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CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割
最近のデザイン界隈において、あまりにも多くの専門用語が飛び交っている。その中でも最もよく使われているバズワードが「UXデザイン」だろう。
それなのに、その概念は時代と共に変化し、内容がイマイチわかりにくい部分もある。
UIとUXとの違いは何か?の問いから始まり、その守備範囲、UXデザイナーの役割など、異なる人やコンテキストによってその概念は大きく変わることもある。
乱立する業界用語
ユーザー体験とユーザーインターフェイス、UXデザインとサービスデザイン、そしてユーザー中心設計と顧客第一主義など、似て非なる言葉が多すぎて、その概念をしっかりと説明できる人は少ない。
そして、ここにきてもう一つ、「CX (顧客体験) デザイン」なるものが登場した。こうなってくると、どんどんややこしくなってくる。
今回は、特にわかりにくくなりがちなデザインにおけるユーザー体験 (UX) と顧客体験 (CX) の違いを中心に掘り下げてみる。
ユーザー体験 (UX) デザインとは?
ユーザー・エクスペリエンス (UX) デザインは、プロダクトを使用しているユーザーの満足度を高めるための施策の複合体を表す言葉。UXデザインの主な原則は、明確性、消化性、親しみやすさ、信頼、喜びなどを通じて、ユーザー体験の質を上げることにある。
UXデザイナーの主な役割は、使い心地の良さや、利用する喜びの要素などを通じ、ユーザーがプロダクトから受け取る体験の質を上げることになる。その具体的な測定方法は、UXピラミッドなどで測ることができる。
顧客体験 (CX) デザインとは?
カスタマー・エクスペリエンス (CX) デザインという言葉を聞いたことがある人はまだまだ少ないはず。
というのも、一説にはこの単語が生まれてから10数年ほどしか経っておらず、世の中に定着してから8年程度であるという。
CXデザインとは顧客体験デザインのことを指すが、UXデザインとはどう違うのか?これらの疑問に答え、いくつかの結論を導き出すことで、デザイナーの方々やデザイナーと一緒に仕事をする方々のお役に立てればと思う。
最近UXの概念がわかりにくくなってきた理由
実はこの2つ、あまりにも領域が近すぎて、ごっちゃにしているケースが後を絶たない。しかしそれもそのはず。元々UXとは、ユーザーがプロダクトやサービスから受け取る全ての体験のことを指していた。
しかし、デジタルプロダクトの普及により、現在ではUXは主にデジタル接点におけるユーザー体験をメインとするようになってきている。
それに伴い、UXデザイナーの仕事の大部分もデジタルでのタッチポイント設計を中心とすることが多くなり、それ以外の範囲をCXやサービスデザインの領域でカバーするのが一般的になりつつある。
CXとUXの主な違いとは
UXがエンドユーザー、つまり製品やサービスを使う人に焦点を当てているのに対し、CXは顧客に焦点を当てている。多くの場合、顧客も製品やサービスを使用しているが、場合によっては誰かに代わって製品やサービスを購入している可能性もある。
例えば、多くの「おもちゃ」のメインユーザーは子供である。
その一方で、その製品を購入する顧客は親になる。この場合、おもちゃにおけるUXデザインのターゲットが子供になるのに対して、CXデザインは購入する親にも訴求する体験を設計する必要が出てくる。
したがって、顧客が必ずしもユーザーではないことも理解してデザインするのがCXデザインである。
UXデザイン
主にプロダクトにおけるユーザーの体験の質を上げる
CXデザイン
顧客と企業との全ての接点における体験の質を上げる
なぜ企業にとってCXが大切なのか?
Forresterの調査によると、顧客体験が良ければ、平均で顧客は4.5倍の支払いをするという結果が出ている。
さらに、素晴らしい顧客体験を提供している企業は、何も考えない企業よりも、実に5倍のスピードで成長するという。これは、顧客体験の品質が売り上げに直結しているということだ。
CXとUXを上手に連動させるには?
多くのデザイナーにとって、CXとUXの境界線はまだまだ曖昧である。一方で、オンラインとオフラインが縦横無尽に連動しているライフスタイルにおいては、ブランドのウェブサイト、アプリ、実店舗でのシームレスな体験が求められている。
インターネットが日常生活の一部になりつつある現在、この2つの分野は密接に結びつきつつあり、単独で考えるべきではなくなってきている。
CXとUXを上手に連動させるには、まず、UXデザイナーが具体的なゴール設定のもとでユーザーとビジネスの具体的なゴール設定を達成することが重要だ。
一方でCXデザイナーは、企業やブランド全体の体験に対してのゴールを達成することが役割となる。言い換えると、UXでズームイン、CXでズームアウトになるイメージである。
UX担当者とCX担当者の役職の違いは?
CXの担当者は、まずビジネスの専門家であり、次にUXデザイナーである。UX担当者は、必ずしも優れたビジネススキルや経歴が必要なわけではない。
言い換えると、UXの担当者がCXの担当になるには、より幅広いビジネススキルが求められる。
具体的には下記の違いが考えられる:
- CX担当者はマーケティング出身者、UX担当者は技術、デザイン、心理学など様々なバックグラウンドを持つ場合が多い
- CX担当者は主に、広告による収益の向上、顧客サービスの改善、より強固なブランドの構築に焦点を当てている。UX担当者は、これらのことも意識していないわけではないが、そこに到達するための主な方法として、ユーザビリティに焦点を当てている
- CXはブランドのすべてのチャネルを含む体験全体に目を向けているのに対し、UXはより具体的で、特定のアプリやウェブサイトに焦点を当てる傾向がある
- CXは伝統的にサービス関連産業で使われる用語で、サービスマッピングや顧客維持などのアイデアを実装する場合に使われている
- CX担当者は、製品やサービスについてどう思うかを調べるために、大量の人々を調査する傾向があるのに対し、UX担当者は、少人数の人々のことをよく知ることに重きを置いている
UXデザイナーのゴールとは?
