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2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選
- IoTは人の生活に密着しているもの。2019年に話題となった注目されているIoTを知ることで人の価値観の変化を探れる
- PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi:快適・便利なデジタル靴紐
- Oculus Quest、Oculus Go:VRはここまで身近なものになってきている
- CasperのThe Glow Light:良い睡眠のための光を提供
- Flic:様々な操作をボタン1個でシンプルに
- NorthのFocals:おしゃれが当たり前のスマートグラス
2020年を迎えるにあたり、ぜひ最新IoT情報をアップデートしていただきたい。IoTは人の生活により密着しており、ライフスタイルや嗜好、価値観がどのように変わっているかを垣間見ることができる。
さらに、ここ、サンフランシスコ・シリコンバレーにはb8taやTarget Open Houseといった、最新IoTガジェットをキューレートしてショールーム的な展示や販売をしているお店があり、最新IoTと触れ合う機会が多い。
アーリーアダプターも多いので、IoTに限らず常に最新テック系サービスを生み出し、育てていくエコシステムがあるのだ。
そこで今回は、IoTやテック系サービスに関して日本より数年先を行くサンフランシスコ・シリコンバレーを中心に、2019年に話題となったIoTガジェットを紹介する。
PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi
PUMA Fiはドイツの大手スポーツメーカー、PUMAが開発したスマートスニーカーだ。独自のFit Intelligence(Fi)技術を活かして、靴紐のない、『デジタル靴紐』なるものを生み出した。
下の動画を見ていただければわかる通り、コードのようなものはあるが、結ぶ必要のある靴紐はない。靴の甲の部分にあるセンサー部分を上下にスワイプすることで、『デジタル靴紐』のきつさを何段階かで調整できる。
また、スマートフォンやスマートウォッチからの調整も可能で、色々なシーンでの活用を想定したデザインになっている。例えば、旅行の際、飛行機に乗っている時は足の浮腫が気になった時、あるいはリラックスしたい時には靴紐は緩め、歩いて移動中の時は靴紐を絞める、といった調整が簡単にできるのだ。
実はPUMAは1986年にもコンピューターを搭載したスニーカーを開発していた。それ以来、テクノロジーを駆使したスマートスニーカーを追求してきた。今回のFit Intelligence技術は、よりスマートで、軽く、もっと一般に向けたものになっているという。
実際に、2019年4月から、応募によるベータ版の販売が地域限定でされており、すでに30,000人の登録があった。販売は2020年の春を予定しており、値段は330ドルとなっている。
こういったスマートスニーカーが出ると、映画バック・トゥー・ザ・フューチャーの世界が現実になっている!と騒がれる。このプロダクトは、映画が公開された1989年に、人々が想像していたということだ。
新しいトレンドの創出は人間の想像があってのことであり、この想像が現実となり、もう数万円でも手に入るような時代になっているということがPUMA Fiの例からもお分かりいただけるだろう。
VRゲームを格段に身近なものにしたOculus Quest、Oculus Go
OculusはVRヘッドセットとそのソフトウェアの開発・販売を行うスタートアップだ。
2012年にカリフォルニア州アーバインで創業すると、ゲームコンソール用VRのメジャープレイヤーとして成長を続け、2014年には20億ドルでFacebookの傘下となった。
買収後3年ほどは売上増加に繋がらず、Oculus買収はFacebookの目の上のたんこぶか、とも思われたが、2019年、Oculusが起死回生の一打として貢献することとなる。
2019年第三四半期、Facebookの広告以外による売上が2億6900万ドル(約269億万円)に達し、前年比43%の増加となった。その主な要因がまさに、Oculus Questなのだという。
Oculus Questは、より気軽で、使いやすいVR体験を提供している。今までの本格的なVRゲームは、パソコンやケーブルの接続が必要だったが、Oculus Questはパソコンも、ケーブルも不要になった。しかも価格は399ドル〜。これは、今までのゲームコンソールと比べて大きく変わらないどころか、むしろその技術力の高さを考えると、リーズナブルなのではと思ってしまう。また、スターウォーズシリーズのゲームも人気の理由だ。
さらにQuestは2019年だけで、130万台売り上げるのではないかという予測も出ている。
また、Oculusはゲームだけでなく、映画や動画を楽しむためのVRヘッドセットも開発している。Oculus Goは、映画や動画などの視聴に特化した、より持ち運びがしやすいモデルだ。別のユーザーと同時に、バーチャルでVR視聴することもできるようになっている。価格は199ドル〜なので、VR初心者でも、より手を出しやすくなってきている。
