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デザインを経営に融合させるための6ステップ
デザイン思考やサービスデザインなど、経営や商品企画においてのデザインの重要性が高まる中で、海外の事例に習い、日本企業でもデザインをビジネスに活用する取り組みが進んでいる。では、経営にデザインを取り込む事で果たして実際どのようなメリットがあるのであろうか?そして、ここでいう”デザイン”とはどのような役割のことを指すのであろうか?
ビートラックスが提供するサービスの根底にある「デザインを経営に」のビジョンでもある。
変化するデザインの役割
まず初めに、一口に”デザイン”と言っても、業界や役割によってその概念は様々だ。そして、時代の変化と共にビジネスにおけるデザインの役割とその守備範囲も大きく変貌してきている。特に最近では見た目を綺麗にするだけではなく、デザイン思考に代表されるような、”考え方”にもデザインが活用されてきている。
それもあり、これまでにどのようなデザインがあり、そしてビジネスや経営に対してどのような影響力があるのかをまず紹介する。ここでは、その影響力をベースに、3つのデザイン (design, Design, DESIGN) として、それぞれの役割と特徴を考えてみたい。
design → Design → DESIGN
1. design
おそらく”デザイン”と聞いて最も多くの人々がイメージするのが、この小文字のdesign. いわゆる、”見た目”の良さを追求し、商品やサービスの良さを届けるのが役割。デザインの種類だと:
- グラフィックデザイン
- 工業デザイン
- 広告デザイン
などが代表的で、その特徴としては:
- 特定のユーザー向け
- 完成させることが目的
- 職人的仕事内容
があげられる。このdesignにおいては、ターゲットの顧客が誰であるかがある程度想定され、そのユーザーに対してできるだけ”完璧な”デザインを施す。例えば、お菓子のパッケージは、そのターゲット顧客向けのグラフィックデザインが施され、自動車のデザインも、特定のユーザー層を想定して設計される。もちろん広告作成はターゲット割り出しが肝心だ。
その仕事内容から、デザインを完成させることが一番の目的となり、1mm単位のズレや予定外の色のムラも許されない。おのずとデザイナーの仕事は極めることが重要で、かなり職人的な内容になってくる。
2. Design
次に来るのが、インターネットやモバイル、そしてデジタルメディアの発達から生まれた比較的新しいタイプのデザイン領域。具体的な例として下記がある:
- Webデザイン
- UIデザイン
- デジタルコンテンツ
一つ前のdesignと比べるとその役割と仕事内容に下記のような大きな変化が見られる:
- 不特定のユーザー向け
- 完成してからも改善
- 進化し続ける仕事内容
これはどういうことかというと、デジタルxインターネットという特性上、いつどこで誰がどのような方法でアクセスするかが予想しにくくなった。そして一つ前のデザイン領域とは比べ物にならないほど多くのユーザーに利用される可能性が高まった。それにより、完璧なデザインをするよりも、より多くのユーザーに使ってもらいやすいデザインを施す必要が出てきている。
Webサイト一つとっても、世界中からアクセス可能で、そのデザインが表示されるデバイスもPCやモバイル、タブレットなど複数。そして、画面の大きさや解像度、発色具合などを考えると、全くズレのない”完璧な”デザインを届けることがほぼ不可能になっている。むしろ、最大公約数でより多くのユーザーに使いやすいデザインを行うことの優先順位が上がる。
そして、一度デザインしたとしても、そこで仕事は終わらない。テクノロジーやデバイスの進化に合わせて常にデザインもアップデートする必要があるからだ。これにより、デザイナーの仕事も常に進化し、新しい技術や知識を常に習得する必要がある。これは、職人的デザイナーから進化型デザイナーへの変化でもある。
3. DESIGN
そして最近アメリカ西海岸を中心に最も話題になっているデザインが、この全て大文字のDESIGNである。その守備範囲が広くなり、役割も増えたために広い意味でのデザインとも称される。これは経営や商品企画に直結しているタイプのデザイン。種類としては:
