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今さら聞けないスタートアップのピッチの基本
スタートアップの定番といえばピッチだろう。イベントや投資家の前で数分間のプレゼンで自分たちのビジョンを説明し、賛同者を集める。シリコンバレーから始まったこの手法は、今では世界中に広がり、スタートアップの運命を左右する重要なスキルになってきている。
そのやり方やテクニックはいくつかのバリエーションがあるが、基本的な部分は共通している。世の中における既存の課題を説明し、それを解決するためのアイディア、チーム構成、目指す結果などがそれである。
シリコンバレー流のピッチテクニックを紹介
すでにご存知の方も多いかもしれないが、これからスタートアップを始める方や、ピッチの内容を改善したいと思われている方々のために、いま一度ピッチの基本をおさらいしておこう。ちなみに、今回紹介するのはシリコンバレーを中心に活躍するVCであり、友人のEdith Yeungによる内容をベースにしている。
目次:
- まずは投資家が何を求めているかを理解する
- 起業家は何を求めているのか?
- 意外と知らないとても重要な一つのこと
- 最初のピッチでは何を伝えれば良いのか?
- どのような態度で臨めば良いのか
- やってはいけないピッチ内容
- ピッチ後に投資家に対して聞くべき質問
- 最初のピッチの後に送るメールの内容
まずは投資家が何を求めているかを理解する
戦いの基本はまず敵を知ることから。スタートアップピッチの場合、その多くは投資を受けるために行う。であれば、投資をしてくれる人 = 投資家 はどのような会社に投資をしたいと思っているかを理解するのが重要である。
これは意外と見落としがちなポイントであるが、多くの投資家は起業家が気に入ったからと言って投資するわけではない。特にVCの人たちは、預かったお金から何倍ものリターンを出すことを生業としているので、起業家の人柄や事業のビジョンに共感した“だけ”では投資をしてくれない。
では、どのような スタートアップに投資したいと考えているのか?
GAFAの次に来る企業
や
iPhoneの次に来るプロダクト
である。
そう。小さな成功ではなくて、世界のトップ企業にもなれそうな成功からのビッグリターンを望んでいる。この大きな成功は俗にムーンショットと呼ばれる。
起業家は何を求めているのか?
では、逆に起業家側は投資家へのピッチを通じて何を実現しようとしているのだろうか?
まずは、
投資してくれること
そして、
事業の成長を手助けしてくれること
だろう。そう、百戦錬磨のビジネスの先輩からお金をもらい、助けもしてもらう。なかなかの要求なのだ。
意外と知らないとても重要な一つのこと
もう一つピッチに関してとても重要なことがあるので、紹介するそれは。
投資家は最初のピッチだけで投資することは100%ない
ということ。
最初のピッチだけで投資を決めるのは、初対面の人と結婚するようなものだ。投資家と起業家がカップルだとすれば、最低でも数回はデートをしないとその相性はわからない。
最初のピッチでは何を伝えれば良いのか?
ピッチをしたからといっていきなり投資をしてくれないのであれば、最初のピッチではどのように行えば良いのだろうか?
1. 解決するべき課題:
例: Airbnb
- 旅行する人にとって滞在費は重要な課題である
- 多くのホテルの立地ではリアルな街を体験しにくい
- 住宅に滞在する便利な方法がない
2. 作っているソリューションの簡単な説明
例: Facebook
thefacebook.comは、大学でのソーシャルネットワークを介して学生、卒業生、教職員、スタッフを接続する拡大しているオンラインディレクトリです。このオンラインディレクトリは、友達同士の繋がりを可能にし、コースやイントラと学校間のネットワークを含む社会的ネットワーク、および組み込みのメッセージングシステムを持っています。
3. それはどのように機能するのか
簡単なダイアグラムやイラストでプロダクトがどのように動くかを説明する。
例: Castle
4. これまでのトラクション
トラクションとは主にユーザー獲得数などを基準とした成長率。もしすでにユーザーを獲得している場合は、これまでの成長率をグラフで表現することが多い。プロダクトがユーザーに受け入れらえている一つの証明になる。
例: Instagram
5. ビジネスモデル
もしすでに売上の獲得方法がわかっている場合は、その方法をわかりやすく説明する。
例: Airbnb
6. チーム構成
投資をする際に、課題に注目する投資家もいれば、ソリューションを重視する人もいる。しかし、“人”に投資するという考えの投資家も少なくない。ファウンダーをはじめ、どのようなチーム構成なのか、それぞれの実績も含めてピッチに盛り込むと良い。
例: Mapme
7. 競合情報
ユーザーから見て近いサービスを提供している他の企業の名前とそれぞれのポジショニングを提示し、自分たちのユニークさを強調する。
例: Slack
8. アンフェア・アドバンテージ
自分たちにしかできない特別な優位性。特許をとっていたり、特別なコネがあったり、すでに広い認知度があるなど、他の会社が参入しにくい要素を提示する。
9. 追加情報
これら以外に、もし時間の余裕があるのであれば、下記の情報も盛り込むのも良い
- プロダクトのデモ
- マーケットサイズ
- マーケットトレンド
- ユーザーの声
- 利用しているテクノロジー
- 規制や制約事項
- 知的所有権
どのような態度で臨めば良いのか
ピッチを行う際の起業家はどのような雰囲気であるべきなのか?投資家が好感を抱くのは下記の3つのポイント
1. 自信がある
これはプレゼンの神様、スティーブ・ジョブスの雰囲気にも通じる。
2. 有能そう
ハッタリでも良いが、自分たちがやっている事柄に対しての能力が高そうに見せる。
3. 端的に簡潔に
長々と話すよりも短いフレーズでクリアに伝えるのが良い
やってはいけないピッチ内容
では逆にピッチで減点されてしまう内容も見ていこう。
- スライドがないと説明できない
- 90秒以内で説明できない
- 競合を知らない or 競合の存在を隠す
- ユーザー視点が盛り込まれていない
- チームメンバーに自信がない
ピッチ後に投資家に対して聞くべき質問
通常はピッチが終わると投資家から質問を受けることが多い。実は起業家から投資家に質問をするのも全然アリだし、むしろ積極的に質問をした方が印象に残りやすい。
でも、どんな質問をして良いのかがわかりにくかったりする。投資家目線でこんな質問をしてもらっても良いよ、というのは
- 過去12ヶ月で行った投資の数
- これまでに投資した会社の数
- 同じ業界のスタートアップに投資した経験があるか
- 投資決定を行う際の検討要素
- デューデリのプロセス
- ファンドの大きさ
- フォローアップ投資を行うか
- 投資先へ提供できるお金以外の価値
最初のピッチの後に送るメールの内容
ピッチは起業家と投資家の出会いの場である。最初のデートに近い。であれば、それが終わった後に何をするかがその後の関係に重要な影響がある。
話を続けたいのであれば、ピッチの12時間以内に下記の内容を含むメールを投資家に送るのが良い。
- お礼の言葉
- ピッチ資料
- 現在のトラクション状況
- チームメンバーリスト
- 次のアクション
- 希望する投資金額
- 次回のミーティングのリクエスト
スタートアップ起業家に不可欠なピッチ。その秘訣「10/20/30ルール」をシリコンバレー伝説の投資家で友人でもあるガイ・カワサキが説明する。結構古い動画だけど現代でも全く色褪せない内容で、僕が起業家やクライアントにメンタリングする際にも頻繁に引用させてもらってる。必見です。 pic.twitter.com/8eiP2OOuiK
— Brandon K. Hill | CEO of btrax 🇺🇸x🇯🇵/2 (@BrandonKHill) February 5, 2023
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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