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日本ではiPhoneは絶対に普及しないと馬鹿にされていた – 未来予測例がこれだけ難しい理由
iPhoneが大きなシェアを獲得する可能性はゼロに等しい。ノーチャンスだ。
これは、2007年に当時マイクロソフトのCEOであるスティーブ・バルマーが言った言葉。
そう、その後世界を大きく変えていくことになるスマホ誕生の瞬間を目の当たりにした世界最大のテクノロジー企業トップは、それを大きく否定していた。
それだけではない、当時の日本の消費者たちもかなり馬鹿にしている。
例えばこんな感じに:
“ほとんどiPodに電話が付いただけじゃねぇかwwwww”
“これは何をするための道具なの? 音楽を聴くため?電話をするためのもの? よく分からんな”
“今触ってみたけどデカすぎw これ片手操作してたら落とすだろうな GPSはいいわw 持て余しそうで欲しいとは思わないが”
“正直インフラ整ってる日本じゃiPhoneなんて意味無いだろ 普通に国産携帯の方が性能良い。これ買うのなんてタッチにひかれた人間か音楽ケータイ(笑)大好き人間だけだろうねwwww”
“これを持つメリットが感じられない 音楽聴きたいならiPodでいいし電話メールは携帯でいいしWEBサイトにしても最近の携帯なら見れるだろ”
これを見ても分かる通り、その当時に現在の状況 (未来) を正しく予測できた人は多くない。
イノベーションにおける未来予測の重要性
世の中に新しい価値を生み出す際には、単にテクノロジーの進化を予測するだけではなく、未来を生きる人々がどのような体験をするようになるかという点に焦点を当てる必要がある。
これを未来予測と呼ぶ。
新たなビジネスやサービスモデルを創出する際、とても役に立つフレームワークのひとつに「未来予測(Future Forecasting)」がある。未来予測とは、過去から現在に基づいて予測されるデータなどを基に、ある一定の未来にどのようなことが起こるか洞察することである。
これは、新規事業におけるサービスやプロダクトを考案する場合特に大きな助けになる。未来を予測して、人々の経験をデザインすることに役立てていくのである。
ただし、単に「こんな未来だったらいいな」という個人的希望を実現すれば良いというわけではない。未来を生きる人々がどのようなことに問題を抱えペイン(苦痛)を感じ、どのようなものを必要としているのか、それを予測するのだ。
過去のトンデモ未来予測を紹介
未来予測がどれだけ難しいか。過去の誤った未来予測を見てみればそれがよく理解できる。そのいくつかを紹介する。
- 映画館は普及しない by チャーリー・チャップリン
- ロケットは大気圏を越えることはできない by NYタイムス
- テレビの普及は一時的なもの by CEO of 20th Century Fox
- 誰も料理しなくなる by ポピュラーメカニックス誌
- 人々は店舗でしか買い物をしない by タイム誌
- 東京-LA間が5時間以内で移動できるようになる
- 携帯電話は固定電話の代わりにはならない by マーティー・クーパー
- 世界に必要なコンピューターの台数は5台 by トーマス・ワトソン
- 自宅にパソコンなんて必要ない by CEO of DEC
- Appleは倒産する by ワイアード誌
- Appleは倒産させるべき by マイケル・デル
- インターネットはFax程度の存在にしかならない
- ネット系ビジネスは終了した
- 2000年問題が発生する
- Amazon創業者のジェフ・ベゾスが成功するはずない
- YouTubeには面白い動画があまりない
- テスラの成功確率は10%
- 音楽のサブスクは成功しない
- 誰もが複数のウェアラブルデバイスを着用する
- 1滴の血液で健康診断が可能になる
- 5Gで社会の全てが大きく変化する
- イーロン・マスクの髪の毛は薄い
映画館は普及しない
これはかの有名な喜劇俳優、チャーリー・チャップリンによる言葉。1916年当時は舞台がメインで、舞台俳優だったチャップリンも、人々はリアルな舞台を見たいはずと予測していた。
しかし、その後彼自身が映画俳優に転身に大成功したのは皮肉だ。
馬は残るが自動車は一時的な流行に過ぎない
