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ブランド拡大に欠かせないソーシャルコマースとは。特徴と海外トレンド紹介
ECサイトへの流入獲得のためにSNSを使うのはもう古い。
そうなっていくかもしれない。ポイントはSNSが「流入獲得のため」という点。ブランドとしては究極、売上をたてたいのだから、SNSで売上を獲得できれば流入はいらない。
SNSで売上をたてるというのがまさに、ソーシャルコマースなのだ。
本記事は、ソーシャルコマースとは何か、なぜ注目なのか、Facebook/Instagram/Pinterestといった大手のソーシャルコマース動向、ソーシャルコマース関連最新サービスについて紹介する。
ソーシャルコマースとは
ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディアのプラットフォーム上でオンラインショッピングができるような機能、状態をさす。
広義には、「ソーシャルメディア上でブランドの商品を探して、商品詳細を確認して、そこからウェブサイトに飛び、購入・決済をする」というソーシャルメディアを起点としたオンラインショッピング体験だ。2005年Yahoo!が最初に使い始めたという説があり、特に新しい言葉ではないが、最近は新しい重要な特徴が定義として付け加えられ始めている。
前述の買い物ルートだと、購入は、ソーシャルメディアを一旦離脱し、ブランドの自社サイトで購入手続きを進める事になる。一方、最近付け加えられたソーシャルコマースの特徴の1つになっているのが、カートに入れてから購入の決済までを、そのソーシャルメディア上で行うことができるという点である。
これにより、顧客にとっては、よりシームレスな購入体験となり、ブランドにとっては、ブランド認知から購入までのファネルが短くすることができるのだ。
これはつまり、ソーシャルメディアの役割が、自社サイトへの流入獲得ツールということではなく、ソーシャルメディア自体がブランドのECサイトになってくるということでもある。
ミレニアル世代 x モバイルのソーシャルコマース需要に注目
オンラインショッピングの拡大についてはよく取り上げられるので皆さんもご存知だろう。グローバルのEC売上額は2019年から2022年の3年で、85%増加の6.54兆ドルになると予測されている。
もちろん、小売全体でみると、オンラインでの売上は14%程度にとどまる(2019年)が、この割合も徐々に増加していくことが期待されている(下図)。これに加え、特にミレニアル世代の73%はモバイルがオンラインショッピングで1番重要なツールだと回答もしている(Z世代63%)。
大手から新サービスまで各社のソーシャルコマース導入実態
こういった需要がある中、コロナによって支出が落ち込んだりはしたものの、ニューノーマルの環境で回復を図るためにバランスを保ちながらもオンラインに注力するブランドは少なくないだろう。
これを追い風にすべく、各企業がソーシャルコマースを中心とするオンラインショッピング体験を盛り上げようとしているのだ。
ソーシャルメディアとして強かった大手テック企業が、コマース機能を充実させ、コマースが得意だった企業や人たちが、ソーシャルにも広がる可能性があるコマースサービスを拡充している。それぞれの特徴を紹介する。
Facebook/Instagram:さらに没入感のあるショッピング機能をリリース
2020年5月、Facebookが新たな機能、Facebook Shopのローンチを発表(日本でも約1ヶ月後にリリース)。説明はFacebook Liveにて、CEOのマーク・ザッカーバーグ直々に。
サービス名はFacebookショップだが、FacebookとInstagramをメインとするモバイルファーストの新しいショッピング体験を提供するサービスだ。まさにコロナ禍における、小売ビジネスやスモールビジネスの売上や広告費が落ち込む中、タイムリーなデビューとなった。大まかに、新しい特徴・機能は以下の通りである(リリース時期は各国で異なるので公式HPを参照されることをお勧めします)。
1. FacebookとInstagramでオンラインストアを無料で簡単に開設できるように
今までは、既存のオンラインストアが、ソーシャルメディアチャネルの1つとしてFacebookやInstagramのアカウントを作り、ECと連携させる、というパターンだったかもしれないが、いきなりFacebookやInstagramでオンラインストアが作れるようになるのだ。
USではチェックアウト登録をしていればApp内決済も可能になる。
もちろん、ただ「箱」を用意したというだけではなく、ブランドページは、コレクションページの設定、おすすめの商品の選択、フォントや色のカスタマイズも可能。オンラインでは特に重要なブランドストーリーの構築ができる。
