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今さら聞けないデザインがビジネスにこれほど重要な理由とは
- 経営におけるデザインの重要性が叫ばれるが具体的な成果があまり出ていない
- デザインがもたらす7つのメリットとは?
- なぜデザインがイノベーションに不可欠なのか?
- 企業内にデザインを浸透させるための7つのポイント
- グローバル規模でデザイン的競争力をあげるには
デザイン思考やデザイン経営などのバズワードが巷にあふれ、オープンイノベーションやデジタルトランスフォーメーションなどのカタカタキーワードが羅列される。そんな状況で実際に結果としてどのようなアウトプットが生み出されているのか?おそらく、日本国内で働いている人たちのその多くが、上記のようなトレンドとに関する取り組みに少なからず関わったことがあることだろう。
その一方で、デザインがプロダクトや企業経営に対して具体的な結果として効果を生み出した事例は、日本国内で見渡してみると驚くほどに少なく感じる。その一方で、グローバル規模で考えてみると、デザインのビジネスに対する利点は具体的な数字としてクリアになってきている、
そのギャップを少しでも埋められないかと思い、我々btraxでもfreshtraxのようなメディア、DESIGN for Innovationに代表されるイベント、そして、デザインサービスを通じて、日本企業の国際的デザイン競争力の向上に寄与できないかと試みている。
最も基本的な事柄である、なぜデザインが企業の経営やビジネス全体に重要な役割を果たしているのかを今一度まとめてみることにした。
デザインがもたらす7つのメリット
“良い”デザインが大切な理由を考える際に、そこからどのようなメリットを得るかがわかると理解しやすい。大きく分けると恐らく下記の7つに集約されるだろう。
1. ユーザビリティー向上
直接的な効果として、商品やソフトウェアなどの使いやすさが向上する。例えば、リモコン1つとってみても、ボタンの数が少ない方が使いやすい。デザインの質を上げれば、単純により使いやすいプロダクトになる。
2. 効率性の向上
ソフトウェアが使いにくいために、作業効率が下がってしまった経験はないだろうか?特に業務用システムの場合、どうしてもセキュリティーや安全性を優先することで、使いやすさが犠牲になってしまうことも多い。その一方で、シリコンバレーの企業を中心に、最近では、効率性を高めるデザインに注目が集まってきている。
日本でも働きかた改革などの影響で、労働時間を減らす傾向にある。その一方で、求められる結果は同じであることも多い。少ない時間で同じ結果を得るには、より効率化を進める必要が出てくる。そこで必要になってくるのが、より優れたデザインを採用したツールや環境だったり、プロセスだったりする。
参考: 【ワークライフバランスはもう古い】新しい働き方、ワークライフインテグレーションとは
3. 安全性の向上
デザインの品質が悪いと、時に人の命も奪う結果につながってしまう。2016年の夏にロサンゼルスの郊外の自宅の入り口付近で、27歳の俳優が死亡した。それも、自身が運転していた車に押しつぶされて。どうやら、彼は一度自動車を停め、自宅のゲートを開けようとしていたところだったと推測された。
なぜこんなことが起こったのか?調査によると、彼の2015モデルのジープはリコール対象になっていた。原因はそのシフトレバーのデザイン。パッと見では”P (パーキング) “に入れていることがわかりにくい事で、それまでにも100件ほどの事故が発生していたという。間違ったデザインが安全性を下げてしまった例である。
4. 競争力の向上
現代において、多くの企業が脅威を感じるライバル的存在に共通しているものは何か?おそらく、そのデザイン性の高さだろう。例えば、テクノロジー業界で考えてみると、世界的にユーザー数の多いTop 7社 (Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft, Salesforce, Oracle) のすべての会社には専属のデザインチームが存在しており、ブランディングからプロダクトのユーザー体験までを横断的に管理している。そうすることで、より多くのユーザーを集め、最終的な企業競争力を高めている。
そうなってくると、デザイン性の高さそのものが企業にとっての武器となる。一昔前は、Appleのプロダクトを愛していたのは一部の強烈なファン層だけだったが、いつの間にかマジョリティーの消費者がiPhoneを利用するようになった。高いデザイン性を提供するプロダクトでないと利用されなくなってきている例だ。
参考: 【経営xデザイン】なぜデザインオリエンテッドな企業は強いのか
5. 利益率の向上
優れたデザインやユーザー体験を施したプロダクトづくりができれば、多くのユーザーを獲得する事ができる。自ずと結果として、売り上げや利益の向上に繋がる。特に利益率については、Appleの製品が競合のものよりも割高であ事から考えてみても、高い利幅を獲得していることは想像に難くない。
実際のリサーチ統計を見てみても、デザインへの投資は具体的な数字として表れ始めている。
- 製品デザインへの投資が1%増えるごとに、売り上げと利益は平均して3-4%増加する。(ロンドン・ビジネススクール)
- デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっている。 (マッキンゼー)
- デザイン的アプローチを経営の戦略に積極的に取り入れている状況企業の株価の伸び率が、S&P 500全体平均と比べ10年間で228%高くなっている。(Design Value Index Results)
6. ウェルネス向上
