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アメリカに学ぶ、2020年のマーケティング重要な3つのポイント
- メディアや動画、音声などのコンテンツ消費、作成・提供の流れ過去最高。1日約6時間は費やす
- ソーシャルコマースでさらにオンラインショッピングは進む。それに伴い店舗が提供する体験がより重要になる
- 幸福を求める「ウェルビーイング」。企業のマーケティング活動もウェルビーイングが長期的に愛される鍵
- 番外編:多様性を取り込むインクルーシブ・マーケティングはトレンドではなく当たり前に!
新しいトレンド、マーケティングツール・機能についてくのに必死で、多くのマーケターは「で、結局2020年何をやっておけばいいの?」と思っている方も少なくないだろう。2020年もアメリカのトレンドから読み解いていく。
今回は、新しいツールや「これから流行りそうなソーシャルメディアチャネル」という小手先のことよりも、もう少し概念的な内容だ。具体的なおすすめは、目的を無視して、手段を縛りかねないという思いからそうしている。
小手先のテクニックの前に、マーケティングの大筋を整えるようなヒントを見出していただけたら幸いだ。
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コンテンツ:消費・提供はさらに活発に。ユーザーのためのコンテンツを
もはやコンテンツ過多なのではないかと思われるくらい、ニュース、ブログメディア、動画、音声などデジタルを中心とするコンテンツが溢れかえっている。日本でも多くの著名人がYouTubeに参入したり、ソーシャルメディアを解禁するなど、2019年はさらなる盛り上がりがあったと思う。
以下のグラフを見てわかる通り、ここ、アメリカでもデジタルコンテンツの消費は実際に増加傾向にある。この数字は予測ではなく、実際に費やした時間だ。
(アメリカの18歳以上の大人の1日のデジタルメディア利用時間。データ転載元)
中でもモバイルでの利用時間の伸びは著しい。この点において、2020年以降も5Gの導入や高画質カメラ・液晶のついたモバイル端末が普及が進むと仮定するならば、さらにモバイルを中心としたコンテンツ消費時間は増えるだろう。
また、AIなどによる自動化、最適化も進歩していけば、これも後押しの要因となる。例えば自動運転は運転手さえも運転する必要がなくなり、空いた時間で他のこと(コンテンツ消費)ができるようになる。
さらに、ソーシャルメディア大手各社の新しい機能・サービスのリリースを見ていくと、さらなるユーザーの取り込み、コンテンツの拡大が予想できる。
- Facebook Watch(2018年にFacebookがリリースした動画オンデマンドサービス)はリリースから約2年で1億4000万デイリーユーザーを達成。
- InstagramのIGTVを中心に長めの動画配信・ライブ配信が普及してきた。IGTVはランドスケープモード(横長)の動画に対応(2019年5月)Twitterもライブストリーム配信に、他ユーザーが参加して「発言」できるような機能を追加(2019年5月)
- Facebookは子会社のOculusのVR技術を使い、VRソーシャルメディアであるFacebook Horizonを2020年にローンチすると発表。VRでのソーシャルインタラクションだけでなくコンテンツも期待される。
これらはほんの一部に過ぎないが、こういったソーシャルメディアが、コンテンツを消費するユーザーにとってより使いたくなるサービスになっているのと同時に、コンテンツを作る側にとっても嬉しい環境が整ってきていることも鍵だろう。
スマートフォン1つでも十分な画質のコンテンツは作れるし、動画や画像などの編集アプリも充実してきて、コンテンツ提供側になる参入障壁は今まで以上に低い。
さらにこういった個人や企業の、ゼロからのコンテンツ成功体験などがまたコンテンツとして拡散されることで、参入願望も増える。
少し話はずれるが、人はアウトプットをすることで、他人に価値を与えることができ、自分の存在意義を感じられるようになる。つまり人がコンテンツを作りたい(アウトプットしたい)という願望・意欲は自己形成のためにも続いていくだろうと考えることができる。
ブランドのコンテンツ構想はユーザー中心のミッションベースであれ
当たり前のように聞こえるかもしれないが、ブランド側は何のために、誰に届けたいかを考える必要がある。上でFacebook Watchのユーザーが急増していると述べたが、ただ「流行りそう」というだけの理由で採用してしまっては、目的がないまま手段が決定し、本末転倒だ。
また、最先端SNSを採用した!という自己満足で終わりかねないし、それを使うことに縛られてしまい、本来達成すべきことへの制約にもなりかねない。
