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ロックダウン直前にオープンしたインスタ映えレストランの現状
- 満を辞してサンフランシスコにインスタ映え確実なレストランが開店!ただ、タイミングが悪かった…
- 外出自粛令による売上の大幅縮小とレイオフの実施、起死回生の策を探る
- ソーシャルメディアの活用とユーザーの嗜好に合わせたメニュー改編でピンチを乗り越える
- 店舗でのハイレベルな顧客体験をデリバリーでどう再現するか、重要なのはモノより体験
街中が封鎖される直前に体験重視のめっちゃオシャレなレストランがオープンしたらどうなってしまうのか?
シェフでオーナーのカセム・セーンサワンと妻のイング・チャタージーは、3月初旬にサンフランシスコ市内に新しいレストランをソフトオープンした。
このレストラン、Son & Gardenはインスタ映えを求めるキラキラ系の熱狂的な夢をイメージしてデザインされた。
インスタ映えバッチリのたSon & Gardenのインテリア
インスタ映えを狙った体験型レストラン in サンフランシスコ
室内の壁や天井には花が散りばめられ、全体にブルーの花柄の壁紙が貼られている。店内には「シークレットバー」と呼ばれるエリアもあり、テーブルと座り心地の良いベルベットのラウンジチェアが用意されている。
メニューとしては、アフタヌーンティーセットに加え、バニラソースとブルーベリーのコンポートを使ったリコッタパンケーキ、ポテトウェッジとマッシュルームソースのフライドチキンドーナツ、自家製ベーコンとエンドウ豆、卵、ペコリーノ・ロマーノを使ったパスタカルボナーラなどがある。
その内装、盛り付け、雰囲気、サービス、全てがソーシャルメディアでシェアされることに特化してデザインを施されたレストランだ。
提供するメニューや食器もかなりオシャレ
キラキラ系女子垂涎の演出満載
リコッタのパンケーキとブルーベリーのコンポートが芸術的に盛り付けられ、「クラウド9」と呼ばれるスパークリングワインのカクテルの上には、青い蝶々をあしらった綿菓子がトッピング。
すべてがインスタグラムで話題になるように仕立てられたもので、招待されたインフルエンサーたちは、Son & Gardenがグランドオープンする前から、三脚やリングライトを持ってきて、このマジカルな空間を撮影していた。
インフルエンサーを通じて話題沸騰になる…予定だった
しかし、3月16日にはサンフランシスベイエリアでは、外出自粛が施行され、レストランやバーの営業に大きな制限が設けられた。それにより、この体験型の新しいレストランがテイクアウトのみに追い込まれた。
オープンまでに2年間という年月と、かなりのコストを掛けオープンに漕ぎ着けた。しかしそのわずか2週間後に市によりシェルターインプレイスの要請が発動された。それにより、忙しい日には2万ドル近くあった売り上げが、4,000ドルにまで落ち込んだとオーナーは語る。
スタッフをレイオフし家賃支払いの猶予要請も
これにより、スタッフの60%をレイオフせざるを得なくなり、2ヶ月分の家賃支払いの延期を物件の大家にリクエストした。彼らは州政府に中小企業向け支援を申請しているが、いまだ返事は来ていないという。
現在、全国のレストランの多くが苦戦している中、Son & Gardenのような新しいレストランは特に厳しい状況にある。老舗レストランではある程度テイクアウトを求める常連客を期待できるが、新規オープンの所はまだ忠実なファンを確保できていない。
そのため、インスタ映えするブランチのためにデザインされたSon & Gardenも、シェルターインプレイスの下では、テイクアウトとデリバリーのみにピボットしなければならなくなった。
こんな時こそソーシャルメディアを活用
オーナーによると、現在の一番の課題は、レストランの認知度を上げること。人々が店の前を通り過ぎることがほとんどなくなった状態では、飛び込み客を期待することは現実的ではなくなった。そうなってくると、今まで以上にソーシャルメディアを活用し、その存在を知ってもらう必要性が高まっているという。
幸いなことに、Son & Gardenではオープンに合わせ、ソーシャルメディア掲載用に、絵に描いたようなメニューの写真を多数アップしていた。そこで彼らは公式インスタグラムページでデリバリーの広告を始めた。
