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Pathで働く女性デザイナーの一日 in San Francisco
サンフランシスコという街はスタートアップの中心であると同時に世界でも有数のデザイナーが集まる場所でもある。ここに住むデザイナーに とって最先端の技術を活用し多くのユーザーが利用するプロダクトを提供するスタートアップで働くのは一つの理想である。また、最近のスタートアップに とってみてもデザイナーはエンジニアに並ぶ程重要性が高い花形ポジションでもある。
彼らの生体を暴くべく、本場サンフランシスコのスタートアップで勤めるとある女性デザイナーの一日を追ってみた。今回密着取材したのは、市内の数あるスタートアップ中でもデザインを最も重要視している –Path– のデザイン・ディレクター Jenny Ji (ジェニー) である。
人気のスタートアップでデザインの最高責任者として働く女性
サンフランシスコを拠点とするモバイル向けソーシャルメディアサービスを提供するスタートアップ、Pathでデザイン部の主任として働く彼女は、同 社のヴィジュアルデザインに関する事柄全ての責任者である。デザインチームの他のデザイナーの為にそれぞれのプロジェクトに優先順位を付け、日々のスムー ズなコミニュケーションを行うのが彼女の仕事。また、代理店等の外部ベンダーとのやり取りを管理し、一貫したブランディングを維持するのも重要な役割の一 つである。その一方で、自らサイトやアプリのUIデザインを直接手がける事も少なく無い。
それでは、そんな彼女の一日を覗いてみよう。
8:00AM
起床後ジェニーは出社前に自宅で以前に教授からもらった椅子に座りながらコーヒーを飲みリラックスする。”この古くさくてくたびれた椅子に座りなが ら仕事をしたり本を読むと、前のオーナーだった大学時代の教授の事を思い出すの。アーティスト気質で少し気難しかった彼は、私達生徒を既存のグラフィック デザインの概念の外に押し出してくれたわ。ここに座る事で常にユニークでクリエイティブで無ければいけない事を気づかせてくれるの。”
あなたにとって午前中はどんな感じ?
“実は朝は弱いのよね。だから仕事の前に決まった何かをするわけで は無いわ。時間に追われる事が多いから、出社前はかなり準備に忙しくて、忘れ物をしない様にする事で精一杯よ。でも一日の中で最も生産性が高いのが、出社 後の30分ね。あまり人が多く無くて静かな雰囲気だから、仕事がすごくはかどるのよ。通常その時間帯にメールのチェックとかタスクの確認、打ち合わせの準 備とかをしてるわ。でも本当はとっても夜型なの。もし可能だったら勤務時間は2pm-6pmと10pm-2amを希望するわ。”
デザインのインスピレーションはどこから得ていますか?
“サンフランシスコっていうデザインとアート、 そして音楽やテクノロジーが溢れる刺激的な街に住んでるから、具体的に「これ」っていう答えは無いわね。強いていうなら、この街の日々の生活で得られる一 つ一つの事柄がインスピレーションになるのかな?自宅は静かな住宅街にあるから、市街地にあるオフィスに出勤の際にそれぞれの地域ごとに目に入ってくる、 街の異なる雰囲気を感じるのがとても面白いわ。もしかしたらそんな生活から無意識のうちにデザインのアイディアをもらってるのかもね。”
8:30AM
ジェニーは自宅を後にし、オフィスに向かう。下記の写真は自宅とオフィスの様子。
Pathのオフィスはとてもオシャレ。ジェニーが中でも最も気に入っているのが黒板のある部屋。”オフィスの片隅にあるこの小さな部屋が最も集中できるの。一つの事にフォーカスしたい時や、リラックスして頭の中をリフレッシュしたい時には最適な場所だわ。”
Pathでの仕事内容は?
“この会社は社長を含め全てのスタッフがデザインの重要性を理解しているの で、デザイナーにとってPathは素晴らしい会社だわ。だって、他のスタッフも優れたデザインの価値を常に考えながら行動するから。特にエンジニアリング チームは最高ね。もし私達がデザインしたアイディアが実装不可能な場合は、目的達成の為に他のより良い方法を考えてくれるの。そして私達デザイナー自身も 最高のクオリティーを常に意識してるわ。例えばPathのバージョン3を作った時だって、リリースの直前まで何度もデザインをやり直しして、最終的に全部 ボツにしちゃった。やっぱりデザインにおける品質は妥協したく無いもの。”
現在はどのようなプロジェクトが進行していますか?
