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こんなにも違う!スタートアップを取り巻く環境や意識の日米差
2020年から始まったパンデミックで急激に世界が変化した。世界が変化したということは、人々のニーズを反映するスタートアップの分野にも変化が見られるということだ。
しかしその変化の方向も、スピードも国ごとによって異なっている。日米で、トレンドのスタートアップの分野やスタートアップを取り巻く環境が違うことは言うまでもない。
この記事では、サンフランシスコで会社を経営しながら日本のスタートアップにも精通した経営者2名の対話より、日米のスタートアップトレンドの差を見ていく。
本記事は、Skylight America CEO 大山哲生氏と、btrax CEO Brandon K. Hillが登壇したbtrax主催イベント『シリコンバレー発最新スタートアップトレンド 〜世界のスタートアップの今とこれから〜』の内容を基にしている。
このイベントの内容は以下の記事にも記載されているため、より理解を深めたい方は合わせてお読みいただきたい。
2021~2022年スタートアップトレンド徹底解剖!【対談】Skylight America 大山哲生氏×btrax Brandon K. Hill
日本とアメリカのスタートアップの違いとは?
日米の差は、変化への対応の速さ
Brandon
アメリカは、個別のサービスというより、規制やルールが変わらざるをえなくなった時に、その変化が速くて極端な印象がある。ワクチンを例に挙げるとわかりやすいが、開発からリリースまで、5年かかると言われていたものを1年ちょっとで行ってしまった。
コロナのようなインパクトの大きい災害が起こる前は、政府の認可が必要だったものが、いざ災害が起こると、規制を撤廃したり、認可を寛大にしたりする動きが速いと感じる。
一方日本は、外から見ている限り、その辺りはあまり変わっていない印象だ。少し前から「ハンコレス」ブームがあると聞くが、btraxの日本のスタッフによると、結局まだハンコを使っていたり、金融窓口に行かないといけなかったりする現実がある。
アメリカだと金融機関も完全にオンライン化しており、コロナ禍では窓口に来させないよう徹底している。その差からもアメリカの変化の速さを感じる。日本とアメリカを行き来している大山さんのご意見はいかがだろうか。
大山氏
日本とアメリカのコロナの最大の違いは死者数だと考えている。アメリカは死者が75万人、第二次世界大戦よりも多くの方が亡くなっている。日本でもコロナによる犠牲は深刻だが、アメリカと比べると規模は小さく、死者は15000人ほどだ。
人口比率から考えても、アメリカは日本よりも10倍多くの犠牲者が出ている現状だ。ゆえに、コロナに対する捉え方が違う。第二次世界大戦よりも人が亡くなっている状況と捉えれば、規制などと言っている場合ではなく、変わらざるを得ない。
日本がアメリカに追随する、あるいは急激なDX化などに取り残されてしまうといった現象はかなりリアルな話としてありそうだと感じている。社会の状況的に仕方がない部分があるが、その差をいかに埋めていくかも考えていくべきところではないか。
世界的に見ても、日本は規制などを撤廃する基準が厳しいゆえ柔軟に時代に対応することが難しい場面もあるだろう。コロナ禍が収束に向かった後、イノベーションを生み出す準備は怠ってはならない。
日米それぞれの注目されるスタートアップ業界
Brandon
個人的な見解だが、日本以外のスタートアップは、大きな社会課題を解決しようとしているものが多い気がしている。
一方日本のスタートアップを見てみると、注目されている領域は限定的だ。AdTech、HRTech、業務用SaaS(プラットフォーム)、ゲーム系などの4つが収益を出す王道ジャンルで、売り上げを上げるのも上場するのもこのジャンルのビジネスの企業であるイメージ。
この4つしか成功できないような構造が、10年前から変わっていないので、ぼやっとしたつまらなさを感じている。
ビジネスとして成立させるための因子を考えると致し方ないかもしれないが、海外のスタートアップが社会にポジティブインパクトを与えようとしていることを考えると、どうしても差を感じてしまう。
IPOの難易度の差が生むスケールの違い
