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【Mobility as a Service】人々の“移動“を変革する最新MaaS スタートアップまとめ5選
- MaaS とは「様々な種類の交通システムを、効率よく統合し1つのプラットフォームを介して利用できるようになる」こと
- どこまでがMaaSに当てはまるのかは曖昧で、①情報の統合、②予約・決済の統合、③サービス提供の統合というレベル別で理解されることが多々ある
- MaaSのグローバル市場規模は2017年に約4兆円。2025年にはおよそ10倍の40兆円になる予想
- 注目MaaSスタートアップ5選を紹介:DUFL、Zeva、Geosure、moovel、Bestmile
移動は我々の生活の軸であると同時に、マイカーによる排気ガスの問題や、車などを所有することの不便さや複数のアプリを使った複雑な移動など、移動に関する課題は数えきれないほどある。
そのような課題を解決すべく出てきた概念がMaaS(Mobility as a Service)である。
本記事では、そもそもMaaSとは何かをおさらいし、MaaSが注目される理由についても言及する。そしてこのMaaS市場で、今後大きな活躍をする可能性に満ちたスタートアップをあらゆる視点から紹介したい。
そもそもMaaSとは
「【2018年】モビリティ業界で注目され始めたMaaSとは?」の記事でも述べている通り、MaaS とは「様々な種類の交通システムを、効率よく統合し1つのプラットフォームを介して利用できるようになる」ことである。
MaaSは1つの概念であり、どこまでがMaaSなのかということに関しては曖昧である。
ここでは、MaaS業界で良く用いられるレベル間に基づき、サービスへの統合の程度に応じて以下のようなレベルに分けられると、定義する。
(図はこちらの情報に基づき筆者が作成)
レベル1:情報の統合
渋滞情報や建物の情報などのリアルタイムデータを分析し、車・電車・徒歩など複数のモードで移動ルートをユーザーに提案するレベルのこと。目的の場所までのルートを提案するGoogle Maps や乗り換え案内アプリのNAVITIMEなどがそうである。
レベル2:予約・決済の統合
レベル1の機能に加えて、予約・決済システムが付け加えられたレベルのこと。移動ルートの提案後、予約・決済ができるアプリPikaway(Skipr, Inc)や、ライドシェアリングサービスUberなどがそうである。
レベル3:サービス提供の統合
公共交通機関をはじめ、レンタカーなどの複数の事業者間で連携したサービスや料金体系の統合がなされるレベルのこと。電車やレンタカー、タクシー、ライドシェアなどのサービスを決められた範囲内で自由に月額制で使えるUbigoなどがそうである。
また、こういったアプリやサービスだけでなく、それらを取り巻く環境もMaaSと言われることがある。例えば、自動運転のタクシーなど移動手段そのものがそうだ。
MaaSが注目される理由
人々の軸となる移動を便利にしてくれる事に加え、MaaSが注目される理由の1つとして、MaaSがもたらす環境へのインパクトや日々の移動手段に関する悩みを解消してくれる点がある。
プライベートでどこにでも移動できるマイカーであるが、交通渋滞や駐車による土地の無駄遣い、環境負荷など、マイカーが引き起こす問題は多い。
国土交通省によれば、マイカーによる単位輸送量当たりのCO2排出量は鉄道の7倍、バスの2倍以上であるといわれている。
移動の効率化を図るMaaSがそれらマイカーの問題を解決してくれる期待はかなりあるのだ。
事実、MaaSの世界の市場規模は2017年で約4兆円だったものが、2025年にはおよそ10倍の40兆円になると言われている。
日本でも、そのMaaSブームは健全しており、三井不動産と、フィンランドにあるMaaSプラットフォーム「Whim」を提供するMaasGlobal社が協定を締結したのも最近の話題である。
今回紹介するMaaSスタートアップは日本以外の国が発祥の注目企業である。ぜひ視野を広げるため、ヒントを得るためにも注目していただきたい。
MaaSスタートアップ5選
1.DUFL「手ぶらで出張」の時代を作るパイオニア
レベル: 2(予約・決済の統合)
サービス概要 :
2014年にロサンゼルスで始まった、旅先や出張先での服の管理をスマートにし、人々の移動をより楽にしてくれるスタートアップ。