- サービスデザイン
- UXデザイン
- デザイン思考
などが代表的。これらの広義でのデザインの特徴は:
- ユーザー選定が重要
- リリース後からが勝負
- ビジネスとデザインの融合
ここにきてまたユーザーの割り出しがとても重要になる。と、いうのも、”デザイン的考え方でビジネスを成功させる”がゴールとなるDESIGNにおいては、主役は企業ではなく、あくまでユーザー。したがって、どのようなユーザーにどのようなニーズがあるのかという、ユーザー中心の考え方が求められる。
そのユーザー像を元に、商品やサービス、そして利用されるシーンや体験を設計する。そして、最も重要なのが、プロダクトのサービス化。言い換えると、商品は完成し発売されるまでよりも、発売されてからの方がビジネスにとって重要になってくる。例えばスマホ。購入後も定期的にOSがアップデートされ、ユーザーに価値を提供し続ける。コネクテッドカーのTeslaも同様のコンセプトでザインされている。
そして、DESIGNの最終的なゴールがビジネスへの貢献であることから、デザインとビジネスの融合を行うことが目標となり、経営陣に対しデザイナー的感覚のインストールをインストールし、ユーザーにより良い体験を提供することで、企業の成長を生み出す。これは元々Appleが得意としてる手法でもある。
実例: デザインの役割の変化
ではこの時代とともに変化したデザインの役割を具体的に見てみよう。今回は携帯電話を例とした。
まずは10年ほど前の携帯電話、いわゆるガラケーの販売棚の様子。
この光景におけるデザイン、そしてデザイナーの役割を考えてみる。まず様々な色や形のバリエーションが豊富な携帯端末。それぞれに特徴があり、大きさ、薄さ、重さ、材質、液晶のサイズなど異なるデザインが施されている。ライバルよりも、より魅力的に見えるためのデザインと、機能やスペックで差別化を図るための施策がそれぞれのプロダクトごとに見られる。
言い換えると、より多くのユーザーの心を掴むために、それぞれの趣味嗜好に合ったデザインのプロダクトが並んでいる。デザインのフォーカスはあくまで”プロダクト自体”にある。
では、時代を10年ほど進めて、現代の様子を見てみよう。
これはとあるスマホの広告のワンシーン。注目すべきはその訴求ポイント。確かにスマホ自体は写っているが、フォーカスはユーザーに当たっている。プロダクトの魅力はそれ自体ではなく、提供する体験やライフスタイルになっている点。商品自体はあくまでユーザーの目的を叶えるための一つの道具でしかなく、それ自体のデザインを追求するだけでは魅力が伝わらない。
ユーザーの興味が”どのような見た目やスペックのプロダクトであるか”ということから、”それがあればどのようなことが可能になるか”に変わってきてる。これは、モノより体験を重要視するミレニアル世代に代表されるような消費者の考え方の変化や、テクノロジーの熟成によるプロダクトのコモディティ化も大きな要因である。
自ずと、たのブランドとの差別化要因も機能や性能ではなく、そこから生み出される”体験”に移行する。こうなって来ると、プロダクトのサービス化が重要になり、企業としてもデザイン的思考を取り入れた商品企画が求められる。
相反するビジネスとデザインの考え方
デザインをビジネスに活用する。そう言うのは簡単であるが、現実はかなり難易度が高い。なぜならビジネスや経営に関するロジックとデザインのそれとは全く異なる、むしろ真逆であるからである。
[ビジネス的考え方]
結果重視:
最も重要なのは売り上げや利益などの最終的な結果であり、その手段は軽視されがち。採取的に結果を出した部署や会社が評価され、それに対するプロセスは問われることは少ない。
合理主義:
結果を出すために、企業として最も合理的な戦略を考える。無駄を省いたり、利益の高い事業に注力したりなど、現状を踏まえて、経営戦略として最も合理的な判断を行う。
過去からのロジック:
そして経営や事業の企画を考えるときに最も重要視するのがデータ。主に過去のデータを元にビジネスプランや収支予測の作成を行う。逆にこのロジックがなければ戦略を立てることが不可能である。
[デザイン的考え方]
プロセス重視:
デザイン的思考においては、最終的な結果よりも、そこにたどり着くまでのプロセスに重点が置かれる。これは、たとえそれが望んでいなかった結果だとしても、どのようにしてそこにたどり着いたかを学ぶことにより、より良いプロダクト作成に繋げる事を目的としている。
