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未来のビジネスを創出するための「未来予測」のすすめ
世界は常に変化している。
1985年に公開された映画『Back to the Future』の舞台となった2015年から既に8年経っており、当時夢のように描かれていた3D映画や顔認証、ウェアラブルデバイスなど幾つかの製品はすでに実現している。
皆さんは『Back to the Future』が予測した未来はおおよそ正確だったと解釈するのだろうか、それともそれに間に合わせるために、人々が必死になったと解釈するだろうか。
イーロン・マスクは「地下都市が一般的になること」「無人運転車が当たり前になること」「人間の脳が電子知能と合体するようになること」「ユニバーサル・ベーシック・インカムが取り入れられるようになること」などを予測している。
これらの未来に対して彼自身がロサンゼルスの地下にトンネルを掘って新しい交通網を作るビジネスを起こしているし、無人運転トラックを普及させようとするOttoは実際にコロラド州で190km無人走行を成功させている。
これらは全て単にテクノロジーの進化を予測しているのではない。未来を生きる人々がどのような体験をするようになるかという点に焦点が当てられている。
それでは、過去から現在へ、現在から未来へと今も昔も変化していく時代の中前進している人たちは、どのようにそのアイデアを生み出しているのだろうか。
未来予測とは
新たなビジネスやサービスモデルを創出する際、とても役に立つフレームワークのひとつに「未来予測(Future Forecasting)」がある。未来予測とは、過去から現在に基づいて予測されるデータなどを基に、ある一定の未来にどのようなことが起こるか洞察することである。
これは、UXを起点とするサービスやプロダクトを考案する場合特に大きな助けになる。
未来を予測して、人々の経験をデザインすることに役立てていくのである。また、この手法は多くのビジネスコンサルティング会社でもを用いられている。
しかし、未来予測に関して、多くが勘違いしてしまいがちなのが、いかに正確に未来を当てるかということばかりを重要視してしまうことだ。未来予測のプロセスにおいて、正確性にこだわりすぎては、多岐にわたる未来の可能性を検証する幅が狭まってしまう。
それではあまり意味がないのだ。なぜなら、未来は不確定要素が多すぎて、正確な予測をすること自体不可能だからである。先人たちは以下のような言葉を残している。
「未来は知りえない、しかし自ら創る事はできる。成功した人・企業はすべからく、自らの未来を自らの手で創ってきた」 - ピーター・ドラッカー
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」 - アラン・ケイ
未来がどうなるか予知するのではなく、つくってしまうということだ。そこで重要になるのが、何をどうつくるかということである。
ただし、ビジネスやサービスを考案する際には、単に「こんな未来だったらいいな」という個人的希望を実現すれば良いというわけではない。未来を生きる人々がどのようなことに問題を抱えペイン(苦痛)を感じ、どのようなものを必要としているのか、それを予測するのだ。
ここで重要になのが、未来予測のプロセスである。先にも述べたように、UXを起点とするサービスを作り出すために、未来予測を行う場合、このプロセスから得るものは多い。
なぜなら、私たちが未来予測のプロセスで行うべきなのは「未来洞察」とも呼べることで、現在推測されている未来を理解して、さらに想像を膨らませることである。
つまり、未来の人々がどのような経験をし、どのようなものを求めているか彼らの立場に立って考えることなのである。
未来予測のプロセス
例えば、2030年時点での働く世代に向けたフード関連サービスを考案するとしよう。まず、未来の状況を想像するために、人口分布や経済状況、気候など、現在までのデータをさかのぼって、2030年に起こり得る社会状況を予測する。
ミレニアルズと呼ばれる1980~1994年生まれまでの世代は、このころ30代半ばから50歳くらいになり、インターネットのない時代を知らない世代であるジェネレーションZも20代から30代前半という社会だ。
さらに、寿命はどんどん延びていくと言われているから、日本であれば、60歳以上の人口は現在よりもずっと多い割合を占めている。
次に、時代が移っても変わらないであろう人々のコアとなる価値観を分析する。方法としては、将来的にターゲットにしたいと考えるデモグラフィーを対象に聞き込み調査を行い、彼らに共通する普遍の価値観を探っていくということなどが可能だ。
食事関連サービスに対する普遍の価値観とすれば、調理にかかる時間はできるだけ短く、かつ健康に良いものを食べたいという需要はそれに当たる要素なのではないだろうか。
「データから予測される変化」と、「時を超えても変わらない価値観」。以上のプロセスからこの2つが交差する点を見つける。そして、その交差点を新たなサービスやプロダクトのコンセプトに適用することが、未来予測を用いたビジネス創出の手順である。
この例で言えば、インターネットのない時代を知らない世代はどんなものをフード関連のサービスに求めるのだろうかというところに議論の焦点が置かれるだろう。
もしくは、高齢者世代がかなり大きな比重を占める社会において、働く世代に求められることは何だろうかという議論からサービスを考えることもできるだろう。
また、2030年以降の社会では、両親、両祖父母、さらに曾祖父母が皆健在ということも今よりずっと多くなるだろう。そのような点からも思考を様々に巡らせることができる。これが未来を洞察し、予測するプロセスだ。
このように、多角的に未来を洞察し、思考することで、「○○年に××が普及する!」「△△年以内に◻︎◻︎が開発される!」といった未来予測の正確性を高めることに集中するよりも、未来に対してより深い理解と心構えが可能になるのではないだろうか。
未来について思考を巡らせることで、未来に住む人々が経験する新たな体験(UX)を創出することにつながっていくのである。
未来を予知するのではなく、予測する。そのために、現状見られるデータを紐解き、それを基に未来の世界を考える。その際に要求されるのは、現在の社会状況のみならず、マーケットに対する深い理解である。
このプロセスは、現在考案中のサービスが未来の市場においてどの程度まで必要とされるのかということなどにも気づかせてくれるだろう。
未来を言い当てる正確性よりも、あらゆる可能性に思考を巡らせることを重視することで、新たな発見や理解につながる可能性を高めることができるのだ。
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