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ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素
世界を制覇し始めているGAFAの一角であるAmazonの凄さは下記の数字を見ただけでも伝わってくる。
- 49% – アメリカのeコマース市場におけるAmazonのシェア
- 1.12億人 -アメリカ国内のAmazon Primeのメンバー数
- 3人に1人 – アメリカの成人でAmazon Primeに加入している割合
- 全世帯の半数 – アメリカ国内でAmazon Primeに加入している割合
- 95% – Primeメンバーシップを更新したいと思う率
- 250万 – Amazonで商品を売っている外部店舗の数
- 約7.8兆円 – Amazon社が保有する現金
この成功の要因は何であろうか?確かに安さはあるだろう。しかし、意外と見落としがちなのがデザイン的要因である。
実は私、デザインも凄いんです
Apple製品のデザイン性の高さを語るケースは多いが、Amazonに関してデザインのトピックが取り上げられる事は稀である。Amazonのサイトが”デザイン”的に優れているとは思いにくいし、CEOのJeff Bezosがデザインを語るケースもほとんどないだろう。
しかし、実はAmazonがこれほどまでに消費者を夢中にしているその裏には、優れた顧客体験がデザインされていた。それも目に見えない形で。
“見た目”以外へのデザインのこだわり
“デザイン”と言っても、必ずしも見た目の美しさだけではない。広い意味のデザイン = DESIGNは、機能性や実用性, そして様々な体験を最適に設計する。そう、まさにビジネス的結果に直結させるためのデザインなのである。ちなみにこの辺は、以前の「design, Design, DESIGNの違いを知っていますか?」にも紹介されている。
Amazonは、eコマースにおけるユーザー体験の改善を日々行っており、よりユーザーに喜ばれる、そしてビジネスとして結果が向上するためのUXデザインを施している。そして、その多くが、ユーザーにとっては無意識な部分であり、”こっそり、しかし、しっかり”とデザインされている。
ユーザーを喜ばせ、ビジネス的価値を向上させるAmazonのデザイン戦略
以前、AmazonのCEOであるJeff Bezosは「Amazonは世界で最も顧客を大切にしている会社です」と語った。では、Amazonがいかにして顧客の体験を設計 (CXデザイン) しているのか。彼らのCX/UXデザインのポイントをいくつか紹介する。
1. 意外とシンプル: 膨大な選択肢をあえて最初から提示しない
シンプルである事はデザインのひとつのゴールとなる。その頂点にあるのが「それ以上削ることのない状態= 最も洗練されたデザイン」という考え方。(参考:なぜデザインはシンプルな方が良いのか) もちろん、そのシンプルなデザインで世界中の人々を夢中にさせ続けているブランドの最上級に位置するのがAppleだろう。
その一方で、Amazonのサイトをイメージしたい際に”シンプル”という言葉が出てくる事はほぼ無いだろう。おそらく、沢山のコンテンツが掲載され、ごちゃごちゃしているのではないかと考えがち。
では、本当にそうなのだろうか?下記の画像を見てみよう。
これはAmazon.comのトップページであるが、メインナビゲーションに記載されている内容に注目して欲しい。ご存知の通り、膨大な量のプロダクトを販売しているが、メインのナビゲーションには商品カテゴリーの表示はしていない。
あえて”Departments”の中に”隠す”ことでユーザーにいきなりたくさんの選択肢を与えないようにしている。これは、ユーザー心理学における「ユーザーに沢山の選択肢を与え過ぎると何も選ばなくなる」を理解し、上手にユーザー体験を行なった好例であろう。
そして、ナビゲーションにマウスオーバーした際には、背景のページをダークアウトさせることで、ユーザーの焦点を絞り、心理的な選択肢を限定している。
2. 安心感: 常に安定した体験を提供する
マクドナルドがなぜ世界一のハンバーガーチェーンになったのか?もちろんハンバーガーの美味しさではない。その秘密は安定した顧客体験である。毎日同じ時間にオープンし、一貫したサービスを受けることができ、世界中どこに行ってもほぼ同じ品質のメニューが提供される。
単純なことであるが、顧客にとっては最も重要である”安心感”を提供している。どんなにクオリティーが高い商品だったとしても不安定なサービスやプロセスは顧客にストレスを与えてしまう。人間は得ることへの期待感よりも失うことに対しての不安感の方が大きいので、失うことのない安心感は、UXデザインにおいては大きなアドバンテージになる。
