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ピクサーのデザインチームが重要視する4つのプロセス
※この記事は2022年1月に最新の情報に更新されています。
ピクサー。トイストーリー、ファインディング・ニモ、カーズなど、次々とヒット作品を生み出す、誰もが知る映像制作会社だろう。サンフランシスコ近郊のスタジオでは、どんどんオリジナル作品を生み出している。そして、3Dアニメという新しいジャンルを確立させ、その世界観を広げている。
そしてピクサーは、クリエイティブの質とビジネス結果の両立を実現させた稀有な存在の会社でもある。ワクワクを生み出す独特なカルチャーや、それをしっかりとしたビジネスとして成り立たせるためのプロセスには学ぶべき部分が非常に多い。
なぜピクサーは、毎回あれほどまでの心を揺さぶる作品を作り出せるのか?その裏側には、彼らが最も重要視し、死守している4つのデザインプロセスが存在した。
実はそれに加えて、その裏には魅力的な作品を作り出すために、彼らが最も重要視し、必ず死守している知られざる4つのデザインプロセスが存在した。
結果を生み出すためにピクサーチームが大切にしているデザインプロセス
クリエイティブワークはインスピレーションとセンスが重要だと思われるケースが多い。しかし、安定したペースで高品質の作品を生み出すには、しっかりとしたデザインプロセスを作り、それを全社に共有し、活用する。ピクサーでは、そのプロセスの重要性を理解しているからこそ、毎回ハズレのない作品を生み出せているのだろう。
1. 徹底したリサーチを行う
デザインやクリエイティブの仕事になると、ついアイディアを形にすることを始めてしまいがちである。しかしピクサーでは、その前に徹底的なリサーチを実行することがチームのプロセスになっている。これは、サービスやプロダクト作りにおける市場リサーチやユーザーリサーチにも共通する。
その点において、ピクサーでは、コミカルながらも細部にもこだわったリアル感を出すために、その作品のチームが実際に自分たちの目で見て体験をすることをプロジェクトにおける最初のプロセスの一つとして捉えている。
例えば「カーズ」を作る際には、チームが自動車について徹底的に学ぶために、Motoramaと言われる社内イベントを開催。
そこでは、車好きのスタッフがクラシックカーやスポーツカーをオフィスに持ち寄り、チームメンバーが自動車に関して細部まで徹底的に観察をし、作品内のキャラクターに反映している。それにより、どんな自動車マニアが見ても突っ込みどころの無いレベルにまでクオリティーを上げているのだ。
また、作品中に出てくるルート66に実際に出向き、体感することでリアルな風景を元にファンタジックな世界観を実現している。
2. チーム間のコラボレーションを大切にする
ピクサーでは、プロジェクトメンバーかどうかに関係なく、スタッフ同士が一つの場所に集まりアイディアを出し合う「ブレイントラスト」と呼ばれるセッションを行なっている。それにより、異なるバックグラウンドの人たちがそれぞれの視点から解決策を提供することが可能になる。
同じく、デザインプロセスにおいても、それぞれのデザイン工程において異なる役職のスタッフがフィードバックを出せる仕組みを採用している。
例えば、キャラクターのスケッチをアニメーターやモデラー、テクニカルデザイナーなどにも共有し、よりクオリティーをあげるためのディスカッションが生まれる。
一つの仕事をそのエキスパートだけではなく、他の役割の人から客観的な意見やアイディアをもらえる仕組みが存在している。これはUXデザインのプロセスにおける、相互機能を持つチーム作りとも共通している概念だろう。
3. 細部にこだわる
ピクサーは細部に最もこだわったスティーブ・ジョブスが率いた会社にふさわしく、そのデザインプロセスに彼の哲学が脈々と流れている。例えばピクサーでは全ての作品に対して「魅力的であること」と「信ぴょう性」を重要視している。
これらを実現するために、細部にも妥協を許さない作りこみが行われる。一見コミカルに見えるキャラクターの背景が妙にリアルだったりするのもこの哲学を大切にしているから。例えば、「トイストーリー」に出てくるアーミーの緑色の軍隊の軍服や武器、動きは、極限まで作り込まれている。
こういった姿勢は、「カールじいさんの空飛ぶ家」でもしっかりと受け継がれており、冒頭の20分の、妻を亡くした爺さんのシーンで感情的にならないオーディエンスはいなかっただろう。作品の冒頭から細部まで作りこまれた世界観にオーディエンスを引き込むことで、その後のストーリー展開の効果を最大化させている。
細部まで手を抜かないことで、作品の魅力と信ぴょう性が格段にアップし、見る人の心を揺さぶることが可能になってくるのだ。このことからもわかる通り、ピクサーのデザイナーには極限まで追求するこだわりが必要とされている。
4. なるべくシンプルに
物事の本質を追求し、できるだけシンプルな方法でアウトプットする。これはデザインにおける一つの究極のゴールである。ピクサーでも、”Simplexity”と呼ばれる概念があり、複雑なものをできるだけシンプルな要素まで落とし込むことが良しとされる。
例えば、人間の頭の中を舞台とし、そこに住む「喜び」「悲しみ」「怒り」「嫌悪」「恐れ」の5つの「感情」を題材とした「インサイド・ヘッド」。
この作品内では、キャラクターの感情を極力シンプルに表現するために、全てのキャラクターに対し、怒りを正方形で、悲しさを涙の形で、恐れを長方形と統一した。これは「カーズ」でもキャラクターの目の動きに対して、同じようなコンセプトでシンプル化させるテクニック。
感情表現を統一化することで、オーディエンスはわかりやすさと安心感を感じ、それ以外の部分でキャラクターの個性を出すことで、分かり易さと魅力の両立を図っている。「デザインはシンプルな方が良い」ピクサーでもこのコンセプトを体現している。
まとめ: 優れたデザインの裏には優れたプロセスが存在する
「デザイン=一瞬のインスピレーション」と思われがちであるが、実は優れた作品やプロダクトの裏には必ずしっかりとしたデザインプロセスが存在している。
そこでは、入念なリサーチ、チーム間のコラボレーション、細部にまでこだわり、本質を見極めたシンプルなアウトプットが重要である。
ピクサーのデザインチームが採用しているこのデザインプロセスは、どのようなデザインの現場でも通用すると思われるほど普遍的なものであると感じる。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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