一方で、試してみないと分からないのが実際のところだ。新しいことを試して、試行錯誤し、取捨選択を行っていく。つまり流行りに飛びつく前に、ブランドのミッション(目的)に立ち戻り、判断を重ねていくことが、コンテンツを扱う際に必要になる。
これはコンテンツに限ったことではないが、再喝の意味も込めて記しておきたい。新しいソーシャルメディアプラットフォームや機能など、小手先の手段はどんどん増えていく中、それらを察知して調べるうちに、目的を見失ってしまうことは少なくない。
ミッションがあり、ユーザーのためのコンテンツにする必要があるという大前提を忘れず、ここでも紹介したようなトレンドをうまく取り入れていただきたい。
前述の通り、コンテンツのユーザー(消費側も生産側も)がもつエネルギーとそこから生まれるエネルギーはどんどん大きいものへとなってきているので大きな可能性を秘めているのは間違いない。
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オンライン・ソーシャルコマースと実店舗体験
買い物体験はオンラインがさらに拡大してきている一方で、オンラインが普及すればするほど、実店舗の重要性は高まると考えられる。
アメリカのリテール売上のうち、オンラインショッピングでの売上が占める割合は、14.3%ほどではあるが、売上の伸び率でいうとオンラインに軍配が上がる。また、2019年11月のブラックフライデー・サイバーマンデーシーズンには、74億ドルのオンラインショッピング売上を達成し、前年比19.6%増で過去最大となった(2019年)。
(データ転載元)
さらに「ソーシャルコマース」と言われるソーシャルメディア上での買い物機能が充実し、オンラインでの購買は広がっていきそうである。
- 2019年3月、Instagramでの買い物が、完全にInstagramで完結するショッパブル機能が加わった。現在はアメリカのいくつかのブランドに限り、ベータ版として展開をしているが、今後拡大予定(通常のショッパブル投稿は利用可能)。
- Facebookは2019年11月にFacebook Payをローンチ。個人間の送金だけでなく、マーケットプレイスでの決済ができるようになる。
一方で、モノを売るだけのオフライン・実店舗は終焉を迎えている。
2019年、アメリカでは実に9,000以上の店舗が閉鎖した。2018年より6割増である。老舗百貨店のバーニーズニューヨークや、かつては人気を把握したForever 21など、多くのブランドが経営破綻を迎えた年でもあった。
オンラインの拡大や、「コト消費」が広がっていく中、モノを売るだけの土地は意味がなくなってきた。
一方で、AmazonGoは2021年までに3,000店舗まで増やす発表していたり、サンフランシスコにも小売系スタートアップが実店舗を展開していたりと、実店舗を強化する動きも見られた。
- Rent the Runwayは西海岸旗艦店をサンフランシスコに(リニューアル)オープン
- キュレーションストアのRe:storeのオープン
- サンフランシスコの若者に人気のエリア、エイズバレーにはAllbirdsやmejuriなどD2Cブランドの店舗がオープン
さっと思い出したものだけでもこれくらいある。これらのブランドの多くは、もともとオンラインで誕生し、オンラインをメインのチャネルとして拡大してきた。
ウェブサイトやソーシャルメディアで作り出すストーリーやコミュニティは、ユーザーがモノそのものではなく、ブランドに共感して支持していることがわかる。
一見、オンラインだけで成り立っているように見えるこれらのブランドは、実店舗を販売ではなくリアルな体験の提供の場として、さらに相乗効果を生み出しているようだ。
内装のデザインで世界観が表現されていることはもちろん、実際に人と話せるつながりや、ディスプレイ・タブレットによるスマートな利用体験、コミュニティイベントなどのエンゲージメントなど、販売ではない役割が店舗に課せられている。
この体験がブランドへのロイヤリティをさらに高め、オンラインでの繋がりを強くし、ひいては売上に繋がるアクションとなるのだ。
デジタルが伸びれば伸びるほど、実店舗が重要になる。これは量の話ではなく、店舗の質(体験)なのである。
マーケティングもウェルビーイングであるべき
ウェルビーイングとは身体的、精神的に良いとされる状態で、「幸福」と訳されることもある言葉だ。
特にインターネット界隈では、ソーシャルメディアを中心とする、誹謗中傷、ヘイト、偏見、ネット依存などによる心や体に対する害が注目され、利便性や快楽を求めるのもいいけどそれって本当にウェルビーイングなのか、といったような疑問が出てきているのだ。
インターネットに限った概念ではなく、ウェルビーイングな人生・キャリアを送るためのハウツー本なども出てきている。
