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福岡スタートアッププログラムに学ぶ起業家に必要な4つの基本事項
素晴らしいビジネスアイデアがあっても、「起業など自分にできるのか」と自信が持てなかったり、「そもそも何をしたらいいのかわからない」とそのエネルギーを持て余したりしている人は多いのではないだろうか。リスクを恐れる風潮が根強い日本ではその傾向が尚更強いように感じる。
しかし日本にもスタートアップが次々と生まれている地がある。福岡だ。外国人のためのスタートアップビザの発行や、東アジアや欧州のスタートアップ支援機関との提携など、日本のなかでもスタートアップ誘致を積極的に進めている代表的な都市である。
同時に福岡在住の起業家予備軍とのコラボレーションを進めることで福岡発のグローバル企業を生まれやすくする土壌の創生を積極的に進めている。
この動きに大きく貢献しているのが、グローバルスタートアップ育成事業「Global Challenge!! STARTUP TEAM FUKUOKA」だ。これは福岡市主催で2年前にスタートした起業家を育てるプログラムで、起業を真剣に考える起業家予備軍の発掘や、福岡発のスタートアップの輩出、そして福岡発の起業ムーブメントの醸成という目に見える成果を実際に出している。
btraxでは、福岡市からの委託を受けて、2年前のスタート時点からこの事業の企画・運営を担い、多くの起業家、あるいはその予備軍の方々と関わってきた。この記事では、起業家にとって必要な4つの基本について、福岡スタートアップ事業の事例をご紹介しながらお伝えしたい。
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1.自分でも起業できると思う
雲の上のような超有名企業の社長さんの講話を聴くことは、それはそれで一理あるかも知れない。しかしそれよりも実際に自ら起業し成功した経験者から、起業に至るまでのプロセスを聞いて学ぶということが重要だ。
そして、その学びを通じて起業を現実的に捉え、「自分にもできる」という自信を持つことがまずは起業のスタート地点である。
実際に福岡のプログラムでは、地元で成功している起業家はもちろん、東京やサンフランシスコから招聘した起業家によるパネルディスカッションを実施。ノートとペンを持った座学ではなく、起業家と言われる人たちや専門家の人たちと実際に話してもらうため、モデレータによるQ&Aセッションも導入した。
↑国内研修にて行った福岡にゆかりのある起業家の皆さんとのパネルディスカッション。左からbtrax Japanの多田、ドレミングの桑原氏、スカイディスクの橋本氏、しくみデザインの中村氏、ヌーラボの橋本氏
↑市民報告会にて行ったマネーフォワードの瀧氏とBrandonによるパネルディスカッション
結果として、参加者は起業をより身近に感じた、あるいは「自分にもできそうだ」と感じたことがアンケート結果からわかった。また、この段階で得た多くの経験談は今後起業の過程で参考になることも多いだろう。その意味でもできるだけ多くの経験者の話を聞いておくことをおすすめする。
2.短時間でビジネスアイデアを説明できるようになる
せっかく素晴らしいビジネスアイデアを持っていても、それを上手く人に伝えられない人は多い。ビジネスは一人で出来るものではない。手伝ってくれる仲間も必要だし、起業するためには資金も必要だ。いくらアイデアが素晴らしくてもそれをうまく伝えられないのでは起業への道のりはかなり険しくなる。
起業家に不可欠なのは効果的なプレゼンテーション方法の体得だ。ビジネスアイデアをまとめ、短時間でアイデアのエッセンスをどのように伝えるか、そして聞く人の共感をどのように得るか。
これらの習得のため、プログラムではサンフランシスコからbtraxのファシリテーターを呼び、「デザイン思考」を取り入れたセッションを前後2回に亘って実施した。このあたりで、「アイデアが素晴らしければ、起業は簡単だ」と思っている人は最初の挫折感を味わったようだが、案外、最初の挫折がかえって良い効果をもたらすこともある。
↑プログラム参加者が英語でピッチの練習を行っている様子
ちなみにグローバルを視野に入れているのであればプレゼンテーションでの使用言語はもちろん英語だ。そのため、英語力というよりも、まずは「英語なんて怖くない」という意識を持つことが重要になる。
