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世界で活躍する女性起業家たちと、取り巻く環境への課題
さまざまな業界における男女格差が叫ばれる中で、スタートアップ起業家における女性の比率と、彼女たちを取り巻く環境にも、いまだに大きなギャップが存在する。
完全に男性社会のスタートアップ界隈
例えば、2020年におけるアメリカのスタートアップ投資の実に96%が男性CEOの会社に対して行われている*。
スタートアップ投資は圧倒的な男性優位の業界
この男女不均等は投資する側にも見られ、VCの中で決定権のある女性の割合はわずか12%*。投資会社の65%が女性パートナー (責任者) 数がゼロ* であり、また、創業パートナーが女性のVCはわずか2.4%* だ。
女性も利用するサービスをおじさんだけで作る気持ち悪さ
最も重要なポイントとして、世の中の商品やサービスのその多くが男性にも、女性にも利用されるということ。もちろん女性用下着やコスメ製品のメインターゲットは女性であるが…。
なのに、デジタルサービスを中心に、多くの企業の経営陣やスタッフの大部分が男性で構成される。女性にも利用されるサービスを、男の人たちだけで考えて作り出そうとしているのは、単純に考えて非効率である。そして、多少の気持ち悪さも感じる。
ビジネスにおける女性のパフォーマンスの高さ
その一方で、実はあまり知られていない事実として、経営陣に女性が30%以上いる企業は、そうではない企業よりも業績が良い*。
また、創業チームに女性がいるスタートアップはエクジットが平均1年早い。女性創業者の会社は業績が倍になる* というデータもある。
世界的に大活躍する女性起業家を紹介
このように、シリコンバレーを中心に、起業家も投資家もスタートアップに関わる人たちは圧倒的に男性が多いと言わざるを得ないだろう。そんな状況の中でも、世界的に活躍し、ヒットサービスを生み出している女性起業家も少しずつ増えてきているので紹介したい。
Brynn Jinnett Putnam: Founder & CEO at MIRROR
学歴: Harvard University
純資産: $130m
ロケーション: New York
創業年: 2016
バレリーナ出身。ジムオーナーをしている際に出産を経験し、自身が自宅でエクササイズを可能にするために考案したサービスがMIRROR。
MIRRORは、レスポンシブ・ディスプレイを活用し、ライブおよびオンデマンドのレッスンを家庭内のユーザーにストリーミングする、世界初のコネクテッド・フィットネス・システムを提供している。$1,495の導入費用プラス月々$39のサブスクリプション費用。2020年7月にルルレモンによって$500mで買収された。
Jennifer Hyman: CEO at Rent the Runway
学歴: Harvard Business School
純資産: $300m
ロケーション: New York
創業年: 2008
お姉さんが結婚式で高価なドレスを購入しなければいけないことに腹を立てていたのを見て、ハーバードビジネススクールで、当時の同級生だったJennifer Fleissと共に、Rent the Runwayのアイディアを思いつく。
同サービスでは、ユーザーが小売価格の10%でデザイナーアパレルを4-8日間レンタルをすることができる。それに加え、月々のサブスクリプションで、最大4着のアイテムをレンタルすることが可能。直近の年間売り上げは1億ドル。
Yunha Kim: CEO & Founder of Simple Habit
学歴: Stanford University Graduate School of Business
ロケーション: San Francisco
創業年: 2016
スタンフォード在学中に国連やマッキンゼーでインターン。その後2013年に就職していた投資銀行を辞め、スマートフォンのロック画面用のアプリサービスのLocketを立ち上げ、2015年にEコマースサービスのWishに売却。その後2016年に、忙しい人のために5分間の瞑想セッションを提供するウェルネスアプリ Simple Habit をスタート。
睡眠、朝の不安、集中力の欠如などの状況に基づいた1,500以上のセッションを提供するSimple Habitは、現代のライフスタイルに合った実用的なソリューションを提供。日々のストレスを軽減するために、世界的な専門家による短い瞑想やオーディオセラピーセッションを活用している。
Mariya Nurislamova: CEO & Co-Founder at Scentbird
学歴: City University of New York-Baruch College – Zicklin School of Business
ロケーション: New York
