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シリコンバレーで戦う日本人 Part2 -「白がほしいんだったら黒を見ろ」【対談】ヤマハモーターベンチャーズ CEO 西城洋志
前回のレポートに引き続き、btraxにてシリコンバレーで活躍する3名を招いて行ったパネルディスカッションイベントでの第2弾として今回は大企業の破壊的イノベーター日本代表として君臨するヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレー: CEOの西城洋志氏をご紹介する。
イベントのパネルディスカッション参加メンバーは:
- ホンダ・シリコンバレー・ラボ,シニア・プログラム・ディレクター: 杉本直樹
- ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレー, CEO: 西城洋志
- ChatWork, 代表取締役社長 : 山本敏行
この中でも今回は第2弾としてヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレー: CEOである西城洋志氏。恐竜会社でもイノベーティブになればスタートアップより一瞬で世界を変えられる。この思いを胸にシリコンバレーで戦い続ける西城氏。
第一弾のHONDA 杉本氏も濃かったが、今回もより一層濃い内容となっており、参加したオーディエンスからは大好評のイベントとなった。
第一弾: シリコンバレーで戦う日本人 Part1 – 「衝撃のユーレカ モーメントを逃すな」【対談】杉本直樹
では、そんな西城氏のヤマハ、そしてシリコンバレーに賭ける思いの内容をお届けする。
シリコンバレーに進出した時の人材の集め方を教えてください
ヤマハで働く時間こそが最大の報酬
僕、去年会社立ち上げたんですね「ヤマハモーターベンチャーズ」。僕だけが本社から来ていて、こっちって給料とかって個人ベースなんですよね。しかも魅力的なGoogleとかAppleとかある中で恐竜みたいな会社のヤマハに入るって選択肢的には低いじゃないですか。
もちろん給料そんながっつり払えない。それでもねうちのメンバーは僕の給料の二倍で、うちの執行役員並みにもらってるわけね。いや、いやになるぜ、承認するときこいつ給料たっけえなって(笑)。それでもGoogle, Appleなんかより全然安いんだけどね。
そこで僕が彼らに提供できる価値とは何かなと思った時に「Visionを達成するために働ける時間」って楽しいよね。「その時間こそがお前らにとっての最大の報酬だよ」という風に位置付けた。「ヤマハを変える」「世界を変える」という普通じゃないVision達成の一員になれるんだと。
もちろんそれに共感してくれない人もいたけど、共感してくれた人っていうのは「一緒にやるんだ」っていう強い気持ちがあって入ってきてくれる。だから本当に欲しい人とかがいるときは、条件を下げたりするのではなくて、その人がやりたいことが何かを知ってそれを提供する方がいいのかなという風に思いますね。特にアメリカではその傾向が強いかな。
個人の尊重っていう話だと、自己紹介の時もすごい違いを感じる。日本だと「ヤマハの西城です」となるけど、こっちだと「西城です。ところで、今ヤマハで働いています」っていう風になる。やっぱりこっちだと人が中心として考えている。
日本だとみんな会社会社ってなりがちなんですけど「会社って何ですか?」って本当に考えていくと人の集まりじゃないですか。会社って実は概念的なんですよね。日本は概念に求心されてるんですけどアメリカは人が中心なので報酬制度とか雇用制度がこうなってるんだと思います。
新規事業を立ち上げるときに自分たちの強みであるモビリティから離れて事業を行うことはあるのか?
