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DXを推進する5Gが実現する5つの未来
- いよいよ導入の5G:そもそも5Gとは / 5Gがもたらす成長率 / 世界の導入状況
- 5Gによって大幅な成長が見込まれる5つの分野
- 1. IoT (Internet of Things)は工業用M2M分野やスマートシティ化に期待
- 2. エッジコンピューティングの開発、導入が更に加速
- 3. あらゆるIoTデバイスを統合するスマートシティ
- 4. より現実的かつ安全な電気自動車、自律走行車の実現
- 5. 5Gによって汎用性を更に加速させるXR (Extended Reality)
膨大な生体データと高度な計算処理能力により、人間そのものをハッキングする者が現れ、「データを操るものが世界を制する」。そんな新時代に突入しようとしているという説がある。
『サピエンス全史』で世界的に有名になった著者、ユヴァル・ノア・ハラリが彼の著書『ホモデウス』や『21 Lessons』でも語っている考えがまさにこれだ。
少し胡散臭い、と思う人もいるかもしれない。
しかし、我々は今まさに次世代のデータ通信の術を手に入れようとしている。それが5Gである。日本でもついに導入される5Gだが、なぜこれほどまで5Gは注目されているのか。日本に導入される前に知っておきたい、5Gによって急成長が期待されるテクノロジー関連を今回は紹介しようと思う。
そもそも5Gとは
すでに色々なメディアで使われている言葉ではあるが、改めて説明を加えておくと、5Gとは第5世代移動通信システムのことで、通信システムの新しい規格のことを指す。5Gはデータ通信の根幹になり、あらゆるテクノロジーの導入、発展、そして進化を加速させる。
それはIoT、AR・VR、AI、そしてスマートシティの実現においても当てはまる。新しい通信システムの普及は、それぐらい多方面に影響を及ぼすのだ。
多くの方がご存知かもしれないが、5Gの3つの大きな特徴は、「超高速・大容量」、「超低遅延」、そして「多数同時接続」という点だ。仮にこれらの機能が全て実現すれば、従来の通信システムを遥かに凌駕する通信機能を発揮し、あらゆるテクノロジーに大きな進化をもたらしてくれる。
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5Gインフラ市場は超ホット
「超ホット」と言われるその理由は、グローバル5Gインフラ市場が2019年から2025年の間に42.84%ものCAGR(年平均成長率)で成長すると予想されているからだ。これは全ての業界を見渡してもトップクラスに入る成長率である。
全てのサービスが5G通信を介して行われるという、BtoBtoX(通信業者toビジネスtoビシネス/消費者という意味)というビジネスモデルが次世代の常識になり得るとも考えられており、通信業者にとって、5G通信の市場シェアを拡大させることは今後の生き残りをかけた最優先事項とも言えるのだ。
5G、世界の導入現状は
2019年4月に韓国が世界で初めて広範囲の5Gモバイル接続サービスを開始したことを皮切りに、世界中で一般大衆向けへの5Gサービスの供給が始まった。(ちなみに韓国では、商業用の限定的な5Gサービスを2018年12月からスタートさせている)
米国では、2018年12月にAT&Tが特定の機器に対して5G通信サービスを開始させたり、Verizonが2019年4月にシカゴとミネアポリスで新型モトローラ携帯のみに向けて5G通信を展開させたのが始まりである。
そして、中国では、2019年10月末に5G通信サービスを50都市でスタートさせており、現時点では、これが世界最大の5G通信の規模であるとされている。
このように世界で各国が、我先にと5Gを普及させようとしているが、かなり段階的なものであったり、特定の地域でのみでのサービスであったりと、まだまだ5Gがインフラとして整っているとは言い難い。加えて、これらの国々では5G接続の遅延が発生したりしているのも現状である。
今後、これらを改善、向上する動きも加速する。したがって、5G導入の今後の展開にも期待を寄せられているのだ。
次の章から、5Gの全世界的な導入を前提に、5Gによって大きく変わると予測されるテクノロジーを紹介する。読者の業界とバッチリはまっていなくても、製造、データ管理、消費者の行動など必ず絡んでくる部分があるので、ぜひ注目していただきたい。
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5Gによって大幅に拡大が見込まれるテクノロジー紹介
1. IoT (Internet of Things)は工業用M2M分野やスマートシティ化に期待
