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リフレーミングとは? – ヒットの秘訣は問題へのアプローチの仕方にある
イノベーションとは何なのか? 多くの人が技術革新やテクノロジー的な進歩だと思っているだろう。しかし、根本部分は全く異なる。
革新的な要素はイノベーションの一部であるだけで、本質的部分な要素ではない。
むしろ技術の進化はイノベーションを生み出すための小さな要素の一つにすぎず、地味な改善はイノベーションとは対局に位置する。
例としていくつかイノベーティブなサービスを例に考えてみよう。
UberやAirbnbに代表される様なシェアリングエコノミーサービスは破壊的イノベーションと呼ばれ、既存の仕組みをことごとくひっくり返している。
Amazon Goはレジ無しでの買い物やユーザーに最適なエクスペリエンスを提供する全く新しいタイプの店舗。Teslaは自動車というよりも4つのタイヤとハンドルが付いているスマートフォンに近い存在。
ポイントは「改善よりも全く新しいアプローチ」
これらのプロダクトやサービスに共通しているのは、既存のモノの改善ではなく全く新しい視点から生み出されたコンセプトと言っても過言ではないだろう。
改善を繰り返し品質をアップすることで顧客の信頼と満足を確保してきた20世紀的ビジネスモデルはそろそろ終わりを告げ、これからは全く新しいアプローチでの問題解決やニーズの掘り起こしができるサービスにどんどん人気が集まっている。
そしてその中心はアメリカ西海岸になっている。
その一方で、最近の日本企業からはなかなかイノベーティブな製品が生まれにくくなっているのも、技術力というよりも発想力の足りなさに起因するだろう。
一方で、アメリカ西海岸地域ではスタートアップを中心に、世の中の常識を覆すようなプロダクトやサービスを考える際のアプローチの仕方や、ものづくりにおけるプロセスそのものがイノベーションを生み出す源泉となっている。
重要なのは解決策よりも問題自体の再定義
私が代表を務めているbtrax (ビートラックス) が提供するサービスでは、デザイン思考やサービスデザイン、リーンスタートアップなどの手法を用いて、様々な問題に対して新しい視点からの解決方法を生み出している。
そのプロセスの中の一つに「リフレーミング」という手法が用いられている。
これは、問題だとされる仮説に対して様々な方法でアプローチし、異なる解決方法を見つける方法。
新しいサービスを考える際や既存のサービスの転換期などでサンフランシスコやシリコンバレー地域のスタートアップ企業では一般的に用いられている。
「リフレーミング」のフレーミングとは、写真などを飾る際のフレーム (額) を動詞にし、それに「再」の意味の「リ」をつけることによって、問題を「再定義」するという意味。
重要なポイントは、あくまで答えを見つけ直すのではなく、「問題」自体を見直す所にある。
答えよりも問題にフォーカスを当てる
例えば、下記の答えは何であろうか?
5+5 = ?
おそらくほぼ全員が「10」と答えるはずだ。なぜならそれが唯一の答えであるから。
ではこの場合はどうであろうか?
? + ? = 10
1+9, 2+8, 3+7, 4+6, 5+5… などが思いつくだろう。これだけだろうか? 10+0もありかもしれない。
しかし実はマイナス値や小数点を含めるとその組み合わせは無限大にある。
ここでは何が重要かというと、たとえ答えが一つであったとしても、その答えに辿り着くためのプロセスは複数あるということ。
例えユーザーのニーズが1つだったとしても、それを解決する方法は一つではない。
答えよりも問題にフォーカスを当て、それをリフレーミング (再定義) することにより、様々な角度から問題提起を行うことができるということだ。
従って、リフレーミングの手法では答えよりも問題の方にフォーカスが当てられる。

