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日本で起業家が生まれにくい3つの理由
以前読んだ日経新聞の記事「ユニコーン育たぬ日本 投資家不在、外資頼み」にて、日本では起業家が生まれにくいという統計が発表されていた。それが掲載された記事には下記のように記載されている。
グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)の調査によると、18~64歳で「起業の機会がある」と答えた人は10.6%にとどまった。中国人の74.9%、米国人の67.2%を大きく下回るばかりか、調査対象の50カ国で最下位だった。
日本は世界的に見ても起業家精神が低いらしい
上記の統計からもわかる通り、どうやら世界的にみると日本で起業意識を持つ人の割合は全体の10.6%と、かなり低いらしい。これは結構意外。というのも、日本ではここ数年でスタートアップが盛り上がり、我々が提供している起業家プログラムにもそれなりの人数の方々が参加している。
でもやはり世界全体的には起業家になりたい人たちの割合はかなり低いことが伺われる。これがアメリカだと優秀な人ほど起業する事が多い。
米中では有名大学の最優秀の卒業生は自ら起業するか、スタートアップで働くことを志す。中国では「国も若者の起業を奨励しており、若くして巨万の富を得る起業家は社会から尊敬される。失敗しても大企業に就職してやり直せる」(アジア経済研究所の丁可氏)。
なぜ日本の人たちは起業家になりたがらないのか?
実はこれ「なぜ日本では起業家が少ないんでしょうか?」は btrax がこれまで提供してきた起業家育成プログラム内でも何度か聞かれた質問でもある。
おそらくロジカルな説明としては、南場智子さんが提出された資料にも記載されている下記の状況に起因する部分が大きいと考えられる。
まあ、みんながみんな起業家になるべきとは思わないが、夢を叶えるために起業家になるのも選択肢の一つとして感じられる状態もあっても良いのかなと感じる。
日本で起業家になりたいと思う人が少ない3つの理由
さて、ここからは個人的な見解&本題。日本に行って感じたり、日本の方々とお話して気づいた下記の「3つの事柄」も起業をすることが選択肢になりにくい理由なのかなと思っている。
1. 解決するべき社会課題が少ない
これは日本以外に行ったことのない人にはなかなか気づきにくい点なのであるが、日本はかなりさまざまな部分で恵まれていて、日常生活で不便を感じることが少ない。
例えば、日本で「普通」だと思われている、電気・水道が来る、コンビニがある、バス・電車が時間通り、携帯電波が入る、銀行がある、などなどの社会的インフラは他の国に行くと全く状況が異なる。
こちらアメリカでは99%のエリアで公共交通機関がないし、結構停電になるし、都心から1時間もドライブすれば携帯電波が途切れてしまう。これが東南アジアとかになってくると解決するべき社会的課題は山ほど出てくる。
最近では発展途上国を中心に、それらの改題を解決すべく。リープフロッグ型のサービスを作るべく起業する人も増えてきている。
これが日本だとどうだろうか?あまりにも全てが整いすぎていて、起業する際のアイディアを考える時も “わざわざ” SDGs をテーマに、半ば無理やり頭を捻らなければならない。それも自分自身が体験したことのないような課題を。
そして、国内にはそんな課題はないもんだから、ポテンシャル顧客も少ない。グローバルに展開しない限りは金銭的に大きな結果は望めない。しかし、スタートアップをする際には投資家への還元としてエクジットを見据える必要が出てくるため、自ずと人材紹介系、デジタルマーケティング系、業務系SaaS系、ゲーム系などの「確実に利益が出せる系」のサービスに絞られてくる。
もちろんグローバル展開はしにくくなるし、まだ存在していないタイプのサービスを作る際の独特の興奮も得られない。だから起業するモチベーションも上がりにくくなる。VCからのプレッシャーもあり、結果的に収益重視のつまらないサービスが増えがちになる。
2. 憧れのロールモデルの欠如
先日、グローバル起業家育成プログラムにて、サンフランシスコの日本人起業家の方にゲスト出演をいただいた。そもそも彼がアメリカに来た理由が「憧れの起業家が住んでいる街だから。」だった。
これは一見アホらしいと思われるが、意外と重要なポイント。
そう、サンフランシスコとかシリコンバレーで起業家が多い一番の理由がこれだと思う。それはまるで十代の少年がロックスターに憧れてギターを手に取るように、ここではジョブスに憧れ、ザッカーバーグに憧れ、イーロン・マスクに憧れ、ジャック・ドーシーに憧れて起業家を目指す若者が後を絶たない。
この街には、憧れのかっこ良い存在がいる。それも自分の近くに。同じ街で同じ生活をして、Tシャツ&ジーンズで地元のカフェに行っている彼らが高卒で成り上がり、世界を大きく変えている。そんな思いが少年の心を揺さぶる。
起業家のスタートはそんなシンプルな勘違いから始まることも少なくはない。
そう、起業家にとって「もしかしたら、自分もできるかも?」って思わせてくれる憧れロールモデルの存在はとても重要。
それが日本だとどうなるのか?成功した起業家は雲の上の人となり、ビジネス系のメディアやイベントの高い壇上を下から「俺には無理だなー」って思いながら眺めるしかない。
成功した起業家も、一時的にメディアにてはやされるが、妬まれることも多い。それゆえ、少しでも綻びが見えると、失敗者として徹底的に叩かれたり、偉いおじさまたちに目をつけられる。最悪の場合、イチャモンを付けられ、懲役を食らったりする。そんな報道がされると、親からも「起業家?あんたもあんなんになっちゃうよ」と言われて、やっぱやめとこ、ってなってしまう。
3. 学校教育の問題
最後は最も真面目かつ、根深い教育の問題。一般的に日本の学校教育では、模範解答があることしか教えない。発言するのは答えに自信がある時のみ。テストの多くは選択式。そして成績の良し悪しは周りとの相対的な偏差値で決められる。少なくとも自分の場合はそうだった。
この教え方が起業家マインドとは真逆なのである。
特にスタートアップは、まだ誰もやったことのない内容を通じて世の中の社会課題に取り組むことが多い。それも結構な未来軸で。そうなってくると誰も答えを知らないし、模範解答なんて存在するわけない。もはやマークシートで回答できる内容なんて一つもない。お利口さんでは全く歯が立たない世界である。
一方、日本教育における減点方式、副教科軽視、偏差値、エリート大学至上主義は、オペレーション業務を主軸とした、これまでの大企業にはかなり最適化された人材を生み出す。でも、起業家には最も適していない価値観を植え付けている。
起業家に求められるのは、人と違う視点で、間違いを恐れずに、今までに存在していないようなサービスを作り出し、かなりしょぼい状態でも人々の前に立ちプレゼンする。そして、失敗しても何度もチャレンジするマインドセットだ。これは日本の学校教育で評価される真逆の価値観。
何も、人類を火星に移住させるような壮大な野望を持たせる必要はないが、現在の日本式学校教育が誰も答えを知らない未知の課題に対して、クリエイティブな視点から何かを生み出す起業家を育ててあげることはかなり難しいんじゃないかな、と感じている。
人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える。- 大前研一
ps. 僕も日本にもっと起業家が増えれば良いと思っているので、反論、解決案はWelcomeです。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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