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後発サービス or レッドオーシャンでも成功するための5つのポイント
*本記事では2023年10月現在の情報をお伝えしています。
後発のサービスでも世界的にヒットし、大成功を収めることがある。そのアイディアが革新的・斬新ではなくても、いわゆるレッドオーシャンへの参入だったとしても。どうしてなのだろうか?
この問いに向き合っていくことはサービスデザインにおける成功の要因を見つけることにもつながる。新規事業を考えている方をはじめとする、新たなアイディアを見つけることに奔走している方の助けとなれば幸いだ。
後発でも成功したプロダクト例
まずは今までに他の商品やサービスで後発なのにヒットした例や、先発なのに失敗した例を見てみることにする。
というのも、成功しているサービスの多くが後発サービスなのである。逆に、真っ先に動いた企業は、タイミングが早すぎたり、市場の準備ができる前に資金が尽きてしまうことも多い。
■ Gmail
リリース日: 2004年4月
先発サービス: Hotmail, AOL, Yahoo Mail
現在ではEメールの代名詞になっているGmailも、実はかなり後発のサービス。ネットの普及が進み、Webメールサービスが提供されていたのが90年代中盤。HotmailやAOL, そしてYahoo Mailなのが代表的なサービスになっていった。
しかし、Googleによる、よりクリーンで使いやすいメールとして”Email that doesn’t suck (イケてるメールサービス)”をキャッチコピーとしたGmailの人気が一気に高まり、後発ながらも、現在最も多くのユーザーを獲得しているメールサービスとなった。
■ Zoom
リリース日: 2012年9月
先発サービス: Skype, Google Meet, WhatsApp
リモートワークが進んだことで、最もユーザーを増加させたサービスの一つがZoomだろう。それまでもSkypeやGoogle Meetなど、ビデオコールのサービスが多く存在しており、完全にレッドオーシャンだと思われた市場に彗星のごとく登場した。
それも、それまでの多くのサービスが無料だったのに対し、Zoomは無料プランに制限をかけ、多くのユーザーが有料プランを利用している。それにより、売り上げもうなぎ登りになり、上場も果たした。
■ Slack
リリース日: 2013年7月
先発サービス: HipChat, Yammer, Chatwork
ビジネスチャットツールとして、現在では堂々たる地位にあるSlackも、実はそのカテゴリーにおいては、結構な後発のサービスである。
Slackが出る前にも、HipChatやYammer、そして日本発のChatworkなど、複数のビジネスチャットツールが存在していた。しかし、Slackはそれらを大外からことごとくぶち抜いてしまった。
リリース日: 2004年2月
先発サービス: Friendster, MySpace
Facebookが元祖SNSサービスだと思っている人も少なくないだろう。しかし実は、Facebookの前にもFriendsterやMySpaceといった類似のサービスが存在してた。
日本にもmixiがあったが、現在ではすっかりその名前を聞くことは少なくなってしまった。
リリース日: 1997年1月
先発サービス: Friendster, MySpace
ネットが普及し始めて最も初期のサービスが検索エンジン。その中でGoogle Seachは最も後にリリースされたサービスになる。
Googleが出てくる前までは、Yahoo、Excite、Lycos、AltaVista、Infoseekなど、複数の検索エンジンが乱立しており、毎月のように利用者ランキングが入れ替わる検索エンジン戦国時代だった。そんな中で天下布武を成し遂げたのが、後発のGoogleだった。
■ iPhone
リリース日: 1997年1月
先発サービス: Palm, Blackberry, ザウルス, ガラケー
世界初のスマホはiPhone出ることは間違いない。そういった意味では先発のように思うかもしれないが、実はその前にもいくつか類似のデバイスは存在していた。
Palmやザウルスに代表されるPDAやBlackberryだ。ネットに繋がる携帯という意味では、日本のガラケーが十年以上も前にすでに存在していた。
■ Tesla
リリース日: 2010年5月 (Model S)
先発サービス: GM EV1, シボレー Volt
自動車会社として世界一の時価総額を達成したTeslaは、もちろん自動車会社としてはめちゃくちゃ後発。むしろ21世紀にできた数少ない自動車メーカーだろう。
そして、EV車両としても、すでにGMやシボレーがTeslaよりも前にリリースしていた。しかし、それらがことごとく大失敗をしたEV焼け野原の中から、真打としてTeslaがリリースした初の量産モデルのModel Sが大成功した。
■ Instacart
リリース日: 2013年6月
先発サービス: Webvan
パンデミックによる外出自粛の際に最もありがたいサービスの一つが、生鮮食品のデリバリーサービスだろう。その代表的なのがインスタカート。
2013年にリリースされたこのサービスは、実はその10年ほど前に同じようなコンセプトのスタートアップが存在した。Webvanは、現在のインスタカートやAmazonフレッシュと全く同じサービスとしてスタートしたが、90年代のドットコムバブルの終焉とともに空中分解した。
