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UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 –
前回の「UXハニカム – UXデザインの正しい品質評価方法 –」では、サービスやプロダクトのUXデザインを評価する際に一般的に用いられている、UXハニカムを活用した方法を紹介した。加えて、実はもう一つユーザー体験のクオリティを測る方法がある。
ユーザー体験を構成する3つのポイント
消費者がサービスを受けるとき、ユーザーがプロダクトを利用するときに受け取る体験の質を高めるのがUXデザイナーの仕事になる。
そして、その体験を左右するのが、1. 見た目の品質 (Look), 2. 感覚の品質 (Feel), 3. 使いやすさ (Usability) である。大きく分けてこの3つの要素のクオリティが高いほど、ユーザーに対してより優れた体験を提供することが可能になる。
実用性と利用感覚を測るUXピラミッド
UXハニカムに加えて、もう一つのUXクオリティを測る手法としてUXピラミッドがある。6つの階層で構成され、下部の3つが実用性。そして上部が利用時の感覚を示す項目になっている。
Task – 目的達成可能 (レベル1-3)
- Level 1: FUNCTIONAL (USEFUL) – 機能的である
- Level 2: RELIABLE – 信頼できる
- Level 3: USABLE – 使いやすい
Experience – 心地良い体験 (レベル4-6)
- Level 4: CONVENIENT – 便利である
- Level 5: PLEASURABLE – 楽しい・心地よい
- Level 6: MEANINGFUL – 価値がある
ユーザー体験として、下層部が必要最低限の利用価値、そして上に上がるにつれ感情に訴えるプロダクトとなる。
総じてLevel 1-3は客観的な評価、Level 4-6はユーザーの個人的な感覚での評価になる。
従って、1から3は社内UXレビュー、4-6はユーザーレビューで評価することが一般的。それでは、それぞれの階層における項目をみてみよう。
Level 1: FUNCTIONAL (USEFUL) – 機能的である
“ちゃんと機能するか”
- バグやエラーがない
- 現代の動作環境に対応しているか
- 主な機能が実装されているか
- 基本的なアクセシビリティをクリアしているか
Level 2: RELIABLE – 信頼できる
“見つけやすく正確であるか”
- ロードスピードに問題がない
- コンテンツが最新のもので正しい内容である
- 利用されているデータが信用できる
- パスワードのリセットが可能である
Level 3: USABLE – 使いやすい
“無理なく使えるか”
- ユーザーを混乱させない
- 探しているものが無理なく見つかる
- マニュアルやヘルプを使わなくても良い
- “裏技”を使わなくても良い
- サポートやコールセンターに問い合わせが多すぎない
- ユーザビリティにおける基本項目がクリアされている
Level 4: CONVENIENT – 便利である
“個人的に求める内容を手軽に提供してくれているか”
- ユーザーが使いたくなる
- 何度も使いたくさせる要素がある
- 他のユーザーに勧めたり、ポジティブなレビューをしたくなる
Level 5: PLEASURABLE – 楽しい・心地よい
“周りの人に教えたくなるぐらい楽しい体験ができるか”
- ユーザーが時間を費やす
- ユーザーが口コミで広げたくなる
- ユーザーの日常生活の一部として存在する
Level 6: MEANINGFUL – 価値がある
“個人的にも社会的にも重要な価値を感じられる”
- ユーザーの生活や人生に大きなインパクトを与えている
- 世の中に対してポジティブな影響力がある
上記の6つの階層のうち、実は世の中の多くの商品やサービスはLevel 1-3までしかクリアしておらず、Level 4以上を達成できるかがヒット商品を生み出せるかどうかの鍵を握っている。
そのためには、物作りをする側が”問題なく使える“だけで満足せずに、”心地よく使える“レベルまでの作り込みを必要になってくるだろう。
UXピラミッドを活用したUX品質評価実例
では上記のピラミッドを実際に活用してユーザー体験を評価する例を2つ紹介する。
Case 1: WebプラットフォームにおけるUX評価チェック項目
Functional (Useful) – 機能的である:
- ニーズ
