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近い将来テクノロジーが葬る10の産業
実は日本国内だと若干分かりにくいかもしれないが、アメリカ、それもここサンフランシスコでは、その重力は強烈だ。そんな重力が強烈なサンフランシスコで生活していればテクノロジーの発達、普及、そしてそれらが与えるビジネスへの影響が生々しく感じることが出来る。10年前と比べてみても人々の生活は大きく変化しているし、街の雰囲気も異なる。
既に2016年の時点でUberやLyftなどのライドシェアの普及でタクシー最大手のYellow Cabは倒産したし、市内に本屋さんは数える程しか無くなった。もちろんCDストアなんて中古や家電量販店の一部を除いて全く無い。誰がどうあがいたところでその重力に逆らう事は出来ない。
テクノロジーの進化で消滅の危機に瀕する既存のビジネス
下記に紹介するのは、既にもしくは近いうちに大きな変化を強いられるであろう10のビジネスモデル。インターネットの出現や自動化、AIなどのテクノロジーの発展により、プロダクトやサービスを大きく変化させるか、もしくはその存在自体が無くなってしまう可能性も大いにありえる。
1. デパート/大型店舗
アメリカではAmazonに代表されるECの普及により、既存の小売店が大きな打撃を受けている。その中でも大型店舗やデパートへの影響は大きく、米国最大規模のMacy’sは2017年中に現在の675店舗のうち、100店舗を閉鎖する予定と発表した。その他の小売店として、スポーツ用品を専門とするSports Authorityが全460店舗を閉鎖し倒産、ディスカウント最大手のWallmartですら、269店舗をクローズすると発表、Searsも傘下のKmartを中心に78店舗を閉鎖する。
上記の中にはデジタルでの販売チャンネルを強化しているケースも多く、会社自体の存続が危ぶまれていないケースもあるが、どちらにしろテクノロジーの進化でビジネスの形態を大きく変化させる必要がありそうだ。
2. カーナビ
Google Mapなどのアプリはナビとしての利用価値も高い。この価値が最も感じられるのは運転中で、一般のドライバーでもUberやLyftに運転手としてサービス提供出来る様になった最も大きな要因ともなっている。その一方で、既存のカーナビを利用するシーンはどんどん即無くなって来ている。
これまでは自動車を購入する際の定番オプションであったが、今後はスマホとの連動が自に最も求められる機能になってくる。加えて、AppleやGoogleがより一層自動車産業に力を入れる事により、既存のカーナビ製品はその価値がどんどん下がって行くだろう。
3. 電話帳
電話帳の存在を知っている、見た事のある人の方が珍しくなる日も遠くは無いだろう。ネットとスマホが発達すれば、わざわざ重く使いにくい電話帳を利用する意味は無い。むしろ電話帳に広告を載せる事でビジネスとして成り立っていた事自体が驚きである。実際にサンフランシスコでは2012年から環境問題に配慮し電話帳の配布を禁止している。
膨大な紙を利用して印刷し、見た目も美しく無い。そもそも使いにくい。アメリカではオフィスのディスプレイ画面の底上げぐらいにしか利用価値が無くなって来ている。
4. 百科事典
以前世の中には何かを調べる為に百科事典というものがあった。分厚くて重く、何冊にも渡る書籍である。恐らく今でも図書館に行けば見つける事が出来るはず。インターネットやGoogle, Wikipediaがある今、その存在価値は限りなくゼロに近い。特に新しい情報がどんどん生み出される現代では、百科事典を出版してもビジネスにはなりにくい。
すでに百科事典大手で、創業244年の老舗、ブリタニカは2012年で販売をストップした。一昔前はCD-ROMバージョンを$1,000ドル以上で販売していた百科事典業界も終了のお知らせが近づいている。
ブリタニカ百科事典の売げ推移 (image by hbr.org)
5. タクシー
日本ではまだまだ実感が湧きにくいが、欧米でのUberやLyft, アジア圏ではGrabやDidiなどのライドシェアリングサービスの普及で、既存のタクシー業界が脅かされている。実はライドシェア系のサービスは元々はタクシーの代替的に考えられて来たが、その利便性や経済性、安全性の高さでユーザーからの人気を集め、いつでもどこでも働きたい時に働けるドライバーメリットと合わせてタクシー業界を超える巨大産業になる見込み。
このままだとわざわざタクシーに乗る理由がほとんど見当たらなくなるため、規制緩和が進めば世界中からタクシー業社が消滅する日も近いだろう。