“私達の目標は常にどのようにしてユーザー同士を 「近づけるか」なの。それに関する全ての事柄がプロジェクト。私の最も仲の良い2人の友人もミュンヘンとケープタウンに住んでるから、遠くに居ても近くに 居る感じを演出する事の重要さを実感しているわ。モバイルアプリを通して、実際に会っているような感覚を与えたいの。例えばちょっとした事よ。ハグした り、肩を叩いたりとかね。そんな感覚がユーザーに与えられたら最高だなって思うわ。私達はコミニュケーションの量や数では無くて、質と深さにこだわりたいの。”
12:30PM
毎週月曜日のランチタイムにはCEOのDave Morinが全体ミーティングを指揮する。食事は会社が毎日提供する。食堂エリアはデザインチームのミーティングスペースとしてもよく利用されるエリア。
2:30PM
デザインチームのミーティングの様子。デザイナー達が一つの場所に集まりディスカッションを行う。個室を利用する事もあるが、多くの場合はボードの前で立ったままでアイディアを話し合う。
デザイナーミーティングはどのような構成になっているの?
“形式張った事はなるべく少なくしようとして いる。内容とスケジュールには常に変化を持たせようと思っているの。ミーティングというよりも、むしろ思いついた時にアドリブでディスカッションを進める 事の方が多いわね。ありがたい事に私達デザインチームはまだ小さいから、気軽に立ち上がって、ささっとデザインのチェックやフィードバックセッションをす る事が出来るの。正式なデザイナーミーティングは週に一回月曜日に行われるけど、そこでは進行状況の確認や、デザインチェック、リソースの管理なんかを 行っているの。”
Pathでの素晴らしいデザイナーの条件は?
“職場ではかなり長い時間一緒に仕事をしなければいけない から、コミニュケーション能力がとても重要ね。それに加え、頭が良くて、プレゼン上手で、ジョークのセンスがある人。デザイナーとしてのエゴが強すぎる人 はダメね。具体的なスキル面では、タイポグラフィがしっかり出来て、レイアウトとカラーの理論がちゃんと理解出来ている事。いくらエフェクトやグラデー ションの使い方が上手くても、基本が出来ていなかったらすぐにバレちゃうわよ。Pathのデザイナー達はデザインだけではなく、物事に対しての捉え方や考 え方も優れているの。この会社ではIA/UI/UXに関して専門職は無くて、いわゆるプロダクトデザイナーが全てを理解している必要があるの。1人のデザ イナーとして、プロダクトが出来上がるまでの全てのプロセスを手がけるからね。”
プロダクトデザインの醍醐味は?
“ユーザーに使ってもらえる事かな。既存のグラフィックデザイナーの場 合、ポスターやパッケージ等のメディアで、出来るだけ美しい見た目のデザインを通じて、見てくれる人達に正しい情報を伝えるのが一番の仕事。でもWebや モバイルアプリのプロダクトの場合は、もっともっと気にしなければいけないポイントが多いの。ユーザーはあなたの作ったものを見てるだけじゃない。実際に 触って、操作するのよ。その場合、「もっとも正しい情報の伝達方法」だけじゃなくて、「もっとも直感的に使ってもらえる」とか「いい感じかどうか」が重要 になるわね。”
4:30PM
”たまには気分転換で外に出るのも良いわ。” と言ってオフィスを飛び出したPathのデザインチームはフェリービルディング内にあるBlue Bottle Coffee でコーヒータイム。
仕事以外での趣味は?
“5歳から17歳までバレーをやっていたの。3年程前からまた再開したわ。どうやらダンスをする事でよりクリエイティブな部分が刺激されるみたい。バレー以外でもヒップホップやサルサ、ジャズダンスなど、ダンスなら何でも好きね。”
デザイナーになってなかったら何をしていましたか?
“パティシエ!おかし作りが大好きなの。実は一時期ちゃんと勉強した事もあるのよ。まあ、仕事に出来るかわからないけど、とても楽しいわね。”
デザイナーとしてもっと早く知っておきたかった事は?
“もっと多くのメディアに触れておきたかったわ。 元々は紙媒体のグラフィックデザイナーだったけど、その頃は他のメディアを考えた事は無かったの。でも、今のインタラクティブデザインの業界に入ってから は急ピッチでコーディングやデジタルデザインの知識を身につけた。今から考えるとモーショングラフィックや、コピーライティング、映像処理などのスキルも 身につけていればもっと表現の幅が広がったのになと思うの。”
それでは最後に他のデザイナーへのアドバイスを
“ちゃんと出来るまでは、出来ているフリをする事 (fake it until make it), デザイナーは自意識過剰なぐらいが良いと思うの。常に実力以上の仕事をしてリスクを感じながら自分を追いつめるのよ。常に自分の能力に応じた仕事に甘んじ ていたらダメ。もっと攻めなきゃ。今までにやった事無い事にチャレンジする事。そして失敗を恐れない事。もしこれ以上は自分には無理、って思うならきっと 自分以外の人にも無理なのよ。”
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
photo by The Bridge by Helena Price
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