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【SF Pitch Night 2022から学ぶ】世界の起業家が語る、起業の経緯と成功までの軌跡
SF Pitch Night 2022が今年も開催され、大成功に終わった。
SF Pitch Nightとは、btrax主催のグローバルスタートアップピッチイベント。福岡市のグローバル起業家育成プログラムにおいて選抜されたピッチ候補者と、世界中から集まった次世代を率いる先鋭スタートアップを迎えてピッチバトルを行うイベントだ。
今年で通算6回目となる本イベント。2021年からはオンラインで開催しており、今年は2度目のオンライン開催となった。
今年度は初の試みとして、ピッチイベントの他に、世界中から集まった3名の起業家の方々を招いてファイヤーサイドチャットを行った。
本記事はその内容をもとに、「起業した経緯と今までの経験」、「スタートアップの今と未来」、「3人が考える”起業家”とは」というテーマ別でまとめたものだ。
登壇者
ファイヤーサイドチャットの登壇者はこちらの3名の起業家たちだ。
Yury Israilvsky
Co-founder & President, Product Engineering at Clickhouse
25年間、YaHoo、Netflix、Googleなどのシリコンバレーの企業に勤めたのち、 2021年にClickhouseを創業。
Brandon K. Hill
CEO & Founder, btrax, Inc.
サンフランシスコ州立大学デザイン科卒。サンフランシスコに本社を置くデザインエージェンシーbtraxのCEO。
グローバル市場向けのイノベーション創出をミッションに、ブランディング、サービスデザイン、UXデザインを主軸とし、これまでに300社以上の企業にサービスを提供。
Jason DePerro
Associate Design Director at Frog Design
Apple、Samsung、Capital One、Silicon Valley Bankなどの企業でデザインリードをつとめる。現在はFrog Designのデザインディレクターとして、スタジオのサステナビリティ推進にも携わっている。
起業した経緯と今までの経験
なぜ現在のキャリアを歩んでいるのか。なぜ経営者になったのか
経営者になる人々は、なぜ自分で会社を経営する選択をしたのだろう。3名に伺ってみた。
Yury:90年代に大学を卒業してから、いくつかのスタートアップ企業に勤めた。たくさん失敗も経験し、立ち止まったことも傷ついたこともあったが、本当に多くのことを学んだ。
その後20年間ほど、YaHoo、Netflix、Googleなどのシリコンバレーの大企業に勤めた際は、最先端のテクノロジーを用いて、世界中で利用される大きなスケールのプロダクトを生み出すことができるようになったことに楽しみを感じた。
しかし、やはり何もないところから新しいことを創り出し、物事を早く行動に移せるスタートアップに魅力を感じていた。そのため、昨年機会があってClickhouseを立ち上げるに至った。
Jason:両親が起業家だったため、起業に対するイメージは湧いていた。そのため、かっこいい車を運転したい、という思いで車の小売ビジネスを起業した。そのビジネスをしたらポルシェとかの格好いい車に乗れると思ったからね。
今まで上手く行かなくて頓挫してしまったり、大幅に事業をピボットしたりしたこともあるが、行動をやめずに、課題だと思ったことを解決するべく挑戦してきた。
btraxを起業し、沢山の起業家のメンタリングも行っているBrandon。btraxを卒業した人からもたくさんの起業家が輩出されている。起業の動機はなんだったのだろうか。
Brandon:単純に、大学卒業後、自分はどこにも就職できなかった。シリコンバレーが不況の時だったため、Webデザイナーには募集があまりなかった時だった。
だから、自分に残された選択肢は自分で会社を立ち上げるか、Starbucksで働くかだった。僕はコーヒーを飲まないので、会社を立ち上げるという答えは明確だった。(笑)
それぞれ動機は異なるが、常に自分の抱えている問題意識ややりたいことに対して企業という選択肢がベストだったので会社を経営する立場にいる、という共通点がある。彼らはあくまでも「起業する」こと自体が目的になっていないのだ。
どのようにして最初のビジネス領域を決めたのか?そして、起業した当時のビジネスと今のビジネスはどのように違うか?