ユーザーデータを元にメニューを再編成
これに加え、CaviarやDoordashといったデリバリーサービスを活用し、集まった顧客データを元に、メニュー内容も顧客のニーズに対応し始めた。
具体的には、パスタ料理を除くディナーメニューを大幅に廃止し、朝食とランチの終日提供を開始。これは、サービスをピボットしてから数週間の顧客ニーズを分析した結果、多くの人々がよりカジュアルなメニューを求めていることが判明したからである。
“人は気分が高揚したり、恐怖を感じると、パンケーキやエッグズベネディクトなどの、ブランチで食べるような、よりヘビーな内容を欲する傾向があります。” とオーナーは語る。
また、お客さんは、美味しくて可愛いくて、見ているだけで元気をもらえるものを求めていると考えている。現在では、シグニチャーカクテルである「クラウド9」を始めとしたアルコール類もテイクアウトすることもできる。
テイクアウトでもユーザーを感動させる体験を提供
そして最近、ソーシャルメディア上でブランチボックス (2人用で39.99ドル) のプロモーションを開始した。このブランチボックスには、飲み物、フレンチトーストまたはリコッタパンケーキ、ベーコンまたはソーセージ、卵が含まれている。
そしてオプションで20ドルのシャンパンボトルを追加すると、パステルピンクのパッケージに、食用のお花もトッピングで添えた状態で提供される。これはカップルがをターゲットだ。
インスタにはレストランで提供される状態の写真がアップされているが、現在はテイクアウトとデリバリーに限定されるため、ボックスの開封体験を通じて、ユーザーになるべく感動を与えたいという戦略だ。
カップル向けのブランチボックスに加え、ファミリースタイルのボックスも大成功を収めている。イースターの週末だけで1,000個近く売れた。
これらの施策により、このレストランでは支出をまかなうレベルまで売上を確保することに成功した。それにより、万が一この状態が続いたとしても、向こう数ヶ月は乗り越えられる目処が付いたという。
そして、数週間後には、Son & Gardenのキッチンを拠点としたデリバリー専用の新ブランド「Farmhouse Express」を立ち上げる予定である。
顧客が払うのはモノ自体だけでなく体験への対価
今回紹介したレストランは、元々来客者が受け取る顧客体験に特化していた。それがテイクアウトとデリバリー専門になることを強いられた結果、その体験をどのように変換できるかにフォーカスを当てた。そして、ユーザーニーズをしっかりと理解し、サービスのピボットを行った。
重要なポイントとしては、お客さんが店内で受け取る体験をできるだけ再現し、感動させることに成功した所。実際のところ、リサーチデータをみても、世界の若者を中心に消費者の多くは、”モノよりも体験にお金を使いたいと思っている”と答えている。
このことからも、消費者が求めるのはモノではなく体験であり、優れた体験を提供することで、確実にユーザーの心をつかむことが出来る。言い換えると、プロダクトではなくてエクスペリエンスを売ることが求められてくる。
この点については、食事自体だけではなく、食事をする時間を演出するSon & Gardenの視点から学べることは多い。
困難な時こそ必要になる新しい発想
コロナショックにより、飲食系のビジネスはかなりの窮地に立たされていると考えられる。その一方で、今回紹介したSon & Gardenのように、機転を効かせることで難局を乗り切っているケースもある。
大きな変化が起こった時、今までのやり方のままでは生き残っていくのは非常に難しくなってくる。そんな時には顧客視点に立ち返り、ニーズを冷静に理解するためにバリュープロポジションを作り直してみたり、リフレーミングなどの手法で、視点を変えることが求められる。
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筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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