IoT、特に工業用IoTデバイスは5Gとの親和性が非常に高いと言われている。IoTというと消費者向けのデバイスだけを思い浮かべる人が多いかもしれないが、工業用や自動車関連などB2B向けのIoTも普及している。事実、今後数年の間で工業用と自動車関連のIoTデバイスがIoT市場全体の成長における60%ほどを担うという試算が出ている。
そして工業用のIoTデバイスと自動車関連のIoTデバイスは、高速・大容量かつ低遅延でデータの通信を行える5Gだからこそシナジーを生み出す市場なのだ。
特に大量の情報を取り扱う工業マシンが、他の大容量マシンと繋がって処理を行うという部分での期待が高まっている。機械同士のデータ通信を行うことはM2M(Machine to Machine)と言われ、危険な建設現場の工事が遠隔操作で可能になったり、自律走行車自体が周辺環境のデータを逐一他のデバイスから受け取ったりすることが可能になる。
5Gにより、機械同士のコミュニケーションがより円滑になれば、我々がコントロールできる範囲が大きく広がっていくだけではなく、安全かつ効率的に作業が行えるようになるだろう。
(KDDI公式サイトに載っている建設現場×5Gの様子)
2. エッジコンピューティングの開発、導入が更に加速
エッジコンピューティングという言葉に聞き慣れていない人もいるかもしれない。これは、端末の近くに分散型サーバーを配置するというネットワークコンピューティングの技法の1つであり、2020年のうちに全世界で204億個以上のIoTデバイスが使われるようになるだろうと言われている。
エッジコンピューティングは、そこで行われる膨大なデータ通信の混沌化を避け、データ処理や応答速度を上げるために活用されるテクノロジーなのである。簡単なイメージでいうと、IoTデバイスとクラウドサーバー、又は企業のデータセンター等との間にあるものがエッジコンピューティングである。
世界有数の半導体メーカーであるNVIDIAは、クレジットカードよりも小さい、AI機能が搭載されたモジュール、Jetson Xavier™ NXを2019年11月に発表した。ドローンや小型メディカル機器などにも搭載できるとされており、小型のデバイスがIoT化、それもさらに速い速度で複雑なデータ処理が可能となる。
(Jetson Xavier NXのサイズ比較。転載元)
エッジコンピューティングの強みはそれだけではない。個人情報保護の観点から見ても、この技術が応用されることは多くなってくる。クラウドでデータを一括管理している場合、企業のクラウドからデータが漏洩してしまう可能性や、ハッキングされる可能性がある。
しかし、エッジコンピューティングにより、個々のデバイスから送られるデータを処理、加工したあとでクラウドに送信することが可能になるため、さらに匿名性が担保されたデータをクラウドに送ることができる。
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3. あらゆるIoTデバイスを統合するスマートシティ
都市全体が連携し、データにより統括される、「スマートシティ」というコンセプトも夢物語ではなくなってきた。これは街中に張り巡らされた大量のセンサーやカメラ、そしてインフラの管理がリアルタイムでインターネットに接続するものだ。5Gにより高速で大容量のデータを遅延なく交換できるからこそ実現可能になるコンセプトだ。
また、先に述べたエッジコンピューティングの導入と相まって、街中のあらゆるデータを高速に、そしてリアルタイムに処理することも可能となる。例えば、このシステムを街のインフラ管理に導入すれば、上・下水道から廃棄物処理場まで、都市のインフラ全てを一元管理できるようになる。
それだけではなく、電車やバス、自律運転車まで、全ての交通機関を一元化することで、無駄のない公共交通システムの供給が成り立つ。ひいては人手不足などが危惧されているような地方観光業などへの大きな後押しとなる可能性まで秘めている。
大規模なプロジェクトとなるため、実現するためには強いリーダーシップと綿密な計画が必要になってくるだろう。一方で、世界各国の都市ではスマートシティの構想がすでに進んでいる。利権が絡み合って上手く開発計画が進まないケースもあるようだが、地方自治体や政府が理解を深め、技術力のある企業と連携し、主導的に進めていくべきだろう。
(トヨタがCES2020で発表したスマートシティ構想。転載元)
4. より現実的かつ安全な電気自動車、自律走行車の実現
自律走行車にとって何よりも重要視されていることは、安全性である。車の運転者、又は利用者はもちろんのこと、歩行者や周りの人間を含めた全てのユーザーに対して配慮が必要となる。
5Gが膨大なデータの高速かつ遅延のない処理を可能にすることで、自律走行車の判断の遅れやエラーを限りなく少なくすることができる。これにより、自律走行車の安全性技術が大きく進化すると考えられている。
