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ヒットサービスに重要なのは “革新的アイディア” ではない!?
「めっちゃ良いアイディアだね。今までにも同じようなの5回ぐらい聞いたことあるけど」
先日行われた起業家向けのメンタリングセッションで伝えた一言。画期的なアイディアだと思っても、すでに他の人も同じようなことを考えているケースは少なくない。
こんな感じで新規事業を考える際のアイディア出しに関してのアドバイスを聞かれることが多い。
特に、デザインスプリントなどのワークショップなどでは短時間に複数のアイディア出しをしなければならないので、行き詰まった際の打開策を知りたいという声も少なくない。
しかし、ぶっちゃけアイディア自体はあまり重要ではない。ヒットを生み出すにはアイディアよりも、もっと重要ないくつかのポイントがあるので紹介したい。
人気サービスの共通点
では、どのようなポイントがアイディアよりも重要になってくるのだろうか?現在世の中で多くのユーザーに利用されているサービスが作られてプロセスにはいくつかの共通点がある。
- 解決しようとしている課題がクリアになっている
- 課題解決に利用できるテクノロジーを理解している
- 課題に向き合いつつも必要に応じてピボットする勇気がある
- とりあえずリリースして徐々にクオリティーを高めていく
アイディア一発で成功できるほど甘くない
誰もが知りたがる「これから来そうなアイディア」自体には実はあまり大きな価値はない。一方で、短期間で急成長し成功してるスタートアップを外側から見ると、どうしてもアイディアが重要に思いがちになってしまうのも事実。
しかし、実際現場を見てみると「一夜にして成功」しているような会社でも、実はかなり長い時間をかけて試行錯誤している事がわかる。
その証拠にAirbnbのファウンダーの一人は起業家に対して下記のようにアドバイスをしている。
“現在は順風満帆に思われる私たちですが、それまではすごく長い道のりでした。これから起業する人や今起業している人にアドバイスしたいのは、起業してビジネスをするというのはマラソンのようなものだということです。
一定のペースを保ち、長い目でゴールを見る。短期決戦というわけにはなかなかいきません。短いスパンで何かうまく行ったと思っても、続かないのです。
逆に最初はうまく行かないと思っても、長期的なスパンで考えればその先に成功があるかもしれません。起業を短期的に捉えるのではなく自分たちのペースでやっていく、ということが大事だと思います。”
「一瞬のひらめき症候群」が後を絶たない
それでもどうしても多くの人は稲妻に打たれたような、”一瞬のひらめき”を追い求めてしまいがちだ。
ニュートンがリンゴの木の下で万有引力を発見したり、お風呂に入っている時、水が湯船からあふれるのを見てアルキメデスの原理が発見された瞬間だったりを。
このようなストーリーは魅力的に感じてしまうだろう。でも、実際そんなことはほとんど起きない。闇雲に道を歩けばアイディアに当たるなんてことはない。
そもそも、自分では考えもしなかったような課題に対してのアイディアをある日突如ひらめくことはありえない。逆に、一つの問題を解決しようと日々努力している人こそが、解決策にたどり着く。
この点においては、エジソンが最適なフィラメント素材にたどり着くまで2,000個の素材を試した事例が参考になる。
また、アインシュタインは問題解決のヒントを下記のように発言している。
もし問題を解くために1時間あったとしたら、おそらく最初の55分は何が問題であるかを見つけ出すことに充て、残りの5分で答えを導き出すであろう
そう、彼も完全にソリューションよりも課題にフォーカスを当てることをお勧めしている。
じゃあどうやって革新的なビジネスを作るのか?
そんなことを言ったって、ヒットするサービスを作り出すには何かしらのアイディアは必要になってくる。そうでない場合でも少なくとも、既存のソリューションに対しての改善アイディアぐらいは持つべきだろう。
じゃあどうやってやるの?
