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Google HomeやAmazon Echoに学ぶスマートプロダクトのUX設計
AppleのパーソナルアシスタントSiriを搭載した「HomePod」やGoogle Assistantを搭載した「Google Home」、音声アシスタントAlexaを搭載した「Amazon Echo・ Dot」が続々と発表・発売されている。これらは、ユーザーの行動パターンや人格、使用する言葉のコンテクストを学習して、使うほどに個人に対応していくスマートプロダクトである。
多くの製品が発表されるにつれて、ユーザーのプロダクトへの期待が大きくなっている中、ユーザーはプロダクトに人間と同じようなコミュニケーションを期待している。一方で技術的な制限は常に存在する。
そのため、デザイナーやスマートプロダクトの開発者はユーザーのエクスペリエンスに対する期待をしっかりと管理しなければならない。だからこそ、ユーザーから求められるエクスペリエンスを提供することがビジネスを成功させる上でも大切なことである。
スマートプロダクトとは?
日々の生活中で、わたしたちは有能なスマートプロダクトとそのユーザーインターフェイスに囲まれている。ここでいうスマートプロダクトとは、ユーザーとそれを使用する背景・文脈に関する情報を収集し、その動作をユーザーまたは特定の状況に適合させるように処理する製品として定義する。
例をあげると、太陽が輝いていることを検出すると自動的に閉まるカーテンや、過去に訪れた場所に基づいて、新しい休暇の場所をおすすめする旅行アプリなどだ。基本的に、ユーザーまたはさまざまな背景・文脈の要因に関する情報を収集し、自動的にその動作を適応させる製品である。
ユーザーとスマートプロダクトとのやりとりは、コミュニケーションに似ている。例えば、自然に会話するように音声コマンドを使用して、スマートホームを構成するデバイスにに問いかけると、プロダクトも自然な会話として返答する。そのやりとりは家と会話をしているようだと感じられるだろう。
スマートプロダクトのUX設計が何故難しいのか?
Amazon Echoは、インテリジェントなパーソナルアシスタントAlexaを搭載した音声制御型のスピーカーだ。音楽の選択、ライトの消灯、Amazonの商品やフードデリバリーサービスの注文などをサポートすることが可能である。そして、使うほどに使用者の好みを把握していく。
プロダクトが人間から命令されるより先に物事を自動的に行って完了させてしまう場合、ユーザーはそのプロダクトが自分よりも知性を備えているように感じるであろう。
人間は常に周りの状況を把握し、自発的な行動をとることができる。そのような行動ができるということは、ある程度の知識と経験を持っているということになる。
犬を見たとき、過去の経験から犬がどれくらいの知性を持っているかある程度は予測できる。しかし、まったく新しいスマートプロダクトを見たとき、どれほどのことができるか予測するのは困難だ。
これはユーザーとスマートプロダクト間のコミュニケーションをデザインする際に一番の問題となりうる点である。そのため、スマートプロダクトへの期待がどのような問題を引き起こすのか、考慮が必要なのである。
ユーザーはスマートプロダクトに何を期待しているのか?
ユーザーはスマートプロダクトに対して大きな期待を持っている。あなたはテクノロジーをツールではなく、人間のような存在として扱った経験があるだろうか?
例えば、お掃除ロボットのルンバを掃除のツールではなく、ペットのような存在に感じたり、パソコンが動かなくなったときはパソコンに向かって話しかけたり、ただの物体ではなく知能や感情を備えたものとして扱うような経験である。
スタンフォード大学のバロン・リーブス教授とクリフォード・ナッシュ教授は、人々はコンピューターを物体であると認識しているにもかかわらず、人と同じ様に接することが多々あると述べている。
コンピューターが意思のないツールであると認識していても、それが生きているように行動し、意思のある存在であるかのように行動する可能性があると示唆している。では、何故人間は機械に対してそのような行動をとってしまうのだろうか?