また、新機能発表のライブで、マークが特に訴えていたのは、スモールビジネスへの支援という側面。Facebookのリサーチによると、コロナウィルスの影響でスモールビジネスの31%が営業停止に追い込まれており、Facebook ショップはまさにスモールビジネスのための機能だと言う。
Instagram上でもショップタブが追加されており、新しいブランド発掘もしやすくなっている。
2. メッセージ機能を通した、リアル店舗のようなパーソナライズされた接客も可能に
顧客からの質問や配送のトラッキングなどのやり取りがWhatsApp、Messenger、Instagram Directでできるようになる。将来的にはメッセージツール上での購入・決済も可能になるという。
ソーシャルコマースにおいても、メッセージ機能を使ったインタラクションやパーソナライズは鍵となる。自動化するなどして、適切なタイミングで適切なコンテンツを適切な人に提供し、効率的かつ効果的に強化したいところ。
3. ライブショッピング
外出自粛期間でお馴染みとなってきたライブ配信。このライブ中に、インフルエンサーやクリエイターが紹介した商品に、商品タグをつけられるようになる。リアルタイムで、商品詳細を見ることができたり、購入ができるようになったりするのだ。2019年6月現在は試験的に一部のビジネスでリリースをしているようだ。
また、Facebookショップ上で買うと、ポイントがつくようなロイヤリティプログラム機能もテストしているという。
これは各ブランドの自社サイトで買うよりもお得になる可能性があるし、いろんなブランドで買い物するようになるとポイントがより早くたまるという、Facebookショップを使い続ける理由になりそうだ。
Facebookは今まで、ヒトやコトを繋げるソーシャルネットワーキングサービスとして、26億人のMAUを抱えるまでに成長してきた。その中でもユーザー同士がマーケットプレイスでモノの売り買いをしていたり、子会社のInstagramではブランドの商品を買ったりする動きが主流になっており、こういった動きをさらに加速させるためにもFacebook Shopをはじめとする今回の新機能追加に至ったようだ。
Pinterest:よりビジュアルに特化した機能を充実
Pinterestは現在アプリ内決済はサポートをしていない(2015年から2018年頃にBuyable Pinsという機能はあったが、現在は商品ページをタグつけられるプロダクトピンのみ)が、Pinterestの情報から買い物を促すための機能はある。
1. ARを使って、コスメのお試しが可能に
Pinterestでは口紅の色味を、スマホから簡単に試し塗りができる。いろんなブランドの色を試すことができるので、知らないブランドでも、色ベースで選ぶことができる。また、コスメ関連の検索は、フィルターに自分の肌の色が何であるか選ぶこともできるようになっている。
今後このAR機能は口紅だけでなく、アイウェア、家具、服など色々な可能性がありそうだ。
2. オフラインで見かけたものの写真検索が簡単
このお店にあるこんなランプが欲しい、これと同じようなものが欲しい、といったような、リアルに目の前にあるものを、Pinterestの画像検索でサクッと調べることできる。使ってみた感じ、かなり処理が早い。
欲しいものが見つかれば、そこから購入に進めるし、類似するピンから新しいイメージを広げていくことも可能だ。
ちなみにPinterestのボードに広告として出てくるピンは、Pinterest上にいながらも画面半分はブランドの自社サイト(しかもロードが早い)といったUIになっていた。
新規サービス系2社
上2つは巨大ソーシャルメディアにコマース要素が強化された例であるが、Eコマースメインのサービスからソーシャル要素を持ちそうな新サービスも出てきている。次の2社どちらもバック(もしくはバックグラウンド的)にはEC巨大企業がついており、デザイン・ブランディングも優れているのでぜひ注目して今後の拡大を見ていきたい。
THE YES:Stitch Fixの元COOが創業した究極にパーソナライズしてくれるEコマースモール
THE YESはユーザーの好きなブランド、スタイル、サイズをベースに、AIによるおすすめ商品をフィードに出してくれることが特徴のECショッピングモール。2020年5月にローンチしたばかりだが、すでに3,000万ドルをVCから調達済み。現在はiOSのみで展開。
まずは簡単なYes No質問に答えて、パーソナライズをしてくれる。基本的には希望に1番近いものをランク付けして表示してくれるが、そのランキングにもYes Noを示せるので、好みを学習し続けてくれるのだ。
また、特許申請中でもある、価格マッチ技術により、Google検索しなくても1番お得なオプションを提示してくれるのだそう。さらに、Yesした商品がセールになっている場合は通知をくれたり、送料・返品無料だったりと、価格面での訴求もある。
現在は150ほどのブランドが登録しており、ハイブランドからD2C系のブランドなど、ファッション感度の高いものが並ぶ。