ハードウェアはただでバラまけ
モビリティとなると大きい話になるけど、「モノ・人が移動する」ということはなくならないと思うんですよ。ただその手段が車・電車・バイクとかいろいろ手段があるけど現在はまだ最適ではないという風に思っている。
例えば車は24時間の中で平均約5%しか使われていないんですよね。残りの95%は停まっていたり、駐車場にあったりします。資産として5%しか使われていないものというのは相当効率が悪い。だから車というものはあまり資産としてはいけてないです。
皆さんスマートフォン使われてますよね?あのモデルというのは基本的にオンデマンドで使いたい時に使って払うサブスクリプションモデルですよね。今のビジネスモデルの主流はそっちなので保険は払うわ、駐車場代は払うわ車は高いわということで車はかなりおいていかれているサービスだと思うんですね。
ただHONDAさんもうちもそうだけどハードウェアに特化している会社がサービスに移行するというのは非常に難しい。だから今うちの本体がやっていることは否定しないけど、現在のモデルを壊すという話になった時にどんな手法が使えるかなということを考えている。もしうちの会社なりモビリティがつぶされることが起こるのであれば俺がつぶしてやろうという風に思っている。
究極でいうとハードウェアをタダでばらまけて、移動距離によって料金を課金するサービスというようになればいいと思っている。その状況になればシェアとか所有とか概念が消え去ると思う。
つまり車が公共交通とのハイブリッド型になるという風に考えている。でもこういうビジョンの実現は一人じゃできない。だから同じようなビジョンを持っている人とコラボレーションをしてやろうとしてる。そのコラボレーションの手段として、投資・事業開発等をしている。
シリコンバレーは未来の縮図
シリコンバレーはアメリカだと思っていません。ここは世界の未来の縮図と思っている。世界中から起業したい奴らが集まって来ている。
僕が一つ嫌いなのはね、日本ってスタートアップとか起業の支援とかよくやってると思うんですけど、支援しなきゃいけないスタートアップなんてそもそも無理って思っている。育まなければいけないスタートアップとかありえない。
シリコンバレーはスタートアップのメッカなのにスタートアップ支援とかないからね。こっちだとチャンスはいっぱいあって、本気でやっている人に関しては、投資をいつでも受けれるようになる。
もし支援とかしちゃうとどのタイミングで支援を打ち切るのかがすごい難しくて、溶岩の海にいつ飛び込ますのかがわかんないんですよね。なのでスタートアップ支援と聞くとなんで支援しなきゃいけないんですかって思います(笑)
迷ったりして気持ちが揺れ動くときに大事にしているみたいなことは何かありますか?
白がほしいんだったら黒を見ろ
僕は基本的にあんまり迷わないんですけど、30分迷って考えてわからないときには放っておくようにする。長く迷わないように心がけてる。っていうのは長く考えると木しか見えなくなったりするので自分で一旦距離を取るということが必要。
僕が思うのは、アングルを変えるということが重要。他の従業員には「白がほしいんだったら黒を見ろ」っていう風に言っています。なぜなら白ばっかり見ていると、ちょっとグレイのやつが黒に見えちゃうんですね。なので本当に黒を見ておくとスケールがわかるようになって、これは白いグレーだなみたいな感覚が養われる。
こういう風にアングルを変えることで、すごい悩んでいても「これ大したことないなってな」って気持ちが楽になったりする。あと、個人的に人生で最重要視しているのは、楽しめるかどうかですね。人間いつか死ぬじゃないですか。少ない可処分時間中で8時間も働くんですから、楽しみたいですよね。なので自分の時間として楽しめるかということが判断基準にある。
誰かにやらされることが自分では好きではないので。正解ではなくて好みなんですよね。好き嫌いであって、好みが大切。世の中に正解っていうのはないので、ないなら楽しいことをやった方がいい。Brandonさんも言ってたように失敗はするんですけど、失敗自体が悪いわけじゃなくて失敗してそこから何かを学べばいいんですよね。
10対9で勝つのが好き
なので野球の試合で言うと、10対9で勝つのがすごい好きなんですよね。なんでかっていうと9点分の失敗の学びがあってかつ試合には勝ってるので。でも日本人って10対0で勝ちたがるんですよね。僕10対0の試合はしたくないですね。低過ぎる目標っていうか。まあでも10対9で負けることも多いんですけどね(笑)
シリコンバレーの最新情報・産業にいち早く気づくポイントは?