それは、わたしたちが世界をどのように認識しているのか、心理学の背景から読み解くことができる。人間心理は、人と人との交流の中で発展している。わたしたちは幼いころから物と知識や感情をもつ生物との違いを学習しているのだ。
例えば、交通量の多い道路を横断するときは車が来ているのにもかかわらず、あなたは意図して飛び出すことはしないだろう。生物は自分の危険を察知でき、自ら意思をもって動くことができる。車や信号機は自らの意思であなたに危害を与えるようなことをするだろうか?無生物は自らの意思をで動くことはできない。かつては物体と生き物を区別するのが容易でした。技術開発によって、ラインはよりぼやけてしまってきている。
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科学の進歩でプロダクトが自発的に行動するように進化している。(実際は自発的に動いて見えるようにプログラムされている。)そのため、ユーザーはプロダクトがまるで生きているかのように接してしまうことがある。
ルンバが自ら部屋の誇りをみつけて掃除してくれる、iPhoneの音声アシスタントが天気とおすすめのレストランを提示してくれるなら自分の意見や気持ちを共有してくれる。そのような期待を抱きはじめてしまう。ユーザーはスマートプロダクトができる限界をはっきり理解していないため、無意識に大きな期待を抱いてしまうのである。
さらに、Googleやテスラ、その他日本の自動車会社がこぞって開発を進めているセルフドライビングカーは車自体が運転の制御を行う機能を搭載している。音声で指示を出し、最適な動きをするようになれば、いままで生物と無生物の違いを定義していた「自らの意思で動くこと」という前提がくずれてしまう。
実際はプログラムによって制御されているにもかかわらず、それが自らの意思で動いているように感じてしまうようになるだろう。
スマートプロダクトをデザインするには
音声アシスタントは人間のコミュニケーションと同様の方法の動作を期待されているが、対話の限界は購入する前には不明確だ。
ユーザーがプロダクトで何ができるか理解していないと、ネガティブなユーザーエクスペリエンスを生み出してしまう。それを避けるためには、プロダクトができることを明確に伝えることが重要である。それはプロダクトのPR、取扱説明書、プロダクトを使っている最中にできないことを音声アシスタントが明確に伝える等、方法は様々だ。
また、スマートプロダクトがユーザーの行動を中断させてしまうことはよいエクスペリエンスとは言えない。例えば、コンテンツを閲覧しているときに大画面で自動で配信されるポップアップ広告は一見、クリック率を向上させる革新的なものだと考えられるが、ユーザーエクスペリエンスの観点から考えるとネガティブな印象を与えてしまう。
文章を読んでいる最中、音楽を聞いている最中、動画を見ている最中に行動を中断させられて満足する人はいないだろう。
スマートプロダクトをデザインするときには、ユーザーが意図しないことを勝手に行うのは避けるべきなのである。スマートプロダクトはユーザーの行動を学習し、会話のコンテクストを理解して適切な動作を行うことが必要である。
上記をまとめると、インテリジェントな製品をユーザーがどのように操作するか、スマートな製品を設計するたびに考慮すべき3点だ。
- 製品にできること以上のことをできると言わない
AmazonのAlexaは製品を使い始める前の取扱説明書にAlexaへのテスト質問を明記してある。その質問を一通り行うことで、Alexaが何ができるかをユーザーは理解することができる。Alexaが質問が聞き取れなかったり、できないことを指示された場合は「わかりません」、「それはできません」など、しっかり受け答えを行う。使うたびに、Alexaはユーザーの趣向を理解し、ユーザーはAlexaを理解していく。 - 製品に何ができるのか、そして現在は何ができるのかを明確に伝える
Nestサーモスタットは電源をいれてすぐに最適な温度調節を行うことはできないが、ユーザーが使い始めた最初の1週間で1日の習慣を学習する。それから、その習慣に合わせて温度を調節するようにプログラムされる。NestはそれをWebサイトや説明書に明確に明記してある。 - 製品は社会的なルールに従い、ユーザーの行動を中断することはしない
音楽サービスのSpotifyはユーザーの習慣からユーザーの好みに合わせた音楽を提案する。これらの提案はユーザーが望めば簡単に採用されるが、勝手に再生されたりはしない。
まとめ
人間は複雑であるため、どれだけプロダクトが賢くても、要求された文脈を完全に理解することは難しい。スマートプロダクトを設計するときには、プロダクトができること、できないことを明確に伝える必要がある。
ユーザーが全く新しいものにふれるときには、プロダクト側から何ができるのか、どうすればできるのかを正確に提示することは困難である。そのため、ユーザーのコミュニケーションや行動に自動的に適応する製品を作成する場合は注意が必要だ。
そしてユーザーが簡単に動作を停止できるようにしておくことも重要である。スマートプロダクトを設計するということは、創造の限界を知り、日々の生活の予測不可能性なレベルよりも一歩先を行くことなのだ。それはデザインを現代の期待に沿わせ、プロダクトを成功へと導くだろう。
参考:How to manage the users’ expectations when designing smart products
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