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これからはプロダクトのサービス化の時代 その背景と基本とは
シェア、サブスク、オンデマンド。最近耳にすることの多いフレーズであるが、これまでは、全て「所有」が中心であった商品との、全く新しい接し方である。
簡単にいうと、所有することなく必要な時にだけ「利用」するのが、ユーザーとプロダクトを繋げる新しい体験になってきている。
その背景にはインターネットとモバイルテクノロジーの発達があり、現代のインフラで育ったような世代にとっては、むしろ所有しない方が一般的にもなりつつある。
時代と共に変化するライフスタイル
例えば、これまでは頑張ってローンを組んで買うのが一般的だった自動車も、カーシェアを利用すれば、必要な時に好みの車両を時間単位で利用が可能になった。それにより、所有する事の合理性が下がった。
また、1つの住所を持たずにその日ごとに最適な場所で生活するアドレスホッパーや、Airbnbやカウチサーフィンなどのサービスを活用し、極端に自由なライフスタイルを送っている人も出てきている。
これは、プロダクト提供側から考えてみると、今までの「作る > 売る」のモデルに大きな変革が起こり始めており、いわゆる製造業であったとしても、これからはサービスの提供ができるか否かがその企業の将来を大きく左右する事になる。
ミレ二アル世代がプロダクトのサービス化を加速させる
この「プロダクト」から「サービス」への変換が進んでいる背景には、ミレニアル世代が求めるライフスタイルが大きく起因していると考えられる。
ミレニアル世代とは一般的に、1980年-2004年頃に生まれた世代をさす。物心がついた頃からパソコンやインターネットに触れているケースが多く、デジタルネイティブと呼ばれる。特にアメリカではこの世代が生み出す市場に大きな注目が集まっている。
もともとFacebookやTwitter、Instagramなどのソーシャルメディアの流行りの火付け役もこの世代であり、シェアリングエコノミーを活用したライフスタイルなど、新しい価値観が世の中で求められるプロダクトの新しい利用スタイルへの影響を及ぼしていると言える。
ミレニアル世代が重要視するのは”モノより体験”であり。高級製品よりもより良い体験を生み出すサービスへの関心が高い。また家や車などと言った高額なステータスシンボルへの執着心が低いのも特徴。
もっとも、UberやAirbnbなどに代表されるようなシェアリングエコノミー系のサービスを最大活用することで、”持たないライフスタイル”を楽しんでいる人々も少なくはない。
火付け役はミニマリズムを美徳とするクリエイティブエリート達
また、中には流行に流されないライフスタイルを重要視する”クリエイティブエリート”と呼ばれるタイプの人々もいる。彼らの特徴を端的に表すキーワードは”ミニマリズム”であり、余計なものを所有せずに住む場所や特定の仕事に縛られない自由なライフスタイルと身軽な生活が特徴。
このような消費者に響くのはやはりプロダクトではなく、サービス、もしくはサービスかされたプロダクトになる。オンラインサービスやモバイルアプリを活用することで、車や家を必要な時にだけ利用し、多くを所有せずとも快適な生活を送っている。
こうなってくると企業としてもこれまでのようなタイプの製品と売り方では全く響かなくなってしまう。
これがプロダクトのサービス化をどんどん加速しており、もうしばらくすると、何かを所有するという概念自体が時代遅れになる可能性も少なくはないだろう。
プロダクトとサービスとの違いは?
