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変化する自動車に関する5つのユーザー体験
テクノロジーの進化によって数多くの産業に大きな変革が訪れているがその中でも産業規模でのトップ3に入る自動車業界に激しい変化が始まっている。
コネクテッドカー、EV, 自動運転、ライドシェアなどの新しい技術とビジネスモデルに加え、自動車の車両にも数多くのセンサーなどのハードウェアデバイスと制御用のソフトウェアが実装され始め、向こう数年間でこれまで数十年の自動車の歴史をはるかに上回る革命が起こると考えられている。
それにより、自動車メーカーのあり方、産業全体の構造、そしてユーザーの自動車に対する関わり方全ての点においても新たな概念が生まれるであろう。その中でも今回は購入、所有、運転、維持などのユーザーと自動車との関係、タッチポイントにフォーカスしてみたい。
自動車に関する5つのタッチポイントとその変化
ユーザーにとって自動車の購入や所有に関しての体験は大衆車両が販売された1960年代からあまり大きな変化はなかった。しかし、インターネットやスマホの出現でユーザーが求める体験も変わり、カーシェアやライドシェアサービスの普及で、自動車に対して求める価値も変わってきている。
今後のユーザーターゲットはスマホ世代
特にアメリカではミレニアル世代を中心とした35歳以下の若者層=スマホ世代に対して適したユーザー体験の提供が自動車メーカーの今後の運命を左右する。彼らは自動車を所有することをステータスとは感じず、むしろ必要な時にだけ使う”ツール”としての認識の方が一般的である。
では、今後消費者と自動車の間のタッチポイントにはどのような変化が訪れるのだろうかを考えてみる。
1. 新車購入体験: 巨大オートモールからショールーム&オンライン購入へ
これまでアメリカで新車の購入をする場合、一般的な方法はオートモールといわれるディーラーの巨大な駐車場に停められている無数の車両の中から自分の好みにあったモデル、色、スペックのものを選び、セールスマンとの過酷な値段交渉を経てその日のうちに乗って帰るものだった。
しかし、この購入体験は無駄が多いだけでなく、非常に”心地の悪い”体験であった。これに対して、Teslaでは都心部やショッピングセンター内にショールムを設置。そこでは販売ではなく、あくまでプロダクトを”体感してもらう”事をメインとしている。実際にショップスタッフに”この車ください”って言ったところ、”あちらにございますパソコンよりオーダーください”と言われた。
これのショールーム&オンライン購入のプロセスは、無駄な場所や値段交渉を必要としないだけでなく、若者が集まる都心部に店舗を構え、まるでApple Storeのような感覚でのショッピングが可能になる。また、最近では実際に実物車両を見ずに購入するケースも増えており、今後も新車の購入体験に大きな変化が訪れるであろう。
2. 中古車購入体験: アプリを活用して気軽に売買
自動車購入に関する体験の変化は新車だけではなく、中古車の売買に関しても着実に進んでいる。これまでは中古車ディーラーでもの売買か個人売買がメインだった。アメリカではCraigslistというクラシファイドサイトを活用して自動車を販売することが一般的だが、見知らぬ人と会う手間と車両の良し悪しの判断の難しさ、そして詐欺行為も目立ち始めたことから、売る人と買う人それぞれに対して最適な体験を提供するサービスが広がっている。
例えばBeepiというサービスを利用すれば、個人売買の車両の点検などのサポートをしてくれより中古車の個人売買がスムーズに行えるようになる。
3. 所有体験: 所有からシェアへのゆるやかな移行
サンフランシスコを中心にアメリカの主要都市ではユーザー同士が自動車をシェアするカーシェアリングに注目が集まっている。以前より利用されていたZipCarはサービス提供側の車両を時間単位で貸し出しをしていた。一方で、Getaroundはユーザー同士がWebやアプリを介して車を貸し借りするので、貸す方にもメリットがある。
そもそも自動車は1日のうち平均で95%の時間は利用されていない。一台を複数で利用することにより稼働率を上げ、より効率的な所有体験を得ることが可能になってくる。もちろんUberやLyftと言ったライドシェアサービスも日常的に利用されており、今後は”シェア用”を目的として購入するユーザーも現れる可能性もある。
現にアメリカでは16歳から24歳の若者の運転免許の所得率は2000年の76%から71%にさがっている。その一方でカーシェアリングサービスの利用率はここ5年で年間30%の成長率を見せている。そしてこのトレンドは加速すると見られ、2030年には販売される車両の約10%がシェアリング用として購入される見込みである。
4. ドライブ体験: 自動運転とドライビングプレジャーの二極化
自動車を取り巻くテクノロジーで最も注目されているのが自動運転だろう。特にシリコンバレーでは、Google, Uber, Tesla, Appleなどのテクノロジー企業がこぞって自動運転のテクノロジー開発を進めており、どこが先に実用化を行うかに大きな注目が集まっている。
まだまだその安全性を危惧する人も少なくはない。その一方で、例えばTeslaのAuto Pilot機能は”人間が運転するよりも安全”をうたっている。実際のところ、世界中で年間50万人もの人が交通事故で亡くなり、700万人が怪我をしている。
また、日本人は平均で一人につき年間30時間もの時を渋滞の中で過ごしている事からも、自動運転テクノロジーの利用価値は非常に高いと思われる。
その一方で、純粋に車の運転が好きな人たちにとってみると自動運転化が進む事は運転がつまらなくなってしまうという事で、あまり好ましくない。おそらくそのようなユーザー向けにもスポーツカーなど、運転する喜び=ドライビングプレジャー向けの車両の需要も必ずあるはずで、今後はそれぞれのモデルのターゲットと役割がより明確になっていくと思われる。
5. サポート体験: データの透明化
例えばTeslaを運転していてこれまでの自動車と最も違うと感じられるのは、得られる情報である。ダッシュボードにあるデジタル画面から常に車両のどこがどうなっているかが一目でわかり、必要なメンテナンスに関してもスマホアプリにプッシュ通知でお知らせが来る。そして、その後の状況もサイトからログインすることにより確認することができるようになっている。
これまでの自動車は何かしら調子が悪いと”Check Engine”のランプがつくだけで、実際にどれだけ深刻な状況なのかがわからず、ユーザーは非常に不安に感じることも多かった。
そのような既存の車両ユーザーにもAumotaticのようなデバイスを繋げるだけで、車両の状況や走行履歴などのデータの可視化が進み、より心地よい体験を得ることが可能になってきている。
まとめ: 自動車業界もプロダクトからサービスへの変換が進む
自動車を購入して所有する。今までは一つのステータスでもあり、豊かさの象徴でもあった。その価値観が若者を中心くずれ始めている。必要な時に必要な分だけ利用する。所有しているかどうか自体にはあまり価値を感じていない可能性もある。
これはより”サービス”への変換を行なった自動車ブランドが人気を集めるだろう。サービスとは利用するたびにその体験を通じ、ユーザーにとっての価値が上がる仕組みである。
“これからの時代は例えプロダクトを所有していなくても、最適なサービスを届ける事が出来ればユーザーを獲得する事が出来る。逆に’もの作り’だけにフォーカスしてしまうと、ビジネス的には苦戦を強いられるであろう。”
20世紀産業の代名詞とも言える自動車産業であるが、急激なテクノロジーの進化に合わせて、様々なタッチポイントにて消費者に対して最適な利用体験の構築が必要になっていくだろう。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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