概念的には広い範囲での体験を設計するのがUXデザイナーの仕事のように思えるが、実は現場でのUXデザイナーの役割はかなり具体的だ。
ゴール1つとっても、例えば「できるだけ少ないステップでユーザーの目的を達成できるデザイン」や、「なるべく多くのユーザーのメールアドレスを獲得する」などの、具体的なユーザーゴールとビジネスゴールが定められる。
これはUXデザイナーに対して「ユーザーにより良い体験を提供する」といった、漠然とした役割ではなく、数字で計測できる具体的なKPIが定められるということ。
CXデザイナーの役割は、より広い範囲の体験を考える
CXデザインまたはカスタマーエクスペリエンスデザインは、ユーザーを取り巻くすべてのインタラクションと、タッチポイントを改善することに関係している。
これには、ブランドとの最初のエンゲージメントからリテンションの段階まで、すべてのやりとりが含まれる。
CXデザインには、UXデザインだけでなく、ブランドのマーケティングやビジネスの目標達成に役立つ新しい体験の創造も含まれる。CXデザインとは、製品のライフサイクル全体における顧客体験の向上を目的としたすべての強化を意味する。
したがって、一般的にCXデザインの用語ははるかに広い。そして、最終的にはマーケティング戦略とも密接に関わってくる。
CXデザインでは、より広い範囲での顧客と企業やブランドとの接点、そこから得られる体験価値を包括的に設計していく。
ある意味、CXは戦略で、UXは戦術であると言っても良いだろう。
顧客体験 (CX) の主な改善方法
企業がCXを向上させるための手法として、ジャーニーマップの活用がある。ジャーニーマップは、顧客がどのようにビジネスと対話しているのかを時間をかけて説明する。
カスタマージャーニーを理解することで、企業はタッチポイント間のスムーズなな遷移を実現し、一貫したブランドの体験を提供できるようになる。
一度カスタマージャーニーマップにまとめてみると、体験のギャップを見つけることができる。
顧客体験 (CX)、ユーザー体験 (UX) とブランディングとの関係
ここで少し視点を変えて、ブランディングにおけるCXとUXの役割を考えてみたい。というのも、顧客体験とユーザー体験の究極的な目的は、ブランド開発である。言い換えると、優れたブランド体験を達成するためには、適切なCXとUXが不可欠となる。
ブランドとは、ビジネスが顧客に行う基礎的な約束である。そして、ブランディングとは、その約束を促進し、支持すること。
ブランド開発には大きく分けて2つのステップがある。第1はブランドプロミスを作ることで、第2は具体的な体験を通じてその約束を実現すること。
それらを通じて、ブランドと顧客との間に「信頼関係」を築くことで、ブランド価値を高める。
ブランドプロミスの実現に不可欠なCXとUX
この第2のステップにおいて、CXとUXが大きな役割を果たし、ブランディング施策の中でも、特に「ブランドプロミス」に直結している。
ブランドプロミスの例としては、ファーストフードのマクドナルドが挙げられる。マックが世界中にここまで展開出来たのは最高のハンバーガーを提供していることではない。
黄色い“m”のロゴのお店に行けば、場所に関係なく安定したメニューとサービスをいつでも確実に受けられる。という安心感をそのブランドが消費者に“約束”として提供しているからである。
マクドナルドのCXデザインの究極のゴールは、このブランドプロミスを実現することに他ならない。
一方で、このブランドプロミスをプロダクトを中心としたタッチポイントで実現するのがUXデザインの役割となる。
しかし、多くの企業やブランドでは、往々にしてデジタルを中心としたUXのクオリティーが十分に対応できていないケースが多い。
これは、それまで長い時間オフラインでのブランド体験を中心にブランド構築を行ってきた企業にありがちな落とし穴である。結果としてブランドプロミスが守られなくなり、顧客から信頼を失うことになる。
まとめ
ここまで細かく説明してきたが、ぶっちゃけ「UX」という言葉を使うか「CX」という言葉を使うかは、共通の「正しい」解釈をしていれば、特段重要ではない。
重要なのは:
- 異なるレベルの体験におけるそれぞれの焦点を理解し、すべてのレベルで経験を最適化しようと努力すること
- 摩擦や誤解を最小限に抑えるために、デザインチームと他のチームがこれらの用語を一貫して使用すること
である。
CXとUXの間には多少の違いはあるものの、テクノロジーが日常生活に溶け込むようになればなるほど、この2つの分野はより密接なものになっていく。
UXデザイナーはエコシステム全体をズームアウトして見ることができれば、CXからの視点を取り入れることができるようになる。
また、企業は、デザイナーと言えども、T字型で総合的なスキルを持った人材を採用する傾向にある。つまり、全体像を考えられるデザイナーは、そうでない人よりも成功する可能性が高いということである。
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