ユーザーは、自身の衣類などをDUFLが所有するクローゼットにあらかじめ宅配便で預けておく。
そして、アプリ上で、そのクローゼットから自分がピックアップしたい衣類とや旅や出張の行き先を選択し、ユーザーは目的先で洗濯済みの衣服を受けとれるというサービスである。
DUFLを使うことで、旅・出張中の洗濯・乾燥・スーツケースから服を引き出す・服を持ち歩くという行動が必要でなくなるのだ。同社は1回の旅行で3~5時間節約できると提言している。
他にも、服だけでなくスポーツ用品をドアtoドアで目的地まで届けてくれるサービスDUFL Sportsなども提供している。
注目の理由:
彼らの注目すべき点は、ユーザーの継続率だ。出張に出向く多種多様なビジネスマン含め、利用者の満足度はかなり高く、その継続率は驚異の99%だという。
また、ロサンゼルスから始まったDUFLだが、同社は300万人以上のゴルファーのユーザーがいるGolf Digest Online(GDO)Japanと提携し、ゴルフ分野で日本にも勢いを伸ばしている。
ちなみに、創業者であるBill Rinehartは、15年間で5社を起業し、全てを成功に導いた凄腕のシリアルアントレプレナーである。
共同創業者であるAbdrea Grazuabu、AJ McGowanは、共に以前Bill が創業した会社でも活躍していた逸材である。
2. Zeva 都会内の少しの移動でも、スマートに、安全に使える電気航空機を作るスタートアップ
レベル: なし(次世代モビリティ)
サービス概要:
2017年、ボーイング社が主催するGoFlyというエアモビリティ開発コンテスト参加と同時に創業した、次世代エアモビリティのスタートアップ。
同社は、ドアtoドアで人を運ぶ、1人用航空機『eVTOL』を開発しているのだが、その特徴が驚くべきものである。
まず1つ目が、機体の供給源が燃料ではなく、100%電気だということだ。電気であるがゆえに、排気ガスは一切出ないのも特徴である。
次に2つ目が、ほぼどこでも離着陸できるということだ。ヘリコプターなどは専用の着陸地点が必要である一方、eVTOLでは決められた着陸地点はない。
最後の特徴が、1回の充電で最大50マイル(80km)を時速250kmで移動できることだ。これは東京駅から群馬県までの距離を約20分で移動するのに値する。
彼らは、実動する状態のeVTOLを2020年に世界に発表し、エアタクシーなどのサービスを経て、2040年には私たち1人1人がeVTOLを使っているような世界を目指している。
注目の理由:
注目すべきは、eVTOLの実現性である。
モビリティ産業で問題になるのがパーキングスペースであるが、同社は、ビルや家の開閉可能な窓・壁にeVTOL専用のドッキングシステムを取り付ける事でその問題を解決している。
加えて、そのドッキングシステムは、eVTOLの充電できる仕組みならびに操縦者が乗り物から直接ビルに安全に入れる仕組みになっているので、乗り物と目的地の距離が遠いという課題をも解決する。
都会の中で移動できる航空機、Urban Air Mobility(UAM)は、私たちの生活を一変させるかもしれない。
3. Geosure 安全な旅を女性・LGBTQ含む全ての人に提供
レベル: 1(情報の統合)
サービス概要:
2013年にカリフォルニアで始まった、各都市・地域の安全度がすぐに分かるアプリを提供するスタートアップ。
ユーザーは、アプリを通して、各都市・地域の以下7つのカテゴリの評価値を1~100のレンジで見る事ができ、自分がいるところ、もしくはこれから行くところの安全度をわかるようになっている。
- 全体的な安全度
- 外的負傷をする可能性
- 法律的な自由度
- スリの頻度
- 清潔さと病院へのアクセス
- 女性に対する危険度
- LGBTQの許容度
アメリカ政府や国際連合などが同社の評価に協力しているのに加え、現地にいる人、もしくはすでにそこへ行った事がある旅行者も評価をしているので、評価の信頼度はかなり高い。
また、従業員数は10人以下と小規模なスタートアップではあるものの、すでに4万以上の地域が登録されており、ユーザー数も右肩上がりである。
注目の理由:
彼らの注目すべき点は、何といっても女性やLGBTQのユーザーに対して重きを置いているところである。