大山氏
日本は上場前に利益を求める意識が強い。IPOのハードルは日本の方が低いが、融資を受ける観点でスタートアップにも黒字化を求めていく傾向がある。結果的にこれがスタートアップの動きを小さくしているのではないか。
Allbirds(スニーカーのD2Cブランド)は今度上場するが、実はまだ数十億円単位で赤字を出している。日本ではこのようなケースは少ない。逆にアメリカではIPOするときにまだ大規模な赤字である事例はよくある。
そのため結果的に潰れてしまう企業も多いが、それが大化けするケースもある。これは日米のスタートアップの動向として違うところではないか。
Brandon
そもそもエコシステムが違いますね。
シリコンバレーが「スタートアップの聖地」とされているのは上記のような「まずはやってみる」という風潮も相まっているのだろう。
教育系スタートアップの日米差
EdTech領域はオンライン教育プラットフォームの時代
Brandon
Google classroomのような、オンライン教育の文脈のサービスが今年のトレンドとして挙げられる。例えば、Enlightという学校の先生向けのサービス。生徒とのコミュニケーションや宿題に関してのフィードバック、採点等をクラウド上で行うものだ。
日米の違いとして、アメリカは先生の采配でこのようなツールが使える一方、日本は教育委員会など政府機関がシステムを定めているケースが多いため、テクノロジー系のプラットフォームの導入はまだまだ敷居が高いのが現実。しかし、なかなか面白そうなサービスだ。
注目のメタバース、シリコンバレーではどう見られている?
メタバース含め、バーチャルテクノロジーが話題になっている現在。シリコンバレーの現状は?そして今後、日本のバーチャルテクノロジーはどうなると予想するのか。
メタバースが目指すのは「時間軸の逆転」
Brandon
アメリカだとほとんど全てがリモートになっているので、バーチャルワールドのニーズが極端に上がり、リアルに必要になってきていることは理解できる。
その一方で、本当にそんな世の中になるの?という懐疑的な部分も残っている。
しかし、スタートアップというのは、10人中の1、2人の「いいね」に対して賭ける世界なので、強烈にそちらに振り切っている会社、人々は実際いると思う。
大山氏
メタバースについて話す時には、単にバーチャルにしようということではなく、時間軸という概念を考慮する必要がある。
メタバースが目指していることは「時間軸の逆転」。すなわちリアルの世界で生活している中でバーチャルの世界がある、と言う構造ではなく、バーチャル世界を起点に世の中が進んでいき、リアルの世界がバーチャル世界に付随するという構造だ。
メタバースが前提とする世界では、現実世界でなくバーチャル世界で洋服を買うといったFortniteのような購買行動が発生するが、その原資となるお金自体をバーチャル上で稼ぐ、ということがより一般化していくことが予想され、それなりに行動がバーチャルで完結し始めるのが特徴で、アメリカでは既に10~20代を中心に実際に起こり始めている。
では、日本がここの領域に入っていくのかというと、「オタク」「引きこもり」といったようなラベルがついてしまう社会的土壌が存在するので、受け入れられる概念かどうかはいまだ懐疑的だ。
Brandon
アメリカでは、仮想世界ビジネスはかなりの経済規模を誇っているので、注目しない理由はない。これは実はインターネットが出てから30年間くらい、出ては消えを繰り返している。
最近やっと上場企業や売上を上げている会社が出てきているのを見ると、ついに到達してきたか、という感じがする。
メタバースと聞くと、まだどうしてもゲームや映画の中の世界というイメージがある方もいらっしゃるかもしれない。しかし最近になって、仮想空間での会議など、ビジネスの場面で使われることもあるメタバース。
まさに、リアルとバーチャルの世界が逆転するまでに進んでいる領域である。
おわりに
日本とアメリカではスタートアップに対する捉えられ方も、取り巻く環境も異なることがお分かりいただけただろうか。この記事がアメリカへの市場開拓を試みている方や、海外向けの事業開発を試みている方の一助になれば幸いだ。
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