Brandon:初めはWebデザイン会社を始めた。しかし数ヶ月間は上手く行かなかった。しかし、自分は日本人としての文化的側面も持ち合わせていることを改めて思い出し、それは他の人には真似できない強みだと思った。
そこで、日米の文化の橋渡しをするようなビジネスを展開しはじめた。そのようにして現在では、ブランディング、マーケティング、デザインの領域で、日米の橋渡しをするというユニークなサービスを提供している。他のデザイン会社とは一線を画した、ユニークな会社だと思う。
他の人には真似できない強みで尖ること、これがこれから起業を考えている人への僕からのアドバイスだ。
Jason:私は、人がどうしたら自分のビジネスのストーリーを他の人に「共有」したくなるのか、という基準で自分の始めるビジネスを考えていた。
そしてそれが人々の間で良いと思ってもらい、沢山の人々に共有され続けられそうなビジネスだという手応えをつかめるまで、ずっと起業する領域を探していた。
YuryはClickhouseを2021年の9月に創業しているが、世界中でコロナウイルス感染が拡大する厳しい状況の中で、1年間でどのようにして会社の成長を成し遂げたのか?
Yury:私は半年前(2021年8月)に会社を設立した。Clickhouseのシステムは有名なオープンソーステクノロジー(エンジニアが開発した公開されているコード)を用いて開発されているため、設立した時点で、かなりの人数のユーザーがいたことは大変幸運だった。
しかし、ターゲットとしていたエンジニアのユーザーたちに、いかにして私たちのサービスを使ってもらえるようにするかが問題だった。既存のオープンソースのユーザーベースを開拓するためにGitHubを用いてマーケティング戦略を立てた。
また、成長戦略に関しては、会社が成長しているのは、もちろんエンジニアたちが素晴らしい技術で開発をし、リーダー陣がマネジメントをしてくれているからだ。
期待に応えるためにまだまだ改善すべきところはあるが、早く成長してユーザーを獲得できるプロダクトは、自分のキャリアの中でいくつものクラウド製品を作成した経験から、素晴らしい技術やアイデアではなくて、使ってくださるユーザーが何を求めているのか、その問題を解決するプロダクトだということだ。
「システムを構築したら、自然にユーザーが集まる」というようには思わない。ユーザーが困っていて、解決しなければならない問題を特定して、その解決策としてサービスがあるということを念頭におかなければいけない。
成長するサービス、プロダクトは、ユーザーにとってどんなメリットがあるのか、どのようにして人々の暮らしを豊かにするのかが明確だ。
それは、生活の中の困りごとを解決するという目的だったり、困ってはいないけれど、あったら便利で使いたいものであったりする。
いずれにせよ、ユーザーの感情をプラスにするものという視点なくして、成長は見込めないということだろう。
スタートアップの今と未来
2022年のスタートアップトレンド
実際にシリコンバレーで会社経営をしている3名が考える2022年のスタートアップトレンドとは?
Jason:一般的なトレンドとしては、企業はどんどん顧客第一のサービスやプロダクトを作るようになっていると感じている。そしてデザインに優れて質の高い体験を提供するものを作っていることも挙げられる。
より大きなトレンドとして、ミッションドリブンな企業が増えており、社会問題、環境問題解決のミッションに共感して人々が集まった組織が多くなってきていることを興味深く思う。
金融業界など、そのようなテーマでは今まで活動している組織が少なかった領域までこのトレンドは広がっており、どの業界にも言えるトレンドだと考える。
Brandon は日本のスタートアップトレンドについて以下のように語る。
Brandon:日本はここ10年で、スタートアップに対するイメージが大きく変わった国だと思う。10年前は「スタートアップ」という言葉すら知らない人が多かった。日本にはスタートアップの概念はなく、「新たに設立された企業」「スモールビジネス」という概念しかなかった。今ではスタートアップという言葉も当たり前に使われるようになっている。
スタートアップトレンドに関して言うと、日本では、社会にも人々にもポジティブな影響を与える方向に切り替わっている。
3年前、日本では「ユニコーン企業」という言葉が流行したが、今は「シマウマ系スタートアップ」、すなわちよりサステナブルなビジネスモデルで、ユニコーン企業のように急激な売り上げ拡大を第一目標にするのではなく、社会に良い影響を与えることだったり、顧客に満足してもらうことを非常に重視しているスタートアップが増えた印象だ。
今の日本のスタートアップには、ユニコーン企業とシマウマ系スタートアップが混在している状態。売り上げを急速にあげて、一攫千金を目指すことだけが企業の目的ではなく、社会に良い影響を与えることも企業が存在する目的だと思うため、良い傾向だと感じている。
Yuryは、直近会社を始めるにあたって一番いいタイミングやスタートアップトレンドに則ることが戦略としてあったと思うが、どう考えていたのだろうか。
Yury: 個人的に、あまりトレンドや時流を気にしすぎる必要はないと思う。もし明確な課題があるのであれば、そこからビジネスを生み出すことは可能であるように感じる。
今現存している大企業でも、不況の時にビジネスを始めた企業はたくさんある。利益を上げることは確かにより困難になってしまうかもしれないが、良いビジネスはどんな時代であっても利益を上げる方法を見つけ出すだろう。
不況の時の方が市場に沢山人がいて優秀な人材に出会えることに加え、不動産やオフィスの場所代なども安く済む。問題解決に有効な良いアイデアを生み出す方に重きを置いて良いと考える。
今後どの領域がイノベーションを起こすと思うか?
