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「デザイナー」消滅の危機?専門職の概念がなくなる時代
ビジネスにおけるデザインの重要性が高まるにつれ、自ずとデザイナーの重要性も高まっている。
同時にデザイナーの守備範囲も広がり、見た目を装飾するだけではなく、プロダクトの体験設計、組織仕組みづくりや経営判断に関わる部分まで、デザイナーの役割が及び始めている。
業績にインパクトを与える企業のデザイン性
それに伴い、デザイン思考などのメソッドを利用して非デザイナーでもデザイナー的なマインドセットを身につけることに注目が集まっている。
というのも、世界的に見ても企業の業績とデザインの関連性がデータとして示されている。例えば、マッキンゼーの調査でも、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が発表されている。
それもあり、経営者も投資家も、デザインオリエンテッドな企業に変換していくことが急務なのである
デザインオリエンテッドな会社とは、会社の経営からプロダクトの開発に至るまで、”デザイナー”的感覚を中心に行なうという考え方。Appleのスティーブ・ジョブスは厳密にはデザイナーではないが、デザイナー的感覚を武器に、見た目や体験に至るまで細部にこだわり、Appleを成功に導いた。
海外スタートアップではデザイナー出身の経営者も多い
その流れもあり、ジョブスに憧れ、優れたプロダクトを武器に会社を成長させている、ジョブスチルドレンとも呼ばれるサンフランシスコ界隈のスタートアップの経営者の多くがデザイナー出身だったり、何かしらのデザインバックグラウンドを持ち合わせている。
デジタルプロダクトを通じたユーザー体験が重要になってきている現代においては、商品の差別化要因はどんどん少なくなり、最後に残されたのがデザイン性とブランド力になってきているのが理由だろう。
この流れはアメリカだけではなく、取締役の多くがデザイン経験を持つサムスンや、海外から多くのデザイナーを採用しているアリババなど、韓国や中国の会社の多くもその流れを踏襲してる。
そもそもデザインって?
ではなぜそんなに”デザイン”や”デザイナー”という言葉をもてはやすのか?そもそも”デザイン”にはどのような意味が含まれているのであろうか?
恐らくその定義は時代と共に大きく変化し、冒頭の図のように、最近では見た目を美しくする役割のDesignからデザイン思考を活用してビジネスやプロダクト領域までを大きくカバーする広義のDESIGNにその定義が広がっている。
それを踏まえてデザインとは?を一言で表現すると…
DESIGNとは問題解決を行なうためのメソッドであり、ユーザー視点から「どう見えるか」よりも「どう機能するか」を主軸にしたプロセス。
そう。デザインは結果的アウトプットよりもそのプロセスに比重がおかれるべきである。
増え続ける多様なデザイナー職
そんな中で、さまざまな役職に “デザイナー” のキーワードが取り付けられ始めている。
例えば、人事担当者はキャリアデザイン。経営企画はビジネスデザイン。顧客サポートはカスタマーサクセスデザイナーなど、いろんなデザイン、なんでもデザインがどんどん広がっているイメージ。
新しいデザイナー職例:
- 組織デザイナー
- ビジネスデザイナー
- サービスデザイナー
- デザインエンジニア
- ビヘイビアデザイナー
- カスタマーサクセスデザイナー
- ブランドエクスペリエンスデザイナー
ここまで来ると、デザインが重要になったことで、その概念を幅広いフィールドで活用している。あらゆる役割でデザイナー的感覚が求められているのかな?と感じる。
デザイナーとエンジニアの境目もなくなってきている
ちなみに、これは数年前から始まっていることだが、デジタルプロダクトにおいては、デザイナーとエンジニアの境目がかなり薄くなってきている。
どう見せるかに加え、どう動くか、そしてどのような体験を提供するかが重要になっている時代においては、自分がデザインしたものを動かすところまでが一つの役割として捉えるチームも増えている。
ちなみに、2010年の時点で、元Adobe Type KitのクリエイティブディレクターのElliot Jay Stocksは下記のようなツイートを行った。
“2010年にもなって、自分のデザインをコード出来ないWebデザイナーがいるのにはビビった”
上記の内容で彼が言いたかったのは、デザイナーたるもの自分でデザインした内容は自分で動かしてこそ仕事だろ、という事。ページのレイアウトや色づけだけをして、”あとはコーダーまかせ”はあまりにも身勝手過ぎる。
静止画だけ描いてWebデザイナー気取るなよ、動かすとこまでが遠足だろ、と言いたいのだろう。
そうなってくるとデザイナーとエンジニアの境目がどんどんなくなっていくのは当然だろう。デザイナーは動かすし、エンジニアは設計もする。
デザイナーの役割が重要になり過ぎて…
ここまでデザイナーの役割が重要になり、組織全体に広がり始めてくるると、もしかしたら、デザイナーが専門職という概念自体が変化する可能性も高いと考えられる。
逆にいうと、スタッフみんなにデザイナー的視点とマインドセットが求められる時代になってくるのかもしれない。また、スピードとアウトプットの変化を考えると、どんな役職でもサクッとスケッチをしたり、ビジュアルで説明するスキルは避けて通れない。
まさに、全員野球ならぬ、全員デザインの感じになり、ポジションや役職にかかわらず、デザインの下地があることが全ての仕事の必須事項になってくる。これはまるでデザイン技術が特別なものではなく、どんどん「普通」になってきているからかもしれない。
そうなると、もしかしたらデザイナーという専門的役職が消滅する可能性すら出てくる。タイピスト、エレベーダーガール、電話オペレーターなど、時代と共に一般の人がこなせるようになったために無くなった職種の様に。
Web制作会社はそろそろ存続するのが厳しくなる
デザインの重要性が高まり、誰もが基本的なデザインスキルを身につけようとし始めた結果、デザイン会社の優位性も自ずと下がってくる。これはアメリカだと数年前から既に始まっており、多くのWeb制作会社が廃業を余儀なくされている。
運が良ければ大手に買収され、さもなければ大幅縮小やフリーランス型にその体系を変化させる。もしくは、それ以外のユニークさを備えることで、Web制作会社からの脱皮を図り、生き残りをかけている会社も多い。
デザインがコモディティー化されてきた一つの結果だろう。
さまざまなシーンで役立つデザインスキル
では、なぜそこまでデザイナー的マインドセットや基本的なデザインスキルがここまで重要になってきているのだろうか?おそらく、役職にかかわらず、基本的なデザインスキルを身につけるだけで、実に多くのシーンにおいてアドバンテージがある。例えば:
- 思考がクリアになる
- 第一印象が良くなる
- 仕事のスピードが上がる
- SNSでフォロワーが増える
- 相手の気持ちが理解できる
- 未来予想ができる様になる
- 新しい発想をしやすくなる
- コミュニケーション上手になる
などなど。実際に、我々が提供しているワークショップでも、新規事業を作ったり、既存事業の成長を達成させるための「下地」として、最低限のデザインに関して学んでいただいている。
みんなデザインマインドセットを身につけよう!
そんな感じでデザイナーという職種は専門的な役割だけではなく、異なる役職にもどんどん溶けていくようになるだろう。逆に考えると、どんな仕事や役割があっても、今後はデザイナー的マインドセットが求められる。
それは全く特殊なことではなく、その考え方とプロセスを身につけることさえできれば、仕事や生活の中でどんどん活用することができる様になる。
今後は、読み、書き、デザインが一般的なスキルセットになっていく可能性もある。自分は営業だから、経理だから、主婦だから、という言い訳は捨てて、皆さんもぜひデザイナーとしての一歩を踏み出してほしい。
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– btraxのカルチャーバリュー
筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.
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