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起業家達よ、注目されることが目的になっていないか?
メンタリングなどを通じたスタートアップの起業家を見ていて、ふとした違和感を感じることがある。それは、何の為にスタートアップをやっているのか?という点。
起業する目的は主に、社会の解題解決、自己実現、お金儲けなど、いくつかあると思うが、それとは別に「キラキラ」に引き寄せられているケースもあるんじゃないか?と感じる。
自分が目立つこと。最新トレンドに乗っかること。資金をたくさん集めること。ありえないレベルの夢を掲げて注目されること。それ自体には全く問題はないが、手段が目的になってしまう状態には違和感を感じる。
実はこの状態はアメリカでも定期的に話題になる、俗に “Shiny Object Syndrome” と呼ばれる状態。日本語にすると「キラキラ症候群」といった感じだろうか?
スタートアップの落とし穴 – キラキラ症候群とは
スタートアップの起業家の多くは、一般的な人々よりぶっ飛んだ感覚を持っている人が多い。それゆえにかなり謎な思想や行動をとりがちなのだが、それが必ずしも適切ではないこともある。
その中の一つが “光りモノ” に目が眩むキラキラ症候群。地味なことより派手なこと。古臭いやり方より最新のテクノロジー。地道な手法よりも一発ででっかく儲けたい。
起業家にありがちな4つのキラキラタイプ
下記で紹介するのは起業家がはまりがちな4つのキラキラタイプ。一度軽く目を通しておくだけでも、いざとなった時の自己抑制につながると思う。
- 自己承認欲求最優先
- 最新バズワード大好き
- 資金調達至上主義
- 誇大妄想 but ノーアクション
キラキラタイプ1: 自己承認欲求最優先
「目立つことが大好き」「自己顕示欲が強く、常に注目を浴びていないと気がすまない」は、起業家にありがちな気質。しかし、それがエスカレートしすぎると、プロダクトやユーザーの前に、自分のエゴを満たすことを目的にしてしまう。それが一つめのキラキラタイプ。
例えば、イベントに登壇する。ピッチ大会で賞を取りまくる。著名人と対談をする。メディア取材を片っ端から受ける。そしてそれをSNSにドヤ顔でアップする。など。
もちろんアーリーステージのスタートアップにとっては、優れたPRは世の中にサービスの存在を知ってもらったり、投資家の注目を集めたり、ユーザー獲得の面でも大きなメリットもある。
でも、もしそれが起業家の自己満足のためにやっているのであれば、脚光を浴びるに必死になるのを一旦やめて、まずプロダクトの作り込みに集中するべきだろう。
本気で取り組んでいる創業者たちは、24時間365日プロダクト作りに取り組み、友人や親戚からお金を借りてユーザーを探し、人材獲得のために奔走する。
そんな日々を送ってれば、自ずと複数のメディアインタビューや頻繁にイベントに登壇したり、パネルディスカッションに参加する時間はない。
例えば、ピッチイベントに出場する目的はあくまでユーザーを集める。フィードバックをもらってプロダクトを改善する。投資家に知ってもらう。そして、仲間を集めるための手段であって、それ自体が目的になるべきではない。
メディアに露出するのも同様で、まわりからもてはやされたり、承認欲求を満たすための目的とするべきではない。
ヴァージングループ創設者のリチャード・ブロンソンはいくら大きなお金を積まれても、自分のビジネスに役立たない講演依頼は受けないと答えている。
起業家が目立つに越したことはないが、それはあくまで手段であって目的になるべきではない。
くれぐれも、自己承認欲求に取り憑かれたスポットライト症候群にならないように気をつけたい。
キラキラタイプ2: 最新バズワード大好き
多くのスタートアップは、最新のテクノロジーを活用してユーザーの課題解決をおこなったり、楽しみを与えたりして成功している。
自ずとその起業家たちも最新トレンドへの感度が高い。その一方で、常にバズワードだけを追いかけ、次から次への事業内容を変える起業家も少なくはない。
これからVRの時代と豪語してた人のサービスがあっさりとWeb3系に変わっていたり、IoTに飛びついた起業家がいつの間にかNFTに興味が移ってしまって元々のプロジェクトが途中で頓挫したりなど。
これ系のキラキラ症候群は、非常に飽きっぽく、プロダクトがやっと形になり始めたなと思ったら、急にモチベーションが下がったりする。
参考: “イノベーション“や”DX”をバズワードで終わらせないために大切な2つのこと
もちろん、まだ誰もやっていないタイプの事業を真っ先にやることで、ある程度の優位性を獲得することはできる。しかし、本質的にそのサービス自体への情熱があまり強くなく、単純にキラキラしたバズワードを追っかけてるだけだったとしたら、価値を生み出すのは難しい。
最新テクノロジーや、話題になっているバズワードなどは、あくまで手段であって、目的にするべきではないし、次から次にトレンドを追っかけてる暇があったら、なんでも良いから一つのサービスをさっさとリリースしてしまった方が良い。