世界にまだない色を足そう
まずね、シリコンバレーはアドバンストという面においては全く進んでないと思いますよ。技術は日本の方が進んでる。ただ新しい価値を作るということが得意。今ある軸の最先端にいるのではなく「軸を変えた新しいサービス」とか価値の提供が起きている場としてシリコンバレーを見ている。
アメリカの良さで多様性ということを聞くじゃないですか、僕がよく会社でよく言っているのは正解を探すなということです。世界はカラフルなんだと、「世界にまだない色を足そう」「世界をもっとカラフル」にということを常に言っている。
シリコンバレーは新しい価値を生み出すという点において優れたエコシステムを持っていて、ここから先10年も20年も新しい価値の提供の場ということは続いていく。どんなに住みにくくても家賃が上がってもこれは変わらないと思います。
どんなに怪しいビジネスでもエンジェル投資というのが行われるというエコシステムがここにはある。つまりエンジェル投資による0から0.1というところがしっかりしている。これはほかのところはなかなか真似できない所です。なので多様性というところで、シリコンバレーは非常に適切である。
ここって本当にいろんな人がいるじゃないですか。人種も違うし言語も違う。だからナチュラルに世界はカラフルだっていうことをわかっている。でも元々のファンダメンタル的に、日本は同質性が高いので一つの基準で測りたがる。それがクラスの中でも「あいつ変だよね」みたいな感じでいじめられるしグループが作られる。
アメリカでもグループはできるんですけど、「あいつらとは違う」みたいな感じで違いを受け入れている。教育の仕方も答えを出すところではなく、答えの出し方に重きを置いている。そしてこっちは減点式ではなく加点式。だから異質であることを怖がらずに新しいことを探そうという気持ちが生まれてくる。
僕らはこっちに来た時にある程度こっちの文化に順応できたけど、だけどもしアメリカ人でこっちの教育を受けた人が日本のドメスティックな企業でやるっていうの本当に難しいと思いますよ。同質性にうまく対応できないような気がする。
日本の同質性はいい?悪い?
いい悪いは関係ない
同質性は悪いとは思ってない。それは用途によるよね。あるミッションで「一緒にやれ」ってなった時にすごいやりやすい。日本がモノ作りとか本当に得意なのはそこがある。例えばアメリカでオーダーとかしても本当に予定通り来ない。もういらいらするよ。
日本のクロネコヤマトとか本当にその時間で来るもん。こっちだと今日来るよねっていっても今日来なくて下手したら来週とかに来る。だからルーティンとかの仕事はこっちは非常に質が悪い。それは同質性がないとか個人主義とか組織としてマネジメントしにくいという点がある。だからいい悪いじゃなくて違いが理解できて、うまく活用できたらいいんじゃないかと思う。
全員一致は危険信号
ベンチャーキャピタルとして投資活動を行っているんだけど僕たちの中で言っているのが、全員がAgreeする投資案件は危ないと。誰かが反対できる案件がベスト。4人いると3対1になるとベスト。日本ってそういう考え方ないじゃん。全会一致がベストってなる。
一人反対すると根回しが必要になる。でも実際は一人疑問に思うくらいの方がベストだと思う。だってその反対する人が、いいブレーキ役になるから安心してできる。この考え方っていうのは日本にはない。そういう考え方の違いはいい学びになりました。
btraxでは毎月イベント開催中
このイベントは福岡市主催によるグローバル起業家育成プログラム向けにbtraxの運営によって、同社サンフランシスコオフィスにて、11月から1月まで毎月開催されている。11月のイベントの様子は下記より。
メルカリ, JCB, スタートアップ弁護士に聞く – なぜ日本企業はサンフランシスコ・ベイエリアへを目指すのか【イベントレポート】
【12/6(水)開催】動画生成AI最前線:Mootion CEO × チャエン氏 特別対談
世界が注目する動画生成AI「Mootion」から、CEO Yonggang Wang氏が来日。 AI専門家チャエン氏を迎え、最新技術と市場展望について語る特別セッションを開催いたします。
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