という疑問が出てくる。一つの答えは、アイディアは突如天から降ってくるものではなく、アクションを起こし続ける過程で生まれるというということ。
そのアクションは常に解決するべき課題に紐づいており、その課題がより明確に定義され、フォーカスがしっかりと定められていればいるほど良い。
方法1: 課題をできるだけクリアにする
以前の人気記事 「ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決」でも “ソリューションやなくて、問題定義の方で差別化するねん” と記されているように、問題定義にフォーカスするには非常に大切。
解決するべき課題をしっかりと定義し、その範囲をしっかりと定める。そして、それに対しての共感を得ている必要がある。
例えば、まだ誰も発明していない特許を3つ考えてみよう。
おそらくかなり難しいと思う。
では、座ったまま背筋を伸ばすエクササイズを3つ考案してみよう。
今回はずっと楽に思いつくと思う。
なぜか?「特許を取得する」という課題定義があまりにも広範囲で、制約や定義がない。そして、特許を取ることに対しての共感と理解もまだまだ足りないだろう。このような一般的な問題の解決策を考えるのは非常に難しい。
一方で「椅子に座り続けて背中が痛い」という課題が明確に定義され、その当事者になった事があるので、新しいアイディアを思いつくのは格段に容易になる。
ここでわかるのは、必ずしもアイディア自体が革新的である必要はなく、それよりもより具体的な課題がクリアに定義されている方が正しいソリューションへの近道になるということだ。
方法2: 課題解決に利用できるテクノロジーを理解する
解決するべき課題がクリアに定義した後は、それを解決するのに利用できる「ツール」に関しての理解を進めること。ここでいうツールとは、テクノロジーのこと。そして、どれとどのテクノロジーをつなげると何ができるかをしっかりと勉強する。
明確に定義された問題を解決するためには、どのような技術が利用可能で、それぞれが何ができるのかを知る必要がある。
最近は誰でも多くのメディアから情報を得ることができるので、テクノロジーを理解することはそれほど難しくはない。
もっと重要なのは、複数のテクノロジーをどのようにつなぎ合わせて、ソリューションを編み出していくかという部分。それはまるで複数あるLEGOブロックのどれを使ってどのような家を作り上げるかに似ている。
この辺はイーロン・マスクが最も秀でている能力の一つだろう。
方法3: 課題に向き合いつつも必要に応じてピボットする
アイディアは生き物である。そう、一つのアイディアを思いついたらそれを成長させ、必要に応じて方向転換させる必要がある。なぜなら世の中もユーザーも生き物であるから。
そして、一つのアイディアからは10も20も異なるサービスの形を生み出すことができることを知っておこう。
そもそも「アイディアがある」と思っても、それだけで課題の解決策になることは非常に珍しい。
アイディアは旅の始まりに過ぎない。旅が続けばどんどんアイディアは具体化されている。その結果、進化していき、最終的なソリューションにたどり着く。
その旅は課題仮説、POC、MVP、α版、β版のプロセスを通じ、ユーザーからのフィードバックを得ながら常に課題とのズレを調整し、時には大きな方向転換 = ピボットを経て、より精度の高いサービスに昇華されていく。
したがって「素晴らしいアイディア」にこだわるのではなく、あくまでそれは小さな一歩であると認識しておいた方が良い。
実に、現在多くのユーザーに利用されているサービスも最初は小さな一歩を踏み出していた。例えば:
- Amazon: 本だけの通販
- Netflix: DVDの配送レンタル
- Uber: リムジン利用アプリ
- YouTube: 出会い系
- ティファニー: 文房具
方法4: とりあえずリリースして徐々にクオリティーを高めていく
我々を取り巻く環境は常に変化し続けている。今年だけでもあまりにも多くの事柄が起こり、人々の生活に影響を与えている。
企業活動一つ取ってみても、経済危機、パンデミック、テクノロジーの進化、競合他社からの挑戦、新しいデバイス、エンドユーザーの要望の変化などなどの変化が常に起こっている。
これらの変化は新たな問題を常に生み出していると考えても良い。問題の変化のスピードが上がれば上がるほど、それに対応する解決策も機敏である必要が出てくる。
特にテクノロジーが急速に進化している現代では「素晴らしいアイデア」の賞味期限は短い。
タイミングを逃さないためには、まず小さな一歩を踏み出す勇気を持って、サービスをリリースすること。
そして、ユーザーからの反応を見ながら徐々にアップデートを通じてクオリティーを上げていく。そうでもしないと変化のスピードについていくことはできない。
アイディアよりも実行を
「素敵なアイディア」ばかりをずっと出し続けている人もいる。そんな人に会うたびに「アイディアは良いからさっさと作りなよ」と思ってしまう。
世の中では、「先に考えた人」よりも「先に出した人」の方が100%評価されることを考えると「あれ、俺も考えていたんだよ!」というコメントは、残念ながら全く意味がないのだ。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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