実際、英語が流暢ではない参加者がプログラムの最後にサンフランシスコでのピッチコンテストで優勝を果たせたのは快挙であった。
3.スタートアップの聖地で度胸とフィードバックを得る
スタートアップの聖地、世界中のVC投資が集まる場所、世界をリードする最先端企業が集まる場所と言えば、サンフランシスコ・シリコンバレーだ。グーグル本社やフェイスブック本社の看板の前でピースサインで記念写真。そして聖地の空気を味わう。そんなことを期待しているのであれば行っても無駄である。
企業を訪問したりイベントに参加したりして、実際にサンフランシスコ・シリコンバレーの起業家や起業家予備軍と話す。また、ピッチイベントに参加して投資家からフィードバックを得る。これらの経験を得ることは自らのスタートアップを始めるうえで何物にも代えがたい財産となる。
ただ、これらを個人で行うのはかなりハードルが高いだろう。実際に個人が企業に訪問しようとしても受け入れてもらえるケースはほとんどない。
btraxにはサンフランシスコでのネットワークがある。プログラムではLinkeIn、Airbnb、Frogなど現地の約16社程度のスタートアップ・ユニコーン企業に協力してもらい、ハードウェア系、アプリケーション系、最新サービス系などを1日に4社程度訪問できる4種類の訪問コースを設定。
訪米研修参加者はあらかじめ行きたいコースを選択し、btraxスタッフアテンドのもと各社を訪問した。大人数で訪問する企業訪問とは違い、それぞれの訪問先で各自が聞きたいことを聞くこともでき、参加者からの評判は非常に良かった。
↑Airbnbの本社を訪問し、オフィスツアーやAibnb社員との質疑応答を行った
さらにサンフランシスコでは頻繁にピッチイベントが開催されているが、btraxもピッチイベントAsianNightを主催している。
現地のスタートアップが参加するイベントだが、ここで訪米研修参加者用の枠を設定した。英語で、ピッチを聞くのに慣れた現地の観客の前でのピッチである。福岡からの参加者にとっては度胸付けという意味でも最高の場だ。
結果として、プログラム参加者のなかからこのAsianNightで準優勝者、翌日に飛び入りで参加したShark Tankという別のピッチイベントで優勝者を出したことは我々運営側にとっても嬉しいことであった。
↑Asian Nightのピッチ登壇者たち
4.起業に必要な事務知識を身につける
ビジネスアイデアとプレゼンテーションスキルだけではまだ起業できない。会社設立のための法務知識や資金集めについての知識が不可欠になる。
もちろん、起業のための法務や資金集めのノウハウについての書籍などは多く出版されているので、自身でコツコツと勉強するのも良いかも知れない。しかしながら、起業というのはスピードとの勝負でもある。
そこで「必要な知識を素早く理解する」ことが重要になってくる。特にスタートアップ支援専門の弁護士や第一線で活躍する投資家に直接質問できる機会は貴重だ。
プログラムではそんなエキスパートを招き、「弁護士への相談シミュレーション」や「投資家の前でのエレベータピッチ」の時間を多く取ることでそのような機会を提供した。
参加者は彼らが弁護士や投資家に対して持っていた、「直接話す機会がない」「知識が無い状況では相談しづらい」「そもそも相談の仕方がわからない」といったハードルを払拭できたようだ。セッション後のネットワーキングでは、彼らの前に名刺交換ための長蛇の列ができていた。
まとめ
一昨年、昨年と企画・運営を担い、福岡には積極的で物怖じしない、そしてフレンドリーな方々が多いと感じた。起業家にはとても重要な気質である。サンフランシスコ・シリコンバレーのスタートアップを知る我々が福岡はすごいと思った2年間であった。
嬉しいことに、引き続き本年度も「Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA 2018」の企画・運営をさせていただくことになった。本年度はさらにパワーアップしたプログラムを企画中である。
すでに本年度の公募が始まっている。スタートアップを興したい方、すでに起業したものの迷走中の方は、是非とも応募してほしい。プログラムの詳細や応募方法などは、ウェブサイトに記載しているので、ご参照いただきたい。