6. テレビ局
インターネットの回線スピードの向上とデジタルメディアの普及により、オンライン動画がどんどん普及して来ている。特にアメリカではNetflixやhuluといったオンライン専用チャンネルも人気を集め、既存のテレビの利用時間がどんどん減っている。
特に35歳以下の若者間では、テレビよりもスマホやパソコンを利用する時間の方が高くなってきており、テレビ局は生き残りを掛けてコンテンツの充実、広告主へのROI統計の透明化、デジタルメディアとの融合、他業種とのパ=トナーシップやM&Aを進めている。
日本国内ではまだまだテレビというメディアの影響力とテレビ局の存在は大きいが、数年以内に業界の再編成が進むと考えられる。
https://blog.btrax.com/jp/tv/
7. 音楽レーベル
アーティストやバンドが人気を集めメジャーデビューする事が一つの目標だった時代はそろそろ終わりを迎えるだろう。YouTubeやストリーミングサービスを利用すればネット上で勝手にデビューする事も可能だし、そこから人気を集めそれなりの収益を上げる事もできる。
既存のメジャーな音楽レーベルの役割は、アーティストの発掘、プロデュース、コンサートやプロモーションに関わる部分で依然として存在するであろう。しかし、これまでのようにCDを大量販売して大幅に儲けることは期待しにくく、細分化された戦略が求められる。
また、いちアーティストとしてもインターネットを経由して動画や音楽を配信すれば、国境を超えた活躍が期待出来る。日本ではマニアックな存在のミュージシャンがアメリカやヨーロッパで大人気を博すことも多いに考えられる。
8. 証券ブローカー
金融業界がテクノロジーを最大活用する事で生み出されたフィンテック。そのユーザーメリットは膨大で、その一つがこれまで人力で行なわれていた作業が、より効率的にシステム化され、コストの低下とスピードの向上を実現している。
その中でも最も注目されてるのが、オンライントレーディングに加え、AIを活用した株式投資サービス。これまで知識と経験が豊富な敏腕証券ブローカーがアドバイスを提供し、コミッションを得ていたが、より精巧なシステムが市場データと統計を活用して人間が提供出来る以上の結果が出すことが出来れば、証券マンの仕事は抹消される。
9. Web制作会社
以前にアメリカではどんどんWeb制作会社が無くなっている事を記事にしたが、それからより一層そのトレンドは加速している様だ。内製化や賃金が安い地域へのオフショア発注に加え、WordPressやSquare Spaceなどの誰でも綺麗なサイトが作成可能なプラットフォームの普及、The GridやWixなどのAIを活用した自動作成、更新システムが浸透すれば、近いうちに人力でのWeb制作は過去のものとなるであろう。
10. 銀行
これからテクノロジーが解決するべき大きな課題の一つが、銀行におけるユーザー体験の改善であろう。自分のお金なのに送金やATMで引き出すたびに取られる手数料、店舗は15時に閉まる上に使いにくいオンラインバンキング、モバイルアプリは無し。店頭では散々待たされ、たらい回しなど、近年のサービススタンダードから考えると、既存の銀行の顧客体験はあまりにもお粗末すぎる。
フィンテックやスマホに加え、Bitcoinなどの仮想通貨の普及すれば、既存の20世紀的な銀行ビジネスは成り立たなくなる。アメリカではすでにSquareやLending Clubなどノンバンクの金融系スタートアップに人気が集まっており、既存の銀行は焦り始めている。
番外編: テクノロジーの発達でもあまり影響が受けにくいと思われる産業
サンフランシスコ市内は本屋さんや小売り店舗が減少して行く中で、それらの建物がその後どのように利用されて行くかを見てみると、”意外と影響を受けない”と思われる業界がある。それがカフェである。10年前と比べてみても、市内のカフェの数は増えており、サードウェーブコーヒーに代表されるようなムーブメントや、テックxカフェをテーマとした空間などもスタートアップ系の人達から人気を博している。
また、カフェと同時に店舗が増えているのがラーメン屋である。テクノロジーが発展すると意外とレアでこだわりの強い超アナログなビジネスモデルがユーザーの心を捉えるのかもしれない。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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