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デザイナーがファシリテーションをしてみた
デザイン思考ワークショップのファシリテーションをするというとても学びの多い機会があったため、気づいたことなど、体験についてをデザイナー視点でまとめてみた。
デザイン思考とは?
デザイン思考の定義は、人によって様々な言葉で説明されると思うが、私はデザイン思考を、「デザインのプロセスを通じて課題解決をし、暮らしをより良くするための手段」と解釈している。より平たく表現すると、ユーザー本人も気づいていないような潜在的なニーズを探し出し、アイデアをテストして、解決することである。
このデザイン思考という言葉は、カリフォルニアに本社を構えるデザインスタジオIDEO社の創業者ティム・ブラウン氏によるもの。彼が2005年にハーバードビジネスレビュー誌において、「デザイナーの手法と感性はビジネスに応用可能である」と提唱したのがきっかけで有名になった。
この考えは日本にも徐々に浸透してきており、デザインの発想や手法をビジネスの場で活用し、その価値を向上させることを目指す企業が増えてきた。そのため、組織内にデザインのマインドセットをインストールするために、ワークショップや研修形式でデザイン思考を習得するケースが増えた。
そして普段はデザイン業務を行っている筆者が、今回、とあるデザイン思考のワークショップにて、ファシリテーターとして参加した。いわゆるグラフィックデザインを行っており、色や素材を使い、ビジュアル(見た目で伝えられるもの)を作っているが、その領域を超えたファシリテーターとしての経験から見えてきたことをまとめていきたい。
似ている部分と異なる部分
デザイナーとファシリテーター、全く違うようで共通点もあるのが面白い。
ユーザーの気持ちを考えることはやはり非常に大切。
これはちても広い話だが、かなり大事かつデザイン業務と似ていると感じた部分だ。普段ポスターひとつ制作する際でも、どこに一番最初に視線が行くか、伝えたい情報がちゃんと正しく入ってくるようになっているかなど、考えながら制作をする。
それと同じようにデザイン思考では、あらゆる「ユーザーってこういうことを考えているのか?」を想定、把握する必要がある。つまり、ユーザーの気持ちになってみることが重要である。
そのために、ユーザーインタビューを行い、ユーザーの言葉からインサイトを抽出する。この人は実はこんな風に思っていたからこう言ったのか?というユーザーの気持ちを分析していくのだ。
ファシリテーターとして、ワークショップに参加している方が、よりターゲットユーザーの気持ちに寄り添えるようにサポートするということがとても重要なように感じた。
一方で、普段のデザイン制作と異なる点として、目的や最終のゴール地点が明確かどうかの違いがある。
一般的なデザイン制作は目的が決まっているため、プロセスがわかりやすいものが多い。例えば、ポスターを作る際は、いつに何をするか、何が行われるかを伝えるためのもの、と決まっている。そのため制作のプロセスはシンプルだ。
しかしデザイン思考では、ユーザー本人も気づいていないような部分を探っていかなければならない。本当に必要とされているニーズに辿り着くまでに紆余曲折するのが大体のパターンである。
とりあえずひたすら手と口を動かしてみる
非常に基礎的なことであるが、デザイン思考のワークショップを行う際は、チームでひたすら手と口を動かすことが非常に大事であると実感した。とりあえず書き出してみたり、雑でも良いからアイディアをスケッチしてみたり、変かなと思うこともとりあえず言ってみたり。
これは簡単そうに見えて本当に難しい。特に私の場合なのか、デザイナーあるあるなのか、(おそらくデザイナーのみなさんは共感すると思うが)黙々と考えてしまいがちである。そして黙々と作業しがちなのである。
誰かに共有する際に、ある程度のクオリティにまで持っていったものしか共有したがらない傾向があるのかもしれない。
しかし、デザイン思考のワークショップでは、何より試行錯誤することが重要。どんな段階であれ、一旦チームで考えたことややってみたことを共有することが大事になってくる。
個人作業が多めなデザイン業務とは対照に、ワークショップはチームで進めるものであるため、まずは口に出して思ったことを言わないことには何も生まれない。
ファシリテーターはメンバーのちょっとして考えを引き出すサポーターでもあるため、普段黙々を作業してしまいがちな筆者も、これってこういうこと?というチームが考えを共有しやすい会話を心がけた。
自分の中途半端なアイデアもチームの人の考えによって思いもよらぬアイデアに化けたりするのが、ワークショップの面白いところでもある。
ワークショップの新しい進め方