2018年5月に発売してから販売出荷数が約100万を目前にしているという情報まである。
ちなみにOculusは、ソーシャルグッドのためのVR開発にも力を入れていて、車椅子の人がいろんなところに旅行できるようなVRや、アメリカの黒人に関する歴史についてよりリアリティを持って学べるようなVRコンテンツがある。Oculusの活躍の幅はゲームに留まらないようだ。
ところで、VRヘッドセットはIoTという認識はあまりされないのかもしれないが、インターネットに繋がっているもの(ゴークル)と考えれば含まれる、という解釈で追加した。2019年を通して注目のガジェットだったことは間違いない。
睡眠を考え抜いたCasperがデザインしたライト、The Glow Light
CasperはマットレスのD2C(Direct-to-Consumer)ブランドのパイオニア的スタートアップだ。2014年に創業し、累計約3億3970万ドルの資金調達をしてきた。2019年にはユニコーン企業の仲間入りし、IPOも噂されている。
Casperは主力製品であるマットレス以外にも、枕、ベットフレーム、シーツなど商品ラインナップを拡大してきた。そして2019年に、The Glow Lightというポータブルスマートライトをローンチした。価格は129ドル。
The Glow Lightはベッドサイドテーブルなどにも置ける、小型のポータブルLEDライトだ。人の睡眠より快適にするための様々な特徴がある。まず、点灯・消灯はライトを上下にひっくり返すことで可能だ。ライトは眠い時でも簡単にひっくり返せるくらい軽いので、従来のボタンを押したり引いたりする動作よりも簡単だ。
また、リラックスして睡眠に入れるように、The Glow Lightの光は温かみのあるものになっている。光は徐々に弱くなり、眠りに誘ってくれる。
さらに、起床の時間を設定しておけば、その時間に優しい光によるアラーム機能も果たしてくれる。時間の設定は専用アプリからカスタマイズできるようになっており、就寝の時間も入れておけば、睡眠リズムに沿って光によるサポートをしてくれるのだ。
The Glow Lightのデザインも人の睡眠を徹底的に考え抜いたものになっている。どんなインテリアにも馴染むデザインでありながら、Casperの心地よさも感じるフォルム。子供でも持ち運べるサイズ感。
光の強さは、ライトを回して調整できるのがわかりやすく便利。夜中にちょっと起きて何かするときも、ライトを軽く振れば豆電球程度の光がつく。これは、ユーザー観察やプロトタイプを重ねて開発されたようだ。
Casperはただのマットレスブランドではなく、人の睡眠をデザインするブランドだ。また、D2Cビジネスの根幹には、ユーザーとより近い距離で、彼らのフィードバックを得られるというメリットがある。
ユーザー中心でプロダクトをつくってきたCasperだからこそマットレスという主力製品に留まることなく、ここまで考え抜かれたThe Glow Lightが生まれたのではないだろうか。
ボタン1個というデジタルデバイス、Flic
Flicはスウェーデン、ストックホルム生まれのスタートアップ。2013年に創業した。累計調達金額は約110万ドル。従業員も100人にも満たない規模ではあるが、今までに20万個のFlicを110以上の国で販売してきた。スマートフォンアプリや家電用のスマートボタンというシンプルなデバイスなのに、ここまで拡大している。
FlicはBluetoothでスマートフォンと連動させて使う。Flicの専用アプリから、ワンクリック、ダブルクリック、長押しといったボタンを押す動作をトリガーに、どのアクションを起こすかのカスタマイズをする。例えば、かかってきた電話をとったり、音楽を再生したりと、設定次第で使い方の幅は様々だ。
Flicは複数個、いろんなところに設置するような使い方も想定されている。つまり部屋の中だけでなく、自転車や車のハンドルなど色々な場所にFlicをつけておけば、ボタンひとつでコントロールできるもの、シーンが増える。
現在は、スマートフォンのコントロールだけでなく、家にあるスマート家電などの操作もできるようになっている。スピーカーや照明、テレビなど、異なるメーカーのデバイスであっても、Flicをリモコンに、操作できるようになるのだ。
実は2019年のCES(Consumer Electronics Show)で、GoogleがスマートボタンによるGoogleアシスタントのデモがお披露目されていた。ボタンによるスマートライフの構想が徐々に拡大・浸透してきているのだ。
関連記事:主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント
Flicにはワンクリック、ダブルクリック、長押しの3つの操作しかない。それをスマートフォンや、スマート家電と接続することで、シンプルでシームレスなスマート体験が生まれる。
ボタンが1つしかないと聞くと、不便さや不十分さを感じるかもしれないが、ユーザーがよく使う操作に絞ることで、リモコンより格段に便利に感じるのだろう。しかもFlicは色々なところに設置できる(設置しても気にならないデザイン)。