THE YESはソーシャルコマースの、コマース要素が今は前面に出ている。まずはAIによるスマートショッピングの便利さ、リーズナブルさを感じてもらい信頼を獲得するところに専念をしているようだ。
しかしながら、ユーザーのマイページがあり、どんなアイテム、ブランドを好んでいて、何を買ったか記録されているあたり、シェアしてコミュニティが広がっていくことも想像できる。間違いのないギフト選びもできるようになるかもしれない。
Shop:Shopifyからリリースされたショッピングアシスタントアプリ
ECプラットフォーム構築サイトのShopifyが2020年5月にリリースしたモバイルアプリ、Shop。Shopifyを使っているECサイトではShop Payのオプションが追加されており、一度カード情報を登録しておくと、他のShop対応のお店でカード情報を自動入力してくれるようになる。
Shopのモバイルアプリをからは注文した商品の、配送状況をトラックできるようになっている(トラッキングはShopで支払いをしていない注文も、メール情報などから一括して見られる)。
さらに、ブランドの「フォロー」もできるし、他の商品をShop上で見ることもできる(購入はサイトに飛ぶ)。ShopifyマーチャントになっているブランドをShopから探すこともできるのだ。
ShopもTHE YES同様、ソーシャルメディアとしてリリースしたわけではない。それよりもAmazonと対抗するためという見方がされている。大量のマーチャントを、1つの強力な検索エンジンで探せるように。
一方で、Amazonのようなマーケットプレイスになって終わるのではなく、ブランドがカスタマイズできることが増えたり、カスタマーが新しいブランドを発見したりお気に入りなどできることが増えてくると、Shopにソーシャルの要素が強くなってくるのではないかと思っている。
ちなみにShopはエシカルビジネスにも注力をしており、配送にかかった排気ガスをトラックし、その分を相殺するための森林を保護するのに貢献をするという取り組みをしている
Shopify純正の支払・注文トラッキングモバイルアプリShop。
Shop経由の配送でかかった排気ガスを相殺するのに必要な森林を保護することにコミットしているらしい。#Shopbetter pic.twitter.com/hRhXyjfdjn— Yasuko🇺🇸マーケ今🇯🇵 (@Yasuko_official) June 22, 2020
ソーシャルとコマースの境目がなくなってくるのかもしれない
コロナをきっかけに、購買心理・行動に変化があったと自覚している人もいると察する。本記事で紹介したソーシャルコマースは、今までもくると言われてたけど、これを機にさらに拍車がかかるものの1つであろう。
前みたいに実店舗で売上が立たなくなり、オンラインにシフト・注力するブランド。オンラインやモバイルでの注文の楽さに気づき、習慣として定着し始めてきているカスタマー。
そしてソーシャルコマースはソーシャルの延長線上に、コマースが、もしくはコマースの延長線上にソーシャルがあって、少し緊張のとけた今、こういった「楽しいこと」を消費する余裕が出てきているのではないだろうか。
ソーシャルコマースは、コロナ前のショッピングができない「代替」ではなく、より良いショッピング体験になることを期待している。
最後に、本記事で紹介したサービスはどれもUS発、USで使えるものだ。こういった最新の機能、サービスを使えばより良いブランド体験を、グローバルに展開していくことができる。これほどアメリカへのブランド進出のためのツールが揃っている状態はないだろう。
btraxではD2Cビジネスモデルを中心とした、日本ブランドのアメリカ進出をサポートしている。ブランディング、UI/UXデザイン、マーケティングなどユーザー体験を中心としたコンサルティングが強みだ。ご興味のある方はぜひお問い合わせを。
参考
・Social commerce(Sprout Social)
・Social Commerce Market Report: How social media is driving ecommerce sales in 2020
・Shopify launches Shop app to better compete against Amazon
・Former Stitch Fix COO Julie Bornstein is rewriting the e-commerce playbook
・Why we should expect more from e-commerce, according to The Yes’ founder
・Say “Yes” To A Personalized E-commerce Experience With This New App
main photo source by Park Troopers on Unsplash