スマートシティ化により街から収集したデータを活用することで、自律走行車やMaaSはさらに精度をあげ、発展の一途を辿る。もし完全自律走行車が実現すれば、モビリティのサービス化にも一気に拍車がかかり、都市部では車を運転する人が減ってくると考えられる。
さらに、地方の公共交通機関などがMaaSに取って代わることで、地方での観光スポット巡りや1人1人の観光プランに沿った交通機関を提供したりすることも可能だと考えられている。
つまり、地方のツアー会社などがUberなどのライドシェアリングシステムを取り入れることにより、効率的かつ、パーソナライズが自由な交通手段を提供できるということだ。このような観点からも、5G導入後のMaaSが地方の観光業を活性化する可能性は大いにある。
MaaSは段階的に進んでいく。ただし、自動車がインターネットにつながり、人を運ぶ箱としてサービスを提供するようになるためには、5Gが必要不可欠なのである。
5. 汎用性を更に加速させるXR (Extended Reality)
XRとは最近話題に上がるAR (拡張現実、Augmented Reality)、VR (仮想現実、Virtual Reality)、そしてMR (複合現実、Mixed Reality)などを総称する言葉である。
VRではOculusなどの家庭用ゲームやSandbox VRなどのアーケード型VRゲームの普及の加速はもちろん、人材育成や研修に活用される事例も増加の一途を辿っている。さらにXR分野のツールが普及すれば、現在オンライン会議で使っているSkypeやZoom、Google HangoutsなどはXRのツールに置き換えられるかもしれない。
例えば、立体的なバーチャル模型を表示しながらプレゼンをしたりすることや、遠距離にいて、直接会って話すことが困難な相手とでも、バーチャルな空間を共有し、より良いディスカッションが行えるようになるかもしれないのだ。
(Spatialが開発しているVRツール。Microsoft HoloLensを通して展開される予定だ。)
また、リテール業界ではどちらかというとVRよりもARが注目されている。現にアメリカでも大手リテールブランド、TargetやWalmart、SephoraなどがこぞってARツールを実店舗にいち早く取り入れており、消費者の購買意欲を掻き立てる施策を打ち出している。
もしかすると、5Gの高速・大容量データ通信に依存ができることで、ARを使用した広告が増えてくるかもしれない。ウェブ広告で、GIF画像やショートクリップを多用しているサイトは数知れないが、とても動きが鈍くなる。しかし、5G通信でならウェブ広告でも動画を使い放題になるだろうし、さらにデータ容量の多いARをウェブ広告に導入するようになってもおかしくない。
XR産業において、5Gは全てのユースケースを増加させ、開発者にとっても現実的なサービス提供のオプションが広がるといった、普及率と汎用性を加速させる役割を担うだろう。
まとめ:2020年代のテクノロジー
もちろん、これから注目すべきテクノロジーはこれだけに留まらない。AI as a Serviceやブロックチェーン、コンピュータービジョンや量子コンピューターなど、目を離せないテクノロジートレンドが目白押しだ。
このように5Gはあらゆる領域において相乗効果を期待されるプラットフォーマーであり、5Gの広がりがこれらの技術開発や普及を後押しすることは必至だ。IoTデバイスやXRの普及、スマートシティの実現まで、5Gによって可能になるコンセプトは計り知れない。
当然、多くのテクノロジーと5Gとの相乗効果を考える上で、重要なのは5G通信の質になる。安定した5Gの機能が持続して使用できないと、それに依存したテクノロジーの提供は難しいからだ。
日本では、2020年春にいよいよ5Gモバイル接続がスタートする。初回はまだ限定された範囲でのリリースだが、先に5Gをスタートさせた国々でもその質・範囲が徐々に向上してきているため、日本の5G通信の急速拡大にも期待が高まる。
5G通信でこそ実現可能なテクノロジーや、5G通信だから必要とされるテクノロジー、そして5Gにより劇的に進化するテクノロジーの領域は計り知れない。いち早く新たな可能性を見出し、そこに自社の技術を応用させることは明日の生き残りをかけた戦略であると言っても過言ではない。これからこの「計り知れない」部分に食らいつく必要があるのだ。
最後に
今年からプログラミング教育が小学校で必修科目になったり、電気自動車が台頭したりと、10数年前までは予想だにしなかったことが起きている。このような時代の新しい波に乗り遅れないように生きていくことは容易ではない。絶えず変化を促しイノベーションを起こし続けるためには、その根本となるマインドセットから変えて、ユーザー中心にサービス開発していく必要がある。
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