デザイン会社 btrax > Freshtrax > デザイン思考が生み出す5つのビ...
デザイン思考が生み出す5つのビジネスアドバンテージ
多くの似通ったプロダクトが世の中に流通する様になり差別化がより一層難しくなってきている。その状況下でここ10年でビジネスに及ぼすデザインの価値が倍になったとのリサーチ結果が出ている。しかしながら、良いデザインを施したからといって必ずしもビジネス的に良い結果が得られるとは限らない。
その一方で、世の中で成功している多くのプロダクトは、アイディアレベルからプロダクション、そしてプロモーション/マーケティングに至るまで、行動心理学、色彩学、消費科学などのロジッックに基づく総合的に一貫した”デザイン的”プロセスが採用されている。
これからのビジネスに対するデザインの価値においては、見た目の美しさ以上にプロダクトを成功に導く為の、”デザイン的プロセス”と”デザイン的思考”が重要となってくる。
“デザイン”と言う言葉のイメージから、一般的にはデザイナーやデザイン部署意外には関係の薄い業種だと思われがちだ。しかし、近年、アメリカやその他の先進国では”デザイン的思考”を社内の全てのプロセスに採用し、他社との差別化を図る事で、大きな成功を成し遂げている企業が増えている。
これからのイノベーションを造り出す最も重要なファクターの一つとして、デザイナー、非デザイナー関係なく、このデザイン的思考が上げられる。そこから得られる5つのビジネスアドバンテージを考えてみたいと思う:
1. 創造的コラボレーション (creative collaboration)
テクノロジーや情報ネットワークの発達でここ最近、経営、営業、マーケティング、R&D, 企画、制作等の企業活動の様々な側面に於いて、より速いスピードで高レベルの問題解決が求められている。社内で一貫したデザインプロセスを採用する事で、部署を超えたクリエイティブ活動が可能になり、創造的なコラボレーションが生み出される。
例えばデザインプロセスの第一ステップである問題の明確化を実現し、各部署それぞれで意識の共通化を可能にする。そしてマーケットを分析し、今までに無い解決策を皆で考える。
アメリカの大手会計ソフトQuickBooksを展開するIntuit社や大手高級ホテルチェーンのFour Seasonsでは、デザイン的思考を採用し、社内カルチャーを一新した。Intuitは”Design for Delight (D4D)”と呼ばれるデザインプロセスを問題解決に対して採用しスタッフ全員にデザイン的思考を浸透させる事で素早いスピードでモバイルアプリをリリースした実績もある。
部門間のコラボレーション達成はデザイン的思考のアドバンテージの一つとして考えられる。
2. イノベーション (innovation)
上記の創造的コラボレーションからも分かる通り、新たなコンセプトを造り出すプロセス下では、イノベーションが生まれやすくなる。恐らく世の中で”イノベーション”と考えられている商品/サービスは、その半分以上がそのデザインに起因する部分が大きいと考えられる。
実にユーザーエクスペリエンスが劣るプロダクトで人々がイノベーションの例として挙げるものはほぼ無いだろう。
一方で、究極のデザインはそれを通し消費者に対してより最適なライフスタイルを提供する。例えば、Appleが作り上げた新しい音楽スタイル(iTunes + iPod)や情報コミュニケーション(iPhone)などが良い例である。人々の新しいライフスタイルをデザインする事から考える事で革新的なプロダクトやサービスの生成に近づける事が出来る。
3. 差別化 (differentiation)
恐らくデザインが寄与する最も大きなメリットは他社製品との差別化に他ならない。多くのテクノロジーが成熟してきている中で、今後はデザインとエクスペリエンスが差別化を生み出す。一つのプロダクトカテゴリーに対して類似製品が乱立している中での差別化要因となるのは価格かデザインしか無い。
価格で勝負するのであれば、最も安い製品でなくては勝負にならないので、自ずとそれ以外の製品はデザイン面で勝負しなければならなくなる。そして、プロダクトを提供する企業の最終的な競争力も会社のデザイン力に左右されるだろう。競合との差別化はテクノロジーではなく、デザインに比重が置かれる。
韓国発の自動車メーカーであるHyndai(ヒュンダイ)は、10年程前までアメリカ市場での安かろう悪かろうの代名詞であった。それは性能だけではなくその見た目がかなりダサかったからであろう。それが、5年程前から日本車そっくりのデザインを採用し、それなりの市民権を獲得し始めた。
