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シリコンバレーを活用したイノベーション組織変革のススメ
最近オープンイノベーションがブームのように言われている。スタートアップへの投資やアクセラレータプログラムの立ち上げを通してスタートアップを支援することで、大企業が自社の次のビジネス機会を窺っていく動きが益々活発化している。
一方でスタートアップとコラボレーションを図って一時的に新しい試みができたとしても、自社のマネジメントや組織自体が旧来のままでは継続的なイノベーションは望めない。
以前下記の記事で「ビジネスにおけるデザイン活用の5つの価値」について紹介したが、最終的には「組織のイノベーション能力の向上」なくしては本当の意味でのイノベーションを生み出していくことはできない。
https://blog.btrax.com/jp/dfi-4/
btraxではサンフランシスコでサービスアイディアの創出・開発を行うプログラムの提供を通して、クライアント企業の組織変革の支援を行っている。
今回はこれまでのクライアントとのプロジェクトの経験を踏まえて、改めて組織変革を実現するための方法について提言したい。
ステップ1. Startupのファウンダーになったつもりで考える
大企業にありがちな「前例主義」を捨てて、社員全員がシリコンバレーのStartupの一員として活動することができたらどれだけ組織が変わるだろうか。
弊社のプログラムでは一定期間サンフランシスコに滞在することでサンフランシスコ・シリコンバレーのStartupのファウンダーのマインドセットを早期に身に付けることを推奨している。
実際にStartupから話を聞いたり、実際にリリースされているサービスを観察したりしながら、なぜそのようなサービスを思いついたのか、どのようにサービスアイディアを形にしていくのか、なぜその方法でリリースしたのかなどのInsightを得ていく。
もしもあなたがシリコンバレーのStartupのファウンダーだったら?
シリコンバレー現地に来て学ぶことが一番の近道だが、ここでもう一つ発想を鍛える方法を紹介したい。
それはbtraxCEOのBrandonが対談させて頂いたこともある大前研一氏が提唱する、RTOCSという0から1を生み出す発想法である。RTOCSとは「Real Time Online Case Study」の略だ。これは他人の立場に立って考える発想法で、「もしあなたが〇〇だったら」と考えることでその人が置かれている立場や状況においてどのような戦略や戦術でアプローチしていくのが最適なのかを考えていく方法である。
参考:「0から1」の発想術、大前研一
大前研一氏が学長を務めている大学院では毎週1回ある会社の社長やCEOをテーマにとり上げ、その人の立場に「成り代わって」考える授業を行っているが、ここではそれをさらに発展させてシリコンバレーのStartupのファウンダーの立場に立って考えてみることをお勧めしたい。
ご存知の通りシリコンバレーはStartupが集積している場所で、それだけ競争が激しく市場環境も日々目まぐるしく変わっている。日本よりも競争が激しいそのような環境の中でサービスを差別化して、ユーザからどのように認知や信頼を集めスケールアップしていくのかを考えていくだけでもかなりの訓練になる。それを実際に現地で一定期間生活をしながら行うことで、かなりリアリティのある発想を得ることができる。
ステップ2. 企業変革のプロセスを実践する
Startupのファウンダーのように考えることの価値を理解できたとしても、それを会社に説得し理解させていくのはとても難しい。我々のクライアントである大企業の幹部クラスの方々も社内にその価値を浸透させてイノベーション組織への変革を推進していくのに日々苦労されている。
組織変革を推進するための方法としてここでご紹介したいのは、ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授であるジョン・P・コッターの「企業変革の8段階のプロセス」である。
大規模な変革を推進するための8段階のプロセス
- 危機意識を高める
- 変革推進のための連帯チームを築く
- ビジョンと戦略を生み出す
- 変革のためのビジョンを周知徹底する
- 従業員の自発を促す
- 短期的な成果を実現する
- 成果を活かして、さらなる変革を推進する
- 新しい方法を企業文化に定着させる
参考:企業変革力、ジョン・P・コッター