これを上手に活用しているのがAmazonである。同じ商品を買うにしても、他のショップよりも、Amazonの方が好まれる理由は、その購入プロセスおよび発送プロセスが安定しているから。新しいサイトで異なる購入方法を試すよりも、Amazonでおなじみのプロセスの方がストレスが少ない。
また、気にいならなければいつでも無料で返品できる安心感も, Amazon体験のクオリティーをアップさせる要因になっている。顧客に対して、”いつ”、“どこで”、“何が”、“どのように” 手に入るかがわかるのが、安心の顧客体験を生み出す需要なポイントになってくる。
3. 信頼性: Amazonのブランド力を最大限活用
手に取って触ることのできない商品をどのようにして買ってもらうのか?Eコマースサイトの永遠のテーマである。どれだけ頑張ったって所詮バーチャルの域を超える事はないし、色とかサイズを厳密に伝える事は非常に難易度が高い。そこで重要になってくるのがサイトが与える信頼性の高さ。
この点は、オープン当初からAmazonの特徴であった”レビュー機能”がユーザーからの信頼性を獲得することに一役買っている。また、送料無料で返品できるシステムも、信頼性に繋がっている。
そして、実はAmazonが売っている商品の約半分はAmazonからの直売であるが、残りの半分は他のストアが出店している。それに気づかない事が多いのは、外部ストアのページをAmazonがあえて”個性的にできない”ようにしているから。
この辺は楽天と大きく異なる考え方で、Amazonはどのストアからどの商品を購入する際にも”Amazonらしさ”を一貫して提供するようにしている。その理由は明白で、冒頭の数字が示す通り、すでにAmazonが膨大なユーザーからの信頼を得ているから。
もちろんAmazon Primeが提供する特典を活用できる外部ストアも多く、ユーザーにとっては直売でも外部からでも全く違和感のない購入体験を得る事で、”やっぱりAmazonで買おう”と思ってしまうのだ。
4. 透明性: 常に明瞭会計、クリアな配送期間
そもそも数あるEコマースサイトの中で、Amazonがここまで一人勝ちできた要因をご存知だろうか? Webが発達し始めた1990年代には多くのオンラインストアが出現し、Amazonもその一つでしかなかった。(参考: 小さく始める事の重要さ【Amazon, Facebook, YouTube等】大人気サービスの初期バージョンとは)
その中で比較的後発だったが、Amazonで買い物をした場合は消費税がかからなかった。その当時はまだオンラインショッピングに関する法律が整っておらず、アメリカの場合、州外から発送される商品を購入する場合は、原則消費税を払う必要がなかったのだ。
そこに目をつけたAmazonはいち早くその仕組みを取り入れ、Amazonで購入=消費税がかからない、のイメージを構築した。その後、通称「Amazon税法」と呼ばれる法律が導入され、消費税が徴収されるようになった。
現在でもAmazonでの買い物をする際には、税金, 配送料, 手数料など、それぞれいくらになるかがはっきりと明示され、場合によっては曖昧になりがちな購入金額が明確にされている。
また、アメリカだと国が広いため、Eコマースで買い物をする場合はいつ届くかわからないといった不安がつきものであったが、この点もAmazon Primeをはじめ、商品の到着日が購入じにはっきりと明示されている。
このようなユーザーに対してできる限りの情報を明示し、透明性をあげることで、より優れたユーザー体験を演出している。
まとめ: Amazonだってデザインを最重要視している
世界レベルで成功している企業のそのほとんどがデザインを重要視しているのは間違いない。 AppleやGoogleといった”目に見えて”デザイン性の高い企業もあれば、今回のように”目に見えない”もしくはビジネスに対してUXデザインを上手に活用してるケースも多数ある。
Amazonに関しては、生粋のデザイナー的に見るとデザイン性が低いと思ってしまいがちであるが、結果につながるデザインという意味合いで考えると、世界最高レベルであろう。
特に今後はAlexaを始めとした非視覚的UIとそれをベースとしたユーザー体験の設計が重要になる時代であり、デザイナーに必要とされる新しいスキルもどんどん増えていくと考えられる。
ビートラックスが提供するサービスデザイン手法
上記で紹介したようなテクニックは、我々ビートラックスでクライアントと共にサービスをデザインする際にも活用している。デジタルメディアが普及した現代では、人間の行動心理学を意識して体験設計をする必要が出てくる。
同じサービスを作るにしても、そのデザインの仕方ひとつで、速攻アンインストールされるか、使い続けてもらえるかの結果に大きな違いが出てくる。
より詳しいデザイン方法や、実際のプロダクト作りご興味のある方は、ぜひこちらからお問い合わせを。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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