デザインの意外な役割として、人々の心に対してのポジティブな効果もある。特に最近は、デジタルデバイスとソーシャルメディアの普及で、人と接する時間よりも、デバイスと過ごす時間の方が多くってきており、精神的に疲れている人が増えている。それを癒すのもデザインの役割りだ。
シリコンバレーの企業の中には、「自分たちのサービスは、果たしてユーザーの人生にポジティブな影響を与えているのか?」と疑問を感じるところも出てきている。特にデザイナーたちからは、「お金儲けのために、ユーザーの人生を台無しにしてしまっていないか?」との意見もある。
特にUXデザイナーの間では、エシカル (倫理的な) デザインの概念が議論され、すでにプロダクトに採用しているケースもある。
そしてすでにAppleのScreen TimeやGoogleのFocus Modeなど、ユーザーのより良い人生 (ウェルビーイング) のためのデザインが進んでいる。
7. クオリティーオブライフ、クオリティーオブワークの向上
そして最終的に優れたデザインは、日々の生活の品質や仕事をしている時間の価値の向上にもつながる。住環境やオフィス環境のデザイン要素を改善することで、より充実した日常生活を送ることができる。昨今話題のWeWorkがそのデザインにこだわりまくっている理由も理解できるだろう。
最近我々btraxも、コミュニケーションがより促進されるデザインへとオフィスの一部をリニューアルした。
デザインとイノベーションとの関係
そして、今回の本題である昨今叫ばれているビジネスにおけるデザインの重要性であるが、その背景にはテクノロジーの進歩と、ユーザーの期待値の上昇があると考えられる。
時代が進むにつれ、テクノロジーが進化し、ムーアの定義で説明されているように、どんどん新しく優れたテクノロジーが普及する。それに伴い、ユーザーの日常生活にテクノロジーが入り込み、特別なことではなくなってくる。言い換えると、加速するテクノロジーのコモディティー化が急速に加速していく。
結果として、商品やサービスから提供されるユーザー体験に対する消費者のの期待値はどんどん高まる。企業側は、その期待値にどのように対応できるか = デザイン的な熟成が進むかが、向こう5年以内の勝負の分かれ目となってくると考えられる。
ユーザーが求める体験を提供できる企業は勝ち残り、そうでないところは衰退していくのは明白だ。そのためには、いち早く、企業内にデザインを”インストール”する必要が出てくる。
企業にデザインをインストールための7つのポイント
では、実際に社内にデザイン的考え方を浸透させるためにはどのようにな方法があるだろうか?おそらく下記の7つが必要とされると思われる。
1. プロダクトの前に人を育てる
やはり、いつの時代も企業にとって最も重要なのは人である。我々もクライアントのイノベーションを生み出すために真っ先に行うことは、人を育てること。各種ワークショップを通じて、作る人たちのマインドセットをしっかりと構築しなければ、いつまで経っても新しい価値を提供することは難しいと考えている。
2. ユーザーの視点を最重要視する
商品の企画をする際に、ついつい制作側のエゴが前面に出てしまうことが多い。実はユーザーにとっては「どうでも良い」と思われるような機能が実装されるのもこれが原因。常にユーザーが何を求めているかという基本に立ち返って考えるべきなのである。
3. デザインの役割は装飾だけではないことを理解する
デザイン的にイマイチだと思われるプロダクトを作っている企業に共通するのが、「デザイナー = 見た目を美しくする人」と言う概念から脱却できていないこと。今の時代、そもそも企画や設計の段階からデザイナーが関わっていない製品がヒットをするのは非常に難しいと考えられる。
4. シンプルにすることを恐れない
やばいデザインに共通しているのは、必要のないものがてんこ盛りされいる点。実は、シンプルにすればするほどよりデザイン性の高いプロダクトが作り出されるにも関わらず、それを理解できない偉い人が多すぎる気がする。
5. 経営戦略やシステムなど他の部署とのコラボを促進する
優れたUXデザインを進める上で重要なポイントのひとつが、クロスファンクショナルチームを編成すること。これは、異なる専門分野をもつスタッフで1つのチームをつくり、お互いの共通項も作ることで、一貫したプロダクトを素早いスピードで作り出すのが目的だ。
6. ユーザーを巻き込んだプロダクトづくりを進める
最近特にアメリカで注目されているのが、コクリエーションと呼ばれる、顧客やユーザーをプロダクトづくりのプロセスに巻き込んだやり方。彼らのニーズを推測するのではなく、積極的にプロセスに取り込むことで、ヒットしやすい製品が生み出される。
7. 重役会議にてデザインのトピックを話し合う機会を設ける
現代の日本企業において、最も重要なのが、権限がある人がデザインの重要性をしっかりと理解すること。アメリカではすでにデザインバックグラウンドを持った人たちが経営層に名前を連ねていることが増えているが、日本ではまだまだそこまでは辿りついていない。であれば、最低でも重役の方々が定期的にデザインに関して話し合える場を作るのが良いだろう。
まとめ: 国際的に競争力を高めるにはデザインの重要性を理解する必要がある
世の中がどんどんデザイン的に洗練されていく中で、日本の社会と企業はどうしても置いていかれている感じがする。優れたデザインがないわけではないが、とても限定的だ。今後、海外のサービスがそのデザイン性の高さを武器に、どんどん顧客を奪い始めるのは明白で、今から企業全体がデザインの重要性を理解し始めないことには、手遅れになってしまうのではないかと危惧している。
我々が提供するサービスを通じて、社会にとってより良いデザインが広がってくれればという願いを込めて、今後も取り組んでいきたいと考えている。ご興味のある方は、ぜひこちらからお問い合わせを。
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