自動車の父とも言われるヘンリーフォードの弁護士が、フォード社に投資しようか悩んでる際に、ミシガン銀行頭取が彼にしたアドバイス。
結果的に、そのアドバイスを無視して投資を行った結果、フォード社は大成功し、5,000ドルが1250万ドルになった。
ロケットは大気圏を越えることはできない
1920年のニューヨークタイムス紙は記事で宇宙旅行の可能性を否定していた。
しかし、1969年にアポロ11号が月に到着した際にその内容を撤回した。
テレビの普及は一時的なもの
アメリカで第二次世界大戦直後から一般の家庭にも普及し始めていたテレビだったが、その当時、映画会社20th Century Foxの社長は人々が長い時間小さな箱を見続けることに飽きるだろうと予測していた。
もちろんそんなことはなく、すぐに国民にとって映画以上の娯楽となっていった。
誰も料理しなくなる
1950年の『ポピュラー・メカニクス』誌の記事で、料理は過去のものになると予言されていた。その記事によると、急成長する冷凍食品産業と革新的な電子レンジにより、未来の女性は冷凍ステーキを8秒で解凍し、2分で食べられるようになるだろうと予測した。
現在でも多くの家電メーカーが料理の自動化を進めているが、いまだに何もしなくても料理が食卓に並ぶ状態にはなっていない。
人々は店舗でしか買い物をしない
1966年、『タイム』誌は2000年の生活を展望する「未来派」と呼ばれるエッセイを発表した。その中で、「リモート・ショッピングは完全に実現可能だが、失敗するだろう。なぜなら、女性は家から出て、商品を扱い、気持ちを切り替えられるのが好きだからだ」と述た。
もちろんこの予測は大きく外れ、eコマースは時代とともにどんどん成長している。
東京-LA間が5時間以内で移動できるようになる
現在の旅客機の倍の飛行スピードが出るコンコルドが就航していた1980年台、東京とロサンゼルスを結ぶ航路にも就航する予定だった。
しかし、コンコルド自体が廃止になってしまったため、その夢は実現されなかった。
携帯電話は固定電話の代わりにはならない
携帯電話を発明したMarty Cooper本人がその当時の予測として、携帯電話はあくまで補足で、その後も固定電話がメインの通信手段であり続けると考えていた。
現代において固定電話の存在価値はほぼ無くなってきている。
世界に必要なコンピューターの台数は5台
これは1943年当時IBMの会長だったトーマス・ワトソンが予測した未来。その数十年後にはパソコンが普及し、現代では一つの家庭に5台のデバイスがあるのも珍しくない。
自宅にパソコンなんて必要ない
1977年に当時のDigital Equipment Corporationの創業者で社長だったKen Olsonが言った言葉。DECとしても知られる彼の会社はIBMのライバル企業として、業務用のコンピューターを製造・販売していた。当時のコンピューターは多くの人の家よりも大きかったのが理由。
ご存知の通りこの未来予測は大きく外れ、DECの業績も悪化し、最終的にパソコンメーカーのコンパックに買収される形で消滅した。
ネットが普及しても新聞は無くならない
1995年のNewsweek誌に掲載された Clifford Stollによる”The Internet? Bah!” と言うタイトルの記事にて、どれだけネットが普及したところで新聞の存在価値は下がらないだろうと予測。
その10年後には、紙面の発行部数は激減し、多くの新聞社がネットでの配信をメイン事業に変換。現在では紙媒体でのニュース情報発信が絶滅の危機に瀕している。
Appleは倒産する
1997年、ワイアード誌は、Appleが他のハードウェアメーカーと競争できないと書いた。
しかしその4年後、iPodは1000曲をポケットに入れ、Appleの世界制覇への道を歩み始めた。
Appleは倒産させるべき
今からは想像ができないが、1997年当時のAppleは業績がかなり悪く、倒産の噂もあった。現にDellのCEO, マイケル・デルは「自分がAppleの社長だったら会社を清算して、そのお金を株主に分配する」と語った。
その後20年もしないうちにApple は世界で最も時価総額の高い会社になった。
インターネットはFax程度の存在にしかならない
1998年にノーベル賞も受賞している経済学者のポール・クルーグマンは、インターネットの経済に対する影響はFax程度しかないと予測した。
