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日本からユニコーン企業を生み出すために必要な5つのポイント
先日、日経新聞オンライン版にて「スタートアップ倍増へ 政府、拠点都市で規制緩和」という記事を読んだ。こちらによると、日本政府は
企業価値が10億ドルを超える未上場企業「ユニコーン」を各拠点都市に5社以上つくる目標も掲げる。
という。
これには漠然とした違和感を感じた。というのも、多くのユニコーンがひしめき合うサンフランシスコやシリコンバレーの感覚だと、ユニコーンは生もうと思って生まれるものではない、からである。
それはまるで、最初は馬だったと思って頑張ってたら、いつの間にかツノが生えてきた感覚に近いと思う。例えば、世の中の大きな課題の解決をするサービスを提供しているスタートアップを多くのユーザーが愛した事で、馬がユニコーンに成長する感じである。
そして「ウナギじゃないんだから、ユニコーンは養殖するものでもない」とも思う。そもそも実在しない動物なのだから、狙って生み出すのには至難の技である。
いや、実は厳密には養殖する事も実は可能なのだ。その方法はシンプルで、”既にある会社に約1,000億円 (10億ドル) の評価額を好きな額で第三者割当増資を引き受ければいい。誰にでもできる。” (by 朝倉 祐介氏によるNewsPicksコメント)
この事から考えてみても、単純に「ユニコーンを生み出そう!」という目的ありきの活動が不思議な感じがするという事。
批判ばかりしてても仕方ないので
とは言っても、批判ばかりをしていても良くないので、自分なりにどうしたら日本からユニコーン企業が生まれるのかを考えてみた。
まずは、ユニコーン企業とはどんなものなのか。そして、日本からユニコーン企業を出したいと思うのであば、どのような方法があるのかを考えてみた。
ユニコーンスタートアップとは?
そもそも最近頻繁に聞くようになった「ユニコーン」って何?という事から。一般的な定義は「未上場かつ評価額が10億ドル以上のスタートアップ」である。なので、上場していたり、未上場でも評価額が10億ドル以下の企業はユニコーンではない。なお、これに創業10年以内、を条件にする場合もある。
なぜユニコーンと呼ばれているかというと、現実にはいないんじゃないかと思うぐらいに稀有な存在である、という英語表現を企業に当てはめたのが由来。なので、”Unicorn”という英語は、企業だけではなく、人やモノなどでも「稀有な存在」に対して用いられる。
そう、未上場で企業評価額が10億ドル以上になるのは、存在しないと思ってしまうぐらい非常に稀有な存在なので、ユニコーン企業と呼ばれている。世界のスタートアップ全体をみてもユニコーンになっているのはわずか1.29%である。ちなみに、”Unicorn Startups” の名付け親は、Cowboy VenturesのAileen Lee.
著名なユニコーン企業は、Airbnb、WeWork。上場前のUberやメルカリもユニコーンだった。
ちなみに、最近では急成長するユニコーンに対抗して、より「優しい」成長を目指す「シマウマスタートアップ」なるものもあるらしい。(参考: ユニコーンとシマウマの違いを知っていますか?)
日本からユニコーンが生まれるために必要な5つの要因
やっとここからが本題。では、どうやったら日本からユニコーン企業が出てくるのだろうか?色々考えた結果、おそらく最低でも下記の5つのポイントを抑える必要があると思う。
1. 他にないユニークな価値を提供する
高い評価額を獲得するには、そのサービスが高い成長可能性を保持する必要がる。その点において、すでに存在しているタイプの改善版だと「一人勝ち」するのが非常に難しく、成長の可能性も頭打ちになってしまう。
逆に、まだ存在していないような新しい価値を生み出すサービスであれば、多くのユーザーが集まり、急成長を達成することも可能だ。AirbnbやUberがユニコーンなった理由の1つが、ユーザーからの強いニーズはあったが、それまでに存在していなかったタイプのサービスであったから。
宇宙旅行のSpaceXの様に、世の中に存在していないようなテクノロジーを開発することで急成長を遂げた企業もある。
新しい価値を生み出すサービスを作るには、革新的なテクノロジーを開発する他にも、既存のサービスを融合したり、時代の変革タイミングに合わせたプロダクト作りをする方法もある。スマホが普及した直後にリリースされたインスタグラムがそのパターン。
また、決済サービスのStripeのようにスムーズなユーザー体験を価値として急成長したケースもある。
ユニコーンを作り出すための前提となるのは、異なる視点から見たユニークな価値の創造である。そうすることで、将来的に市場を独占できる可能性が高まり、評価額も高くなる。
2. 普遍的な社会課題に取り組む
より多くのユーザーに使ってもらうためには、サービスが解決する課題がある程度普遍的でなものである必要があるだろう。
実は、ここ数年でユニコーン企業が増えた理由は、デジタルと実生活をつなげることで、日常生活の不便を解決する様なプロダクトが増えたからだと考えられる。
一昔前は、デジタル完結のサービスが多く、ニーズの規模にも限界があった。しかし、ヘルスケやモビリティーなど、世界中の多くの人々が日々の生活を通じ、共通して抱えている大きな課題を解決する様なスタートアップが増え、自ずと評価額も高くなっている。