アプリの評価軸である7つのカテゴリの内の2つが女性やLGBTQの方のための評価軸である事が主張している通り、同社は旅行でより治安や安全面を気にする女性やLGBTQの方をもターゲットに置いている。
それは、彼らの旅行のハードルを下げると同時に今後のMaaS業界の幅を広げるかもしれない。
また、コアメンバーの中に女性エンパワーメント担当の方がいたり、LGBTQの許容がある街ランキングなどのコンテンツも提供しているのも、注目すべきポイントだ。
4.moovel「街をよりスマートに」、交通機関に革命を起こす巨大プラットフォーム
レベル: 3(サービス提供の統合)
サービス概要:
2013年ドイツで始まった、街をよりスマートにする巨大マルチモデルプラットフォームを作るスタートアップ。
誰しもが、どこかに移動する上で面倒くさいと感じていた、検索、予約、決済の手順を、アプリ1つでスムーズに完了できるサービスを提供している。
ユーザーは、カーシェアなどを含めた全ての交通機関を検索対象した目的地までの最短ルート、所要時間の確認、さらには、チケット予約に加えApple payなどを用いた決済を、手軽にこのサービス1つで使う事ができる。
同社は他にも、通勤にかかる費用や割引運賃などを管理するアプリをも提供するなど、アプローチしている分野は多種多様である。
注目の理由:
彼らの注目すべき点は、その規模の大きさにある。
BMW Group、Daimlerの傘下にあるmoovel だが、他にも10個以上のモビリティサービスがBMW Group等の傘下にあり、それらを含めれば、同社が持つネットワークは17カ国以上130都市以上にも及ぶ。
また、2013年に始まったmoovel だが、現在北アメリカにも進出しており、2019年1月時点でユーザーが世界合わせて計650万人に達した。昨年の成長率は69%増と、彼らの勢いはとどまる事を知らない。
5. Bestmile AIと人間の運転を共存させるシステムを開発するスタートアップ
レベル: 3(サービス提供の統合)
サービス概要:
2014年に創業し、スイスを拠点とした輸送ソフトウェアのスタートアップ。サンフランシスコにもオフィスを構える。
Bestmileは、誰もが効率良く交通機関を使えるようにするというビジョンの元、自動運転シャトルバス、ロボタクシーなどの次世代モビリティを提供する他、
自動運転だけでなく人間の運転にも対応する車両の情報を一元管理するシステム(以下、車両管理システムと呼ぶ)をも提供する巨大プラットフォームを持つ。
最新の交通・地理情報を分析し、車両が最大限に稼働できる方法を導き実行する車両管理システムは、車両オペレーションに対する需要と供給のバランスを最大に保つことを意味する。
注目の理由:
競争が激しい車両管理システム業界であるが、Bestmileが注目される理由は、次世代モビリティと車両管理システムが融合したその将来性にある。
人間が運転する車両を管理するシステムは多いものの、AIが運転する車両をも管理できる将来性があるBestmileは、車両オペレーション業界に革命をもたらすかもしれない。
また、同社は、5~10年以内に産業の市場にインパクトを与えるだろうと言われている、『Global Cleantech 100 in Europe(ヨーロッパで最も革新的で世界的クリーンテック100社)』の1つに選ばれた。
さらに、Bestmile の共同創業者でありCEOである Raphael Gindratは、数多くの国際的な産業組織でも活躍をしているイノベーターであり、彼本人にも注目する必要がある。
まとめ
今回紹介したスタートアップは、次世代モビリティのスタートアップから、”移動”に関わる各ステップを包含したプラットフォームスタートアップまで、多種多様なMaaSスタートアップであったが、
彼らに共通するものとして、人間の生活の一部である”移動”というものに着眼点をおき、そこに対して様々な状況・様々な人の移動のUX(ユーザーエクスペリエンス)を高めていることであった。
彼らを筆頭としてMaaSにより、誰もが、どんな時間・どんな状況でも、全くストレスなく”移動”できる世界は近いのかもしれない。
MaaSが移動のUXを高めているように、ユーザー視点からプロダクトやサービスを考える事はイノベーションへの一歩ともいえる。
btrax では、そのようなユーザーの価値に焦点を当てたリサーチやサービス開発、グローバル展開サポートを提供している。ご興味、ご相談などがあれば、是非一度お気軽にご連絡を。