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これから失われる仕事と求められ続ける3つの能力
2020年代が百年に一回あるかないかの時代の大きな変還期であることは間違い無いだろう。
それまでのテクノロジーの進化で生活スタイルに少しずつ変化は訪れていたが、パンデミックの影響とAI技術の発達はそれまでの10年以上の大きなシフトを世の中に生み出した。
仕事内容にも大きなシフトが
これまでもネットやAIの発達などでさまざまな職業に変化が生まれていた。それに加えDXの普及もあり、相当な種類の仕事に影響が生まれた。
今後も、新しいライフスタイルの普及、時代の変化、テクノロジーの進化のキラーコンボによって多くの仕事に影響が出ると考えられる。
米国労働省による失業保険に関する統計によると、下記の業界に大きな影響が出ている。
コロナの影響で失われた仕事の割合
- 宿泊業: 42.3%↓
- スポーツ・芸能: 45.5%↓
- 家具屋: 46.3%↓
- レストラン・バー: 48.1%↓
- 映画撮影・サウンド収録: 48.3%↓
- 歯科医院: 53.3%↓
- ランドリー・クリーニング: 53.5%↓
- アパレル店舗: 58.9%↓
- 遊園地・カジノ: 59.9%↓
- 観光に関する搬送業: 62.1%↓
おそらく下記のような仕事はしばらくの間必要とされないか、ニーズが格段に低下する。もしくは、今後存在しなくなっているかもしれない。
- レジ係
- 銀行の窓口
- 飛び込み営業
- 旅行エージェント
- イベントプランナー
- アパレルショップ店員
- ウェイトレス・ウェイター
15年後にあなたの職業が存在している可能性
ここで紹介した調査データがある。アメリカの調査期間が、既存の職業の20年後における生存率を割り出した。その結果による職業と15年後のに機械に奪われる可能性に関する調査結果を幾つか紹介する。
現在の職業が15年後に機械に奪われる可能性:
- プログラマー: 48.1%
- ソフトウェアエンジニア: 4.2%
- 家政婦: 68.8%
- ウェイター/ウェイトレス: 93.7%
- バーテン: 76.8%
- 調理師: 96.3%
- シェフ: 10.1%
- 経理: 97.6%
- 経理部長: 6.9%
単純作業の仕事内容は消える可能性が高い
これをみてもわかる通り、その仕事内容によって20年後もその職業が存在するかどうかが大きく異なる。
例えば、機械化率96.3%の調理師と93.7%のウェイターが示すのは、15年後の世の中の多くのレストランが全自動になっていると言う事である。その一方で、メニューを考案したり、調理方法を決めるシェフは自動化される可能性が低い。
同じく単純作業が仕事の経理の仕事は97.6%の確率で機械に奪われると予想されているのに対し、経理部長という人とのコミュニケーションを必要とされるマネージャー職を機械が行える可能性は7%も無い。これは、人間だからこそ出来るタイプの仕事だからであろう。
ユーザーの立場に立って設計や仕様決めを行うソフトウェアエンジニアの仕事はほぼ機械に奪われる可能性が無い (4.2%)に対して,ある程度単純作業となるプログラマーの仕事は50%弱の可能性で今後自動化が進む。
新しく生み出される仕事も
自動化に関するテクノロジーが進む事で無くなる仕事があると同時に、新しい仕事も生み出されると予測される。
マッキンゼーの調査によると、新たに創出される仕事の7割は「人間的な仕事」が占めている。
直感的な意思決定、創造的な成果、芸術的なデザイン、顧客や取引先との複雑な交渉。企業にとって多くの価値創造は人間にしかできない仕事によって支えられている。
今後も普遍的に必要とされる3つの能力
では、どのようなスキルを身につければこれからも人工知能等の機械に仕事を奪われないのであろうか。
現在の企業内での仕事内容は、管理された組織の中で正しい答えに辿り着く為の正確な単純作業や、精密な作業が求められて来たタスクが多く存在する。
しかし、そのような仕事は上記のデータを見ても分かる通り、近い将来ほぼ確実に賃金の安い地域にアウトソースされるか、機械にとってかわられることで消滅してしまう可能性が非常に高い。
その一方で、これから紹介する3つのスキルはどれだけテクノロジーが進化し、時代が変化してても人間にしか出来ない内容であると思う。
1. クリエイティブ
0から1を作り出すこと。これは機械には出来ない。AIは過去のデータを元に未来を予測することは出来るが、全く新しいものを作り出すのは人間にしか出来ない。
デザイナーやエンジニア等のクリエイティブな仕事はこれからもどんどん必要とされていく一方であろう。特に今回のコロナに代表されるようなVUCAの時代においてはクリエイティブは最も重要なスキルの一つになってくる。
0から1を生み出すクリエイティブな能力の構成要素は
- Curiosity(探求心)
- Empathy(共感)
