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それは本当に自分が好きな事ですか? – SNSが行動に与える影響 –
アメリカ西海岸で話題のカフェが日本に進出したので長時間並んでみる。
実は普段はあんまりコーヒーは飲まないし、実際のところその味の違いなんかもよくわからない。でも店舗やロゴ付きのマグカップの写真をインスタにアップする事で友達からうらやましがられるから。
特にファンじゃないけど皆が知ってる有名人とツーショットを撮ってもらった。早速インスタにアップしよう。ちょっと高いけど日本ではまだ手に入らないプロダクトだし、自慢になるから買ってみた。
ソーシャルメディアの普及と生活への浸透で、それが本当に自分が好きな場所、物、人で無かったとしても無意識のうちにSNS上で注目されるのを一つの大きな目的に選んでいるケースもも少なく無いはず。
承認欲求が人間の行動を支配する時代
FacebookやTwitter, Instagram, Snapchatなどのソーシャルメディアがここまで普及した一番の理由は、ユーザーが自己承認欲求を満たされるところにあると考えられる。自分が起こした行動に対して周りの人がポジティブに反応する。
これにより自分の存在を認識してもらい、満足を得る。非常に単純な仕組みだが、ソーシャルメディア以上に上手にユーザーの承認欲求を満たすツールは見当たらない。
これは科学的にも証明されており、自分のポストに誰かが反応してくれる事で脳がポジティブな信号が送られる。
例えば、ユーザーがFacebookにアクセスすると、”そくざかく (側坐核)” と呼ばれる前脳に存在する神経細胞が刺激される。
この細胞は、報酬や快楽等のポジティブな刺激に反応する。そしてこのリサーチでは68%のユーザーが、SNSにポストする目的を自己表現と答えてる。
例えば,見た目はネカフェとほぼ変わらないのに、飛行機のビジネスクラスの写真をアップしてドヤ顔している人や、著名人とのツーショット写真を毎日の様にアップし続けている人もその行動が自己承認欲求に支配されているケース。
“自分が好きか”よりも”どう思われるか”の方が重要
何かしらの行動を起こす時には周りの人にどう思われるかが一つのファクターとなるが、ソーシャルメディアの出現によりそのモチベーションがかなり増長されている気がする。
これが日常の習慣になってくると、日々の行動の目的が無意識のうちにソーシャルメディアに支配されている可能性もある。
これまでも自分自身のミーハー心を満たす為に見たり、行ったり、買ったり、会ったりしていたケースは少なくは無い。
しかし、ソーシャルメディアの場合は、自分の好き嫌いよりも他人の評価を重要視してしまう可能性が高い。
ソーシャル上でどのような反応が得られるかが一つの行動指針となり、知らず知らずのうちに自分が本当にそれが好きかどうかに関係なく、SNSでより多くの反応を得ることを行動の最大目的に選んでしまっている。
その場合、何を買うか、どこに行くか、誰と会うか、それらの決断をする際にソーシャルメディアにポストする価値が基準になっている。逆に考えると、もしソーシャルメディアでシェアすることが出来ない場合は異なる選択をする可能性がある。
本当にそれが自分の好きな事かどうかを知りたいのであれば、”もしソーシャルにポストできなかったら?”と時も自答してから判断してみるのも良いかもしれない。
“ポストしたくなる”ブランディングの重要性
実はこの状況を上手に活用すれば、ブランディング施策の大きな指針とすることが出来る。
企業やプロダクトのブランド構築のプロセスの一つとして、消費者が”ポストしたくなる”度合いがブランド価値の一つのバロメータになる。例えば、その企業のロゴひとつ考えてみても、ポストしたくなるものと、そうでもないものに分れるであろう。
そのブランドやプロダクトをソーシャルにポストした際の周りの反応の高さが、消費者にとっての所有満足度に比例する。
従って、商品を企画する際にも所有した人がソーシャルでポストしたくなるかどうかを要素に加える必要がある。
逆にポストやシェアされにくいプロダクトはブランド力に問題があるといって間違いない。
では、どのようなブランドやプロダクトがソーシャルでのポスト欲を高めるのであろうか?恐らくキーワードとなるのは、オシャレ、レア、プレミアム感の三つであろう。
見た目がよく、人気があっても手に入りやす過ぎるとポストする価値が下がる。
例えば、スターバックスよりもブルーボトルの方がポストする人が圧倒的多く、ポスト価値が高い。
ちなみにそのスターバックスでは、ユーザーにカップの写真をポストしてもらう為に敢えて名前を間違って書くようにしているとの噂もある。
TeslaやAppleの新製品におけるブランド戦略においても同じ傾向が見られる。その製品の性能うんぬんよりも、どれだけポスト欲をくすぐるかが大きなブランド価値となっている。
これは企業にとっては多額の広告費を投入しなくても、ほぼ無料で消費者により拡散され、周りのユーザーからも羨望の目で見てもらえる。
参考: GoPro&Teslaの事例から学ぶ次世代デジタルマーケティング
これは実は企業や製品に限った事ではない。個人のパーソナルブランディングにおいても効果を発揮する。
会った人や一緒に写真を撮った人がどれくらいSNSにアップしたいと思わせるかが、その人のブランド価値を図る事が出来る。その点においてもオシャレ、レア、プレミアム感が重要なファクターとなってくる。
ソーシャルメディアを重視したブランド構築においては、人々に対してドヤ顔で「来たぜ!見たぜ!会ったぜ!手に入れたぜ!」感を持たせシェアしてもらうのがメインのゴールになる。
極端なところ、ユーザー自身が本当にそのプロダクトを好きでなくても、ソーシャル上で自慢したいと思わせれば勝ちなのである。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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