ユーザー主義:
デザインの最も重要なポイントは、主役があくまでユーザーであるという事。企業としてはついつい自社の利益追及やテクノロジー主導でビジネスを考えがちであるが、それがユーザーが本当に求めるものでなければ長期的な成長には繋がりにくい。
未来を創り出す:
ビジネス的考え方が過去からのデータを元にした戦略だとすれば、デザインの真骨頂は、まだ見ぬ未来を創り出す所にある。世の中の状況やユーザーのニーズから、将来に求められるであろう商品やサービスを考え、創り出していくのがデザインの仕事である。
このようにビジネス的ロジックとデザイン的思考では180度異なる。しかしそう反するこの二つの考え方を掛け合わせることで、今までにないビジネスの成長を生み出すことも可能になる。
デザインを経営に融合させるための6つのステップ
では、果たしてどのようなプロセスでデザインとビジネスを融合させれば良いのだろうか。ここでは、btrax社がビジネスクライアントに提供している6つのステップを紹介する。
1. Opportunity: 市場とユーザーの機会を見つける
デザイン的考え方とビジネスロジックを融合させる最初のステップは、市場とユーザーにおけるニーズを見出すことから始まる。企業のビジネスとしての市場チャンスと、今後ユーザーが求めるであろうプロダクトニーズの双方向からの考察を揃えることで、デザイン的ビジネスを確立することができる。
2. Mindset: マインドセット
そして物事に対しての考え方や捉え方としてのマインドセットの調整を行う。柔軟な発想を行うために「イノベーションの秘訣は問題へのアプローチの仕方にある」で紹介されているような、リフレーミング手法を活用したり、「デザイン思考を組織イノベーションに活用する10の方法」に見られるような方法で、組織としてのマインドセットの変革を行ったりする。
3. Ideas: アイディア創出
次に来るのが、プロダクトやサービスに対する実際のアイディア出し。ユーザー視点での物事の捉え方が重要であるが、既存の概念にとらわれがちな場合は「アイディエーションを効率的に行うために必要な5つのポイント」で紹介されているような方法を活用して、効率的なアイディア出しを行う。最初は質より量。柔軟な考え方が求められる。
4. Validate: 検証
ではそのアイディアが実際にユーザーに受け入れられるのか。それを調べるために、モックアップやプロトタイプを作成し、ユーザーにぶつけてみる。ここで重要なのは、仮説を机上の空論のままで終わらせずに、ユーザー主導でテストを行うこと。ついつい経営理論的でうまくいくかどうかの結論を出しがちであるが、正解はあくまでユーザーが持っている。
5. Market in: 市場導入
ユーザー検証ができたなら、プロダクトづくりを行い、市場に参入させる。既存のリリース方法に加えて、クラウドファンディングなどの新しいタイプのマーケティングチャンネルの活用も検討できる。ここでの優先順位は売ることよりも、市場にどれだけ受け入れられるかの検証である。常にユーザーからのフィードバックを獲得しながら、プロダクトの改善を進める。
6. Expand: 拡大成長
ユーザーから好意的なフィードバックを獲得し、ビジネスとしての利益も生み出せる状態が見えてきた時点で、一気にプロダクトを世の中に広める。それも可能であれば、グローバルスケールで行う。特定のユーザー、及びニッチなニーズ向けの製品は、世界規模での展開が重要になる。国内では市場が小さすぎたとしても、グローバル規模で考えればかなりのビッッグビジネスになり得る。
DESIGN → DE$IGN
このように、ビジネスとデザインはその概念的に大きく異なるが、上手に融合することで、ユーザー視点で最適にデザインされたプロダクトが世の中に受け入れられ、最終的に大きなビジネス的結果を生み出すことが可能になる。テクノロジーの熟成が進んでいる現代では特に経営にデザイン的要素を取り込むことが差別化の大きな要因となるだろう。よりこのプロセスを学びたい方は、下記のサービスをおすすめする。
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