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【デザイン × 経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家
私たちの生活の中にはスタートアップによって生み出されたサービスが溢れている。TwitterやAirbnb、YouTubeはその一例だ。これらのサービスを今まで一度も使ったことが無い人が居れば、逆に興味深い。それくらい世の中へと急激に浸透した。
そんな上記の3つのスタートアップに、ある共通点があることをご存知だろうか。それが「創業者がデザインバックグラウンドを持つ」という点である。
「デザイナーがビジネスを興すなんて。」そんな風に思う人も居るかもしれない。しかしデザイナーが起業することはむしろ自然な流れだと言って良いだろう。なぜならスタートアップは「ある問題を解決する」というところから始まる、と同時に私たちbtraxの定義するデザインの意味は「問題解決」であるからだ。
これらのスタートアップの急成長はビジネス的に解く価値のある問題に対してデザインプロセスが大いに有用だということの証明でもあるだろう。
そこで今回の記事では、デザインバックグラウンドを持ちながら起業し、成功した人物を7人紹介したい。
Brian Chesky / Joe Gebbia
Airbnb
デザイナーが立ち上げた会社としておそらく一番有名なのが「Airbnb」だろう。「Airbnb」とは世界中の人と部屋の貸し借りが出来るコミュニティー・マーケットプレイスだ。今や旅行を決めたらまず訪れるのはホテル比較サイトではなく「Airbnb」のウェブサイトという方も多いだろう。
創業者のBrian Chesky / Joe Gebbia / Nathan Blecharczyk のうち、Brianと Joe は RISD(リズディ:ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)出身のデザイナーである。美大のハーバードとも呼ばれる有名校であるRISDで出会った2人に、本家ハーバード大学でコンピュターサイエンスを学んだNathanが加わり、「Airbnb」は生まれたのだ。
「Airbnb」はUberらと共に、近年最も注目されているシェアリングエコノミー市場を確立した。彼らは「信頼関係のデザイン」によって、「現地の人の家に泊まる」という今までにない体験を実現したのだ。
この体験設計は創業者がデザイナーだったからこそ実現出来たということに疑いは無いだろう。詳しい内容は以前の記事(デザインがビジネスに与える影響 〜収益週200ドルのAirbnbが急成長した秘訣とは〜)にて。
Evan Sharp
引き続きメガSNS時代が続く時代に、特にデザイナーから圧倒的な支持を得るSNSがある。それがここサンフランシスコ発の「Pinterest」だ。
まるで写真をアルバムに貼っていくように、ネットで見つけたお気に入りの写真を保存、分類、共有することの出来る「Pinterest」の魅力は何と言ってもそのデザイン性。ファッション雑誌のようなインターフェイスは多くのデザイナーをユーザーとして獲得してきた。
そんな「Pinterest」の共同創業者であるEvan Sharpもデザインバックグラウンドを持ち、「デザイン経営」を実践する1人。
コロンビア大学院で建築を学んだ後に、Facebookでデザイナーとして活躍してたEvanは、勤務時間外の空いている時間にあるサービスを仲間と作っていたという。そのサービスが後に「Pinterest」となったのだ。
Chad Hurley
YouTube
もはや我々の生活になくてはならないサービスとなった「YouTube」。「YouTuber」と呼ばれる新しい職種をも生み出し、小学生のなりたい職業ランキングにランクインしていることはご存知の方も多いだろう。
また今や大手企業でYouTube上でチャンネルを持っていない企業を探す方が難しくなった。大人から子どもまで、非常に馴染みの深いサービスであることの証明である。
そんな「YouTube」の創業メンバーの1人もデザイナーである。共同創業者のChad Hurley は大学で美術を専攻した後、「YouTube」の立ち上げ前まではPayPal でデザイナーとして活躍していた。
Paypalのオリジナルのロゴは彼によるデザインだ。その後、PayPalでの同僚であった、Steve ChenとJawed Karim と共に「YouTube」を立ち上げたのだ。
「YouTube」誕生のきっかけはあるパーティーでの出来事だという。ある日ChadはSteveと共に自宅でパーティーを開いていた。そのパーティーでビデオ撮影をしていChadはそれを参加者全員に送ろうとしたのだが、彼のビデオは高性能だったが故に容量が多く、何度やってもエラーになってしまったという。
そんな問題を解決するために、ウェブサイト上で動画をシェア出来るようなサービスを思いついたのだ。もし彼がそのパーティーで動画撮影をしていなかったらそんな問題にも気付かなかっただろう。
そして仮に同じ問題に気付いたといたしても、彼がデザイナーでなければ、ここまで成長するサービスになっていなかったかもしれない。
YouTubeが爆発的に普及した2006年に執筆されたTime誌の記事によると、世の中に受け入れられた理由は「簡単さ」と「格好良さ」のバランスが良かったことだったという。
さらに、「必要な動画はそこに存在しており、ユーザーはそれを探すだけ」という体験は、まるで大型スーパーマーケットを訪れる体験を想起させた。これらはデザイナーだからこそ設計出来た体験だろう。
余談だが、この頃のPayPalには今や世界を代表する起業家が多く在籍していた。