これは少し筆者の感覚の話になるが、Flicのボタンは、「今までのボタン」っぽい感じが残っている。押した時の「クリッ」という音と感覚は、どこか無限プチプチのような、「なくても問題はないが、なぜか押したくなる感じ」がある。このような定性的な要素も、昨今のIoTガジェット激戦の中で差別化を図るための特徴となってくれていることだろう。
おしゃれスマートグラス、NorthのFocals
ウェアラブルデバイスとして、スマートグラスも開発が進められてきたが、そのほとんどが「技術的にはすごいけど、なんかダサい、サイボーグ感」がなかっただろうか。
NorthのFocalsは、スマートグラスのグラス(メガネ)の部分のデザインにこだわったウェアラブルデバイスである。ぱっと見た感じは、おしゃれなメガネという印象だ。Focalはホログラム技術により、スマートフォンと連動した通知や情報をメガネのガラス部分に映し出してくれる。メガネの度あり度なし、どちらでも可能だ。
Northは2012年にカナダで生まれたスタートアップ。2019年2月には150人の従業員を解雇したり、カナダ政府からの投資が中止となるなどのニュースがあったが、同年5月には4000万ドルの資金調達へと持ち直した。現在はAmazonやIntelからの資金調達を含め、累計額は1億1960万ドルとなっている。
Northのミッションの1つは、テクノロジーやデジタルコンテンツと現実世界の境目を無くすということだ。インターネットを使っていると、現実世界から遮断される。また逆も然り。このような状況に、なるべくグラデーションをもたらそうとしている。Focalはそのためのツールだ。
ホログラムディスプレイのスマートグラス試してみた。期間限定のショールームトラックが出現。 @focalsbynorth 個人の耳、眼、視線からカスタマイズする。右のレンズにスマホアップの通知や情報が映される。
デザインもスマートグラス感は少ないし、フレームの種類も割とある。$599~。いかが? pic.twitter.com/wLLSBYK4mU— Yasuko🇺🇸マーケ今🇯🇵 (@Yasuko_official) March 5, 2019
(ここサンフランシスコでもNorthのショールームトラックが来ていたので筆者も試してみた)
使い方も複雑なものではない。Northのスマートリングと専用アプリと連動させれば、細かい操作や設定も可能となる。スマートリングはコントローラーになり、アプリを開かなくても、レンズに表示された項目の選択が可能になる。
Google Mapのナビ機能、Uberの配車リクエスト、カレンダーやメッセージなどの通知、音声認識によってメッセージへの返信もできるようになっている。
もちろん、耐水性もあり、UV効果やサングラスに切り替えることもできるので、普段使いが前提にデザインされていると言える。
価格は599ドル〜(2019年12月現在生産がストップしている様子)。まだ身近で使っている人を見かけたことはないが(もしかすると普通のメガネっぽすぎて気づいていないだけかもしれない)、Apple Watchのメガネ版と言われているあたり、徐々に浸透してくることが期待されている。
まとめ:IoTを考え、人の価値観を考え、サービスを作ること
IoTは私たちの生活に確実に入り込んできていて、IoTに人々の新しい価値観が詰まっている
『IoT』が2017年、2018年ごろ、多用されていたが、2019年は前ほど聞かなくなった。一方でApple Watchやスマートスピーカーなど、多くの商品が世に出て、使っている人も増えてきたと感じていないだろうか。
以下、Google Trendsを見ていただいてもわかる通り、IoTは2017-2018年あたりをピークに、2019年は減少傾向にある。一方で、Apple WatchはAppleの新製品発表会のたびに増加し、通年通しても徐々に増えてきていることがわかる。
つまり、IoTというより、Apple WatchやGoogle Homeといった、より具体的な製品としてIoTが生活に浸透してきていると考えられる。
IoTを考えることは人の価値観を考えること
多くのIoTガジェットは、エンドユーザーに直接接触するものであり、彼らの生活に密着している。スマートスピーカーなどは、声で指示を受けて家事をこなし、生活を豊かにしてきた。IoTは新たな価値観を作り出してきたものだ。それと同時に、注目されているIoTを知ることは、人の価値観がどう変わってきたかを知れるきっかけでもある。
そして、価値の創造や提供に欠かせないのが「体験」だ。今回紹介したブランドはどれもものに留まらないサービス・体験の提供をしている。
ただハイテクな靴を追い求めた訳ではない、ただ機能が優れたライトを作った訳ではない。そのベースに人を考えた考察があるから、人に深く刺さり、イノベーションの創造へと繋がっているのだ。
人を中心にサービスを考える、というのは頭でわかっていても、今まで培ってきた技術力や社内の組織的な課題、時に無意識的な価値観が邪魔して上手く実行できないことも多い。btraxではそのような目的を持ちつつも、自社だけでは解決しづらいという方々を多くサポートしてきた。
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