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DXの波に乗れ!注目のファッションテックスタートアップ5選
- デジタル化で遅れをとるファッション業界にもDXの波が到来
- Stitch Fix: サブスク縛りなしのオンラインスタイリングサービス
- Poshmark: 巨大ユーザーコミュニティを持つ「海外版メルカリ」
- Betabrand: ユーザーはデザイナー 共創型ファッションプラットフォーム
- Bolt Threads: 菌類に蜘蛛の糸 次世代素材を提供するバイオ系スタートアップ
- Provenance: 商品の旅路を見える化 消費者に安心を与えるサプライチェーン管理ツール
DXの流れを受け、「XaaS」と呼ばれるモノのサービス化や、デジタルシフトも同様に注目されていることは誰の目にも明らかだろう。
様々な業界がその波に乗ろうと奮闘する中で、今回はファッション業界に焦点を当ててみたい。
ファッションは経済の動きそのものを表しているように思う。衣食住というように、ファッションは人間の生活の基本であり、密接に絡んでいるからこそ、産業の変化が起こるとその影響も受けやすいと考えている。
それと同時に、デジタル化が遅れている業界だとも言われてきた。しかし、今年のコロナショックを受けてDXにまつわる動きが多く聞かれるようになった状況で、ファッション業界もDXの観点を取り入れていくことがより一層求められている。
この記事では、そんなファッションに関連して、テクノロジーをうまく掛け合わせて新たな価値を提供しているサービスを紹介していきたい。
1. Stitch Fix
Stitch Fixは、オンラインのスタイリングサービスだ。AIとプロのスタイリストによってパーソナライズされたコーディネートを提案してもらえる。
コストは、1回につき20ドル。まず最初にユーザーは希望する価格帯とサイズ、体型の他、普段のライフスタイルやファッションに関する姿勢に関する質問にクイズ形式で回答していく。
簡単なクイズ形式でユーザーの体型や嗜好を絞っていく
そして、その後、ユーザー1人1人のために組まれたコーディネートが自宅に届き、気に入ったものはそのままキープして購入可能、買い取らないものは送り返すという仕組みだ。
このサービスの特徴的なところは、サブスクリプションモデルではないところ。この手のサービスは、サブスク型であることがもはや前提のルールのようになっている印象があるが、1回のみの利用が可能で、サービスを試すハードルが低い。
サブスクにありがちな、うっかりステータスの更新を忘れてずるずるとサービスを継続してしまうというミスの心配もない。
プロのスタイリストによるコーディネートの提案とその他のオペレーションにおいて、人間が担うべき領域と、テクノロジーに任せて効率化を図るべきポイントをうまく両立しているところがStitch Fixの強みであり特徴だ。
同社は、今年の発表で、アクティブユーザー数が350万人、前年度比17%増、純収益に関しては、4億5,510万ドル、前年比22%増と報告している。
同社のCEOは、コロナ禍の外出制限を受けて、オフィス向けの商品よりも、アスレジャー(アスレチックとレジャーを合わせた造語)に焦点を当てたことがこの伸びの1つの要因と考えている。
出社の機会が減った代わりに、家で過ごす時間が増え、ヨガウェアやスポーツウェアをはじめとするカジュアルな商品のニーズが高まったのだ。(参考)
2. Poshmark
Poshmarkは、CtoC型ソーシャルコマースサービスだ。北米に6,000万人のコミュニティメンバーを持ち、1億点ものアイテムを取り扱う巨大なプラットフォームである。
その仕組みは「海外版メルカリ」とでも言えるだろうか。売り手は、商品をプラットフォーム上にアップロードして販売する。
そして買い手は、通常のECサイトのように買い物を楽しみ、場合によっては出品者と値段を交渉したり、コメント欄にてサイズやカラーバリエーションの質問などのやりとりを行ったりできる。
また、Instagramの使い方も秀逸だ。サービスに対するユーザーの口コミや写真を中心に、イベント情報まで、様々なコンテンツを投稿している。ユーザー同士の繋がりでサービスが成立しているからこそ、彼らにフォーカスした内容が多い。
サイトにはソーシャルコマースサービスそのものの機能だけを持たせ、ブランドやサービスのイメージを伝えるのにはSNSを使用するという、コンテンツごとに使用するチャンネルの棲み分けもうまく実現していると思う。
3. Betabrand
Betabrandは、2009年にサンフランシスコ拠点に創業したオンラインファッションプラットフォームを提供するスタートアップだ。
注目すべきはその販売形態。看板商品のパンツに関しては、毎週コミュニティ内のユーザーたちからのフィードバックをもとに商品を改善された新商品を販売している。
