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btraxに参画した澤円が語る「日本企業が今すぐ改めるべき習慣」とは
10月にbtraxが開催したDESIGN for Innovation 2018(DFI 2018)。長時間に亘るイベントだったが、最後に登場した澤円氏よる『イノベーションを生み出すために日本企業が変えるべき習慣』というテーマでの講演、さらにその後に行われたbtrax CEOのBrandon K. Hillとのセッションは集まった200人以上の聴衆を惹きつける内容だった。
さらにその場では澤氏のbtraxアドバイザー就任も発表。今後btraxは澤氏という強力な援軍を得てより日本企業のイノベーション支援を加速していくことになる。
本記事ではそのDFI 2018における澤氏とBrandonの話を基に、イノベーションを生み出すための組織変革に関して澤氏からのアドバイスをご紹介したい。
↑ DESIGN for Innovation 2018におけるセッションの様子
組織がイノベーションを妨げている
まずご紹介したいのが、DFI 2018終了後のアンケートで見られた興味深い特徴だ。自由記述欄であったにもかかわらず、多くの回答者が社内の組織体制や文化、また経営層の考え方がイノベーションを妨げていることを課題として挙げたのだ。
以下はBrandonのオープニングトークでご紹介した内容だが、ここにある通りイノベーションを生むためには組織や文化がそれを支援するものであることが重要だ。
btraxではInnovation Boosterというプログラムを通じて、多くの日本企業の方にサンフランシスコに滞在いただき、新サービス開発のための支援を行ってきた。しかし実際にその場で練られたアイデアがサービスとしてローンチするのはごくわずかだ。
その原因について、組織の問題があるのではないかという仮説を我々は持っていたのだが、今回のアンケートはそれを裏付けるものだった。一体日本の組織のどこが問題なのか。そんな組織を変えるためにすぐに改めるべき習慣とは何か。澤氏の講演からご紹介しよう。
デジタルトランスフォーメーション待ったなし
まず澤氏が紹介したのは1989年と2018年の世界時価総額ランキングの比較だ。1989年当時のランキングで上位5社が日本企業なのだが、よく見ると1989年時点から50年以上前から存在していたビジネスばかり。これらの企業は言ってしまえば大昔からあったビジネスを伸ばしているに過ぎない。
一方で2018年の企業の上位5社のビジネスはすべて50年前には存在していなかったものだ。今はゼロから何かを生み出す企業でないと勝てないことがよくわかる。
もう1つ興味深い数字がある。世界に存在するデータのうち、直近2年で生まれたデータの割合は90%。すべてのデータのうち90%はこの2年で生まれているのだ。これが2020年には直近2‐3か月で90%になるとも予測されている。あらゆるものがデータで管理される時代がすでに到来しているのだ。
しかし日本ではこの「デジタルトランスフォーメーション」に対応できているとは言い難い。たとえば「支払い」という身近な行動をとってもそれが表れている。中国ではすべてのペイメントにおける現金支払いは11%にしか過ぎないのに対し、日本では8~9割が現金、つまりデータ化されていないやり取りによってなされているのだ。
↑中国では物乞いもキャッシュレス
このような時代に対応し、グローバル規模で、スピーディに、新しいものを生み出すためのマインドセットが今日本の会社に求められている。
しかし残念な事実がある。日本の労働生産性は先進7か国の中で最下位なのだ。しかもこのデータにサービス残量は含まれていないので、実際にはただの最下位ではなく「圧倒的に最下位」なのだろうと推測される。
日本企業は一体何に時間を使っているのか。それは「礼儀」と「報告・連絡」だ。
礼儀正しく時間を奪う日本の組織風土
たとえば、報告会議を開くとなったらデータを集め、エクセルに入れてグラフを作り、それをパワポに貼り、そしてそれを印刷して配布する。
