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ユニコーン企業の次はシマウマ? ゼブラ企業の特徴と可能性とは?
※2023年4月に最新の状態に更新されています。
日本でも「ユニコーン」という言葉がかなり浸透した。ユニコーンとは、スタートアップ界隈で用いられる表現で、俗に未上場で企業評価額が10億ドル以上の会社を示す。(参考)
そもそも上場していないので、企業の価値が10億ドル以上に評価されること自体が通常珍しいこと。そしてそのビジネスモデルのユニークさから「実存しないぐらいユニークな存在」という意味で架空の動物であるユニコーンを名称として採用されている。
共通しているのは、他に類を見ないタイプのサービスを提供することによって市場を独占する存在になること。
スタートアップのゴールは急成長
この「ユニコーン」になることがスタートアップにとっての一つの理想である。ユニコーンは急激な成長を成し遂げるからだ。
「ベンチャー企業とスタートアップの違い」によると、スタートアップとは、
“新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体”
であることからも分かる通り、そのミッションは「一攫千金を狙った急成長」である。そして、その理想を体現したのが、ユニコーン企業だ。
サンフランシスコ・シリコンバレーはユニコーンの名産地
本来はあまり存在しないはずのユニコーンであるが、僕が住むサンフランシスコや、シリコンバレー付近にはゴロゴロしている。
上場前のUberやAirbnbに加え、世界的に見てもかなりユニークなサービスを提供しすることで、破壊的イノベーションを生み出している企業が多いのが理由。
加えて、無理に上場を急がないのが最近のスタートアップにおけるトレンドにもなっており、その評価額がどんどんと上昇し、ついには評価額が100億ドル、日本円にして約1.3兆円以上になっているケースも出てきている。
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疑問視され始めたユニコーン至上主義
しかし、一見理想的とも思われるユニコーンの存在がここにきて疑問視され始めてきている。
強烈なスピードでユーザーを巻き込みながら世の中を変革させる彼らは、社会に強烈なインパクトを与える。
その一方で、起業家や投資家の興味は、いかに短時間で大きな金銭的リターンを生み出せるかにフォーカスされ、そのインパクトの「内容」に対しては二の次になりがちである。
そして、この「とにかく急成長」のモットーが、ユニコーン企業に強烈な権力を与え、場合によってはその従業員だけではなく、ユーザーや社会を左右できるくらいの独裁的な存在にさせる危険性をはらんでいる。
その一方で、多くのスタートアップは20代の無邪気な若者ファウンダーたちによって運営されていることも多く、必ずしもしっかりとした倫理観を持つ前に急成長してしまうこともあり得る。
ユニコーンは本当に素晴らしいのか?
そこで過熱気味のユニコーン至上主義に対し、企業の社会的存在意義について今一度冷静に考えてみようというコンセプトに注目が集まり始めている。
スタートアップを始める起業家やそれをサポートする投資家たちは、日銭稼ぎや顧客満足度よりもユーザー数の伸びを優先して、その企業を評価する。
ユニークなサービスを武器に市場を独占するスタートアップにドカンと投資をして、ビッグがリターンを獲得するのがこれまでの常識であった。
しかし、この「儲けた者勝ち」「急成長した者勝ち」の文化は、時にそのビジネスモデルや、世の中への影響力を軽視してしまいがちである。
特に最初は、とにかくユーザー集めを最優先し、金儲けは後から考えるやり方では必ずしも社会にポジティブな影響を与えていないのではないか?という懸念が持たれ始めている。
そもそも、この強烈なスタートアップの業界に関わる人々が、その強烈さに少し疲れ始めているというのもあるだろう。
再び注目され始めた中小企業の存在意義
ここで注目されているのが、無理に急成長と大きなリターンを求めないスモールビジネス (中小企業) 型の価値観である。
中小企業は、毎日の地道な売り上げと顧客満足の積み重ねで、共存共栄を達成しながら、末長く存在することをゴールとしている。
この考え方は、ささやかながらも、その地域をはじめとして、少しずつではあるが、世の中にとって価値のある存在を生み出しやすい。
そして、会社をサッと作ってサッと売るのではなく、じっくりと成長させることを目指すため、トレンドにも左右されにくい。
もしかしたらそんな中小企業的存在が、世の中にとっては良いのではないかというの考え方が、今さらシリコンバレーの一部の人々によって語られ始めている。
皮肉なことに、「スタートアップと中小企業との違い」からもわかる通り、日本国内ではこの中小企業タイプがほとんどで、ベンチャー企業のその多くも実はスタートアップというよりも、中小企業に近いだろう。
現に、世界中を見渡してみても、200年以上続く企業のその過半数は日本企業なのである。
このことからも、日本では、地域密着型の永続性の高い企業が一般的だと考えられる。(参考: 現代における大企業の平均寿命は15年 – 生き残り戦略としてのイノベーション)
シマウマ企業は中小企業的ミッションを持つスタートアップ
この流れを汲み、最近では必ずしも急成長だけを目指さないタイプのスタートアップが出現し始めている。
彼らは、人に、地域に、そして社会にとってより良いインパクトを与えることを最優先し、必ずしも一攫千金だけを狙うわけではない。
短期決戦のハイリスクハイリターンでは無く、長期的に世の中に対して価値のある存在になることを目指す。
そのためには、目先の成長を多少犠牲にすることもある。
ある意味、非営利団体が目指す姿にも似ているかもしれないが、かならずしもそうではない。
スタートアップというからには、拡張性 (スケーラビリティ) は担保しており、小さく始めたとしても、ビジネスを世界レベルにまで拡大するポテンシャルはしっかりと担保する。
そして、ビジネスが成長すればするほど、自然と世の中にも良いインパクトが与えられるようになっており、それがユーザーにも可視化されているのも特徴。
例えば、近いビジネスモデルの競合がいたとしても、潰しにかかるのでは無く、共存共栄を目指す。
ある意味、ユニコーンと中小企業の良いとこどりのハイブリッドである。
こんなシマウマ系のスタートアップの代表は、靴のオンラインストアのZappos, 手作りマーケットプレイスのEtsy, D2CブランドのWerby Parker, Allbirds, クラウドファンディングのIndiegogoなどが挙げられるだろう。
ユニコーンとシマウマの違い
では、スタートアップにおける。ユニコーンとシマウマのコンセプトの違いを図にして表してみよう。
日本の商習慣に共通するシマウマの価値観
上記を見て気づいた方もいるかもしれないが、シマウマが目指す姿は、上方商人の「三方よし」のコンセプトに通じる部分もある。なので、猫も杓子も無理してユニコーンを目指す必要はないのかもしれない。
しかしながら、投資家はまだまだリターン至上主義だったりするのがしんどいところ。
最近日本のメディアでも「日本からユニコーンをどんどん輩出する」といったニュースを見かける事もあるが、本来の日本が名産地であるシマウマの存在も忘れないであげてほしい。
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