目的を果たすために必要なことが簡単にできるか - スピード
低速度でも極端に遅くなっていないか - エラーレス
エラーとならない工夫がされているか
Reliable – 信頼できる:
- 安全性
セキュリティ面などで安全に使うことができるか - 検索性
検索サイトから見つけることが可能か - 安定性
安定したパフォーマンスが得られるか
Usable- 使いやすい:
- 操作性
ストレスなく目的達成のための操作ができるか - 一貫性
ナビゲーション/操作は一貫してわかりやすいものとなっているか - マルチデバイス対応
タブレット端末のサイズやタッチ操作でも使いやすいか
Convenient – 便利である:
- 視認性
文字やアイコン、表示内容はわかりやすいか - ヘルプ性
困ったときの解決方法がすぐに見つかるか - 簡潔性
文言は簡潔でわかりやすいものになっているか
Pleasurable – 楽しい・心地よい:
- 直感性
直感的に使用することができるか - 連続性
途切れることなく一連の体験を提供できているか - 容易性
二度手間や煩わしさを排除できているか
Meaningful – 価値がある:
- 気づき
気づきを与えることができているか - 時代性
時代にあったデザインや操作方法を取り入れているか - 心地よさ
利用していて心地良い、ワクワクする要素があるか
Case 2: TESLAディーラーでの顧客体験評価
もう一つのUXプロセスの活用ケースとして、Teslaのショールムでの顧客体験があげられる。
Level 1. 機能的なレイアウト
ショールームのレイアウト設計を効率的に行い、プロダクトを学ぶために必要な機能を充実させている。
Level 2. Teslaブランドと専属エキスパート
セールスマンではなくプロダクトエキスパートを配置し、Teslaのブランドを前面に押し出すデザインで信頼性を獲得。
Level 3. 使いやすさを向上させるタッチパネル
ショールーム内にはインタラクティブに機能するタッチパネルを設置し、来客者のユーザービリティを向上させている。
Level 4. なんども通いたくなる要素
アメリカでは自動車ディーラーの顧客体験に対して良いイメージを持っている人は少ない。そこにいるセールスマンがかなり面倒な存在だからだ。しかしTeslaのショールームでは、エキスパートと呼ばれるスタッフがフレンドリーに対応し、売り込みは一切ない。最新のプロダクトと触れ合えることもあり、何度でも通いたくなる。
Level 5. エンタメ要素
希望すればエキスパートがアプリやオートパイロット機能の実演などもしてくれる。これが楽しくて、ショールームにいる時間のクオリティが高くなる。一般的なカーディーラーとは異なる感覚を得ることができる。
Level 6. その存在自体がイノベーション
TESLAのショールームの役割はあくまでユーザーにプロダクトを思う存分知って、体感してもらう事。ややこしい販売に関するプロセスは、全てオンラインでまるでEコマースサイトでポチッと購入できるような形になっている。Teslaが生み出しているプロダクトに加えて、この体験自体も今までのディーラーの常識で考えるとイノベーションと言える。
ユーザー体験を最大化させているTeslaのプロダクトと顧客体験
TESLAというブランド自体がインスタグラムに載せたくなるくらい存在価値が高いが、そのショールームのレイアウトもデザイン・設計にこだわり顧客体験を大幅にアップさせた。車両の展示方法や、インタラクティブなフォラットパネルの設置、異なるオプションの展示など、全ての空間デザインにUXデザインのコンセプトが活用されている。
このようにTESLAは既存のマーケティング手法とは一線を画する戦略を取っているが、ショールームという実店舗やオンライン購入サイトのUXをとことん追求することで、革新的な商品をただの”モノ”で完結させてしまうことなく”体験”というフルパッケージで提供し多くの人の生活や人生に大きな影響を与えている。
これからのビジネスの成長に不可欠なUXデザインとは
おさらいをすると、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは”サービス利用者の体験そのもの”のことである。そこにはUI、デザイン、マーケティングなど様々な観点によるニュアンスが入ってきてその複雑さが増している。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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