では、サービスとプロダクトの違いは何なのであろうか。おそらくその鍵は購入するモノの時間軸における価値の変化にあると考えられる。
世の中の製品は大きく分けて、コモディティー (消費財)、 プロダクト (製品)、 サービスに分類される。では、それぞれの価値と時間との関係を考えてみよう。
コモディティー (消費財)
いわゆる消費財で、コンビニで購入可能なものの多くが該当する。購入時にその価値が定められており、時間が経つにつれ、その価値が下がる。例えばトイレットペーパーは購入時が一番価値が高く、使うにつれその価値が下がっていく。
プロダクト (製品)
ユーザーにとっての価値が購入時とその後時間が経ってからで、あまり違いが生まれない。再販価格などは下がるが、ユーザーにとっての価値の変化はあまり大きくない。最近は壊れにくくなっている、家電や自動車などのハードウェア製品が中心。
サービス
購入時にその価値はあまり高くなくとも、使い続けることでユーザーにとっての価値が上昇するもの。また、購入時にその価値がはっきりとわからない場合も多い。例えば、ディズニーランドは入場券購入時よりも遊び終わった後の方がユーザーにとっての価値がかなり高くなっている。
サービス化が進むプロダクト
上記の中で、”サービス”の分野に入るものとして、オンラインサービスやアプリに多いケースであるが、実は最近は物理的製品にも該当するものが増えてきている。
本来であればハードウェア系は、使い続けてもその利用価値が向上することはあまりなかった。しかし、インターネットに接続することで、それも大きく変わってきており、サービス化の波が訪れている。
その代表的なものがスマホであろう。おそらく多くの場合、スマホは購入時よりもしばらく使い続けてからの方が、ユーザーにとっての価値が上がる。買いたてのスマホを落とすよりも、使って1年後のを紛失する方が精神的ダメージが大きかったりするのはそれが理由。
なぜならそこには、撮りためた写真や、友達とのLINEでのやり取り、コンタクトリストが入っているからである。これは、使い続けるとどんどんユーザーにとっての価値が向上する”サービス化”に成功したプロダクト例になる
スマホ以外にも、自動車もどんどんサービス化が進んでいる。既存の自動車の性能や機能は購入時に全て決定され、その後変化することは基本的にはありえなかった。
これが、インターネットにつながることで、車両を制御するシステムを更新することで、それまでに実装されていなかった機能が使えるようになったり、ユーザー毎にパーソナライズされた体験が提供可能になってきている。
Teslaは自動車メーカーの形をしたサービス企業
例えばシリコンバレーの自動車メーカーのTeslaが提供する車両は、乗り始めた時には実装されていなかったはずのオートパイロット機能がシステムアップデートにより突如として利用可能になったりする。
ネットに接続していない車両にそのようなアップデートが施されることはほぼないこと考えると、Teslaと比べた場合のユーザーへの提供価値の差は歴然としており、サービス化されている製品の魅力は何十倍にもアップする。
そして、CEOであるイーロン・マスクは最近、将来的にはTeslaの車両に自動運転を実装し、乗っていないときには無人タクシーとして稼働することで、オーナーに収益が入る仕組みを考えていることを発表した。
ここまで来ると、Teslaは「作って売る」という既存の自動車メーカーの枠を大幅に飛び越え、思いっきりサービス業者になってきている事が理解できる。
全てが”アズ・ア・サービス”になって行く
スマホやTeslaだけではなく、SaaS (ソフトウェア・アズ・ア・サービス)、MaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)、RaaS (ロボティクス・アズ・ア・サービス) などなど”アズ・ア・サービス(as a Service)”がバズワードになり始めている。
これは、様々な業界におけるサービス化のトレンドを示唆しているとも言える。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)のCEO、Antonio Neri氏は、「3年以内に全ての製品を“アズ・ア・サービス”として提供する」とまで宣言した。これは、デジタル・トランスフォーメーションをもう1つ先に進めた変革でもあると言えるだろう。
優れたサービスを生み出すUXデザインの重要性
このように、プロダクトのサービス化を進めることは、企業の成長と生き残りにとって非常に重要になってくると考えられる。
プロダクトをスペックや性能で選ぶ時代が終焉を迎え、使い続ける過程でどのような体験を得られるかが、成功を左右する最も重要なファクターなってきている。
それは言い換えると、商品自体にお金を払う時代が終わり、ユーザーは”経験”に価値を見いだすようになったとも言える。
逆に考えると、どれだけ細部にこだわり素晴らしい技術を活用して作り上げられた製品も、そこにユーザー視点で正しい体験が設計されていなければ、価値の無いプロダクトになってしまう危険性が高い。
その体験をデザインするのがUXデザインであり、その重要性はサービス化が求められる事態においてはかなり高い。
これからはプロダクト重視からサービス重視のビジネスへ
メーカー系を中心にこれまでの多くの企業、特に日本国内では世界的に見ても高い技術力を武器に、それがどのようなビジネスに変換出来るかを考えながらプロダクト作りを進めて来たケースが多い。
しかしながら、今後もその方法を続けて行くとユーザー視点でのサービス化が難しくなり、正しいユーザー体験の提供も出来にくくなってしまう。
近い将来、多くの企業においてビジネスモデルの変革を余儀なくされるであろう。そのためには、デザイン思考などのプロセスを通じて、ユーザーを理解するマインドセットを持つ文化が必要になる。
プロダクトのサービス化を進めませんか?
このように、プロダクトをサービスに変換するのは簡単ではない。しかし、それを進めない限り企業の存続は難しくなってくる。興味のある方はぜひ、我々と共に短期間のサービスデザインを行うプログラムに参加いただければと思う。
詳しい内容は是非公式ページよりお問い合わせください。
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