後発でも成功するサービスになるための5つのポイント
では、上記のようなサービスが、後発サービスにもかかわらず市場において地位を獲得することができたのだろうか?そこにはいくつかの重要なポイントがあると考えられる。それらをサービスデザイン的な観点から考察してみる。
- 「何をやるか」よりも「どうやるか」
- ユーザー体験が大きな差別化要因となる
- すでに存在しているからといって諦めない
- コアユーザーを喚起できるかが鍵
- 市場とのタイミングが合うかどうかもかなり重要
1. 「何をやるか」よりも「どうやるか」
まず、「何をやるかよりもどうやるか」の重要性。まだ誰もやってないような革新的なサービスを作ろうとしてしまいがちだが、もしかしたら誰も必要としていないサービスになる可能性もあるということを忘れてはならない。
それよりも、すでに似たようなサービスが存在していたとしても、その「やり方」を工夫することで、後発だったとしても勝機は残されている。ゼロサムになりがちなSNSサービスの世界でも、Facebookはやり方を工夫したことで、先発のサービスを凌駕することができたのが良い例だろう。
2. ユーザー体験が大きな差別化要因となる
では、どのようなやり方をすれば良いのだろうか? 実は、ユーザー体験が鍵を握っている。機能的にはほとんど変わらないようなサービスでも、使いやすいものとそうでないものがある。
それを左右するのは、UXのクオリティーだ。特にデジタル系のサービスにおいては、どのようにUXデザインを行うかによって、その価値が決定づけられる。
体験が良ければ、後発であってもユーザーを獲得することは不可能ではない。Gmailが良い例だろう。それまでのHotmailのスパムや広告だらけで使いにくかった点に着目し、使いやすさの改善を追求した結果、世界一のメールサービスに成長した。
3. すでに存在しているからといって諦めない
スタートアップのピッチイベントなどでは、審査員からよく「そのサービスすでに存在してるよね?」といった質問がされる。実際、自分もしたことが何度かある。しかし、すでに存在している = 試す価値がない、ということでは無い。
これは、Zoomの成功がわかりやすい。それまでも多くの無料ビデオツールが存在していた。しかし、Zoomは、より映像・音声のクオリティーを高め、安定させ、ターゲットをビジネス利用に絞り込んだことで、企業ユーザーを多く獲得し、大きな利益を生み出すことに成功した。
4. コアユーザーを喚起できるかが鍵
同じサービスでもユーザーが熱狂しているケースと、見向きもされていないケースがある。その違いは何なのだろうか?
実は、ヒットするサービスの場合は、ターゲットになるユーザーをしっかりと定め、彼らを上手に喚起していると思われる。
例えば、Slackは初期のターゲットユーザーをエンジニアに絞り、画面内に直接コードを打ち込むなど、エンジニアが最も使いやすいと感じる体験を優先して実装していった。そこから徐々に一般にもユーザー層が拡大していった。そこには、UCD(User Centered Design)の概念をしっかりと踏まえたサービスデザインがされている。
5. 市場とのタイミングが合うかどうかもかなり重要
Bill GrossによるTED Talk「The single biggest reason why start-ups succeed」でも語られているとおり、スタートアップの成功を左右する一番の要因がタイミング。言い換えると、市場ニーズに提供されるサービスが合っているか。早すぎても遅すぎてもチャンスを逃す結果となる。
この良い例が、Webvanの失敗だろう。90年代後半のネットユーザーはまだまだマニアックな利用方法をしていたし、スマホも存在していなかった。
そんな時代に、ネットでの生鮮食品のデリバリーサービスは、明らかに早すぎた。でも、アイディア自体が間違ってたわけではない。時代に合っていなかっただけなのだ。
まとめ: 本気でやりたいなら類似サービスが存在していても諦めるな
今から150年以上前、サンフランシスコの近郊で金が発見された。それを狙って世界中から一攫千金を目指して多くの人たちがやってきた。金脈に当たる人もいれば、外れてとぼとぼと帰って行く人もいた。
何が運命を分けたのだろうか? 実は諦めた人が掘った穴を違う人数メートル掘ったところで金が出てきたという話も少なくない。
さまざまなサービスが存在する今の時代、どこにも存在していないサービスを考えるのは至難の技だろう。
シリコンバレーなどでは、後発のサービスをリリースする際には、既存のサービスの「10倍」価値のあるサービスである必要があるとされる。しかし、何をもって10倍とされるかがいまいちピンとこない。その要素分解が上記の5つのポイントとなる。
実は、American Marketing Associationによる調査によると、先発サービスの失敗率は47%で、後発の場合はそれが8%にも下がる。これは、必ずしも最初に動いたもん勝ちじゃないし、すでにあるからといって諦める必要もないということでもある。
もし現在考えている、もしくは作っているサービスに「今さら感」があったとしても、本気でやりたいなら諦めるのはまだ早いかもしれない。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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