答えよりも問題をどう捉えるかが重要
かのアインシュタインも生前下記のように発言している。
“もし問題を解くために1時間あったとしたら、おそらく最初の55分は何が問題であるかを見つけ出すことに充て、残りの5分で答えを導き出すであろう”
重要なのは答えではなくて、問題が何であるかという”本質”を見抜くことにある。
問題の再定義を行なったコロンブス
アメリカ大陸を発見したことで有名なコロンブス (本人はインドだと思っていたが) もリフレーミングの手法を用いてインドに早くたどり着く方法として、地球の裏側を通る作戦を思いついた。
思いもつかない奇抜なアイディアの発想を意味する表現として”コロンブスの卵”という表現がある。
これは、誰が卵を立てられるかのゲームをしていた際にコロンブスが卵をテーブルに叩きつけ、下の部分を潰すことで立たせたという話が元になっているが、これもリフレーミング。
卵を立てるのが目的であるが、その方法を固定概念にとらわれずに再定義したことによる発想である。

問題の解釈を変えて答えを導き出したコロンブス
リフレーミングから生み出された数々のプロダクトたち
このリフレーミングの手法を上手に活用したプロダクトをいくつか紹介する。まずは自動車。フォードの創始者であるヘンリー・フォードは生前下記のように語っていた。
もし消費者の声を聞いていたならば、私は今頃速い馬車を作っていただろう
これは消費者が既存の“馬車”という移動する際の解決策にフォーカスを当てているので、より速く効率的な移動手段として改善された馬車の域を超えることがない。
それに対してフォードは、“より速く効率的に移動したい”という問題にフォーカスを当て、リフレーミングし、再解釈した。
そこで別に馬車にこだわる必要はないと気づき、新しい移動手段としての自動車という答えにたどり着くことができた。

馬車にフォーカスを当てなかったヘンリーフォード
Twitterもリフレーミングから生み出されたプロダクト
最近ではツイッターが良い例であろう。
以前に同社のサンフランシスコ本社オフィスにてファウンダーの一人であるビズ・ストーンと話をしたことがあるのであるが、ツイッターが目指したのはジャーナリズムの変革。
より透明性と中立性の高いメディアを作ることであると同氏は語っていた。
当時はユーザーが情報を気軽に配信するプラットフォームがあまりなく、多くのニュースや情報は主要メディアチャンネルを通じて届けられていた。
しかし、その内容のリアルタイム性と中立性が低く、より人々”生”の声を世の中に伝えるためのメディアとしてツイッターが存在している。
もし彼らが「メディアからのコンテンツのクオリティを上げる」という答えだけにフォーカスをしていたとしたら、既存のメディアを改善するためのサービスにフォーカスしてしまっていただろう。
しかし、「中立性の高い情報がリアルタイムで伝わってきていない」という問題にフォーカスを当て、それを再定義 (リフレーム) することにより、それを達成するための新しいメディアとしてツイッターが生まれた。
学校のテストでも答えは複数あるべき
日本での一般的概念ではどうしても答えは一つと考えてしまいがち。
おそらくこれは日本の学校教育に原因があると思われる。マークシートや模範解答に代表される様に、常に答えは一つだと思いがちである。
しかし、実社会では答えが一つしかないケースの方が少ない。真実だって、その見方によっていくつもの見解があるだろう。
以前にFacebook上で下記の質問に対する中学生の答案がアップされていた。
I go to Tokyoの過去形を答えよ。
もちろん答えはI went to Tokyoなのだが、その生徒はこの様に答えた。
I go to Edo
その答案では不正解になっていたが、これこそ問題の再解釈の模範例として大正解にするべきではないかと思う。
リフレーミングを題材にしたアメリカンジョーク
もう一つリフレーミングに関するストーリーを紹介したい。とある人が道で犬を散歩していた。反対側から警官がやってきて下記のやりとりが始まった。
警察官: 君の犬は噛むかい?
通行人: いいえ
警察官: [犬を撫でる] いい子だね。
[犬が警察官の手に噛み付いた]
警察官: 噛まないって言ったじゃないか!
通行人: これ、私の犬じゃないんです。
実にくだらないジョークであるが、これも問題自体にフォーカスを当てると納得ができる。
柔軟な発想で問題を再定義することでイノベーションが生み出される
これらのように、イノベーションは既存の解決策の改善や技術革新ではなく、問題自体を再定義すること = リフレーミングを行うことで生まれているケースが多い。
日本の社会の場合では、ついつい答えは一つと思ってしまいがちであるが、そんな時はぜひ今一度問題自体にフォーカスを当て、リフレーミングすることで新しい発想を導き出すことができるかもしれない。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.