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デザインに関する流れをカテゴリー別にふりかえる
デザインを取り巻く環境はどのように変化したのであろうか? おそらくここ10年の中で、最も世の中の注目が高まった一年であると言える。実際、経済産業省は「『デザイン経営』宣言」としての報告書を発表し、日本企業に対して経営におけるデザインの重要性を提唱。
また、マッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果になっている。
では、異なるデザイン分野において今年はどのような動きがあったかを総括してみる。
UXデザイン系
デザインを経営に役立てる方法として、これでまでもデザイン思考の活用を始めている企業も少なくはなかった。それに加え、ここ数年で注目されてきているのが、UXデザインのプロセスであろう。
UXデザインがビジネスの差別化要素に
デザイン思考でユーザーのニーズを理解し、それを元により具体的な体験に落とし込むのがUXデザインの役割であるが、その体験の品質の差によって、ユーザー格闘数、売上数、そして最終的な企業の利益にも大きく影響する。
その品質を計る基準として「UXハニカム」や「UXピラミッド」などを活用し、より体験価値の高いサービスづくりを追求することが求められ、企業にとっての大きな差別化要因になっている。
データを活用したUXデザイン手法
これまでデザインの領域はどうしてもニュアンス重視になりがちであった。しかし、2018年ごろからデータをUXデザインに活用することについての現実性が高まってきている。一つに、各種データ獲得が実現し始めていることと、施したデザインの効果を具体的な数字で測ることができるようになってきているからである。
この「データドリブンデザイン」の概念は2019年以降もより加速する勢いで、今後経営に対するデザインのROIを測る上で、非常に重要な手法となることは間違いないだろう。
UXデザイナーの役割の細分化
ビジネスにおけるUXデザインの受容性が高まるにつれ、一言に“UXデザイナー”といっても、その役割は多種多様になり始めてきている。これは、企業内にUXデザイン部署を設置する企業が増えていることからも理解できる。
具体的に海外では、UXリサーチャー、UXコピーライター、UXプランナー、など必ずしも「デザイナー」の枠に収まりきらないタイプの職種も生まれ始めている。
その一方で、「なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?」をみても分かる通り、日本国内においてのデザイナーの地位は必ずしも高くなく、今後日本企業がグローバル規模での競争力を高めていく上では不可欠な分野になっていくと考えられる。
UIデザイン系
次にユーザーインターフェースに関するトレンド。マルチデバイス化がより進み、モバイルオンリーや、GUIを有しないタイプのサービスも増えている中で、UIデザインを取り巻く状況にも変化が訪れている。
パーソナライズドUI
ユーザーニーズの多極化と、ユーザーデータを元に、UI自体がそれぞれのユーザーごとに”カスタマイズ”されるケースが増えてきている。これは、それぞれのユーザーの行動や、インプットに応じ、より最適な体験を提供するために、インターフェースが”変動”するというコンセプト。
例えば、下記のTesty Burger appも、それぞれのステップでユーザーが選んだ選択肢に応じ、コンテンツだけではなく、インターフェースも最適なものにどんどん変化する仕組みを採用している。
Voice UI
以前より話題になってきているスマートスピーカーをはじめとして、ユーザーからの音声によるインプット量が増えてきている。現に、Google全体の検索の約20%が音声経由でされているとも言われており、今後その分量も大きく増えるとされる。
これはスマートスピーカーやアプリの普及に加え、最新の自動車にもどんどん音声入力機能が実装され始めてきているため。
そうなってくると、UIデザイナーたちは、ビジュアルに頼らない音声によるインターフェースづくりに関してのノウハウを身につける必要がある。ここにまた新しいタイプのUIメソッドが求め始められている。
ナビゲーションレスUI
特にモバイルデバイス向けのUIをデザインする時には、デザイナーたちは、限られたスペースをどのように活用するかに頭を悩ませることが多い。そこで生み出されたコンセプトが、ナビゲーション系のボタンを全て排除してしまう方法。
ナビゲーション方法は、基本的にスワイプとコンテンツのタップのみ。こうすることで、画面全体にコンテンツを表示することができる上、ユーザーに対してより直感的なナビゲーション体験を提供することが可能になる。
下記のデジタル百科事典アプリの例でも、ナビゲーションレスのUIを採用しており、より次世代の利用体験を実現している。
ブランディング系
デザインを企業価値に変換する一つの方法論としてブランディングがあるが、今年はいくつか面白い例があったのでリストアップしてみたい。
スタートアップのロゴスタイル類似問題
シリコンバレーを中心に、多くのスタートアップが成熟期に入ったことで、ビジュアルアイデンティティのアップデートが行われている。
その中でも、ロゴのスタイルがどんどん似通ってきている。具体的には丸みを帯びたサンセリフ系のタイプフェイスの太めのスタイルを使い、カーニングを詰めたタイプのものが多くなってきている。
このロゴの変革は、既存の概念を破壊するユニークなサービスから、日々使いたくなるシンプルで使いやすく分かりやすいサービス体験をビジュアルとして表現しているのである。
スターアップの存在としても、ユニークなサービスを通じて世の中に変革をもたらす役割から、ユーザーの生活の一部に欠かせない存在になる事に変貌をとげ、それを具現化する方法の一つとしてロゴが存在している。
アプリ系はCIよりもアイコンの方が重要に
スタートアップの”ロゴ”と言った場合、最近ではその多くが”アイコン”をイメージする事が多いだろう。その理由は単純で、アプリのアイコンそのものがロゴの役割をしているから。
厳密に言うと、ロゴはアイコン部分のロゴシンボルと文字の部分のロゴタイプに分けられるのであるが、現代においてはとりあえず”アイコン = ロゴ”の認識が一般的になりつつある。
Uberのリブランディング
以前に「非デザイナー社長が自社リブランディングに関わるとどうなるのか – The Case of Uber」でも紹介されたUberが2018にもう一度リブランディングを測った。
今回は、Wolff Olinsによってアイデンティティーをはじめとしたデザインシステムとビジュアル言語が設計され、より親しみやすいタイプのデザインに変換された。
例年にもIPOを目指しているUberとしても、しっかりとしたデザイン資産の構築が始まったと感じられる。
イノベーション系
デザインを活用した企業イノベーションを生み出すことをゴールとしたイベント「DESIGN for Innovation」が今年も開催された。ゲストスピーカーには、日本を代表する大企業でイノベーションを生み出す役割を果たしている方々や、デザイン業界で第一線を走る方々が参加。
また、btraxのクリエイティブトップである、Jensen Barnesによるデザインスプリントワークショップの実施や、2018から公式にbtraxのアドバイザーにも就任した澤円氏による、日本企業がイノベーションを生み出すために変えるべき慣習や考え方のプレゼンテーションも提供された。
このイベントは来年も開催予定で、その情報はbtraxの公式Facebookページ, 公式Twitterアカウントなどで告知される。
イベントの様子はこちらから:
これからの展望
これからも、より多くのビジネスが、デザインへの注目を高めていくと考えられる。今までは世界的な好景気もあり、デザインはまだまだ”Nice-to-have-option”であったと感じる。
しかし、今後訪れるであろう、変化の激しい不安定な状況で、競争優位性を担保していくためには、デザインが”必要不可欠=Essential”な存在になっていくことは間違いない。
そのためには、企業全体がデザインに対しての理解と、その上手な活用が急務になるはずである。イノベーションデザインサービスを提供するbtraxの代表として、企業の経営におけるデザインの有効的な活用を提供し、微力ながらも日本企業のグローバル市場における価値向上のためにより一層貢献できたらなと考えている。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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