創業年: 2013
彼女が育ったのは、ベレズニキという荒廃したロシアの工業都市で、ロシアで最も危険な犯罪者を収容していた悪名高い刑務所のすぐ隣だった。孤独な生活の中で彼女は、化粧水、口紅、香水など、あらゆる美容アイテムに癒しを見出していた。
18歳のときに故郷のロシアを後にして、渡米。
そしてその15年後にのちにYコンビネーターからも投資を受ける事になるスタートアップを始める。現在、彼女は美容業界で最も成功しているスタートアップの一つであるScentbirdのCEOを務めている。
Scentbirdは、ユーザーがデザイナーズ・フレグランスを購入する前に、毎月サンプルを選んで試すことができるサービス。毎月$14.95 で好みのデザイナーズ・フレグランスを毎月30日分届けてくれる。
Allison Robinson: Founder & CEO of The Mom Project
学歴: University of Dayton
純資産: $15m
ロケーション: Chicago
創業年: 2016
自分自身が子供を出産した後で仕事に復帰する難しさを体感し、2016年に働くママと企業をつなぐプラットフォーム、The Mom Projectを設立。3,600万ドルを調達し、30万人のプロフェッショナルと、中小企業からAppleやNikeまで2,000社の企業とのネットワークを築き上げた。
最初は雇用に重点を置いていたが、現在では休職した女性を職場に復帰させるための徹底的なプログラムを作成している。
パンデミックにより、リモートワークが広がる中で、週4日制のようなよりフレキシブルな環境を提供する企業が増えてきているのも、働く母親たちにとって良い流れになっている。
Anne Wojcicki: Co-Founder & CEO of 23andMe
学歴: Yale University
純資産: $690m
ロケーション: Mountain View
創業年: 2006
スタンフォード大学の教授を父親に持ち、幼少の頃からキャンパス内で育つ。2006年にLinda Aveyと共同で23andMeを設立。23andMe社はヒトゲノム研究を提供するスタートアップで、ユーザーが唾液を送ることで、自分のDNAが健康、特徴、先祖についての情報を得ることができる。
ちなみに彼女は、2007年から2015までの間、Googleのファウンダーであるセルゲイ・ブリンと結婚していた。姉であるSusan Wojcickiは、YouTubeでCEOを勤める。
Marie Kondo: Founder of KonMari Media, Inc
学歴: 東京女子大学
純資産: $8m
ロケーション: Los Angeles
創業年: 2015
現在アメリカで最も著名な日本人女性の一人となった、”こんまり”こと、近藤麻理恵。5歳の時には主婦層向けの生活雑誌ESSEを愛読し、片付けに関する研究を進め、大学在学中には片付けコンサルティングを仕事として開始。そのころに彼女独自の片付け方法である「こんまりメソッド」を発案。
その後渡米し、KonMariの名前で大ヒット。自身のNetflixチャンネル、Tidying Up With Marie Kondo」(邦題「KonMari~人生がときめく片づけの魔法~」)が世界190カ国で配信されてから、熱狂的なファンを集め、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
また、スタートアップの起業家としても、40億ドルの資金調達をし、KonMariブランドのEコマースビジネスを拡大している。
Georgina Gooley: Co-Founder of Billie
学歴: The University of Sydney
ロケーション: New York
創業年: 2016
Nikeなどを手掛ける広告代理店大手のWieden+Kennedyで働いたのちにBillieを起業。
Billieは、D2C型の女性専用のシェービングサブスクリプションサービス。女性に特化したカミソリやボディケア製品を他社よりも安い価格で提供している。
また、シェービングを行うかどうかという選択肢を女性に与えるブランドを目指し、女性が自分の体にまつわる選択をより快適に感じられるようにすることをゴールにしている。
Reshma Saujani: Founder and CEO of Girls Who Code
学歴: Harvard University Kennedy School of Government
ロケーション: New York
創業年: 2012
弁護士であり、政治家でもある。2009年には、ニューヨーク州議会で、インド系アメリカ人女性として初めて下院議員選挙に出馬しました。 2013年には、民主党の候補者として出馬し、予備選挙で3位になる結果を出している。