そして、ここ数年でAudi(アウディ)のデザイナーを根こそぎヘッドハントし、カリフォルニアにデザイン部署を移転。より車体のデザイン改善に注力をした。それにより現在では日本車を脅かす程の人気ブランドになりつつある。
4. シンプル化 (simplification)
デザイン的思考を行う上でとても重要になってくるのが、シンプルに考える事。これは、”単純”に考える事とは少し趣が違う。問題や解決案に優先順位を付け、最も重要なポイントにフォーカスをあてる事から全てが始まる。そして造り出そうとしているプロダクトが最も伝えたいユーザーメリットを最大限に引き出す事がデザインの使命となる。
そのプロセスでは、デザイナーが最終的なヴィジュアルデザインを施す前に、その魅力や解決する問題、ターゲットとする層のニーズ等、ビジネス面での最も重要とされているゴールが出来るだけシンプルな形で設定されている必要がある。
情報過多で多忙な毎日を送っている現代の消費者にとって、短時間で分かりやすくその良さが伝わるプロダクトは非常に魅力的である。また、社内プロセスやコスト削減に於いてもシンプル化は大きなメリットを与える。
例えば、TOYOTAは複数モデルに対しての共通パーツの割合を徹底的に増やし、コスト削減及びエコ化を実現している。その影には、車両やパーツデザインの際に、シンプルデザインのコンセプトを最大限活用している。
ちなみに、究極のデザインを表現する有名な表現に
“完成とはこれ以上追加出来ない状態では無く、これ以上削る事の出来ない状態を表す (Perfection is achieved, not when there is nothing more to add, but when there is nothing left to take away.)”がある。
5. カスタマーエクスペリエンス (customer experience)
商品やサービスからのユーザーエクスペリエンス構築に於いて、デザインは非常に重要な存在である。そして、消費者はそのエクスペリエンスからその企業のイメージを受け取る。そしてその結果次第で、熱心なリピーターになるかどうかが大きく左右される。
米国家電大手のPhilips(フィリップス)では、他社との価格競争と差別化に悩んでいた。そこで、消費者の購入プロセスに着眼し、そのエクスペリエンスの改善に注力した。彼らはEngine Service Designと呼ばれるソフトウェアを開発し、どこの小売店でも簡単に在庫の検索や発注が可能になる仕組みをデザインした。
デザイン的思考の活用で、ロダクト自体だけではなく、ユーザーが受け取るエクスペリエンスの向上を達成した良い例である。ちなみに、良いデザインを造り出す一番コツは、ユーザーの気持ちを考えてあげられる、思いやりを持つ事である。
ユーザーのメリットを第一に考え、ユーザーに苦労をかける事無く、それをなるべくスムーズに達成してあげられる真心が大切になってくる。カスタマーエクスペリエンス (CX) はデザイン的思考が創造する、”目に見えない” デザインである。
まとめ
上記の5つのアドバンテージからも分かる通り、これからはデザイナーで無くとも、デザイン的思考が重要になり、どのような職種の企業でも社内にデザイン的プロセスを採用する事が必要とされるであろう。逆に、デザインを重要視していない商品やサービスは長期的に考えると衰退していくと思われる。
ちなみに、”話題のスタンフォード大学デザインスクール -d・school- に行ってみたぞ” でも取り上げたデザイン的プロセスとは:
1.OBSERVE (現状の観察) > 2.UNDERSTAND (問題の理解) > 3.DEFINE (解決策の立案) > 4.IDEATE (デザインの具現化) 5.PROTOTYPE (プロトタイプ作成) 6.TEST (テスト) || その繰り返し
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
CES 2025の革新を振り返りませんか?
1月11日(土)、btrax SFオフィスで「CES 2025 報告会: After CES Party」を開催します!当日は、CEOのBrandonとゲストスピーカーが CES 2025 で見つけた注目トピックスや最新トレンドを共有します。ネットワーキングや意見交換の場としても最適です!