また、現在ソリューションが存在していない様な課題に加え、既存のサービスが不便であったり、顧客満足度が低い状況を打破するのよなサービス、いわゆる破壊的イノベーションを提供するスタートアップもユニコーンになりやすい。
ちなみに、下記に当てはまるサービスやプロダクトは破壊的イノベーションを起こすポテンシャルがあると考えられる。
- 体験が複雑すぎる
- ユーザーに不信感を与える
- 中間業者が多すぎる
- アクセシビリティが低い
参考: ディスラプト (破壊) されるサービスに共通する4つの不満要素
3. グローバルで展開する
もう1つのユニコーンになるためにとても重要な必須条件が、世界規模で展開できるかどうか。企業の評価額は、将来見込むことのできる市場の大きさが重要なファクターになる。
言い換えると、ターゲットとする市場の大きさは。スケールの可能性の高さに影響する。その点において、国内市場だけに限定したサービスだと、その数字がどうしても頭打ちになってしまう。
例えば、世界の人口の中で日本語を話すユーザーは実に2%以下であり、日本語がわからないと利用できないサービスは、見込み市場の規模の計算式の最後にx0.02が付いて回る。(参考: どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2%)
一方で、最初からグローバルを目指すことができれば、成長可能性が高くなり、自ずと評価額も高くなるだろう。上場前のメルカリがユニコーンだった理由の1つも、初期の頃からグローバル市場を視野に入れていたからではないかと思われる。
ここでの1つの結論は「国内だけでやっててユニコーンになるのはほぼ不可能」もしくは、非常に難易度が高くなる。
日本のスタートアップがダメで、海外のスタートアップが良いという考え方が大きく間違っているのも同じ理由で、類似したサービスを展開していて、目指している市場規模の差が評価額になっているケースも多い。世界各地に拠点を構えるWeWorkと日本国内向けの類似サービスに差がつくのは当然で、どっちが良い悪いという話ではない。
では、どの様にすればスタートアップがグローバルで展開することができるのか?その要素はいくつかあると考えられるが、まずはグローバル市場での経験のあるスタッフや、パートナー企業を見つけるのが第一歩だろう。(参考: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由)
冒頭の記事では海外からアクセレレーターを連れてくるプランが書かれているが、それと同時に積極的にスタートアップを海外に進出させることも重要だと思う。
我々btraxでも、Global Challenge Team Fukuoka に代表される様なプログラムを通じて、より多くのスタートアップが世界で活躍できる様にサポートしている。
4. 海外の企業からの大型M&A対象になる
日本国内の多くのスタートアップの1つのゴールがIPOであるのに対して、海外の場合はM&Aがより一般的である。それも、比較的大きな金額での買収もあり得る。
Googleに16.5億ドル(約1800億円)で買収されたYouTube、Facebookに10億ドル(約1090億円)で買収されたInstagram、Microsoftに 75億ドル(約8200億円)で買収されたGitHubなど、下手なIPOよりも高い金額でバイアウトを達成しているケースもある。
しかし、これが日本国内の企業からの買収になってくると、桁が1つか2つ下がってしまう現実があるし、国内ではスタートアップ企業に対するバイアウトはまだまだ多くないのが現状である。
エクジットの際に見込まれる”上がり額”もスタートアップの評価額のファクターの1つになることを考えると、海外の企業から見ても魅力的なスタートアップであることで、ユニコーンになれる可能性が高まると思われる。
スタートアップのポテンシャル買収額を上げるためにも、海外の企業から注目される状況を作るのはとても重要である。
5. 辛抱強い投資家からの理解
こと「ユニコーン」という品種にこだわるのであれば、出来るだけ長い期間未上場で居られる状態を保つ必要が出てくる。これは、投資する側からすると辛抱が必要になる。なるべく早くエクジットしてもらいたい、というのが一般的な投資家や投資機関のゴールであるからだ。
特に日本国内だと、どれだけ短い期間でIPOできるか、が投資する側にとっての重要な要素になるのだが、ユニコーンを目指しちゃう場合は、IPOを急がずに評価額が上がるのをしぶとく待たなければいけなくなる。
そうなってくると、辛抱強い投資家からの理解と協力が不可欠になる。この点を考えてみても、もしかすると、わざわざユニコーンにこだわる必要もないのでは?とも思ってしまう。
結論: ユニコーンは簡単には養殖しにくい
冒頭でも軽く触れたが、ユニコーン企業は狙って作りにくい。むしろシリコンバレー付近で「うちの会社はユニコーンになることを目標にしています」と言っているスタートアップに会うことはほぼないし、むしろそんな事を言っていたら何か怪しい感覚も受ける。
そんなことよりも、普遍的な社会課題に取り組んで、多くの人々の生活の役に立つサービスを作って広げることにフォーカスを当てることで、自然とツノが生えてくる様な気がする。
関連: 日本でイノベーションが生まれにくいと思った3つのポイント
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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