- Imagine(発想)
- Create(創作)
- Play(遊び)
- Share(共有)
- Reflect(内省)
関連記事: 2020年から最大の企業資産はクリエイティブ人材になる
2. リーダーシップ
優れたビジョンを掲げ、卓越したコミニュケーション能力で人々を導いて行く存在。相手の気持ちに共感し、人間との心の通じたやりとりができるそのスキルは自動化が進む現代こそ一層求められている。人間がロボットのリーダーに従って心が一つになる時代は恐らくしばらくは来ないだろう。
人々を正しい方向に進めるリーダーの存在価値としては:
- 相手に共感する
- 何よりもまず方向性を決める
- ビジョンを共有する
- 相手のために尽くす
- 周りをインスパイアする
- 心の支えとなる
関連記事: 偉大なリーダーによる100の名言から読み取った5つの「コミュニケーションの秘訣」
3. 起業家精神
機械は基本的には起業しない。むしろ絶対にしないだろう。交渉力、ビジネスセンス、問題解決能力が求められるのが起業的スキルである。
その点においてはテクノロジーがどんなに進化しても、新しいプロダクトやビジネスを通じ社会を変えて行く起業家は世の中にとって今後もより一層必要とされるだろう。
- 挑戦を恐れない
- ユーザー視点で物事を考える
- 長期的なスパンと大きなスケールで考える
- すぐに諦めないしぶとさ
- 暖かいハートと冷酷な判断
- 壮大な夢と現実的な実行プラン
関連記事: Youはなぜ面倒な起業家なんかに?
3つの能力に共通するマインドセット
上記の3つのテクノロジーにも替えの効かない普遍的な能力に共通しているマインドセットがいくつかある。デザイン思考のワークショップでも、まずはこれらのマインドセットを身につけることから始めることが多い。
- 共感力
- 発想力
- 想像力
現在の日本の教育システムとのギャップ
これからは、これらの能力とマインドセットを身につける事が一層重要になってくると考えられるが、残念ながら現在の日本国内においてそれらを教えている教育機関は極めて少ない。現にそれらを入試に科している学校は皆無に近いだろう。
日本の学校で教えているのは、暗記、計算、正確な綴りなど、機械が最も得意とする事柄ばかり。頑張って高得点を稼ぐ優等生は、暗記、計算、単純作業などの機械っぽいスキルが身に付いているだけである。
しかし、現在の実社会では答えが無い事の方が多い。むしろ、ほとんどの場合、答えは自分で作り出さなければならない。
自分自身も高校まで日本の公立校に行っていたから分かるが、学校では基本的に既に答えがある事しか教えない。唯一クリエイティブなのは、音楽や美術、図画工作などの副教科、そして夏休みの自由研究ぐらいなものだ。
機械が得意なことを必死で学んでも意味がない
そもそも本来は、機械が得意な事は機械に任せて、人間でしか出来ない能力を身につけなければならない時代になっている。しかし、日本の教育システムではクリエイティブな答えは求められていない。
そもそもマークシート方式でクリエイティブな答えなど出しようがない。逆に、日本ではまだ上記の3つのスキルだけを持っていても、恐らく学校からはほとんど評価はされずに、劣等生としての認識をされるであろう。
学校での評価 ≠ 世の中で求められる能力
クリエイティブ、リーダーシップ、起業家精神を評価基準としていない現在の日本の教育システムでは、優秀とされている生徒や高学歴の学生が身につけているであろう能力は、残念ながらこれから時間が経てば経つ程機械に取って代わられる可能性が非常に高い。
おのずと、それらの能力が求められる仕事も無くなるだろう。それに対し、教育や受験に関するシステムが十分に追いつく可能性はまだまだ低い。
なぜか日本ではまだまだ少ない3つの役割
今後、テクノロジーの進化が進めば進む程、クリエイティブな能力、リーダーシップのスキル、そして起業家の精神の3つがより一層重要になってくるのは間違いない。
今後は日本国内からも世界に通用するようなクリエイターやリーダー、起業家を生み出す仕組みを作らなければ、機械がどんどん仕事を奪い始めるであろう。
日本からもっとイノベーターを増やしたい
btraxでもこれらの課題に対し、日本企業向けに新しいイノベーションの創造と、クリエイティブ、リーダーシップ、起業家精神を身につけた次世代のグローバルクリエイティブリーダーの育成を目的にワークショップの提供も行っている。
現在頑張って勉強していること、会得したスキル、今後のキャリア等、世の中から優秀だと評価されていることを今一度冷静に見直してみるのが良い時代になって来たのかもしれない。
僕たちの未来は既存の仕組みの中からは絶対に生み出される事は無い。自分で創り出すしか生き残る方法は無いだろう。
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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