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日本企業の経営スピードを上げる5つの方法
先日、我々のアドバイザーもしていただいている澤さんが、Voicyにて日本企業と外資系企業での働き方の違いについてお話しされていた。(Voicy: 高いお給料をもらえる会社という考え方について。)
GAFAなどの企業は給料が高いだけではなく、従業員の時間を尊重し、自由に使える仕組みを提供する事で、より有意義な仕事環境を与えているという内容。旧態依然とした仕組みで従業員を管理し、無駄に時間を奪って経営スピードを鈍らせている日本の大企業とはスピード感も全然違うとのこと。
シリコンバレーの企業の決断スピードは日本の100倍
実はこの分析は正しく、シリコンバレーの企業が世界的に凄いとされている理由の1つが、そのスピードの速さであろう。特にデジタルが主流になってきている現代では、これがかなり強力な武器となる。
日本企業が完璧なプロダクトを1つ出す間に、シリコンバレーの競合は20%の完成度のものを5つ出し、ヒットしたものだけを残し改善すると言われるほど、決断、実行、リリースのスピードが速い。
一説によると、日本企業とシリコンバレーの企業を比較すると、その決断スピードには100倍の差があるという。これは、例えると時速3kmで進むカメと、時速300kmのF1カーぐらい異なるということだ。ある意味、全くカテゴリーが異なる。
参考: 日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事
Appleでの象徴的な出来事
Appleもスピードを重要視していることがわかるエピソードを紹介したい。2008年にプロダクトマネージャーの一人がミーティングにて、CEOのTim Cookに対し、中国の工場での生産に大きな問題が発生している事を伝えた。するとCookは「それはまずい。誰か出向いてどうにかしなければ」と言った。
そのミーティングは継続し、30分ほどが経った時点でCookがその担当者に対し「あれ、なんで君はまだここにいるんだ?」と言うと、彼は急いでサンフランシスコ空港に直行し、服も着替えずにその足で中国行きの便に飛び乗ったという。
Amazonは平均で11.6秒に一回の頻度でデプロイしている
Amazonでも、スピードに関しての意識はかなり高い。その一例として、彼らは実に平均で11.6秒に一回ソフトウェアの更新を行なっているというエピソードがある。
もちろんこれは平日だけでのケースではあるが、常に最善の体験をユーザーに届けるため、そして競合に勝つために、新しい仕様リリースしまくっているということになる。
Googleがたどり着いたハイパフォーマンスチームに共通する5つのポイント
その決断スピードが速い事で知られるGoogleは以前に業績の良いチームの共通点を探るべく、社内の180のチームを対象にリサーチプロジェクトを行った。その結果によると、個々のチームメンバーのスペックには全く共通点はなく、その仕組みやカルチャーが最も重要であるということがわかった。
その5つの共通点は下記の通り:
- 信頼性: 時間通りに結果を出せる信頼性が担保されている
- 透明性: ゴールとそれぞれの役割がクリアになっている
- 仕事の意義: 仕事の内容が個々のメンバーにとって意義のあるものになっている
- インパクト: 仕事の結果が社会に良い影響を与える
- 心理的安全性: 恐怖や不安を感じることなく自分の意見を伝えられる状態が担保されている
上記の中でも、5番目の心理的安全性が保たれていることが、業績を上げるために最も重要なポイントだとGoogleは定義している。この調査の結果、自分の意見を周りの反応を恐れることなく発言できる環境を作ること、を最優先するべきだと分かった。
日本企業が経営スピードを上げるための5つの方法
では、こんな時代に日本企業はどうするべきなのか?おそらく、新しく何かを始めるよりも、既存の古臭い仕組みを打破することが必要になってくる。具体的には下記の5つが挙げられる:
1. メール文章の簡略化
日本の場合、ビジネスメールの書き方の基本として、「お世話になります。XXX社の〇〇です」から始め「よろしくお願いします」で〆ることがマナーとされている。そしてその内容もかなり丁寧に書かなければならない。
おそらくこのようなメールの書き方一つをとっても、日本全体でのGDPの1%ぐらいを浪費してしまっているのではないか、と感じてしまう。そもそもそんなメール、モバイルのプレビューで見たら、全部「お世話になっております」しか表示されなく、可視性がかなり低くなってしまう。
アメリカでは、メールを書くときには短い方が良いとされる。というのも、読む人の時間を極力奪わないために、ごく単純にわかりやすく書く方が逆に良い印象を与えやすい。
以前に、GoodpatchのCEOの土屋くんがうちでインターンをしてた頃、サンフランシスコで家を借りるために出したメールになかなか返信がない状態が続いた。その内容を見たら、とにかく丁寧すぎて読む気にもならない。そこでアメリカ風のノリで書き換えたら一発で返信が来た例を紹介する。
なかなか返信がこない、元のメール内容:
Whom it may concern,
Hi my name is Naofumi Tsuchiya. I am visiting San Francisco from Japan.
I have my family with me staying here. So, I need to have a room in a safer area.
I need to find a room from June X to July X. I have found your room listing on Craigslist.
It looks very interesting. I’d like to come to your place to take a look at it. And if I like it, I want to rent the space.
Could you possibly tell me when I can visit there to have a look?
I am looking forward to hearing from you soon.