Brandon:領域を特定せず、人々がやりたくないと思うようなことや、不幸にさせることを取り除くことだ。
例えば、誰もやりたくないものだろうトイレ掃除をしてくれるロボットなど。人々の不幸を取り除く何かを生み出せば、成功する確率は高くなるだろう。
それが最終的には社会に幸せをもたらすことにつながると思う。
Yury:アメリカの市場であれば、大きく3つの市場が挙げられる。ファイナンシャル、ヘルスケア、教育だ。
21世紀では、経済の展開はかなり不確実になっていることもあり、イノベーションを起こす領域は他にもたくさんあると思う。
Jason:世界が感染症によって衝撃を受けた現代、個人的には、子供たちのためのメンタルヘルスサービスを見てみたい。ずっと探しているが、まだそのようなサービスは見つけていない。パンデミックの影響で需要が高まっていると感じているため、今後に期待している。
3人が考える「起業家」とは
良い起業家の条件は?
Brandon:1つ目は持久力があること。経営者は存続のために会社の経営をし続ける必要がある。経営は短距離走ではなく長距離走。2つ目は大胆であり、同時に繊細であること。3つ目は、誰かの下で働くことに向いていない人。この要素を持つ人は、起業して経営をし続けなければいけないと思う。例えば僕のようにね。
Jason:自分の熱望することに対して強い芯を持っていながら柔軟であることと、決めた目的を達成するために柔軟な道を選択できることだ。
Yury:自分がリスクを取れること。不確定な状況の中でも決断力に長けていること。そして、オーナーシップがあること。会社に必要なことは自分が全てやらなければいけない。誰もやりたがらないような泥臭い仕事であっても、会社の始まりは自分であり、存続は自分にかかっていると自覚してそう思い続けることが大切だ。
これから起業する人に向けてどんなアドバイスをしますか?
Yury:画期的なアイデアを思いつこうと躍起になるのではなく、人々がが困っていること、苦しんでいることに目を向けると良いと思う。そして一番市場で効果的な解決策を見つけて実践することが大切だ。
そして、常に周りの人の才能に目を向けることを大切にしてほしい。なぜなら、どれだけ優秀な起業家だったとしても、1人でできることは限られているため、総合力のあるチームを作ることが重要になってくるからだ。
Jason:いかにして自分が抱えている問題を他に抱えている人がいるかを検証することが大切だと思う。1人のサンプルではなく、お金を払ってでもそのサービスを使いたいのかという目線で、友人や家族などの身近な人でも良いから、まずは検証してもらうことが大切。そして、成功した方向で拡大を目指した方が良いと感じている。
Brandon:そもそも、起業はしないことをお勧めする。でもどうしてもしたいなら是非してほしい。「起業することは簡単ではないし、本当に大変。」こう伝えても起業したいと思える人たちが本当に起業家になれる人たちだ。やりたくないのであればやらなければ良い話だし、やりたければぜひやってみたら良いと思う。
周りに目を向け、彼らが困っていることを解決しようという視点を持つこと、そしてたとえ道のりが大変だったとしても成し遂げたいという強い野望が持てることが鍵だという。
起業家はかなりハードな仕事であり、会社の状況に合わせて柔軟に対応を変える先見の明が求められる。
加えて、自分の達成したいミッションを実現すべく、周りに熱量を伝播しながら物事を前に進める能力も必要とされていることが理解できる。
まとめ
3名の起業家たちより、起業の経緯、近年のスタートアップ動向や、優秀な起業家の特徴などを聞いてきた。3人の話から、起業に向いている人、起業して成功する人の特徴に以下のようなものが挙げられるだろう。
- Be your own boss:自分自身をマネジメントできること
- Confident but have no ego:自信家でありながらも、自己中心的でないこと
- Be core and bold, but flexible and sensitive at the same time :芯があり、大胆でありながらも、柔軟で繊細であること
そして、一番大切なことは起業する目的を持ち、達成するまで諦めず続けることができることだ。
グローバル起業家の輩出を支援しているbtraxとしても、未来の起業家たちに伝えたい。
※SF Pitch Nightのアーカイブ動画をご視聴いただけます。
ファイヤーサイドチャットの他、世界中から集まったスタートアップのピッチバトルも収録されています。この機会にぜひご覧ください!
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