その後、2012年に非営利団体、Girls Who Codeを設立。若い女性たちにコンピュータサイエンス教育を受けるためのスキルとリソースを提供し、刺激を与えることを目的としている。同社では、ロボット工学、ウェブデザイン、モバイル開発の指導と、若い女性へのきめ細かな指導を提供している。
Emily Weiss: Founder, CEO at Glossier
学歴: New York University
純資産: $10m
ロケーション: New York
創業年: 2014
ニューヨーク大学を卒業し、ビューティーブログ「Into The Gloss」を立ち上げる。その後、2014年にD2C型コスメブランドのGlossierをスタート。
Glossierは、個人の自由と選択を提供する「スキンファースト、メイクアップセカンド」という美容哲学を推し進めている。スキンケア、メイクアップ、ボディ、フレグランスにまたがる製品が、Glossier.comを通じて7カ国で販売されている。
2019年の時点でGlossierの200人以上の従業員、評価額は12億ドルと言われている。その成長の大きな要因が彼女による情報発信とユーザーとの相互コミュニケーションにある。
Melanie Perkins: Co-founder & CEO at Canva
学歴: University of Western Australia
純資産: $1.3b
ロケーション: Sydney
創業年: 2012
Canvaを起業する以前はFusion Booksを設立。同社は、学校がイヤーブックを作成するためのオンラインデザインシステムを提供。現在、オーストラリアで最大のイヤーブック出版社であり、最近ではフランスとニュージーランドにも進出している。
そして、2012年に誰もがプロ品質のデザインを作成できる、シンプルで使いやすいオンラインデザイン・出版プラットフォームでのCanvaをスタート。世界190カ国、1,500万人以上のユーザーが利用している。
Canvaの成功により、Melanie Perkinsの資産は13億ドルとなり、オーストラリアで3番目に資産の多い女性となった。
Heidi Zak: Co-CEO of ThirdLove
学歴: MIT – Sloan School of Management
ロケーション: San Francisco
創業年: 2012
自身のブラジャーの買い物に関する課題からインスピレーションを得て、当時Googleで働いていた同僚で、現在の夫であるDavid Spectorと共に始めたスタートアップがThirdLove.
データに基づいたアプローチで、快適さと美しさの両方を考慮したブラジャーをデザインを開始した。
掲示板サイトのCraigslistを利用して、100人の女性にブラジャーの上にフィットしたタンクトップを着た写真を撮ってもらい、その写真をもとに、ブラジャーのプロトタイプと、ブラジャーのサイズを判定するアプリをデザイン。標準的なカップサイズでは37%の女性に合わないことがわかり、ハーフカップサイズを開発。
2016年後半の時点で、月に約5万枚のブラジャーを出荷していた。ThirdLoveは、ラウンジやスリープウェアだけでなく、アンダーウェアにも進出している。
少ない比率の中でも大活躍する起業家たち
女性の起業家率はまだまだ少ないといえども、世界を見渡してみれば、素晴らしいサービスを提供している方々がたくさんいる。
今回のリサーチでは、200人ほどの世界で活躍する女性起業家を調査してみたが、提供するサービスは、フード、コスメ、ファッション、教育関係が多い。やはり、自分たちの実生活を通じた課題を解決するタイプのスタートアップを起業する傾向が強いのかもしれない。
女性CEOよりも”Mike”社長の方が多い
その一方で、冒頭のように、男女格差はまだまだ広く、大企業のCEOの女性比率はわずか3%*。実に、女性CEOの合計数よりも、ファーストネームが”Mike”のCEOの数の方が多い*。
2020年の調査によると、米国では、女性が男性と同じ収入を得るには、42日多く働く必要があるとのデータもある。
求められるロールモデル
やはり、この格差は解決するべき大きな課題である。最終的には女性起業家の”女性”の部分が完全に無くなるのが理想的だろう。
そのためには、彼女たちをバックアップ・サポートする仕組みと、起業家としての最初の一歩を踏み出す勇気をもってほしい。
今回紹介した起業家たちが、今後のロールモデルとなり、スタートアップ界隈の多様性がより高まることを願う。
* 米国のコンサルタント、Amy Jinによるデータ
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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