きな違いがあると思っています。日本ではCSRというと、「良いことだけれど利益にはならないもの」「企業が社会のために行う自己犠牲的な活動」と捉えられているように思います。
しかしアメリカではそうではありません。社会貢献活動はむしろブランド価値を高めるための重要な投資です。社会へ価値を提供することで、「この会社は未来に投資している」という信頼や共感を生み出しているのです。結果として、その企業を好きになる人が増え、長期的なブランド価値につながっていきます。
Appleが学校へコンピュータを提供したり、Googleがプログラミング教育を支援したりするのも同じ考え方です。それは単なる慈善活動ではありません。
プリマハム 細川氏・山足氏
日本ではまだ、社会貢献活動とブランディング活動を別物として考える傾向があるかもしれません。

プリマハムの公式キャラクター『ソップリン』
Brandon
そこが非常にもったいないと思っています。社会課題に本気で取り組む企業は、それ自体がブランドになります。
今回のプリマハムの取り組みも同じです。食育は、子どもたちや保護者、先生方と直接つながることができる活動です。単なる寄付ではなく、自社の知見を活かして社会課題を解決している。これは非常に強いブランドストーリーになります。
日本企業は素晴らしい活動をしていても、それを十分に発信していないことが多い。こうした活動はもっと発信していくべきだと思います。
プリマハム 細川氏・山足氏
授業風景や先生方の声、ソップリンの活躍などを継続的に発信していけば、「ハムやソーセージの会社」という認識を超えて、「子どもたちの健康的な未来を支える会社」というブランドイメージを築くことが確かにできますね。

インタビューを終えて
細川さん、山足さん、Brandonさん、お話どうもありがとうございます。個人的に興味深かったのは、食育やCSRの話が企業のブランドづくりの話につながったことです。
社会貢献活動とブランディングは別のものだと思っていましたが、社会に価値を提供し続けることそのものがブランドになるというお話はとても印象的でした。今回の取り組みが今後どのように発展していくのか、楽しみにしています。
btraxでは、CSR活動や企業のブランディング活動の支援を多数行っています。今回のプリマハムの事例をより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