もちろん今でもFaxを利用している人もいるだろうが、おそらくネットユーザー数の方が少し多めだろう。
ネット系ビジネスは終了した
Uberの創業者であるトラビス・カラニックは、2000年前後にドットコムバブルが崩壊し、その頃にスタートアップを立ち上げた。その際に有名投資家に言われたのが「ネット系ビジネスは終了した。全てのイノベーションは出尽くした。」の一言。
もちろんそんなことはなく、現代の多くのビジネスはネット系になっている。
2000年問題が発生する
コンピューターが日付を記録する際、西暦の下2桁しか使っていないことが原因で、2000年を迎える際に世界中のシステムが1900年と認識し、データのメルトダウンと金融危機が起こる可能性があるとの予測がされた。
Y2Kと呼ばれたこの予測に反して、結果的に特に大きな問題は起こらなかった。
Amazon創業者のジェフ・ベゾスが成功するはずない
現在世界の長者番付のトップ3に入るAmazonの創業者であるジェフ・ベゾス。その創業当時の写真がこちら。
この写真に写る手書きの “amazon.com” の看板と、パソコンの前に座っているおっちゃんを見て誰が後の大富豪を想像できただろうか?
迷惑メールは2年以内に消滅する
これは2004年にビル・ゲイツが世界経済フォーラムで言った言葉。テクノロジーの進化で迷惑メールが2006年までに撲滅されると予測。
しかし、迷惑メールは20年近く経った今でも全くなくなる気配がない。
YouTubeには面白い動画があまりない
これはYouTube創業者、創業直後の2005年ごろのSteven Chenによる発言。
現在では創業者自身すら予測できないくらいの量の動画と、YouTuberに代表されるような人気動画が毎日アップされている。
テスラの成功確率は10%
以前BBCが行ったインタビューに対して、イーロン・マスクは、「設立当初の成功率は多く見積もって10%だった」と語った。今から考えると、リスクの高いスタートアップの中でも、費用も時間も膨大にかかる自動車メーカーを立ち上げるなど、かなり無謀なチャレンジである。
しかし、その後テスラは何度かの経営危機を乗り越え、現在では世界で最も価値のある自動車メーカーに成長した。
音楽のサブスクは成功しない
2003年当時にiTunes経由で音楽をダウンロード販売していたAppleのスティーブ・ジョブスによる言葉。彼によると、音楽をサブスク経由で有料配信するビジネスモデルは成り立たないと予測した。
しかし、現在ではiTunes以上に音楽のサブスクは一般的になっている。
誰もが複数のウェアラブルデバイスを着用する
2010年ごろからウェアラブルデバイスに注目が集まった。その直後から複数のメーカーから各種デバイスが発表され、ハードウェア系スタートアップへの投資も盛んに。そしてGoogleもGoogle Glassを発表する。
しかし現在では唯一生き残ったと言えるのはApple Watchぐらいで、その他のほとんどが淘汰されていった。
1滴の血液で健康診断が可能になる
スタンフォード大学の化学工学科の2年生だった起業家がスタートしたセラノスは、「少量の血液で200種類以上の血液検査を迅速かつ安価に出来る」というふれ込みで、著名投資家から巨大資金を調達し、時価総額は約800億ドルにまで成長した。
しかし、そのほとんどがまやかしであり、そんな夢のような未来は現実にはならなかった。
5Gで社会の全てが大きく変化する
これはつい数年前のことだが、5Gが普及することで人々の生活や、各種サービスが格段に変化すると予測されていた。
しかしどうだろう。5Gに対応したスマホを利用してみても、体感でイマイチその変化は感じにくいし、特段世の中が変わったとも感じられない。
イーロン・マスクの髪の毛は薄い
今の姿からはあまり想像できないが、イーロン・マスクは若い頃かなり頭の毛が薄かった。下記の写真はPayPal創業時のもの。
その後いくつもの事業の成功とともに髪も増えた模様。
未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ – ピーター・ドラッカー
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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