“Design Projects”と称し、デザインや色から商品のコンセプトそのものに関することまで様々なプロジェクトを公開している。ユーザーは、オンラインで投票をする形で商品に関するフィードバックを送る。商品に対する反応は、SNSのように、Like / Not for meのボタンを使ったり、コメントしたりといった方法もある。
投票形式の商品へのフィードバックページ
また、完全に新しい商品を作る時は、クラウドファンディング形式でBetabrandのコミュニティに支持されたアイデアのみを商品化することにしている。
同ブランドの中でクラウドファンディングをするというのは斬新に思えるが、ユーザーの欲しいものを確実に作り、無駄な生産をしない手段としてとても理にかなっている。
クラウドファンディングのページ
また、Betabrandはほぼ毎週、サンフランシスコの店舗にて新商品の発表の様子をライブ配信をしている。ファンとの直接の対話を重要視している姿勢も窺える。
ユーザーは消費者であり、デザイナーであるというコンセプト、ユーザーとインタラクティブな共創モデルをとっているところがBetabrandのユニークなところだろう。
また、ユーザーの声を反映しているという意味で、ユーザーに対して誠実さを示していると同時に、ユーザーも自分たちの声をブランドに聞いてもらい、目に見えて商品が改善されていくことでブランドに対する信頼感やロイヤリティを感じることができるのではないだろうか。
いわばBetabrandは、ずっとユーザーテストができているような仕組みであり、プロダクトの改善にもユーザーの声をダイレクトに反映できる。
プロトタイプ的に商品をリリースして改善を重ねていくという非常にスタートアップ的な方法を、誰にでも見える形でサービスの前面に出し、オープンにしているところが面白い。
4. Bolt Threads
業界柄、環境に関して問題視されがちだからこそ、サステナビリティについても先進的に取り組んでいる企業が増えているファッション業界。
Bolt Threadsもバイオテクノロジーを活用してサステナブルな素材の開発に取り組んでいるスタートアップの1つだ。Bolt Threadsが製造するのは、最近よく聞かれるようになってきたヴィーガン素材。
『Mylo』は、キノコ類も属する菌類の菌糸の集合体である菌糸体を使用したヴィーガンレザーだ。菌糸体は地中で複雑に絡み合うため、密度が高いことから、高い強度としなやかさを両立できているのだそう。
また、着色や加工もしやすく、従来の動物性の革の代替品として、アディダスやルルレモン、ステラマッカートニーなど、名だたるブランドの商品に使用されている。
Myloはステラマッカートニーの代表的なバッグにも使用されている
その他、蜘蛛の糸を加工した『MICROSILK』という糸素材も製造している。蜘蛛の糸はもともと、高い耐久性や柔らかさなどの優れた特性を持っており、Bolt Threadsは、洋服の製造にも使える糸への加工に成功した。
蜘蛛の糸の部分を活用しているため生態系への影響は少ない上に、生分解(微生物によって無機物へと分解)されるため、廃棄するとしても環境への負荷は小さく抑えることができる。
テクノロジーの中でも、バイオテクノロジーにまつわる知識と、それを製品化するための高い技術力が求められるようになってきていることも、昨今のサステナビリティの潮流を受けたファッション業界の大きな動きの1つと言えるだろう。
5. Provenance
最後にご紹介するProvenanceは、BtoB向けのサービスだ。ファッションだけでなく、小売全般をターゲットにしている。
このサービスは、サプライチェーンの透明化をサポートするプラットフォームだ。
具体的には、商品の素材・原材料から、どのように加工・製造され、配送されるのかといった一連の流れを追跡し、サステナビリティや環境に及ぼすインパクトを中心に、商品にまつわるデータを一括管理することができる。
サプライチェーンの他、ECサイトでは商品ページにライセンスを開示する機能もある
昨今、サービスやプロダクトの背景にある経緯やストーリーに関心を寄せる消費者がどんどん増えてきている。
サステナブルであることを謳っている商品とそうでない商品とでは、売り上げの伸びに5.6倍もの違いがあるというデータも出ているほど、サステナブルであることは商品の購入に大きく関わる要素になってきている。
モノ自体での差別化が難しくなりつつある最近では、これまで付加価値として考えられてきたサステナビリティなどの要素も、もはや必須ポイントとして考えられるようになる日もそう遠くないのではないのだ。
そうなってくると、消費者に見える形で適切にデータを示す姿勢がより一層重要になってくるだろう。
最後に
ファッションを中心に、テクノロジーをうまく活用して新たな価値を提供するサービスを5つご紹介した。日本ではまだ類似サービスを見ないものもいくつかあったかと思う。
ユーザーの声をプロダクトに落とし込むための仕組みや、環境・サステナビリティへの配慮などは、ファッションが衣食住の「衣」という人間の生活の基本だからこそ、丁寧にサービス設計されていると考えられる。
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