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LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク
日本で最もよく使われているSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。
LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。
日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、PCやタブレット端末からLINEを使っているユーザーもいることが理由に挙げられる。
とにかく、LINEが日本国内で驚異の普及率を誇っていることが分かるだろう。その一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対するLINEの普及率はたったの約1.34%で、圧倒的な浸透率の差がある。
関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」
ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。
日本では普及率が非常に高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。
そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態から、成長の限界とリスクが見えてくる。
日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE
みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。
下のソーシャルネットワークMAU数ランキングを見ると、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。
LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。
事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。さらにその日本国内からの売上の割合はここ数年で増え続けている。
言い換えれば、この状態は、LINEが売上の8割近くを日本市場に依存しているということである。そしてその日本市場というのは、今後さらに少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われている市場なのだ。このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのだ。
ちなみに日本国外のLINEユーザー数としては、タイ、台湾、インドネシアの順に2位から4位を占めている。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開が上手くいっているようにも思えるが、どの市場でもFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。
世界市場でみるとほとんど使われていないLINE
では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。
ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界第20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。
次にアメリカ国内でのSNS利用率をみてみよう。
こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、第11位となっている。
ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。
FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEや多くの日本企業がまだ実現できていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。
さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。
やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。
一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。
Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。
一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに
日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。
LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。
日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出
とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場進出も果たした。しかし、その際にアメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。
日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。
それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。
例えば
- アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破
- 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増
- 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増
などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。
まとめ
日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。
そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。
それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。
そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年もたついている間に、世界市場はあっという間に姿を変え、Facebookグループが市場を独占していたように、あなたの競合はすでに世界を相手にしているかもしれない。
世界に視野を向け、素早く行動する。大手企業であろうがスタートアップであろうが、このようなスタンスが、今後の成長において欠かせない要素となってくるだろう。
我々btraxは、グローバルを視野に入れたサービス開発や、日本企業の海外進出、そしてローカライゼーションの支援を行っている。ご相談や詳しいサービスの内容について知りたい方はお気軽にお問い合わせページよりご連絡していただきたい。
参照元一覧:
- https://www.statista.com/statistics/350461/mobile-messenger-app-usage-usa/
- https://www.netratings.co.jp/news_release/2019/05/Newsrelease20190521.html
- https://www.statista.com/statistics/201182/forecast-of-smartphone-users-in-the-us/
- https://digiday.com/marketing/pitch-deck-how-tiktok-is-courting-u-s-ad-agencies/
- https://www.humblebunny.com/japans-top-social-media-networks-for-2019/
- https://zappedia.com/global-internet-access/
- https://www.businessofapps.com/data/twitter-statistics/
- https://martechtoday.com/twitter-ad-revenue-up-23-to-791-million-in-q4-2018-230530
- https://contevo.com.au/essential-facebook-statistics-2019/
- https://techcrunch.com/2015/12/23/a-startups-guide-to-international-expansion/
- https://www.tubefilter.com/2018/02/16/youtube-ad-revenue-15-billion/
- https://www.thestreet.com/investing/youtube-might-be-worth-over-100-billion-14586599
- https://www.emarketer.com/content/video-swells-to-25-of-us-digital-ad-spending
- https://zephoria.com/twitter-statistics-top-ten/
- https://www.engadget.com/2016/11/10/the-history-of-youtube/
- https://www.statista.com/statistics/242606/number-of-active-twitter-users-in-selected-countries/
- https://marketingland.com/snapchats-gen-y-millennial-audience-helps-deliver-39-yoy-lift-in-revenue-259898
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