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起業家を目指すなら日本の大学には行かない方が良いかもしれない3つの理由
アメリカで成功している起業家の多くが大学を出ていない。もしくは大学院をドロップアウトしてる。例えば:
- スティーブ・ジョブズ: リード大学中退
- マーク・ザッカーバーグ: ハーバード大学中退
- ビル・ゲイツ: ハーバード大学中退
- ジャック・ドーシー: ニューヨーク大学中退
- イーロン・マスク: スタンフォード大学院を2日で中退
そしてこれは必ずしも上記のようなシリコンバレー系起業家に限ったことではない。
成功者の多くがかつては劣等生
アメリカでは成功者の多くが学生の頃は劣等生。Fortune誌によるトップ500社のCEOの過半数が大学時代の成績平均評価がCもしくはCマイナスだった。
また、歴代大統領の学生時代の成績は、ほぼ4人に3人が平均以下。億万長者の起業家の過半は大学すら卒業していない。
日本の大学に入れず、逃げるようにアメリカへ
ちなみに僕自身も似たような状況だった。日本の高校を卒業し、そのまま日本の大学に行く“予定” だったのが、受験にことごとく失敗。受けた大学5校全てに落ちた。
というのも、元々答えが定まっている科目に全く興味がなく、得意だったのはいわゆる副教科の美術と音楽、そして夏休みの自由研究。ネイティブレベルのはずの英語も発音記号と穴埋め問題が苦手で落第するレベル。
ご存知の通り、進学校で受験に失敗した人間は日本で “人権” がなくなるため、全く知り合いのいないカリフォルニアに逃げ立った。
参考: 日本では完全に敗者だった【インタビュー】btrax CEO, Brandon K. Hill
大学教育は起業家精神と相反する
その後色々あって起業家になったのだが、今から考えると、あの時の判断は本当に正しかったと感じる。
というのも、どうやら日本の大学で学ぶ内容が現代の起業家に求められる資質とかなり相反しているからだ。
起業家に求められるのは、現在の課題を解決しながらも、まだ存在しない未来を想像し作り上げる能力。それも曖昧極まりない状態で。
自分の感性を信じて、現状では合理的ではないと思われる状態に対する投資の決断を行う。そんな能力は、模範解答ありきで教えられる日本の大学教育に順応した人が得られるわけない。
日本の大学から優れた起業家が生まれないと思った3つの実体験
実は最近、この思いが確信になった出来事が3つほどあったので紹介する。なお、これらはあくまで僕の個人的な経験のため、一般的ではないかもしれない。あくまで一つの参考程度にご覧いただければと思う。
1. 起業家を育成する大学から客員教授を頼まれたが…
先日、とある大学関係者から客員教授のお話をいただいた。そろそろ日本でも起業家精神を教える大学が増えてきているのかな?と思っていた矢先だった。
どうやらその講義では、現役の起業家からそのノウハウを学ぶことが目的らしい。僕の場合はサンフランシスコと東京で会社を経営しているため、とりあえずは何かしら役に立てそうかもと思い、嬉しくなった。
しかし、その詳細を詰めるためにスタッフがやり取りしたところ、なんと無報酬と判明。そう、無報酬でお願いしたいという。多忙を極める現役の起業家に講義を無料でお願いする。そんなバカな?と思ったが、日本ではこれが結構スタンダードで、珍しくないという。
自分も別にそれでお金儲けをしたいとは思ってはいなかったが、大学は学生から学費を貰いながら、客員教授には無報酬で講義させようとする仕組み自体がビジネスとして破綻していると感じた。
運営する団体がビジネスができていないのに、起業家を育成しようなど甚だ無理な気がしてしまった。
参考: “タダでやってくれませんか?” 問題への正しい対応方法
2. 起業家育成プログラムに関して大学関係者にヒアリングした結果
もう一つ。我々が行政に提供してるスタートアップ向けのアクセラレータープログラムを日本の大学生向けにも提供できないかと思い、いくつかの大学の関係者にヒアリングを行った。
その結果がかなり驚くべきものだった。大まかに分けると下記の二つの理由で難しいと言われたのだ。
a. 大学的にはできるだけ卒業生には大企業に就職するか、公務員になってほしい。また、多くの学生もその道を希望する。なので、学校としても、いたずらに起業家精神を養ってほしくない。
b. そもそも起業家になることに興味のある学生は極めて少ないため、ニーズがない。
もちろんいくつかポジティブなフィードバックももらったが、上記のような感想を受けると、なかなか厳しい状況だと感じざるを得なかった。
どうやら、日本の大学は生徒にはできるだけ起業家になって欲しくない、もしくはなりたい人は来ていないと思っているらしい。この時点で起業家を目指す人が行く場所ではないんだなと確信した。
3. 日本の最高学府の学生から起業に関しての質問
ちょうど先週、日本の大学生たちが我々のサンフランシスコオフィスを訪問した。彼らはもう既に起業しており、相談内容は「今後日本国内でだけで進めるのか、グローバルに展開して行った方が良いのか」というもの。