Sincerely,
Naofumi Tsuchiya
速攻返信が来た、改善したメール内容:
Hey, found your room on Craigslist.
When is the best time to come see the place?
Best,
Nao
2. スタッフを信頼し、性善説で物事を進める
そもそも企業が「管理」したがるのは、スタッフを十分に信頼していないから。社内のコミュニケーションにおけるスピードを上げたければ、スタッフ同士が強い信頼関係を持てるカルチャーを醸成するのが最も効果的である。報告書一つとっても、信頼度が低くなるとその分量がどうしても増えがちで、自ずと作成と読解に費やす時間も増えてしまう。
そのためには、スタッフ同士が思いやれる環境と、正しい人選が重要になってくる。例えば、どれほど優秀だったとしても、他のスタッフに嫌な思いをさせるような人間を社内にいないようにしなければならない。
信頼関係を高めていけば、「管理職」の必要性すら無くなってくる。
↑信頼関係とコミュニケーションコストは反比例する
3. 場所と時間で縛らない
スタッフそれぞれに自主性を与え、結果を重視するべきであるが、ワークスタイルや場所、勤務時間などの「形」にフォーカスしすぎると無駄なストレスと時間が生まれてしまう。日本企業にありがちな日報やタイムカード、出張報告書などは、自主性を育むという点においては、弊害にしかならない。
例えば、長時間だらだら働いて、質の低い結果を出すよりも、短時間でもすごいモノを作り出した方が良いという考え方。どのように働くかよりも、どんなアウトプットを出せるかに比重が置かれる。
そのためには、仕事中に遊ぶのも全然ありだし、むしろ楽しんでいる時間が増えれば増えるほど、プロダクティビティ (生産性) がアップすることもあるだろう。
また、リラックスしている時の方が面白いアイディアが思いつく (シャワー浴びている時にひらめく系) ので、自宅やカフェなど、リラックスできるスペースを設置するのもありだ。(参考: デザイン思考型の企業カルチャーをつくる3つの観点 〜今すぐ喫煙所を廃止しキッチン設置しよう〜)
ちなみに、WeWorkなどの素敵な環境で働けばクリエイティブなアイディアが出る、というのは全くの妄想で、”クリエイティブに仕事している感”を出すのは良いが、手段が目的にならないように要注意。
4. 上司は情報をもっと公開する
日本の大企業複数社と仕事をしてみて一番驚いたのが、マネージャーが自身のチームメンバーにあまり情報をオープンにしないこと。アメリカの企業だと、なるべく多くの情報を与え、スタッフが自主的に動くこと、でリーダーとしての仕事をしやすくするのが一般的であるのに対し、日本企業の場合はその逆になっているケースを何度も目撃した。
当事者の方々に聞いてみても、はっきりとした答えが出ないので、日本の組織に詳しい友人に聞いてみた。すると、意図的にそうしているという。
最初は全く理解に苦しんだが、どうやらそうすることで権力を保持できるという。部下が知らないことを知っていることで、その人の存在価値を出すというかなり不健全な状態に感じられた。
そうなってくると、物事を進める際には毎回上司に聞かなければならなくなり、身動きが取りにくくなる。そして、全体のコミュニケーションコストも上がる。結果的に組織としてのスピードは下がり、競争力も下がってしまうカラクリ。
逆にスピードが速かったり、イノベーティブな企業に共通しているのは、上司と部下の情報格差が少ないこと。これを実現するには、クラウド系のサービスなどを活用する事で、毎回報告しなくても、スタッフがアクセスできる場所に情報を置いておけば良い。
5. 年一の人事査定よりも頻繁なフィードバックを
人事評価を楽しみにしている人は少ないだろう。特にそれが1年に1回のペースだと、評価する側もされる側も心地悪い。数ヶ月前の事象などを取り上げてそれに対して良いか悪いかを伝えてもあまりピンとこない。
それよりも、その都度フィードバックを出したり、定期的な1on1ミーティングを設けて会社と個々のスタッフの目標と課題設定と、現状に対するディスカッションをする方が健全であり、素早い変化にも対応しやすくなる。
その方法は、VCの前田ヒロとクラウドワークスの吉田さんとのポッドキャストで紹介されている、「約束」と「バブバブ」の時間が参考になるだろう。ゴールにコミットして厳しいディスカッションをする「約束」の時間と、現在困っていることや達成できない理由を正直に話しても良い「バブバブ」タイムをそれぞれ設ける方法が非常に面白い。
イノベーティブな経営戦略をbtraxがサポートします
アメリカに住んでいると、物事の変化のスピードを日々感じることができる。ここ10年間でも相当多くの事柄が変わり、仕事や生活に直接影響を与えている。人も企業も速いスピードで自身をアップデートしなければならない。
その一方で、日本に行くたびに思うのが、あまり大きな変化が行っていないということ。物価もほとんど上がっていないし、企業がやっている事柄も、事業の衰退以外はあまり大きな改革が起こっていない感じがする。
このままだとリアルにヤバそうだと本気で感じている。日本企業からグローバルに通用するイノベーションを生み出すために、我々btraxとしても、2020年も”People”、 “Culture”、 “Business”のそれぞれの領域において変革を提供できればと思っている。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせください。
この内容に関するポッドキャスト
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