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なぜスタートアップに優れたデザインが不可欠になっているのか
テクノロジーオリエンテッドからデザインオリエンテッドへ
デザイン性の高いプロダクトへの人気が急激に高まっている。
一昔前は難しいテクノロジーを活用し、今までにできなかったことを提供するだけで話題になったが、技術が成熟してきたことにより差別化ポイントがデザイン性の高さに移行してきたと言える。
同じようなプロダクトでも、見た目やユーザー体験が高い方が圧倒的に有利なのは、感覚的にも分かるだろう。むしろ、機能過多になるより、シンプルでわかりやすい方が、ユーザーにとっては、よっぽど価値が高い。
プロダクトの差別化要因はデザイン性
アメリカ西海岸では、このデザインの重要性は常識であり、ビッグテックは当然のことながら、アーリーステージのスタートアップでも、最重要項目の一つになっている。
例えば、UberとLyftの違いは? AppleとSONYの違いは?インスタとTikTokの違いは?という問いに対してのその答えの90%以上が、技術力よりもユーザー体験にひもづくはずである。
全く同じコンセプト、技術を活用したプロダクトであったとしても、UIのクオリティやユーザビリティの差でユーザーから得られる評価が大幅に異なる。それによってそのプロダクトや会社が成功するかが大きく異なる。
デザイン競争は、それは「誰が先にユーザーの心を掴むか」の競争でもある。
世界のトップ企業もデザインを最優先
シリコンバレー地域のビッグテック系企業は、上場しているが、事業戦略、展開スピードにおいてはまさに「スタートアップ」と言えるだろう。
その勢いはどんどん加速し世界規模で様々な業界を飲み込み始めている。正直、客観的に見てみても、日本の企業が束になってかかっても、彼らに勝てる見込みは非常に少ない。
その理由の一つが、デザイン的品質の違いだろう。Eコマースサイトひとつとってみても、日本を代表する某市場と、Amazonでは、やはり体験の質が違う。
21世紀ビジネスに不可欠な三種の神器
では、無敵モードのこの4社の共通点とは何か。恐らく彼らは現代ビジネスにおける「三種の神器」を共通して持ち合わせているということであろう。その3つのアイテムとは:
- ユーザー
- ユーザーデータ
- ユーザー体験
である。この3つに共通するのは「ユーザー」が中心になっているということ。
技術やコンセプト、ビジネスモデルよりもまずはユーザーのメリットを最優先に考えることで膨大な数のユーザーを獲得し、そこから得られるデータを元にユーザー体験を改善する。
まさにデザイン思考のプロセスをビジネスに活用することで急激な成長を維持している。
スタートアップ企業が爆速でデザイナーを採用中
もちろんAppleは創業当時からであるが、世界最高のテクノロジー会社のGoogleも、今となってはデザインを最重要視してる。それに伴い急激なスピードでデザイナーの採用やデザイン会社の買収を進めている。
例えばFacebook, Google, Amazonは年間でデザイナーの数を65%増やしている。
ちなみにここでいう「デザイナー」とは見た目を綺麗にするだけではなく、ユーザーニーズを見定め、それをプロダクトに反映できるタイプの新しいデザイナーであり、役職としてはUXデザイナーやサービスデザイナーを指す。逆に既存のグラフィックデザイナーのニーズは下がっている。
プロトタイピングツールの普及によるデザイナーの活躍
デザイナーの重要性が高まっている背景にプロトタイピングツールの普及があるだろう。これまでプロトタイプを作る際にはある程度エンジニアが”ゴリゴリ”コーディングをする必要があったが、 様々な便利ツールの出現により、コーディングをあまりしなくてもそれなりに「動く」プロトが作れてしまう。
言い換えると、ツールを使いこなせるデザイナーがいれば、コンセプトデモぐらいはサクッと作れる時代になった。
ちなみに上記のツールの多くがクラウドサービスであることから、デザイナーとエンジニアのコラボレーションがよりしやすくなっていることにも注目したい。デザイナーの仕事がエンジニアが作ったプロダクトの”見た目”の改善から、プロダクトの根幹部分の設計にまで携われるような環境が整いつつある。
デザイナー出身の創業者が大活躍
“スタートアップ”と聞くとその創業者はエンジニアであることがイメージされる。いまだにそのケースが一般的であるが、自分自身もそうだった様にこれからはデザイナーが起業するのが一般的になる。
むしろデザイン系のバックグラウンドがあることがスタートアップを成功に導く一つの武器になるであろう。
なぜか?プロダクトづくりを行う前にユーザー理解を行うことが重要であるからである。とりあえず作ってとりあえずリリースしてそれを改善、といったリーン型アジャイル開発も悪くはないが、ユーザーのニーズを理解しないままで使いにくいプロダクトをいくらリリースしたところで良い結果は得られない。
逆にニッチでも良いのでユーザーニーズを的確に定め、最適なエクスペリエンスを提供できるタイプのプロダクトの方が人気が高まるだろう。
TwitterだってSnapだってInstagramだって作るのはそんなに難しくない。重要なのはどのような体験をユーザーに届けるかである。そこにデザイナーがいるかいないかが勝負の分かれ目になってくる。
そんな時代背景もあり、最近ではデザインバックグラウンドを兼ね備えた創業者の会社が大きな活躍を見せている。ユーザーが「心地よい」と思うサービスの裏にはデザイナー創業者の存在があるだろう。
参考: 創業チームにデザイナーがいる代表的なスタートアップ
- Airbnb
- Square
- X (Twitter)
- DropBox
- Alibaba
- Xiaomi
- YouTube
- Behance
- GitHub
VCもスタートアップのデザイン性を重視
そしてこのデザイン優先トレンドは投資側にも広がっている。投資する側も投資先のスタートアップのプロダクトのデザイン性や、チームメンバーにおけるデザインバックグランドを重視する傾向が見られる。
近年投資を受けたスタートアップのうち1/3以上が創業チームにデザイナーが存在し、グローバルユニコーン企業の20%以上がデザイナー創業者のスタートアップである。
また、Designer Fundに代表されるように、著名デザイナーが投資家になったり、VCがデザイナーをパートナーとして招き入れたりなど、その動きは激しい。
大きな理由として、スタートアップを評価する際に財務資料などに掲載されている数字では測れない価値を定めることができる能力が重要になってきているからである。
そもそもスタートアップはその企業の「未来」の価値に投資するわけで、未来を作る人 = デザイナー的観点から物事を見れる人が重要になるのは当然なのである。
参考: スタートアップのデザイン性を重要視するVC
- 500 Startups
- a16z
- Bloomberg Beta
- Collaborative Fund
- Cowboy Ventures
- Designer Fund
- Homebrew
- Kapor Capital
- KPCB Edge
- Rivet Ventures
- Slow Ventures
- Y Combinator
- Accel Partners
- Bessemer Venture Partners
- Google Ventures
- Greylock Partners
- Khosla Ventures
- Kleiner Perkins Caufield & Byers
- New Enterprise Associates
- Sequoia Capital
- True Ventures
- Backstage Capital
- Initialized Capital
出展: Design in Tech Report
デザイナーのいないスタートアップは絶対失敗する
このように、デザインやデザイナーの重要性は大企業や広告業界だけではなく、新しく立ち上がるスタートアップにおいても拡大している。むしろスタートアップだからこそ、デザインを最優先したプロダクトづくりを行うことで既存のサービスとの差別化を生み出すことができると考えられる。
人もお金もリソースも足りない状況でも、デザインの力を武器にすれば巨大な権力にも立ち向かえる。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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