彼らに言わせると、やはり日本国内でやって行った方が不確定要素が少なく、成功確率が高いため “コスパが良い”のではないかとの見解。僕としてはどちらでも良いと思うが、そもそも起業をコスパで考えるのはいかがなものか、と思った。
というか、その答えを他人に求めている時点で何かがおかしいと感じた。
おそらく彼らは、既存の仕組みの中で能力の最大化ができる “スクールスマート” なのだろう。しかし、起業家で成功したいなら、変化に対応し、自身の力で未来を作り出す “ストリートスマート” にならないといけない。
日本の最高学府に通う彼らは、答えが存在するものへの対応を徹底的に叩き込まれている様子で、答えを自分で生み出さなければならない世界ではかなり脆いのではないか、と感じた。
本当に起業家として活躍したいのなら、まず真っ先にすることは、それまでエリートとして培ってきた価値観をアンインストールすることから始めなければならない。でなければ、そんなお利口さんは、起業家になっても周りの猛者どもに秒殺されてしまう。
本気で起業家になりたいなら日本の大学はあまりお勧めできない理由
このような感じで、現時点での僕の感想としては、日本の大学で起業家精神を学ぶのは結構難しいのかな?と思っている。
起業家精神を掲げる講義を教えている先生自体が起業家ではないことも多いし、教える方がそもそもスタートアップが何かを理解していないこともある。
これが例えばシリコンバレーの中心にあり、多くの優秀な起業家を輩出しているスタンフォード大学になると、教授自身や大学のファンドが有望な生徒に目をつけ、アドバイザーとしてそのアイディアに対応でメンタリングを行うことがある。
そして、初期の段階から生徒のスタートアップに投資を行い、彼らが成功した際に自分もかなり儲かる仕組みができている。大学だからといって、大企業向けの人材だけを量産しているわけではない。
おそらく日本でそんな仕組みがある場所はまだまだ少ないだろう。
日本の大学はいまだに “工場労働者” を量産している
多くの日本の大学カリキュラムでは、自分の頭で考えずに、マニュアル通りに動く “工場労働者” をまだまだ量産されている印象だ。そして、大学のカルチャーや教えられる価値観もそれにオプティマイズしているとしか思えないのが残念だ。
この仕組みは、20世紀の産業モデルではかなり優秀な労働力を生産していたと思う。しかし、時代の変化が激しい21世紀のモデルには到底対応できていないと言わざるを得ない。
起業家は未知の世界を作り出すことが求められる。言い換えると「答えのない」時代に自らが答えを創造しなければならない。そのためには教科書通りの授業と、模範回答ありきの試験では全く対応できない。
特にテクノロジーの進化が目覚ましい現代においては、今日正解だったことも明日不正解になってしまう事は多々ある。
AIでできることを頑張って学んでも意味がない
今の時代、AIでも与えられたデータをもとに最適なアウトプットを出せるのだから、答えが既に存在している事柄を人間が学ぶ価値はかなり低いと感じてる。
機械ができることと競うよりも、挫折から学ぶことで人間的魅力を高めたり、リーダーシップを鍛える方がよっぽど起業家としてのレベルが上がると感じる。
情報や知識、化学的な計算など、答えがあるものはすでにテクノロジーがカバーしている。ということは、学校で学んだことがどんどん役に立たなくなっている。というよりは、答えを求める癖が変についてしまい、自分の頭で考え抜く能力が身につきにくくなってる可能性もある。
参考: 人工知能(AI)のできることとは?歴史から学ぶ現状と未来予測
お勉強ができるだけでは起業家になれない
スタートアップは、まだ誰もやったことのない内容を通じて世の中の社会課題に取り組むことが多い。それも結構な未来軸で。そうなってくると誰も答えを知らないし、模範解答なんて存在するわけない。もはやマークシートで回答できる内容なんて一つもない。お利口さんでは全く歯が立たない世界である。
一方、日本教育における減点方式、副教科軽視、偏差値、エリート大学至上主義は、オペレーション業務を主軸とした、これまでの大企業にはかなり最適化された人材を生み出す。でも、起業家には最も適していない価値観を植え付けている。
起業家に求められるのは、人と違う視点で、間違いを恐れずに、今までに存在していないようなサービスを作り出し、かなりしょぼい状態でも人々の前に立ちプレゼンする。そして、失敗しても何度もチャレンジするマインドセットだ。これは日本の学校教育で評価される真逆の価値観。
何も、人類を火星に移住させるような壮大な野望を持たせる必要はないが、現在の日本式学校教育が誰も答えを知らない未知の課題に対して、クリエイティブな視点から何かを生み出す起業家を育ててあげることはかなり難しいんじゃないかな、と感じている。
起業家を目指したいのであれば、それまでに学んできたことは一度アンラーンすることから始めるのをお勧めする。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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