そして、何かに強烈な情熱が湧くまで安易にスタートアップを始めない方が良いと思う。
キラキラタイプ3: 資金調達至上主義
「スタートアップ = まずは資金調達」と思っている人が結構いる。おそらくこれはテック系メディアを中心に、スタートアップの資金調達のニュースが日々飛び交ってるからだろう。
でも、実はVCなどの外部からの資金調達をしなくて済むのであれば、それに越したことはない。むしろ、できるだけ自己資金で進めた方が良いとアドバイスする投資家もいるぐらいだ。シリコンバレーのカリスマ投資家、ロン・コンウェイもその一人。
参考: エンジェル投資家の裏側教えます【インタビュー】シリコンバレーのスーパーエンジェル投資家: ロン・コンウェイ
それなのに、プロダクト作りよりもなるべく多くの資金を調達することに注力したり、プロダクトの内容自体を資金調達しやすいかどうかだけで決めたりするケースがある。
一言で言うと、資金調達が成功と勘違いしているキラキラパターン。
以前にメンタリングしているの起業家から「投資を受けやすいから、プロダクトの説明文に “AI Powered” と入れたい」と相談された。
僕は「君のプロダクトは本当にAI Poweredなの?」って普通の質問をしたら「いや、そうじゃないけど…」との答え。単に “AI” と入れておいた方が投資家からの “引き” が強いからだという。
これはかなり不誠実だなと感じた。でも、シリコンバレー界隈でも、セラノスやWeWorkなど、巨額の資金調達を達成するために、ある程度の “ハッタリ” をかますケースも珍しくない。
資金調達は良いプロダクトを作り、ユーザーの課題解決を進めるためのプロセスの一つでしかない。それが目的になってしまったり、安易に資金調達のニュースに踊らされない方が良いだろう。
参考: そろそろ資金調達の際に”おめでとう”と言うのをやめないか?
キラキラタイプ4: 誇大妄想 but ノーアクション
以前に、始める前から「デカコーンを目指します!」と豪語した人がいた。デカコーンとは、ユニコーンよりも大きな評価額を得たスタートアップのこと。
スタートアップの評価額は、そのプロダクトの将来的な可能性や、市場トレンドとのタイミングなどでざっくりと決まっていく。
ユニコーンになる企業は、その将来性やサービスの希少性、マーケットの規模で高い評価額を獲得する。でもそれはあくまで一つの指標でしかない。
なので、そもそもユニコーンを目指すこと自体が微妙な感じがする。それよりも大きな価値の
デカコーンを目指すとは、なかなか大きな野望である。
参考: ユニコーンの次はデカコーン
しかしその一方で、大きなことを言っている割には、いつまで経っても小さな一歩が踏み出せていないことも多い。しばらくしてから話を聞いてみると、もっとすごいアイディアが思いついたと言う。でも、それを達成するためのアクションは取れていない。
そんな人に限って、スモールビジネスをスタートアップの格下にとらえたりしている。
どれだけ大きな夢があったとしても、行動に起こしていなければ、世の中へのインパクトはゼロである。それより、小さくても、泥臭くても良いから、何かしら始めた方が良い。どんなに大きな夢を持っていても、小さな一歩を踏み出さないと何も始まらない。
- 10 x 0 = 0
- 0+1 = 1
そうでもしないと、いつまで経っても「なんちゃって起業家 = ワナビー」のままである。”やってる感” だけのワナビー起業家は、なかなかカッコ悪い。
起業家≠ロックスター
こんな感じで、キラキラしたイメージの強い起業家の中には、本人自身がキラキラ症候群になってしまってるケースもある。これは、手段と目的が逆転してしまってる状態で、本人は無邪気であったとしても、結構周りに迷惑をかけてしまうこともある。
また、起業家をヒーロー化するのは必ずしも良いわけではない。投資家もメディアも “本物” の起業家を見定めにくくなるから。
参考: ロックバンドとスタートアップ、15の共通点と成功法則
起業家にはキラキラよりも大切なことがある
親身になって相談してくれた人や、本物を見極めようと真剣に取り組んでる投資家、そしてリリースを心待ちにしている初期ユーザーなど、キラキラ起業家に巻き込まれてがっかりする経験は少なくない。
キラキラなイメージに引き寄せられた人々は、しばらくすると中身の空っぽさに失望して去っていく。最悪の場合、キラキラ感だけを追いかける起業家は、スタートアップ的なノリを楽しみながら、投資家のお金をじゃぶじゃぶ使ってるだけという印象を与えてしまう。
本当の起業家の生活はかなり地味
外から見えるイメージと違って、実際の起業家の日々はかなり地味で、日々数多くの課題と戦うことになる。本当にユーザーの課題を解決して利益を上げることに集中していれば、キラキラに目が眩むこともほとんどなくなるはず。
キラキラよりも大切なこと。それは下記の記事で紹介されている2つしかない。
参考: スタートアップ立ち上げ時に重要ではない20の項目と最も重要な2つの事
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