また、部下に業務の報告をメールで求めたら「そんな失礼なことはできない」と会議が設定され、報告者以外のメンバーまで大勢が出席する。
これらは実際に澤氏の知り合いが経験したことなのだが、重要なのはこれらは「過去のこと」に関して時間を使っているということだ。
報告・連絡・相談はどれも大事な行動なのだが、報告とは過去のこと、連絡とは現在のこと、そして相談とは未来のことである。つまり、報告内容は変わり様がないことなのだ。データを見ればすぐにわかることでも、日本ではやたらに様式美を整えることに時間が使われている。
さらに問題なのがレポートを作っていると「仕事をしている気分」になるということだ。データを元の場所からレポートに移すことはただ「見え方を変えているだけ」だ。またそれを印刷した場合、その印刷時点でデータは古くなっている。さらに印刷物を配布する場合、それに伴って「その場にいなければならない」という場所の制約も発生させる。
報告で大事なのは不変性、連絡は即時性だ。不変性を持つものはどんな形で共有しても変わりようがないし、即時性が求められることはチャット等で済ませてしまえばいい。紙を配って対面で何かをする必要は全くない。過剰な礼儀はただのコストだ。
日本の会社では報告・連絡のために時間が使われすぎている。これを改めるだけで働き方は大きく変わるだろう。
未来のための時間を確保する
一方、報連相の「相談」だけは人間性が必要になる。対面で、アイデアをぶつけあっていい未来を作っていくための時間を確保しないとイノベーションは起こせない。
この相談の時間を確保するために報告にかける時間は最小限にしたい。そのためにはマネジメント層が見るものを1つに絞ることが必要だ。
それを実現するためにはすべてを数値化することが求められる。たとえ人事や総務であっても、すべてのことは数値化・データ化できるはずだ。そうして数値化したデータだけをマネジメント層は見てパフォーマンスを把握する。
たとえば澤氏のチームでは1か所のダッシュボードを見れば各メンバーのパフォーマンスを把握できるという。このダッシュボードは人力で運用する部分が最小限で、あとはすべて自動化されている。そうすることでミスの発生を最小限に抑えることができるし、発生した事実をマネジメント層がすぐに把握することが可能になる。
これからは「いつでもどこでも働ける」のが常識になる。その意味でもこうして常に最新の結果がどこからでも見えるようにしておくことは重要だ。会議室に集まって紙の資料を見ないと把握できなようではダメなのだ。
思考停止に陥らない
自分の頭で考えることも大事だ。たとえば日本企業では「セキュリティ」が「新しい挑戦ができない」ことに対する「免罪符」になっているケースが多い。セキュリティ=「そう決まっているから」という思考停止状態である。
自分で考え、早めに行動し、早めに失敗することで致命傷を避け、修正が可能になる。これはITの現場ではアジャイルといって非常に一般的な手法であるが、日本の企業では「大きい車輪をゆっくり回す」のが未だ主流になっている。
また、「普通こうだよね」という考え方もやめてみる。スーツで行くのが当たり前の会社ならジーンズで出勤してみる。オフィス以外の場所で仕事をしてみる。そうして「普通」と違うことをやって周囲の反発やフォードバックを体験し、自分の周りの世界がどう変わるか試してみてほしい。
組織変革を実践するために
btraxでは澤氏をアドバイザーに迎え、今後はアイデアを実際に形にして市場に出すための態勢づくりとローンチまでの支援を強化していく。これまで局所的なイノベーション支援に限定されていたが、2019年からはグローバルイノベーションのための総合的なコーポレート・アクセレレーション・プログラムflipsideを提供予定だ。
↑ btraxが提供するコーポレート・アクセレレーション・プログラム: flipsideのプロセス
澤氏にこのflipsideに参画いただくことで、上記プログラムにおける組織全体のマインドセット醸成・人事評価制度・業務体制・文化変革にまで踏み込んだプログラム設計が可能になる。ご興味のある方はぜひお問合せを。
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