このウェルビーイングを求める精神は、我々の身近にあるインターネット・マーケティング界隈にも絡んでくるというわけだ。実際にインターネットを代表する企業の間でもウェルビーイングを意識した取り組みが見られる。
- Googleはオンラインとオフラインの良いバランスを見つけるためのツールを提供している。各アプリの利用時間の可視化や、インターネット利用中に休憩を促すお知らせを出す機能などがある。
(Googleのデジタルウェルビーイングツール。公式サイトより)
- Instagramは投稿へのいいね数を非表示にし始めている。
- Facebookはより安心できるコミュニティや仲間内でやり取りを楽しめるように、クローズドなグループ機能を拡大した。LinkedInも同類の機能をリリース予定。
利用の制限などは一見、自社サービスの利用を削いでしまう施策のように思われるが、長期的に、本当にユーザーにとって良いものを提供することを考えると、それが両者にとって最善であることがわかる。このようなサービスが支持され、長く愛されるブランドになるのだ。
自社利益を考えすぎたサービスやマーケティング活動は、一時的には良いパフォーマンスを生み出すかもしれないが、長期的には損失となる。上記の例もそれを見越してのアクションではないだろうか。
今までの、モノを出して売れる時代には、マーケティングには売上が最優先事項となっていたが、モノで溢れかえった今、消費者の目が肥え、ブランドは選ばれる側だ。
本当に良いブランド、言うなればユーザーが長期的に幸福を見込めるブランドが選ばれるようになっている。
以上を考慮すると、しつこく何回も何箇所も表示させるような広告や、間違ってクリックしそうなところにクリックボタンを設置しておくなど、やるべきではないことは自ずと見えてくる。
番外編:流行りで終わらせるべきではない、インクルーシブマーケティング
2019年トレンドでも紹介し、その後も「令和に絶対押さえるべきインクルーシブマーケティングとは。事例6選」でも取り上げてきた。言葉の説明について、一部抜粋する。
インクルーシブマーケティングとはダイバーシティ(多様性)を受け入れ、それを考慮し、マーケティング活動へ反映させることだ。ダイバーシティーがインクルードされている(含まれている、受容されている)マーケティングである。
これにより、マイノリティとされる人たちが、自分たちも企業のサービス対象に含まれているという自覚を持てるようになるのだ。
詳細はそれぞれの記事を読んでいただきたい。これは、GAFAやアメリカの大手スタートアップですらいまだに炎上しているトピックだ。
自宅フィットネスマシンのスタートアップPeloton。2019年8月にはIPOを果たし、順風満帆かと思われたが、2019年ホリデーシーズン向けに公開した動画広告が株価を下げるまでの大炎上を巻き起こしてしまった。動画は、クリスマスプレゼントに夫が妻にPelotonをプレゼントするシーンから始まる(Peloton公式YouTubeの動画は現在削除されている模様)。
妻役を演じる女優の表情も絶妙で、不安と嬉しさのようなものが混じった表情で初めてのエクササイズを開始。その後もしんどいトレーニングを続け、1年後にドキュメンタリー風に自分の姿をまとめ、「ありがとう」と夫にその動画を見せる。
その後、メディアやソーシャルメディアでは、「夫が妻に(必要ないのに)ダイエットをするようにしている」「彼女の頑張っている姿が虚しく見える」というようなコメントが上がってきてしまった。
ただ、ここサンフランシスコやアメリカ都心部を中心に、色々な活動が行われているのも事実だ。企業の取り組みについてはこちらの記事にある通り。各地域でのイベントやコミュニティでもマイノリティー向け、女性フォーカスなものなどが増えてきている。
これはトレンドという一時的なものにするのではなく定着させて、トレンドとして扱わなくても当たり前のものになっている状態を目指す必要がある。
日本は特にダイバーシティ、インクルーシビティ後進国だと感じ、番外編として付け加えた。
まとめ:未来予測は無理
最後に全てを覆すようなことを発言したが、理由がある。そもそも我々を取り巻く環境がVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)だからだ。
また、ご存知の通り、トレンドは万能薬ではないため、「この方法が絶対!」といった印象を与えかねない書き方も気が引けた。
ゆえに少し概念的な内容が多いが、どれもアメリカでの流れを説明したものだ。マーケターであれば、トレンドを把握しておく必要があるのは常ではあるが、それに飛びつくのではなく、自分のブランドやユーザーにとってどれが最適なのかを試行錯誤して選んでいくのもマーケターの役割なのだと思う(自戒の念も込めて)。
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