コッターによれば、変革を成功させるためにはまずは会社全体の危機意識を高めていき、ある程度危機意識が浸透したタイミングで今度は変革を推進するチームを編成する。その後ビジョン・戦略を検討し社内に周知徹底した上で、変革ビジョンを妨害する障害を取り除きながら他の社員からの新しいアイディアや行動を促進し、まずは短期的な成果を幾つか実現していく。
そして、更にビジョンに合致したシステム・制度へと変革をしながら最終的に企業文化のレベルにまで高めていくことが、効果的なプロセスなのだという。
このプロセスのなかでも、特に重要なポイントを実践するうえで、筆者が効果的だと考える行動を3つ紹介したい。
シリコンバレーの最新情報を社内に発信していく
まずはじめに社内の危機意識を高めておくことが重要になるが、手っ取り早い方法としてシリコンバレーエリアの最新のイノベーション情報を継続的にウォッチして社内に共有していく方法が挙げられる。
btraxのクライアントで、自分の業務範囲とは関係なく、自主的に毎週新しいイノベーションの情報をピックアップして社内の主要メンバーにニュースレター配信されている方がいらっしゃる。freshtraxのBlog記事にも目を通して頂いているようだが、シリコンバレーで自社の脅威になりそうな情報や競合の動きなどをチェックして社内に情報発信していくというのは一つの危機醸成方法となり得る。
普段社内のプロジェクトなどで忙しくしているとなかなか外部の情報に触れる機会も少なくなり新しいことにチャレンジする意欲も減退しがちだが、このような役割を果たしてくれる人が社内にいることで自然と外の最新情報にも触れることができ、徐々に自社はこのままで良いのかという焦りに繋がる効果が期待できる。
定期的に人を送り込む仕組みを構築する
変革を成功させる8つのプロセスのなかで特に重要なのは、6の短期的な成果を積み上げて社内にアピールしていくことだ。ある大手企業はまずbtraxのInnovation Boosterプログラムに参加し、実際にシリコンバレーでマインドセットを身に付けたメンバーが社内で実績を見せることで、その後会社の研修制度の一つとして定着している。
このクライアントの場合は年に2回4~5人のチームを組んで約8週間サンフランシスコに滞在しサービスアイディアの創出・ブラッシュアップに取り組んでいる。
すでに多くの卒業生を輩出しそのメンバー同士で自発的に社内でイノベーションチームを組織化しており、まさに2の変革推進チームのような形で社内のイノベーション企業文化の醸成に努めている。上のプロセスとは順番が前後しているが、短期的な成果がチームを生み出し、またそのチームによって別の成果が期待されるという、好循環を実現した例だ。
実際にシリコンバレーでサービスをリリースしてしまう
ある程度現地での活動の足がかりを作った上で次に狙うべきことは、実際にシリコンバレーでサービスをリリースしてトラクションを作っていくことだ。
ただ現地に行ってマインドセットを身につけるだけではなく、実際にまずはβバージョンレベルでもリリースして現地のユーザから直接フィードバックをもらってブラッシュアップを続けていくことは社内の他の部門メンバーの意識を変えていく上でもインパクトが大きい。
ここ数年シリコンバレーエリアを中心にR&D拠点を設置して現地でのサービスリリースに真剣に取り組む日本企業も増えてきているが、旗振り役として社内で先陣を切ってチャレンジしていく姿勢を見せることで社内全体の活性化に繋げようという狙いが大きいように思われる。
btraxでもそのような現地拠点と一緒にサービス開発を行う事例も増えてきているが、今後よりデザイン機能を強化し、クライアントのデザインスタジオとして実際に現地でサービスをデザイン・リリースしてグロースハックまで支援していけるようサービスを拡充していく予定なのでご期待頂きたい。
イノベーション組織への変革に近道はない
コッターも組織変革を成功に導くのは時間のかかる非常に複雑なプロセスと述べているが、企業文化のレベルにまで高めていくのは相当根気がいる作業である。
これまで様々なクライアントと仕事をさせて頂く機会があったが、イノベーション組織作りに本気で取り組んでいる志のある幹部社員の方がリーダーシップを発揮して日々会社を変えようとチャレンジされている様子を垣間見てきた。
これからもbtaxとしてはそのような社員の方々を支援し、パートナーとして一緒になってイノベーション組織変革に挑戦していきたいと考えている。
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