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日本の技術力が世界的にすごい本当の理由
以前の日本出張の際に、とあるアパレル系ブランドの海外進出プロジェクトの一環として、彼らのものづくりに関しての現場を見せてもらった。
その過程でいくつかの工場と品質管理センターを見学させていただいた。
その経験は今までの人生の中でも一二を争うほどに度肝を抜かれる結果となった。
繊維系の製作現場という特性もあるだろう、決してテクノロジーがすごいわけでも、難易度の高い複雑な作業を行なっているわけでもない。
しかし、そこで働く方々のものづくりに対する姿勢や、その工程における繊細さなど、“さすがにこれは日本でしかできないな”と思わされる内容である。
ものすごく細かく単純な作業をただひたすら続ける忍耐力。
機械でも読み取れないようなナノ単位でのズレを感覚で認知する繊細な感覚。
そしてやろうと思えば簡単にできるごまかしを行わない仕事に対する誠実さ。
本の技術力を支えるすごさがそこにはあった。
これは、日本国内の感覚だと“当たり前”と思われるかもしれないが、実は海外から見ると、こんなことができる人種は他にいないのではないだろうか?
例えばこれが怠け者のアメリカ人だったとしたら、“こんな退屈な仕事バカらしくてやってらんない” と言ってすぐに辞めてしまうかもしれない。
そもそも米国企業は最小の労力で利益が出るための効率化を最優先するだろうし。
では世界一の生産拠点である中国はどうだろうか?
おそらく、大規模な工場に大量の人的リソースを投入し、単純作業を通じて安価で大量の生産ができるかもしれないが、日本ほど実直な作業は望めない可能性がある。
また、コストを削減するために東南アジアに外注したとして、日本ほどの繊細なクオリティを担保することは難しいだろう。
実際に工場長に聞いてみたところ、東南アジアから来た労働者を採用してみたこともあるが、うまくいかなかったという。
その理由は、文字や数字では説明のつかない最後のニュアンスが理解できないからという。
日本人が得意な“あうんの呼吸”や“微妙なニュアンス”は、日本特有のものであり、海外にはほぼ存在しないらしい。
ちなみにこのクライアントの会長さんに「君『微妙』って英語でなんと言う?」と聞かれて答えられなかった。実は、会長さんによると“微妙”を一言で表す単語は日本語以外にないと言う。なぜか?それは日本にしかないニュアンスだからなのであろう。
一言で言うと、こんな素晴らしい国はない。
そんな中で日本国内のものづくりの現場では、職人さんやパートのお姉さんたちが、ロジックでは説明のできないセンス、感覚、忍耐、正確さ、継続性を通じ、品質の高い製品を毎日作り出している。
これは実は本当にすごいことで、シリコンバレー的な技術革新をメインにしたイノベーションよりも、単純作業を安定した水準でただひたすら続けることの方が何十倍も難易度が高いだろう。
毎日パソコンやスマホを活用して楽で効率的な仕事のプロセスばかりに気を取られていた自分にとっては、後頭部を殴られるほどの衝撃を受けた。
技術革新による効率化も素晴らしいが、アナログな作業をひたすら続けられることと、その仕事のクオリティに対するスタッフのコミットは簡単には真似ができない。
なぜならそこには信じられないレベルの忍耐力が必要とされるから。一つのことをひたむきに続けられる忍耐力こそが日本が世界に誇るべき技術力の根源であり、イノベーションにもつながるきっかけにもなるだろう。
しかし、同時にこの忍耐力は時に大きなデメリットも生み出す諸刃の剣だとも感じた。
日本人特有の単純でつまらない作業を何の疑いも持たずに実直に続ける。これを逆手にとってしまえば、その作業を通じて生み出されるもの次第においては、世の中にとって良くない結果を生み出す可能性があるからだ。
単純作業をとことんマニュアル化して“内職”として発注する。これがクラウドソーシングを利用する際の一つのセオリーであろう。
おそらく仕事を受けた人は実直に言われたプロセス通りに作業を行い、一つ一つの報酬は少なくとも、それを大量に生み出すことにより、安定した収入を得ることができる。
しかしその一方で、その作業内容やそこから生み出されるものがどの後世の中に対してどのような影響があるのかをあまり意識しない。
実直であるがゆえに、頂いた仕事は真面目に取り組み、その内容に疑いを持たない。
そんな国民性だったとしたら、自分が行っている仕事の結果を自分の頭で考えて判断できなくなる可能性もある。
社会的には良くないとなんとなく感じていても、言われたことを仕組みの中で実直に作業を進めることに必死になりすぎて、仕事の内容や目的に疑問を持ったり、それを進言することはご法度、といった具合に。これではまるで機械のようで、もったいない。
今回の日本出張を通じ、日本という国の持つ、実直、誠実、忍耐、といった世界に誇るべき気質を学ぶとともに、仕事は“何のためにやるか”がより重要になってくるとも感じた。そうすることで、社会にとっても素晴らしいイノベーションが生まれるのではないかと思う。
Don’t be Evil (社会悪にはなるな)
– Googleの社訓
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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