TeslaやSpace Xの創業者であるElon MuskやLinkedinを作ったReid Hoffmanなど今のスタートアップ業界の重鎮たちが多数。彼らはPayPalマフィアと呼ばれている。もちろん、「YouTube」を立ち上げた3人もそのメンバーだ。
PayPalマフィアたち 世界を代表する起業家たちであることに気が付く
Stewart Butterfield
Flicker / Slack
オンライン写真の保存・共有サービスの草分け的な存在である「Flickr」 。すべての写真をクラウド上で管理し、友達同士でフォローし合うことでタイムライン上に表示される仕組みは今でこそ見慣れたものになったが、誕生当初は画期的であった。
競合であったSmugMugに買収されるなど、FacebookやInstagramの勢いに押されて衰退を余儀なくされたが、「Flickr」は写真共有サービスというジャンルを築いた会社であることは間違いない。
また、企業向けチャットツールの「Slack」。ベイエリアでは導入していない会社を探す方が難しいほど普及率の高いチャットツールだ。
その魅力はなんと言っても「手軽さ」と「便利さ」で、業務効率を上げたければ何をするよりもまずSlackを導入しろ、という声があがるほど。最も成長速度の早いスタートアップだと言われており、デイリーでのアクティブユーザーは800万人、課金ユーザーも300万人にも及んでいる(2018年現在)。
「Flickr」と「Slack」、この一見何の関連性のないサービスの共通点は何か。それはどちらのサービスもStewart Butterfieldという男が創業者であるという点だ。そしてそんな彼もデザインバックグラウンドを持つ経営者である。
特に「Slack」で実現した「ビジネスコラボレーションハブ」としてのチャットツールのデザインは、UXの観点から見ても非常に優れている。
メールよりも簡単で、Lineよりもビジネスマンにとっては使いやすいUIと高い機能性は「Slack」を使ったことがある人は誰しもが頷いてくれるのではないだろう。
David Karp
Tumblr
手軽におしゃれなブログを楽しめると特にアメリカの若者の間で人気なのが「Tumblr」。
デザイン性に加え、リブログというTwitterでいうところのリツート機能をブログにも持ち込んだことで話題となり、一時期はブログもTwitterも「Tumblr」のせいで衰退してしまうのではないかという声も上がったほどのサービスだ。
2013年に米Yahoo!に11億ドル(約1200億円)で買収されてからはパッとしないが、未だに根強い固定ファンがサービスを支えている。
直感的にわかりやすい「Tumblr」のインターフェイス 「手軽さ」と「おしゃれさ」を兼ね備えたデザインだ
そんな「Tumblr」を作ったのがDavid Karpだ。彼の経歴は有名創業者の中でも一際ユニークである。幼い頃からHTMLを学び、なんと11歳でビジネス向けのウェブサイトを立ち上げたのだ。
そして14歳時には、ニューヨークを拠点とするアニメーションスタジオでデザイナーインターンとして働き初めている。その後高校を中退し、子育てサイトサービスの責任者になると、同会社が買収されたことをきっかけに独立。
ソフトウェアコンサルティングの会社を経て、「Tumblr」を創業する。デザインだけではなく、ビジネス・テクノロジーの知識も備えたまさに「天才」であると言えるだろう。
Jack Dorsey
Twitter / Square
Jack Dorseyはべイエリアで最も著名な起業家の1人だ。SNSサービスの「Twitter」とモバイル決済サービスの「Square」を創業した彼の名前は、たとえ起業やスタートアップに興味がなくとも一度は聞いたことがあるのではだろうか。
今では起業家としての側面が強い彼も、「Twitter」を始めた当初は実はファッションデザイナーになりたかったという。
結局ファッション業界へと進むことはなかったが、PradaやDior Hommeのスーツ、そしてRick Owensのレザージャケットを愛する彼のコーディネートから溢れる美意識は、Tシャツにジーンズの多いシリコンバレーの起業家の中で一層際立っている。
彼のコーディネートはメンズファッション雑誌GQにも取り上げられるほど
厳密にはデザイナーではないJack Dorseyであるが、昔からデザイン思考実践者だったという意味ではビジネスにおけるデザイナーの考え方の重要性を理解していたといえる。
デザイン思考の重要性を伝える1つの要素としてあげられるプロトタイプの実用例は彼の作った「Square」を用いて説明されるとわかりやすい。
btraxのSFオフィスから歩いて5分ほどのカフェでナプキンに書かれたこのペーパープロトタイプが「Square」の一番初めのプロトタイプと言われている。1枚のナプキンから、今や40,000店舗以上で導入されることになったサービスは生まれたのだ。
まとめ
デザインバックグラウンドを持つ7人の偉大な起業家を紹介した。これらの成功例を知ると、デザイナーが会社を立ち上げることに対して特別な違和感を抱くことも無くなるだろう。近年急激に高まりを見せる、デザイン思考などのデザインをビジネスの文脈で語る場面にも辻褄が合う。
現代のビジネスにおいて、デザインは無視できない。それどころか、むしろ必要不可欠な要素なのだ。
参考記事:
10 Co-Founders Of Tech Companies Who Began As Designers
The Designers-Turned-Founders Behind 5 Successful Startups
Chad Hurley Story
The fabulous life of Jack Dorsey, Twitter’s billionaire CEO
The YouTube Gurus
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