コロナ禍前までは、弊社でデザイン思考のワークショップを行う際はオフラインで行っていたが、今回は、オンラインと組み合わせてワークショップを実施した。オフラインとオンラインのハイブリッドで行うのは我々にとっても新しい挑戦で、普段の進め方と変わってきた。
ワークショップ中のアイディア出しやメモとして使用するツールは、オンラインが良いかオフラインが良いか?はたまたハイブリット型が良いか?という議題があるが、今回オフラインのワークショップ時でもオンラインツールを併用した。
今回ワークショップを行ったうちの全体の4割ほどはオンラインで行い、残りの6割はオフラインで行った。
もちろんオンラインでワークショップを行っている期間は、使用するツールも全てオンラインで、オフラインの期間でも、使用するツールの半分以上はオンラインのものだった。
オフライン時でも、とりあえずたくさん思いついたことを書き出す際や、ユーザーインタビューから得た事実を書き出す際にFigmaというオンラインツールを使用した形である。
オンラインツールとしてFigjam、オフラインツールとしてポストイットを使用
Figjamとは、オンライン上で使用できるホワイトボードで、主にチームでブレインストーミングをしたりマインドマップを作成する用途で使われるツールである。画面上に手書きができたり、付箋を貼ってテキスト入力をすることができる。
どう使い分けるべきかに対しては、結論を言うと、チームが円滑に進めやすい方であればどっちを使っても良いし、どう使い分けても良いと感じた。
Figmaもポストイットも、あくまで手段であり、ワークショップをスムーズに進めるためのサポートツールであることを忘れてはならない。
そこで、ワークショップを行う中で個人的に感じた、おすすめの使い分けのポイントを紹介する。
とりあえずブレインストーミングをして少しでも多くのアイディアを出したいとき、それを書き出したいときはFigjam上で。大事なことやハイライトになるような内容は、ポストイットで。この使い分けである。
書き出して、グループワークを行う部屋に貼っておく。そうすることで常に論点がズレにくくなるとともに、チームのみんなが共通の理解をしやすくなる。
どうしても話が白熱して色んなところに話題が散ることがあるが、収束しやすくするためにも、常に視界に入るところに要点だけ書き出しておくのは効果がある。
オンラインツールのメリット
後から融通が効く
その時に応じてパネルやブロックの並び替えや整理、複製がしやすい。
綺麗に記録できる
筆者は、自分の手書きを見返すのが嫌になってモチベーションが下がることがたまにあるが、オンラインツールではそのようなことはない。手書きで殴り書きしたものを後から見返し、これは何のことだっけ?となることも防ぐことができる。
お互いへリアクションしやすい
Figjamにはスタンプ機能やいいね機能があり、バリエーション豊富なリアクションをリアルタイムで示せるので、オンラインでもインタラクションのあるワークショップになる。
オフラインの良いところ
全体を俯瞰して見られるので、全体像を把握しやすい
誰が何を書いているのか、同じ空間にいることで把握がしやすい。また、PC上で行うのと違い、画面の大きさに制約がないためパッと全部のポストイットを見ることができる。
全体が見えるため、離れたそれぞれのトピックを併せて考えて、新しい発想が生まれることも。
オンラインでも離れたそれぞれのトピックがつながることもあるが、オフラインで実際にその場で見えることで、より簡単に全体を行き来することができアイデアに繋がりやすいように感じる。
オンライン、オフラインどちらにも良さがあるので、自分にとって、チームにとって、よりクリエイティブな状態になりやすい方を使おう。
おわりに
今回の記事ではデザイナーがファシリテーションをしてみて感じたデザイナーとファシリテーターの役割として似ているところや違い、そしてワークショップをする上での具体的な進め方に言及した。
また、Figmaなどのオンラインツールはユーザーフレンドリーであり、今後のワークショップはオフライン実施であっても、ポストイットや紙を用いる代わりにオンラインツールを用いる場合が増えるかもしれない。
オンラインツールを使うこと自体が目的になってしまわないよう、オンラインでもオフラインでも、参加者同士、参加者とファシリテーターが心地よく意思疎通を図れる方法を模索することが大切だ。
btrax では、最適なユーザー体験の創出に軸足をおいたサービス開発をはじめ、目的に応じて様々なサポートをさせていただいている。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせいただきたい。
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